
「彼女たち、そして私たちの熱を受け取っていただけたら嬉しいです」TVアニメ『ロックは淑女の嗜みでして』鈴ノ宮りりさ役・関根明良さん、黒鉄音羽役・島袋美由利さんが語る──剥き出しの感情のまま挑んだ白熱のアフレコ風景【インタビュー】
意外とアフレコ現場の雰囲気は「淑女」なんですよ(笑)
──関根さん演じる鈴ノ宮りりさについて、島袋さんが感じる魅力をお聞かせください。
島袋:音羽さんを通して見ているので、「転がしやすい子」というか……結構単純で可愛いなと思っています(笑)。
一方で、常に全力でぶつかってくるし、「ロック」も「淑女」も、何一つ手を抜かない。完璧であろうとする彼女の覚悟がカッコいいですよね。
ただ、完璧であろうとする背景などを知ると、「その歳でそこまで抱え込まなくてもいいんだよ」とも思います。見ているこちらが心配になってしまうくらい、強い子だと思っています。
関根:りりさは譲れないものが増えたとしても、「二兎を追う者は一兎をも得ず」にはならないように全力で努力する子。「どちらも絶対に手に入れてやる」という気概が強い子なんだと思っています。
それでいて独りよがりではなく、周りを見ることもでき、相手を思いやることもできる優しい子だなとも思います。先ほど、島袋さんが仰ったような煽りに弱くチョロいところも可愛いなと思います(笑)。
彼女の熱量を損なうことのないよう全力で挑ませていただいています。
──そんなりりさの「生涯のパートナー」となる、島袋さん演じる黒鉄音羽について、関根さんはどのような魅力を感じていますか?
関根:りりさの「なんだこの息が止まるほどの…美少女お嬢様は…!」というセリフのとおりですね! 初回の収録の際の島袋さんの声を聞いて「あ! 音羽だ!」と思ったんです。品があって、背景に花が咲くような優雅さが素敵だなと思います。
ただ、私もりりさを通して台本を読んでいると、音羽に対して「負けたくない!」という対抗心もでてきて。2人で罵り合うシーンでは、りりさが先にしかけることが多いのですが、私の勢いを押しつぶすような熱量をガンっとぶつけてきてくれるんです。なので、そうくるならこっちだって! と負けないように必死でした(笑)
──お二人の間でも、りりさと音羽のやり取りがそのまま行われているような感覚なのですね。
関根:そうかもしれません(笑)音羽から圧をかけられるシーンでも言葉は荒くなく、表情もセリフもにこやかなのに本当に怖いんです。純粋な探究心を持っているというか、「なんで? なんで? どうしてロックをやらないの?」と、どんどん詰め寄られて潰されそうな気持ちになるような……。
本当にもがきたくなるような圧をかけてくださるので、いつも必死で頑張っています。
──ロックなアフレコ風景ですね……!
関根:それが、アフレコ現場の雰囲気は「淑女」なんですよ(笑)。
島袋:2話のアフレコの頃から、みなさん「おはようございます!」ではなく「ごきげんよう」って挨拶していました(笑)。
関根:そうそう(笑)。最初のうちは慣れなくて、「おは、あっ……ごきげんよう!」って(笑)。
島袋:現場にお嬢様言葉の解説本が置いてあって、みんなで読んでいましたよね。
関根:「お嬢様とは何たるか」が書いてある本でしたね! 「『ごめんあそばせ』は『ちょっと失礼』って意味だったんだね」みたいな話をしていました。みんなでいっしょに「淑女」を研究していましたね。
──まさに「淑女」を体現している音羽について、演じる島袋さんはどのような魅力を感じていますか?
島袋:みんなが憧れる美しさと気品があると思っています。
みんなに憧れの目を向けられることが多い音羽さんは、きっと幼い頃から社交の場に出て、どこへ行っても恥ずかしくないような教育を受けてきた方だと思うんです。でも、それゆえにロックをしていないときの自分に対するコーティングが厚い印象があって。求められている姿を“型”として演じている子なのかな、と。
だからこそ、演じる上でも背筋をピンと伸ばしていなければいけない気がしましたし、台本を持つ手も指先まで気を配ったり、普段なら10秒前くらいでマイク前に行くところを、20秒くらい前から優雅に歩いていったり……音羽さんとしての立ち振舞いに気をつけました。
関根:うんうん。
島袋:一方で、ロックをしている姿に関しては、本当に自由奔放で、今ある幸せを存分に楽しんでいるというか……。自分の幸せのために相手の人生すらも巻き込むくらい、ロックと自分が見出した快楽を大切にしている部分が強いなと感じています。音楽を対等に楽しめる相手をようやく見つけられたんだな、と。
先ほど関根さんが「負けたくない」と仰っていた(りりさとの)言い合いのシーンでは、関根さんが剥き出しでぶつかってきてくれる分、私も自然と剥き出しでいられました。演じながら「こっちも負けたくない!」と思えるんです。そうしていると、テストからクタクタになっちゃうんですけどね(笑)。
心地よさとムカつきが共存する、セッションのようなアフレコ
──お二人が剥き出しで掛け合うシーンでは、普段口にしないようなセリフも多いかと思います。
関根:初めて言った言葉がいっぱいありました(笑)。
──そうですよね! そういったセリフをアフレコする際、どのようなお気持ちでしたか?
関根:普段口にしないようなセリフが飛び交うシーンは、熱いシーンが多いので、収録後にはなんだか達成感がありました。収録中にも「人に対して『不燃ゴミ』なんて言うことないよね」などとよく話していて(笑)。個人的にとても楽しみにしています。
初回の収録で、「テンポ感や積み重ねられる熱量を大切にしたいからセリフが被ってもいいよ」とディレクションがありまして。つまり、ミスをするとそのシーンがまるっと録り直しになってしまうんです。
──緊張感がありますね。
関根:そうですね。なので収録中は普段口にしない言葉は全く気にならなくて。寧ろ上がっていく熱量や(島袋さんと)ピッタリとセリフのタイミングが合ったときの気持ち良さを感じていました。
島袋:言葉を重ねた先のゴールに、そういった言葉があることが多いので、そこにたどり着いて気持ちを吐き出すことが気持ちよかったのかもしれません。いわゆる“ああいう”言葉には、「もっとアツくなってほしい!」という思いを込めているので、内に秘める気持ちを別の形で届けられる喜びもありました。
──お二人の掛け合いは、まるでセッションのようですね。
関根:アドリブで罵り合うシーンもあったのですが、お互いの掛け合いが加速していけばいくほどに、楽しさと同時にカチンときちゃうといいますか……(笑)。
島袋:あはは! ムカついちゃいますよね(笑)。
関根:もちろん、それは役としての話で、実際に仲が悪いとかではないのですが、収録中は、お互いムカついていた瞬間があったんじゃないかな(笑)。
島袋:セッションのように、お互いの言葉をどんどん重ねていく心地よさと、「うるせぇな!」という音羽とりりさとしての気持ちが共存していました。
関根:表現が荒々しいだけで、彼女たちの関係が荒れているわけではありませんし、どんどん遠慮がなくなり友情が深まっていくことが素敵だなと思います。毎話、楽しく演じさせていただきました。
──そんな熱いアフレコ現場ですが、原作者である福田宏先生もご見学されたとお伺いしました。
関根:第一話のアフレコにお越しいただいて、台本にイラスト付きのサインをいただいたり、キャラクターやストーリーに関するお話もお伺いできました。また、「(作品に)声がついて嬉しい」「アツくなれました!」というお褒めの言葉もいただいて、嬉しすぎてタジタジしてしまいました(笑)。
島袋:「テープ(オーディション)のときから、関根さんのりりさがいいなと思っていました」とおっしゃっていましたね。
関根:本当に光栄です……! これからも精進することを誓った日でした!
──島袋さんは、先生との会話で印象に残っていることはありますか?
島袋:今はまだ詳細にお話しできない部分なのですが、音羽さんの行動の理由など、個人的に気になっていたことをお伺いしました。音羽さんの解像度を上げるために、聞けることはしっかり聞いておこうと思い、ご相談させていただきました。
こういったお話も含めて、関根さんと同じく、先生からいただいた気持ちを大切にして、今後のアフレコに繋げていけたらと思っています。



















































