
「大奥」の深い闇を掘り下げた第二章。再び、陰謀や愛憎が絡みあうーー『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』時田フキ役・日笠陽子さん×大友ボタン役・戸松遥さんインタビュー
歴史は巡り、時代は繰り返す
ーー今作の台本を読まれた感想をお聞かせください。
戸松:『劇場版モノノ怪 唐傘』とはテーマが違っていて、「大奥」の深層というか深い闇の部分を掘り下げたお話だなと。色々なところで陰謀が渦巻いているし、人間の生々しさや汚さもドロドロとしていて。そのうえで愛憎も絡みあっているので、観てくださる方はきっと気持ちを揺さぶられるはずです。
「大奥」は男子禁制の女性の園なので、女性同士の戦いが表でも裏でも繰り広げられる世界なんだろうなと。ただ、『モノノ怪』では腹黒いおじさんたちに振り回されている部分もあって。例えばボタンは老中の大友の娘ということで、サラブレッドな家系に生まれているのにも関わらず、政略的に利用されているんです。
日笠:真っ白なキャンバスに描き始めたものが、今回は真っ黒の消し炭に塗り替えられる感じで、思わずこの世の「諸行無常」を感じました。様々な色を重ねて、素晴らしい絵に仕上げようとするのと同じなのかもしれません。誰もが良かれと思って作った規律や行動から徐々に綻びや不和が生じていく。まるで絵を描いているうちに、色がぐちゃぐちゃに混ざってしまうみたいに。
それは規律を作った時代と現状がマッチしていないからで、大奥は最終的になくなってしまう訳ですし、不滅のものはないんだなと考えさせられた「第二章」でした。そんな中でも、大奥が存在し続ける限り、よりよい大奥にしようと追い求めていったのがボタンで。フキとしては次世代を担う自分の子供だったり、次の人たちにどう伝えて、何を残していけるのかも考えさせられました。まさに歴史は巡り、時代は繰り返す、ということが各章で描かれていくのかなと。次の第三章まで含めて、大きな渦みたいなものが表現されている気がします。
『劇場版モノノ怪 唐傘』では「水」が描かれて、今回は「火」という対照的なテーマになっているのも不思議ですね。きっとそういう時代背景や監督の想い、考えが散りばめられていると思いますし、今はただ作品の完成が楽しみです。
ーー「第二章」でそれぞれの役を演じるにあたって、意識したことを教えてください。
戸松:前回のボタンはそれほど出番があったわけではなく、アサ(CV.黒沢ともよ)とカメ(CV.悠木 碧)から見たボタンを演じていたので、イメージとしては「マジ大奥」みたいな(笑)。「これは敵わない。上の人ってすごい!」という存在でありたいと思っていました。
第二章からはフキとボタンがメインになっていくので、この二人以外にも天子に選ばれたい女性がたくさんいる中、みんながどんな感情を抱いて、どうアプローチをしていくのかが少しずつ描かれています。特に前半、フキとボタンは対照的に描かれていることが多いんです。
ボタンは自分の家系を含めて、長く続く大奥をみんなで協力して存続させ続けたいという想いが強くて。結果を残すのは自分ではなくてもいいという考え方なので、他の子たちのような「私を選んでください!」という我は一切なく、「自分が選ばれればそれはそれでいい」という感じ。
まさにビジネス的な考え方で、大奥の上司的な立ち位置ですが、一方のフキは結構人間臭くて、感情豊かです。フキに想いの丈をぶつけられても、ボタンは「気が済みましたでしょうか?」と返す。そのくらい私情を挟まず、機械的に対応していたので、強い責任感を常に忘れないように演じていました。後半ではボタンの人間的な部分も徐々に見えてくるので、そういう変化もみなさんに伝わったらいいなと思います。
日笠:フキなりの「これが正義」と信じて貫いていたものが、外側からは「悪」に見えることがあって。私は彼女を演じているけど、収録後に映像を観ていると「フキよ。それはダメじゃない?」とか、「自分だけが頑張っているって思ってない?」と自分の子供を叱るような感覚がありました。
演じている時は、色々な対比や対立を感じながらも、自分が真っすぐフキを演じていると自然と対比されていくように描かれているので、あえて意識しなかったんです。
また、フキとボタンの関係性に注目しがちですが、実は二人共、根幹にはお父さんという存在があります。そして、フキが子供を宿した時、そこにも新たな親子が生まれる。大奥を作った老中がいて、囲われた女性たちがいて。本当に様々な対比関係があるなと。そういう渦巻いたものに飲まれないように精一杯生きている女性がフキです。彼女が全力で生きる姿を感じていただけたらと思います。
















































