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『ゆびさきと恋々』村野佑太監督インタビュー

TVアニメ『ゆびさきと恋々』村野佑太監督インタビュー|耳の聞こえない人がコミュニケーションに必要とするそのひと手間を、愛おしいものだと思えるように拘っています

2024年1月からTOKYO MXほかで放送中のTVアニメ『ゆびさきと恋々』。

本作は講談社「月刊デザート」で連載中の森下suu先生による漫画を原作としており、生まれつき聴覚障がいを持つ大学生の糸瀬雪と、雪の先輩である波岐逸臣を中心とした物語が描かれていきます。

アニメイトタイムズでは、本作の監督をつとめる村野佑太さんにメールインタビューを実施。本作ならではの難しさや演出面でのこだわり、アフレコでの裏話などをお伺いしました。

 

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ゆびさきと恋々
この手で「好き」って伝えたい…。累計発行部数360万部突破(電子含む)、各種賞にランクインし、SNSなどでも多くの反響を集める森下suuが描く『ゆびさきと恋々』。女子大生の雪は、ある日困っているところを同じ大学の先輩・逸臣に助けてもらう。聴覚障がいがあって耳が聴こえない雪にも動じることなく、自然に接してくれる逸臣。自分に新しい世界を感じさせてくれる逸臣のことを雪は次第に意識し始めて…⁉聴覚障がいのある女の子・雪と世界を旅する大学の先輩・逸臣のピュアラブストーリーがはじまる。作品名ゆびさきと恋々放送形態TVアニメスケジュール2024年1月6日(土)~2024年3月23日(土)TOKYOMX・MBSほか話数全12話キャスト糸瀬雪:諸星すみれ波岐逸臣:宮崎遊芦沖桜志:大塚剛央波岐京弥:逢坂良太藤白りん:本渡楓中園エマ:東山奈央伊柳心:畠中祐スタッフ原作:森下suu(講談社「月刊デザート」連載)監督・絵コンテ:村野佑太シリーズ構成・脚本:米内山陽子キャラクターデザイン:酒井香澄総作画監督:酒井香澄 西岡夕樹 遠藤江美子 玉利和枝 辻加奈子衣装デザイン補佐:あおのゆかプロップデザイン:ヒラタリョウ手話アニメーター:柳田義明 藤森雅也 宮本雄岐場面設計:関根...

 

愛おしいものだと思えるように拘っています

──本作『ゆびさきと恋々』をアニメ化すると決まった際の第一印象を教えてください。

村野佑太監督(以下、村野):非常に映像化が難しい作品だなと感じました。原作は漫画という表現方法内においての情報量の演出が凄く巧みなんです。それを映像に変換する時にこちらも同水準の表現方法を探さなければいけない……これは挑戦し甲斐がある題材だなと嬉しくなりました。

モノローグの多い作品なので、実写化よりもアニメ化の方がこの作品の良さは出しやすいだろうなとも思いました。やる気が刺激されましたね。

 

 

──昨今の状況を考えるとセンシティブかもしれないのですが、アニメ化にあたって原作の森下suu先生とどんなやりとりがあったのかも伺わせていただけますか?

村野:まず森下suu先生にラブレターを書きました(笑)僕はそもそも少女漫画に接してきた人間ではないので、先生も作品を預ける相手として不安があるだろうなと思えたからです。

なのでこの作品を映像化するプランと熱意、ファンの方達はもちろん先生自身に好きになってもらえるアニメ化を目指している旨をまず最初にお伝えしたんです。

次に先生がこの作品を始める際に参考とした文献や映画などの資料を全て教えていただいてそれに全部目を通しました。そのあたりからは先生に信頼していただけている自覚も出てきたので、色々突っ込んだ話もしやすくなりましたね。

──主人公・糸瀬雪は聴覚に障がいがあるキャラクターです。他のキャラクターとの掛け合いをはじめとする彼女の登場シーンは、制作時にどんなことを意識されましたか?

村野:雪は普段我々がアニメで描いているキャラクターと芝居の段取りが全部違うんですよね。

雪と会話する相手は必ず雪に顔を向けなければならないですし、雪がこちらを見てくれるまで喋り始めることができません。それが抜け落ちてしまうと会話が嘘になってしまうし、かといってリアルにやり過ぎると映像のテンポがどんどん悪くなってしまいます。そういった普段と違う配慮が必要になってくると、当然各話演出さんによってタイミングにも違いが生まれてきてしまうんですよ。

クレジットには載せてませんが、結局12本中8本くらいは自分で演出するハメになっています。でもそのおかげで芝居の個性は統一できていると思います。

 

 

──手話や口話、身振り手振り、筆談など、健常者の方にとっては自分から興味を持たなければ難しいコミュニケーションが、本作ならではの部分になるかと思います。アニメで再現する上でどんなことにこだわりましたか?

村野:耳の聞こえない人がコミュニケーションに必要とするそのひと手間を、愛おしいものだと思えるように拘っています。

ポジティブな会話もネガティブな会話も、必ず相手の目や唇、手を見つめなければならない……映像的に、そこに尊さを見つけられるものになると凄くいいんじゃないかって。その過程を経ることで、通常の恋愛よりもより強い結びつきを雪たちが得られるように描きたいなと考えていました。

 

 

──第1話で雪が「この振動が自分の中から起きているものだと、電車を降りてから気づいた」と言っていたシーンの音は、電車の振動のようにも雪の心臓の鼓動のようにも聞こえました。雪という女の子を主人公にしているからこそ音にこだわっている部分はあったりするのでしょうか?

村野:雪の周りにある音を表現するのは一番難しかったんですよ。当然自分自身も音響スタッフも誰もそれを聞いたことはないので。雪の主観を際立たせたいシーンでは環境音がシャットアウトされますが、そこで消しているのは空気中を伝わってくる音のみです。床を伝わってくる足音の振動とか、肩をたたかれた時に体に直接伝わる震えなどは残しているんですんね。

それと中途失聴の方にお話を伺った際に、「水に潜ったようなくぐもった感じ」「ザーザーと風が吹いている感じがする」というような違和感のヒントも貰いました。それも参考にしていますが個人差があるものですし、雪自身は生まれた時からその環境に身を置いているのでそれ自体に違和感を感じるようなものではないだろうと。むしろ徹底的に自己と向き合う落ち着ける空間なのではないか……と考え、繊細なキーンという透明度のある音を敷いています。

 

 

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