
「求めている人たちの場所に行き続けたい」水曜日のカンパネラ・詩羽さん×ケンモチヒデフミさんインタビュー|TVアニメ『九龍ジェネリックロマンス』主題歌「サマータイムゴースト」に込める「うら寂しさ」と「2024年の夏の暑さ」
二人が見据える「求めている人たち」と「開かれたアプローチ」
──せっかくお二人ご一緒の場ですので、普段から気になっていたことや聞いてみたかったことがあれば、ぜひこの機会にお互いに質問してみてください。
ケンモチ:おっ。なにかありますか?
詩羽:(少し考えて)……ない……かも?
一同:(笑)。
ケンモチ:ないはないで、不安なんですけどね(笑)。
──(笑)。それでは、ケンモチさんから詩羽さんに聞いてみたいことはありますか?
ケンモチ:いつも歌詞や曲を作って、詩羽に渡しているのですが、面白い歌詞についてどう思っているのか気になりますね。お笑いのコントを書いているわけではないのですが、いつもすぐに「OKです!」って言ってくれるから、ちょっと不安になるんですよ。ちゃんと面白い歌詞を書けているのかなって(笑)。
詩羽: うーん……特に何も思ってない……(笑)。というのも、その歌詞が面白いかどうかを決めるのは、私ではない人たちじゃないですか。受け取り手でない私がその歌詞を面白く歌ったら面白くなくなってしまうので、真面目に歌うことで、もっと面白くなると思っています。
ケンモチ:そうなんだよね。
詩羽:だから面白いと思って受け取っていなくて。「歌詞」として受け取って、(それが面白いかどうかは)みんなが決めるんだろうなと。
ケンモチ:世に出るまで、面白いかどうか確信を持てずに作っていることもあるんですよ(笑)。
ケンモチ:あとは……僕が書いた曲を最初に聴いた時に「これはちょっと違うな」と思ったら、遠慮なく言ってほしいと思っています。
詩羽:ふふ。
ケンモチ:僕自身の引き出しが古いので、「このネタ古くないですか?」みたいな意見があったら聞きたいのですが、今のところは大丈夫そうなので、良かったと思っています。
──そんな楽曲制作についてなのですが、詞先、曲先で言うと、どちらのスタイルなのでしょうか?
ケンモチ:最初にぼんやりとテーマだけを考え、「こういうタイトルでこういう曲を組み合わせたら面白いだろうな」と頭の中で思い描いているものを、まずはトラックから起こしています。
そうして完成したトラックに歌詞を書いて乗せていくと、歌詞が乗らなかったりするので、トラックを変える、また歌詞を変える……というように試行錯誤していくうちに「これしかない」と思えるものが出来上がる流れです。
──ケンモチさんが歌詞を書く上で、影響を受けたものがあれば教えてください。
ケンモチ:西尾維新さんの本が好きで、昔からよく読ませていただいていました。あの“西尾維新さんらしさ”というか、独特の文体があるじゃないですか。ものによっては、ストーリーが入ってこないくらい文にクセがあったりして(笑)。
西尾維新さんの、クセのある文体や世界観、そしてシリアスな話の中にもどこかくだけた部分があるところが、とても好きです。歌詞でその雰囲気を踏襲しているわけではありませんが……あのような「日常的だけど、日常にはない風景」には、憧れを持っていました。
あとは、最近アニメ化される漫画やラノベは、伏線が張り巡らされていたり、タイトルだけでも内容が予測できるのに、読み始めるとまったく違う展開だったりして、話の設定が歌詞のネタの宝庫のように感じるんです。
例えば“異世界転生モノ”というひとつのジャンルでも、色々な作り方があるんだなと参考になりますし、多くのものからインスピレーションを受けています。
──最近、気になっている作品はありますか?
ケンモチ:さきほど例に出した“異世界転生モノ”で言うと、『異世界居酒屋「のぶ」』なども、中世の時代の人が日本の居酒屋に来たら楽しいだろうな、と思いながら漫画を読んでいました。
このような、昔と現代をつなぐような作品は、エジソンが現代でバンドマンをやっているような、水曜日のカンパネラの世界観と通じるところがあるなと思っています。
──ちなみに詩羽さんは、最近読んでいる漫画はありますか?
詩羽:私も最近は、“異世界転生モノ”の漫画をよく読んでいます。
アニメは最近あまり見れていないのですが、小学生の頃はよく見ていました。今はどちらかというとアニメより漫画派で、“異世界転生モノ”であれば有名なものからあまり知られていないものまで、端から端まで幅広く読んでいると思います。
──昔見たアニメや最近読んでいる漫画などで、詩羽さんの歌やパフォーマンスに影響を与えたものもあったり?
詩羽:自分の歌に直接影響を与えたものはあまりない気がします。でも、昔から漫画が大好きで、特にファンタジー作品をよく読んでいたんです。そこで得たファンタジーへの寛容さがあるからこそ、水曜日のカンパネラのファンタジー要素の強い曲も受け入れが一瞬なのかなと思います。
歌詞を疑問に思うことなく、すぐに歌えるのは、子供の頃から漫画やアニメをたくさん見ていたからかなと思いますね。
──ファンタジーへの造詣の深さが、今のパフォーマンスにもつながっているのですね。そんな詩羽さんが「歌うこと」に興味を持ったきっかけについてもお聞かせください。
詩羽:母が音楽好きで、家や移動中の車ではいつもCDがかかっていました。母も、そして姉もよく家で歌っていたので、「歌うことは楽しいことだ」という認識が、小さいころから自然と出来上がっていたんだと思います。
だからといって、ミュージシャンになりたいと思ったことは一度もなかったのですが……この仕事を始めて一年半くらいで、歌が好きだと改めて思い出しました。
──思い出した?
詩羽:好きなものが仕事になると、難しいこともありますから。「好きなこと」から「やらなければいけないこと」に変わると、「好き」の基準がぶれたり、わからなくなったりすることもあると思います。私も曲がヒットして忙しくなって、稼働が増える中で、子供のころは大好きだった歌が、そうではなくなった時期がちゃんとありました。
──そこから今のスタイルが確立されるまでの過程を教えていただけますか?
詩羽:自分の歌のスタイルは、実はあまり分かっていないのですが……楽しく歌うことを大事にしています。楽しくないと、水曜日のカンパネラのポップなイメージから離れてしまうので、ステージの上では楽しむことを一番大事にしています。逆にそれ以外のことは、何も意識してないような気がしますね。
──ケンモチさんが思う、詩羽さんの歌声の魅力についてもお聞かせください。
ケンモチ:音楽的なところで言うと、どんなに激しいトラックでも、音が厚くても、声が埋もれないんですよね。どこまでも前に出てくるような声質を持っています。それを活かした楽曲作りができるのは、私としてもありがたいことですね。
あとは、一人のリスナーとして歌声を聴いているときに感じるのですが、(詩羽さんが)楽しそうにしているところが魅力的だなと。音楽的な部分でもそうなんですけれど、そういう姿が印象的で、いいなと思っています。
──ありがとうございます。最後に、今後の水曜日のカンパネラの展望を教えてください。
ケンモチ: 長い間ユニットとして活動をさせていただいているので、今まで水曜日のカンパネラをいいなと思ってきてくれた方々はもちろん、まだ出会っていない方々にも、「こんな音楽ユニットがいるんだ」と知ってもらえたら嬉しいです。
今回で言えば、『九龍ジェネリックロマンス』という作品を通して楽曲に触れてくれる方や、海外でアニメが好きで日本のカルチャーに興味を持っている方など、元々近しいカルチャー下にいたものの、まだ我々の音楽を聴いていなかった方々に対して、もっと開かれたアプローチができたらと思っています。
詩羽: 今行っているツアー(「水曜日のカンパネラ プレミアムライブ2025」)で初めて行く場所も多く、そこで初めてライブを観るという方もたくさんいます。これからも、水曜日のカンパネラを求めている人たちの場所に行き続けたいと思っています。
ライブが一番楽しくて好きなので、これからも色々な場所にライブをしに行けたら、と思っています。
【インタビュー・文:西澤駿太郎 撮影:胃の上心臓 編集:太田友基】
『九龍ジェネリックロマンス』作品情報
あらすじ
もう一人の鯨井令子の存在が自分に過去の記憶がないことを気づかせる。
妖しくも美しい九龍の街で繰り広げられる日常。
記憶がないのに懐かしく感じる風景。
そして、止められない恋心。過去・現在の時間軸が交錯する中、恋が、全ての秘密を解き明かす─。
キャスト
(C)眉月じゅん/集英社・「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会















































