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春アニメ『中禅寺先生物怪講義録』前田佳織里&小西克幸が考える、栞奈と中禅寺の関係性の魅力/インタビュー

「柴犬」のような栞奈と、“人間そのもの”があまり好きではない中禅寺先生。二人のささいな距離感の変化に注目|TVアニメ『中禅寺先生物怪講義録 先生が謎を解いてしまうから。』前田佳織里さん&小西克幸さんインタビュー

 

栞奈は「柴犬」のようなイメージ。中禅寺先生は説明と会話の塩梅に苦戦

──演じる際に意識した点や難しかった点、またディレクションの中で印象的だったものを教えてください。

前田:天真爛漫だけど、中身はしっかりしているので、人から頼られるのかなと思って役作りをして現場に行ったら、音響監督の亀山(俊樹)さんから「栞奈はもっと知能指数を下げてほしい」と言われて。

 

 
小西:要するに「かわいいバカにしてほしい」と(笑)。

前田:それを聞いて、「そっちなんだ!?」とすぐ理解できました。天真爛漫にしたつもりでしたが、賢く聴こえてしまったみたいで。なので、最初の1、2話では直感的に演じました。

あと、第1話の途中から「もしかしてこの子はワンちゃんなのでは?」と自分の中のテーマが見つかって。子犬のように誰にでも警戒心なく、懐いていく感じというか。「守りたいものは必死で守ろうとする柴犬なのかな?」というイメージが湧いてきました。収録現場にいらっしゃった原作の志水アキ先生からも、「栞奈はワンちゃんのような子で」とヒントをいただいたことで、「これを道しるべにやっていこう!」と。そこからは柴犬みたいな感じを常に意識しました。

──確かに、考えるよりも先に行動に出るタイプだなと思いました。

前田:でも、(中禅寺先生に言われずとも)自分で気付くことも結構あって、意外と洞察力があるんです。ですがやはり、中禅寺先生とのコントラストを出さなければいけないので、よりおバカな感じで(笑)。

 

 
小西:中禅寺とずっと一緒にいることで、考え方も少しずつ変わってくるみたいで。最初は、事象や問題に対してバーン!とぶつかっていく感じだったのが、だんだん見方や角度が変わってきた印象がありました。「おっ、心霊探偵やってるな」って(笑)。

前田:中禅寺先生によく憎まれ口を叩きますし、表には出さないですが、内心ではすごく尊敬しているし大好きだと思うんです。でも、いつも難問だと思ったことをすぐに解決されてしまうから、ちょっと悔しさもあって(笑)。ただ、無意識のうちに中禅寺先生の思考回路になったつもりで、マネている節はあると思います。そんな背伸びした部分や少しずつ成長していく様子を見守ってほしいですね。

──小西さんはいかがでしたか?

小西:僕は収録に入る前に「百鬼夜行」シリーズを全部読み直してみました。小説ではセリフと地の文がありますが、今回はマンガ版を声に出して読むことにして。中禅寺がどんな人なのかを自分の中に入れながらやって、準備して現場に行きましたが、「そのままやってもらえれば」と言われて。少し拍子抜けした感もありつつ、「そのままが一番難しいんですよ!」と心の中で叫びました(笑)。

 

 
ただ、「セリフの中でよく説明するくだりがありますが、あまり説明口調にならないほうが嬉しいです」と言われたので、普通にしゃべっている、会話しているように心掛けましたが、それが難しかったです。とにかく説明が多いので、どうしても説明口調になってしまって。わかりやすく「ここを立てよう」としたけど、「もうちょっとフラットでいいよ」と言われたりして、「果たしてこの説明は届いているのだろうか?」という不安と常に戦いながらやっていました。

前田:謎解きパートの文字数がすごく多かったですよね。

小西:1~2ページくらいだからそんなになかったけどね。

前田:すごい! さすがです!

小西:でも、説明していると役者は気持ちいい瞬間を探してしまうところがあるし、わかりやすいように説明しがちになってしまうけど、なるべく栞奈と普通に会話している延長線上で、という部分は意識して演じました。

──普通、推理をする時はモノローグがあるものですが、中禅寺先生はほとんどないですね。

小西:思ったことを全部口に出してしまうので(笑)。でもウソは言わない、自分の中で確信があることと、ちゃんと答えがあることしか彼は言葉にしないので、僕も信じながらやっていました。

 

 

──むしろ栞奈のほうが考えたり、疑うことが多い気がします。

前田:いっぱい考えちゃうんでしょうね。それはきっと頭の回転が早いからだと思います。頭の中がいっぱいになっちゃうから、思ったり、考えたことをすぐに言葉にしてしまうのかもしれません(笑)。

小西:そこが中禅寺との大きな違いだね。中禅寺は一度結論が出ても、「ちょっと待ってて」と1週間くらい調べて、120%の確証を得てから皆さんにお披露目するので。そこが彼のすごいところですね。

前田:言葉にすることの重みや責任を人一倍感じているのかもしれないですし、自分が納得した時点で伝えたいんでしょうか?

小西:真実を伝えたい、ただそれだけ。でもしゃべった後のことも想像して、言わないほうが良いと判断すれば、真実を隠すこともあって。

前田:だからこそ、栞奈だけではなく、先生の周りの人たちも頼りたくなるんでしょうね。

小西:すごく「できた人間」なので信用できます。ただ入口が難しいだけで。たぶん付き合っていくうちに良さがわかります。噛めば噛むほど味が出るスルメのような……実はスルメはいくら噛んでも味は出ないんですけど(笑)。

 

二人でガッツリお芝居をするのは今回が初めて。お互いの印象や演じてみての感想は?

──お互いのお芝居についての感想をお聞かせください。

前田:実は、小西さんと収録でしっかりご一緒するのは初めてで。

小西:仕事で一緒になるのは、今回がほぼ初めてでした。

前田:でも、共通の知り合いの役者さんからは「小西さんはすごく優しい」とか「めちゃめちゃ良い人」というお話はたくさん聞いていたので、お会いするのがとても楽しみでした。実際にお会いしたら、原作を読んでいた時に頭の中で聴こえていた中禅寺先生の声がそのまま出てきて、「すごい説得力だな」と思いました。

小西:ありがとうございます。

前田:私も栞奈と同じ脳直(脳から直接)なタイプなので、その感想をすぐにお伝えしました。今考えてみると、ものすごく失礼なんですけど(笑)。すごく感動しましたし、お話をお聞きして、事前に役作りする時間のかけ方や労力もすごいなと。原作シリーズを全部読まれて、役を構築する姿勢をとても尊敬しました。

あとは現場にいらした時も、「今日の(話数の)中禅寺はここが難しくて、こういうアプローチをしてみたんだ」など話してくださって。でも多く語り過ぎず、役者としてあるべき姿を背中で見せてくれるというか。

小西:そうなのかな?

前田:そうです! 今回現場でご一緒して、役者としての小西さんのすごさを近くで感じられたことが光栄でしたし、本当に嬉しかったです。

 

 
小西:前田さんとは今回初めてご一緒しましたが、すごく華がある方なので、演じている時も明るくて、周りを元気にするパワーや華やかさのある、素敵な栞奈だなと思っていました。

前田さんと栞奈が似ているなと思ったところは、ゲストキャラなど新しく現場にいらしたキャストの方全員に必ず話しかけに行くんです。みんなが居やすい場所を作ろうとしてくれて「すごいな」と、僕は仏頂面で見ていました(笑)。

前田:そんなことないじゃないですか!? 一緒に話してくださって。

小西:僕は人見知りで、積極的に話には行かないから、前田さんはすごいなと思います。

前田:嬉しい!

小西:栞奈と同じように周りの人を引き込んでいくパワーというか。キャストさんだけではなくて、スタッフさんに対しても同じように接することができるのが素敵ですね。

前田:ありがとうございます。

 

 

──収録は皆さん揃ってできたのでしょうか?

小西:そうですね。

前田:嬉しかったですね。コロナ禍の時は分散収録でしたが、ようやくみんなでできて。

小西:ほぼ全員揃って、全話収録できました。とはいえ、特別お話しできるような大きな出来事はなくて。毎回その話数に出てきた、もしくは関連するお菓子などの差し入れを用意してくださったので、それを楽しみにしていたことくらいでしょうか。「今日はミルメークだよ」「やったー!」みたいな。

前田:ミルメークって、懐かしくないですか?

小西:別の日は駄菓子をたくさん用意してくれたり。

前田:収録の1カ月前からリサーチをしていたというお話を聞きました。この作品は終戦後の昭和が舞台で、私が実際に過ごした時代ではないんですが、好きなんですよね。地元にある昭和記念館に行ったりも好きで。

小西:ご両親が昭和の音楽が好きで聴いていたのを、横で一緒に聴いていたとかあるの?

 

 
前田:そういう記憶もなくて。何でなのかわからないんですが、無性に心惹かれるものがあって。昭和関係のものを調べて、この間も高円寺に行って、昭和時代のものを置いている雑貨屋さんに行ったり、インスタをフォローしたり。そういう世界観に合わせて、スタッフさんが毎回差し入れしてくださったり、ちょっとしたプレゼントをいただいたりしました。

私も収録前に、舞台になった時代に何があったのか調べました。実は収録前に最初に悩んだ部分でもあって、レトロ感を出したほうがいいのかなって。でも、私たちから見ればレトロかもしれないけど、栞奈たちにとっては「今」なんですよね。それでも栞奈と感覚だけは合わせたいと思って、起きた出来事や流行っていた音楽などを調べました。そうしたら収録で、栞奈が歌うシーンのアドリブを求められたことがあって……。

小西:あったあった!

前田:並木路子さんの「リンゴの唄」や、笠置シヅ子さんの「東京ブギウギ」を口ずさんだら「ちょっと権利が……」と言われたので、何でもないフニャフニャした歌を歌いました。でも亀山さんが、「あのCMソングの曲、歌っている?」と気付いてくれたのは嬉しかったです(笑)。

小西:皆さんも「あっ、ここのシーンであの曲を歌っていたんだな」と思って聴いてください(笑)。

前田:あと千鶴子役の茅野(愛衣)さんがすごくママ……いいお姉さんで(笑)。中禅寺先生の奥さん役らしく優しくて、すごく面倒を見てくださって。別の作品では姉妹役で共演したこともありますし、同じお酒好きということで『かやのみ』(茅野さんの動画番組)におじゃまさせていただいたりして。私にとって、現場にいてくださるだけですごく安心できる方なので、今回も共演できて嬉しいです。

 

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