
すべて『自分の力』で解決してしまう!? 強くて格好いい女性主人公を描く! 十夜先生、クレハ先生、中村颯希先生の作家鼎談インタビュー!!
7月2日に一迅社ノベルスから刊行された『わたしの創った千年王国1 天才魔導師の自由気ままな転生無双譚』、『敵国に嫁いで孤立無援ですが、どうやら私は最強種の魔女らしいですよ?2』の発売を記念した今回限りのスペシャル企画!
2作品を手掛けるクレハ先生と十夜先生、そしてTVアニメ化も決定している『ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~(※以下『ふつつかな悪女』)』シリーズの著者、中村颯希先生を加えた御三方に、キャラクターの魅力や作品のこだわり、創作論をお聞きしました!
※本インタビューはネタバレを含みます。
「私はこういうタイプが好きなんです!」って押し通して書いたんです
──本日は、一迅社ノベルスレーベルで強くて格好良い女性主人公を描くお三方に集まっていただきました。皆さま、よろしくお願いします。
クレハ:はじめましてよろしくお願いします。『わたしの創った千年王国』を書いているクレハです。
中村颯希:中村颯希です、よろしくお願いします。『ふつつかな悪女』シリーズを書いています。
十夜:はじめまして十夜です。『敵国に嫁いで孤立無援ですが、どうやら私は最強種の魔女らしいですよ?』を書いています。
──それぞれご活躍の皆さんですが、こうして顔を合わせてお話しされるのは今日が初めてなんですね。
クレハ:はい、おそらく住んでいる場所が違うので、お会いする機会ってなかなかないんですよね。
中村颯希:たしかにそうですよね。ただクレハ先生とは、SNSですこしやり取りしたことがありますね。
十夜:私はおふたりとお話しするのは、完全に初めてですね。
中村颯希:ただ担当の編集者さんが3人とも同じなので、インタビューが始まる前に「締め切りが厳しい!」って話でひと盛り上がりしました。(笑)。
──そうだったんですね(笑)。それでは改めて、皆さんが小説を書き始めるようになったキッカケからうかがいたいと思います。この中で執筆歴が一番長いのはクレハさんで、2013年から投稿を始められたそうですね。
クレハ:私が一番長いんですね。びっくりしました。そうですね、昔からライトノベルは好きだったんですが『小説家になろう』さんのような投稿サイトが出始めたとき、他の方々が投稿しているのを見て、私も書いてみようかなと思ったのがきっかけです。
それで最初に『リーフェの祝福 ~無属性魔法しか使えない落ちこぼれとしてほっといてください~』(アリアンローズ刊)というファンタジーものを書いて、その次に書いた『復讐を誓った白猫は竜王の膝の上で惰眠をむさぼる』(アリアンローズ刊)で商業デビューしました。そのあと処女作のリーフェも書籍化してもらいましたが、やっぱりファンタジーって空想の世界に行ける、現実で味わえない世界を体験できるところが魅力だなって思っています。
十夜:クレハさんはベストセラー作家さんでいらっしゃるので、本屋さんに行ったらどこにでもクレハさんの本が積んである状態ですよね。
中村颯希:わかります! 配信サイトさんの受賞式でお見かけしたときもクレハ御大の背中が輝いていました。クレハさんの作品って、すごく読者のツボをついてくるんですよね。私は『鬼の花嫁』シリーズ(スターツ出版文庫刊)がすごく好きなんですけど、本当に王道のド真ん中をついてくるというか。薄幸ヒロインが「ここで愛されてほしい」とか「ここで活躍してほしい」っていう読者の欲求ド真ん中を、正確に撃ち抜いてくれるんです。それが気持ちよくて、本当に素晴らしいんですよ。
クレハ:ありがとうございます。そうですね、私は薄幸だけれど強い主人公、守られるだけじゃない主人公が好きなんです。
十夜:それに、クレハさんは文章がもう本当にお上手ですよね。お話も整理されているので、読んでいても迷うことなく、気持ちよく読めるんですよね。人間を書くのがお上手で、どの作品も特にヒーローがメチャクチャかっこいい! なので、まず私はヒーローにハマッちゃいます(笑)。
クレハ:ありがとうございます。恐れ多いですが嬉しいです。ヒーローのキャラは主人公を軸に設定することが多いですね。例えば、か弱い主人公の相手となる人だったら俺様感が強いほうが合うのかなぁとか、逆に強い主人公なら対等にいられるキャラのほうが会話のときテンポよくやり取りさせれるんじゃないかなぁとか。
──主人公との相性やバランスを、しっかり考えられているんですね。中村先生も商業デビューは2016年とのことですが、小説の投稿を始められたキッカケは何だったんでしょう?
中村颯希:私はもともと文章を書くのは好きで、中学校のときの連絡ノートにエッセイみたいなものをよく書いていたんです。ショートストーリーだったり、新聞のコラムみたいな感じで、面白かった出来事や、深く考えたことを書いてみたり。そしたら担任の先生が「これは読みごたえがあるよ!」ってクラス中で回し読みをして盛り上がったこともあって。
文章を書くのが好きという気持ちはずっとあったんですが、大学時代に初めてミステリー小説を書いてコンテストに応募してみたら、結構いいところまで行けたんです。受賞には至らなかったんですけど「意外と小説書けるのかも」っていう気持ちが生まれて。そのあと社会人になって少し時間ができたときに、現実投避がてらWEB小説を読むことにのめり込んで、もしかして今だったら私にもWEB小説が書けるかも?と思って挑戦してみたという経緯です。
──その処女作が『無欲の聖女は金にときめく』で、これもファンタジーですね。
中村颯希:そうですね。ただ私の中ではWEB小説のファンタジーと、自分が読んできたヤングアダルトのファンタジーは別物なんです。後者は『ハリーポッター』のような重厚に世界観が作り込まれていて、児童にも大人にも読まれるもの。前者は主人公たちを活躍させるために用意されたファンタジー世界……という認識なので、私自身あんまりファンタジーを書こうと思って書いていないかもしれないですね。主人公を活躍させるための舞台設定を用意しようとすると、自然とファンタジー寄りになっていくという感じです。
クレハ:中村さんの作品は、まず主人公が面白いんですよね。どの作品もヒロインがすごく光っているので、見ていてすごく爽快で楽しいんです。
中村颯希:嬉しい! 実はミステリー小説を応募したとき、選考に関わった方から「君の小説はキャラクターが薄いね」って言われたことが、すごく自分の中に残っていたんです。
十夜:え、本当に!?
中村颯希:そうなんです。だからWEB小説を書くときは、とにかくキャラを濃くしよう!ということを意識しているので、何かが好きすぎてちょっと変みたいな主人公を書くことが多いんです。今までもお金が好きすぎる主人公とか、BLが好きすぎる主人公とかを書いてきましたけど、好きなものがハッキリしていると、シチュエーションも思い浮かびやすいし、書いていても楽しいし、キャラを暴走させやすいんですよ。
なので『ふつつかな悪女』の玲琳は、好きすぎるものが見えにくいので、私の中では個性の乏しいヒロインだったんです。だけど読者さんから「めっちゃキャラ濃いです!」と言われて「本当に? こんな真っ当な主人公で、ちょっと狂気足りてなくない?」って心配になりました(笑)。
▲病弱だけど周囲から愛される玲琳(左)と、嫌われ者で卑屈な慧月(右)との入れ替わり物語(ふつつかな悪女)
十夜:全然そんなことないですよ! 中村さんの作品は、どの作品も視点と感性が独特で、もう絶対に真似できない。他の方には絶対に書けないお話を読むことができて、スピード感があって、とにかくキャラが男前ですね。特にヒロインは、誰が読んでも好きになるキャラクターだと思います。
中村颯希:嬉しいです。こんなに褒めていただいて!
──そして十夜先生は、最初の小説投稿が2019年。処女作の『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』(アース・スター エンターテイメント刊)は、すぐに書籍化されたんですよね。
十夜:そうですね。小説を書いたのは初めてだったんですけど、WEBサイトにアップして4、5日ぐらいで書籍化のお声がかかりました。ただ、投稿したのも特に大きなキッカケがあったわけではなく、私、定期的に何か好きなものができるタイプなんですよ。
以前はオンラインゲームに何年もハマったりしていたので、それと同じようなノリで「少しまとまった時間ができたから、ちょっと書いてみようかな」と。もともと本はジャンルレスでずっと読んでいましたし、投稿サイトはファンタジー作品が多いのでファンタジーを投稿しました。
クレハ:十夜さんの作品はヒロインだけじゃなく、その周りのキャラまで個性がそれぞれ際立っている印象がありますよね。イケメン男子がそれぞれの良さを持っているから、読者が「私はこのキャラを推す!」ってなれる。私は(『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』の)カーティスが好きです。
十夜:ありがとうございます。読んでいただけて、すごく嬉しいです。
中村颯希:私も『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』がすごく好きなんですけど、やっぱり天然愛され主人公を、こんなにチャーミングに書けるのが素晴らしいですよね。フィーア本人はすごく真面目に、過去の自分のやらかしを自分の仕業じゃないと思い込んでいて「え、そんなことしたんですか ? 信じられないですね!」みたいにすっとぼけているのが面白いし可愛い。厭味なく天然ヒロインを書くのって、作家目線でみてもすごく難しいのに、それができてしまう十夜さんはすごい。私は編集さんに、しょっちゅう「これはあざとすぎるかも……」って指摘されていますから(笑)。
十夜:えええ、そうなんですね。
中村颯希:しかも、天然っぽく見えるんだけれど、読み進めていくと翳りだったり過去のトラウマが明かされて、急にシリアスになったりするギャップにもグッと心臓を摑まれるんですよね。
十夜:いや、本当に自分が好きなキャラを書いているだけなんです。だから『悪役令嬢は溺愛ルートに入りました!?』(スクウェア・エニックス刊)で一番人気があるキャラも、私はすごく好きで書いていたのに、最初、編集さんにはすごく不評だったんですよ。「このキャラはあんまり……」って言われたんですけど、でも「私はこういうタイプが好きなんです!」って押し通して書いたんです。
──自分が好きだと思ったものは誰に何と言われようとも書く、という自信と強さが人気キャラクターを生む秘訣なのかもしれないですね。好きという気持ちがあれば、誰よりも魅力的に書けるはずですから。
十夜:そうですね。自信があるわけではないですけど、やっぱり自分の好きなものしか書けないので。



















































