
『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』ウルフ役・津田健次郎さんインタビュー|悪役を演じる楽しさは「自由度の高さ」、神山監督からも「嫌われちゃうかも」と言われたウルフをどう演じる?
悪役は何をやってもいい
──本作で一番魅力を感じた部分はどこでしたか?
津田:古い王族の話が、映画の大部分を占めているんですけど、ここぞというところにファンタジーが登場するんですよね。大鷲が出てきたり、圧倒的な強さを持ったヘルム王の死に様だったり、「これが『ロード・オブ・ザ・リング』なんだ!」と感じるところがあって、カタルシスを担っているのがファンタジーなのが印象的でしたね。
──今回は悪役のウルフを演じていますが、悪役を演じる際の楽しさはどういったところにあるのでしょうか?
津田:悪役を演じる一番の楽しさは、その自由度の高さだと思います。正義のキャラクターは「やってはいけないこと」が多いんですが、悪役は何をやってもいいんですよね。ウルフもそれを思う存分にやっていて、「そこで殺すのか……!?」ということもやっています。
また、悪役は衝動の強さを持っています。それが物語の推進力となり、主役を追い詰めていく。この強いエネルギーを表現するのは、役者として非常にやりがいがあります。
そして、悪役はどこかちょっとした美学を持っていたりするので、それが素敵だったりするんですよね。ウルフに関しては美学が無いのが美学なのかもしれないですけどね(笑)。
今思ってみれば、自分の手で父親の敵のヘルム王を討つことができなかったことが、彼にとって大きな弱点だったのかも。圧倒的な強さを見せつけられて立ち向かって行けなかったのかも知れません。あそこに彼の弱さが出ているような気もします。
もし彼が自らの手で仇を討っていたら、彼はもっと強くなったかもしれません。残念ですね……。
──ウルフの最期について、どのように感じましたか?
津田:あれだけのことをしたキャラクターですからね。あのくらいの死に様をしてもらわないと(笑)。でもかわいそうな男なんです。親を殺されているし……。しかも惨めに一発でやられてしまう瞬間を目撃する。
さらに、あの親ですから家庭環境も大変なものがあったでしょうし、そこで性格が歪んでしまったとも想像できます。唯一の美しい思い出がヘラとの子供時代なのかもしれませんからね。
──そう思うと、映画を見てしばらくしたあとはウルフがかわいそうなキャラクターに見えるかも知れません。
津田:そうですね。何度か作品を見ると、ウルフという人間がキュートに見えることもあるかもしれません。
演技は引き算に向かっていく
──津田さんは近年、本作に限らず重要な役柄を演じる機会が増えていますが、ここ数年で役に対するアプローチやスタンスに変化はありましたか?
津田:10年周期くらいでいつも自分を振り返る機会がやってきていて、もう一回初心に戻って、新人の気持ちで「お芝居ってなんだっけ」「どうやるんだっけ」と考え直しています。どの役を演じるにしても「奥深いな」と感じていますね。いろんなアプローチを試しています。
──最近の気づきなどは?
津田:どんどんシンプルな方向、つまり「引き算」に向かっています。頭ではわかっていたんですけど。そっちのほうが足し算より難しいですからね。
──ベテランの方になればなるほど「引き算が大事」と言っていますよね。あれはなぜなんでしょうか?
津田:なぜなんですかね(笑)。歳もあるとは思います。やはり体感として「シンプルなものはいいな」ということは感じます。
──過去のインタビューでは「これまでの経験や勘を大切にし、キャラクターの中心を掴むことが大事」とおっしゃっていましたが、それは今回も同じでしたか?
津田:はい、それは全く変わらないですね。キャラクターの中心を掴むことができれば、ある程度のことは何をやっても成立すると思っていて。
特に今回のウルフの場合、彼の中心は「怒り」と「屈折」だと思います。彼は完全なメジャーコードではなく、マイナーコードのようなキャラクターです。その揺れ動く感情が彼の魅力でもあります。
親を殺され、自分自身で何かを成し遂げなければならない状況の中で、彼が見せる不安定さや揺らぎが、今回演じる上で大事なところでした。
例えば、ヘラの顔に傷をつけるシーンなどは、ヘラを殺すこともできず、受け入れることも出来ない彼ができる精一杯の反抗ですよね。
──今回の作品で、海外作品の悪役と日本作品の悪役の違いを感じた部分はありますか?
津田:神山監督が手掛けていることもあって、今回は日本の悪役のような感じがします。でも海外の作品のような雰囲気も感じられて、すごく面白いなと。どちらの匂いもする。その融合した感じは神山監督も大変だったところだと思います。
──最後に津田さんご自身、今回の作品で「ここだけは見てほしい!」と思うポイントはどこですか?
津田:やはりクライマックスですね。展開、絵作り、そして役者たちのお芝居が凝縮されていて、非常に見応えがあります。
[インタビュー/石橋悠 写真/小川遼]
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