
「『観たい』と思えるアニメだと思います」──原作漫画から滲む“暴力”的な面白さは「諦めないという気持ち」から生まれる!? 『ばっどがーる』原作・肉丸先生インタビュー
漫画『ばっどがーる』制作秘話と漫画家・肉丸の求心力
──TVアニメ放送に先駆け、「アニメ化記念原画展」も開催されました。肉丸先生も現地参戦されていましたが、いかがでしたか?
肉丸:入口のご挨拶にも書かせていただきましたが、本来は4キャラ(優・亜鳥・涼・るら)でご依頼をいただいていました。基本的にはこの座組だと思っているのですが、その4キャラ以外のファンの方も、もちろんいらっしゃいます。むしろアニメが放送されることで、そのキャラクターたちがもっと人気を集めてほしいという想いもありました。
キャラクターを知ってもらうという、アニメ放送までの準備段階として、開催していただいて良かったなと思います。正直、描き下ろしイラストを作るのはとても大変だったのですが……(笑)。眠い目をこすりながら描いた甲斐がありました。
──SNSでも、たくさんの感想が投稿されていましたね。
肉丸:「#ばっどがーる展」の感想を追っていましたが、「(入場料が)1,000円でいいのか!」「展示が大きすぎて写真の画角に収めきれなかった」のようなプラスの反応をたくさんいただきました。今後もこのような機会があればチャレンジしていきたいですし、読者の方と直接触れ合う機会も積極的に参加したいと改めて思いました。
──会場で展示された原画、イラストの総数は200点を超えていたとのことでした。
肉丸:数もさることながら、コマのチョイスが良かったですよね。原作を読んでいただいた結果、このコマが選ばれたんだろうな、と伝わってきたので、ありがたいなと思いました。
──すべてのコマにパワーが詰まっている『ばっどがーる』ならではの展示でしたね。
肉丸:すべてのコマにネタを入れようというスタンスで描き始めた作品でもあるので、初期の段階だとパワーワードが多いですね(笑)。
──そのようなパワーワードやネタは、どのように着想を得て描いているのですか?
肉丸:2パターンあります。普段から僕は考えるのが好きで、隙があれば面白いことを言いたいと思いながら日常を過ごしていて。基本的には身内と喋る中で出てきたワードを蓄えたり、YouTubeなどから得た面白い要素……事件や生物、キーワードなどを調べるなどして、意外性や専門性があるものをピックアップしています。
もうひとつのパターンは、「みんなが思っている言葉から少しズラす」という意識です。
──言葉を少しズラす?
肉丸:普通の表現に対して、少しだけ言い方を変えるんです。例えば……「湿度が高い」を「濡女子(ぬれおなご)がいる」という言い方をしたり、「冬が来た」を「夏が逃げていった」に変換したり。このような言い方に切り替えることで、『ばっどがーる』ならではの表現が生まれて、それがブランドになるのかなと。
──「まんがタイムきららキャラット」2025年6月号の表紙も、とてつもないインパクトでした。
肉丸:あれ、芳文社さんがよく許してくださいましたよね……(笑)。実は最初に出した案はもっと激しくて、NGだったんですよ。「きららといえば、やっぱり暴力!」っていうキャッチコピーで。
──それは激しいですね……(笑)。
肉丸:担当編集さんと一緒に考えた結果、「暴力?」という疑問形に落ち着きました。滑り込ませることができてよかったです。
──この場には『ばっどがーる』編集担当者様もいらっしゃいますが、初案を見た際のご感想と言うと……?
担当編集:「これはさすがに……」と(笑)。その後、なんとか“暴力”を入れる方法を模索しました。
肉丸:こういうことが結構あるんですよ。思いついたネタを無理やり入れ込むためにはどうしたらよいか、と。諦めないという気持ちから生まれるネタも多くあります。
──特に印象深い、制作中の「諦めなかった」エピソードはありますか?
担当編集:たくさんありすぎて……(笑)。先生、印象的なものはなにかあります?
肉丸:いわゆる世界情勢的にキケンだったものとか……。
担当編集:あぁ、あれは大変でしたね。
肉丸:ガイドラインに沿いながら、どうやって採用に持っていこうか、と話し合いをすることも多いですね。
──表現の際を攻める姿勢が、『ばっどがーる』の面白さにつながっているのですね。
肉丸:僕が書いたネタに対する、ストッパー的な役割を担ってもらっています。なので、打ち合わせで危ないワードが出てくるというより、「これはヤバイんじゃないか」と止めていただく場合が多いかなと思います。
担当編集:先生にはマックスパワーを出していただいて、そこからまろやかにしていく作業が発生しますね。
肉丸:あとは、英語や数式、単語説明の長文に関するフォローをしていただいています。「四ヶ郷頭首工」の説明語句とか……。
担当編集:辞書の文言をそのまま使うわけにはいかないですからね……(笑)。
──信頼関係が伝わってきます。そもそも肉丸先生が漫画家としてお仕事を始められたきっかけは何だったのでしょうか?
肉丸:前職の営業職を辞めてから次の仕事を考え始めて……複数あった選択肢の中のひとつが漫画家でした。営業をしていたときも、寝る間を惜しんで漫画を読むくらいずっと漫画が好きだったのですが、漫画は描いたことがなくて。思い立って、24ページの原稿を描き上げて、出版社に持ち込みをしたことがきっかけです。
その結果、良いご縁があって、連載が決まって。漫画家としてのお仕事を始めることができました。……そのあとが地獄でしたが……。
──地獄?
肉丸:漫画を描く技術がなく、絵の描き方も定まっていない状態で連載が始まったので、右も左もわからないままプロになったという状況でした。なんとか苦しい状態から抜け出すために、とにかく勉強しましたね。絵の描き方の本を4、50冊程度は読んだかなと。その期間を経て、なんとか今に至るという感じです。
──本日お話をお伺いして感じたことですが、先生が持つ求心力や熱量が凄まじいな、と。
肉丸:ありがとうございます(笑)。必死に生きてます。
──そんな肉丸先生が抱く、漫画家としての展望をお聞かせください。
肉丸:基本的な僕の理念として、「自分に関わった方々全員にメリットを」と思っています。「『ばっどがーる』に関わったから、こんなメリットがあった」ということを、わかりやすく感じていただきたいと思っています。そのために、自分の作家としての商品価値をもっともっと高めていく。これが、一番の目標であり展望です。
加えて、抽象的なのですが……誰も成し遂げていないことがしたい、と思っています。様々な準備をしていますので、楽しみにしていただければと思います。
【インタビュー・文:西澤駿太郎 編集:太田友基】















































