音楽
Newspeak『BULLET/BULLET』ED「Glass Door」インタビュー

信頼から生まれるスペシャルなサウンドとバンドを続ける“意味”とは──Newspeak・Rei×Steven×Yohey『BULLET/BULLET』エンディングテーマ「Glass Door」&EPリリース記念インタビュー

EP収録曲は「遊び」と「脱力」を主に

──ぜひStevenさんにお伺いしたいのですが「Glass Door」のドラムにおけるスペシャルなポイントをひとつ挙げるとしたら……?

Steven:Newspeakを始めたばかりの頃、私は難しいフレーズで自分の腕を見せたいというマインドがありました。でもライブになると、バックボーカルも歌わなければならないから「疲れちゃう、難しい、緊張する!」と思ってしまって。

だから1、2年前ぐらいから、サビのパートをどんどんシンプルにして、気持ち良くライブでも歌えるように、というマインドになっています。多分お客さんも、そうした方が分かりやすいし、気持ち良く一緒に演奏できると思うんです。

だから、ドラムのどこが面白いですか?と聞かれたら……バックボーカル?(笑)

Rei:(笑)。でもシンプルなビートをここまでかっこよく叩ける人はあまりいないと思うんです。そこがStevenの強みなんじゃないかな。細かいフレーズも魅力なんだけど、普通に叩いている8ビートも絶対真似できないと思う。

Steven:自信になる、ありがとう。とはいえ、今回はバックボーカルを頑張っている曲です(笑)。

一同:(笑)。

──お客さんと一緒に楽しめるような演奏がスペシャルなポイントなのですね。

Steven:そう! そういうマインドになるといいなって、最近思っています。難しいことを考えすぎても、誰もハッピーじゃないから(笑)。

──(笑)。Yoheyさんにも楽曲のスペシャルなポイントについてお伺いしたいと思います。

Yohey:バンドのアレンジは、詰まるところメリハリが大事だと思っています。そのバンドの聴かせたい曲、歌やメッセージについては、それぞれ考え方が全く違うと思っていて。

そういう意味で今回は、楽曲に込めたメッセージ性を強く出したかった。歌がとても魅力的な曲だと思ったので、アンサンブルとしての気持ち良さをスペシャルに持っていけたらと思っていました。ベースが、ドラムが、と、特別耳に引っかかるような聴かせたいポイントがないところが良さなのかなと。

── 一曲としての完成度といいますか。

Yohey:そうですね。ベースもドラムもあくまで曲の一部で、構成の内のひとつの要素。いかに歌を前に押し出すかという考え方をしています。

──Reiさんが考えるスペシャルなポイントについても教えてください。

Rei:サビに向けてガッツポーズして歌いたくなる、みんなで大合唱したくなるようなメロディー感は、Newspeakでは珍しいと思います。みんなで立ち上がって聴いたり歌ったりしてほしいです。


──そして「Glass Door」も収録されているEPもリリース予定です。収録曲の「Lifedance」「Coastline」について、一曲ずつご紹介ください。

Rei:「Lifedance」はダンスチューン、ダンスロックになっています。リフもオリエンタルといいますか、エキゾチックな音やフレーズが入っていて、不穏なところからスタートするのですが……Newspeakっぽいよね。

Yohey:「Glass Door」と真逆です。踊ってくれ、遊んでくれという一曲ですね。

Steven:(大きく頷いて)

Rei:これまでダンスロックチューンで日本語を使ったことがなかったのですが、今回は日本語が入っています。さらに中毒性がある、何回も聴きたくなるような曲にしたいというテーマもありました。エキゾチックなリフと日本語が面白く、今までにない雰囲気で混ざっていると思います。

楽器隊は、いつものバンドって感じです。遊んでるね。

Steven:多分リスナーも分かってくれると思う。ちょっと悪い雰囲気のエネルギーもあるのですが、決してシリアスじゃなくて。

Rei:Stevenのドラムが暴れているパートもあるよね。

Steven:普段できないような遊びをちょっと入れてみたね。

──「Coastline」についてはいかがでしょうか。

Rei:「Coastline」はとてもシンプルで、僕が個人的によく聞くような、外を散歩したり何も考えずに歩いている時に聴くような雰囲気の曲です。僕はよく海に行きたくなるのですが、その時に出てきたアイデアだったと思います。そのイメージに逆らわずに、そのまま気持ち良いフィーリングを詰めて完成した曲ですね。

サビの頭に日本語詞を入れて「気持ち良く」「Newspeakっぽく」作ってみたい気持ちがずっとあったので、その気持ちをテーマとして作りました。

Steven:「Coastline」は早くまとまったね。Reiが作ったデモがとても良くて。それぞれのパートに少しアレンジを加えただけで完成したんです。でも早く出来上がりすぎて、逆に迷ったところもあったよね。

ギターアレンジなども「もうちょっと頑張ってみようかな」って。でも結局最初のデモに入っていたパーツに戻って……とにかくシンプルに、自然で生まれたフレージングに落ち着いたんです。

Rei:そうそう。最初のデモとは全然違うバージョンも作ったね。全く別のビートで、全く別のギターリフが入っているパターンも作ってみたのですが、元の音源が一番良かったねと。

それくらい自然体になって作れた曲です。肩肘張らずに作った曲なので、今のテンション感に合っているというか。本気で向き合った「Glass Door」に続いて「Lifedance」で遊んで「Coastline」は脱力しながら作ったニュアンスです。

──Yoheyさんも自然な雰囲気を感じながらの制作になりましたか?

Yohey:そうですね。当初「Coastline」は、ギターがロックな音で歪んでいたのですが、その雰囲気はあまりマッチしてないのかなと思っていて。アコギをメインにした方が気持ち良さそうという話もしていたくらいでした。

最近のレコーディングは、Neeraj(Khajanchi)さんという方としているのですが、そこで録ったアコギの音が本当に気持ち良くて。そこからもう一度考えて力の抜けたサウンドになったなと。

最終的にラフな、今のムードにも合っている曲になったのは、そこのレコーディングの要素がかなり大きかったかなと思っています。

──アコースティックな雰囲気と言うと、個人的に、Yoheyさんのベースの音作りが特徴的に聴こえていて。ふとした瞬間にウッドベース的なニュアンスを感じていました。

Yohey:確かにそのニュアンスはあるかもしれないですね。僕が使っているベースはヴィンテージで、少し癖のあるものなんです。だからどうしても現代のベースのレンジ感とは違ったところにいると思います。好みもありますが……そうですね、時代と逆行している音を出しています(笑)。

不思議なんですよ。海外のミュージシャンの音を聴いていても、やはり二極化されている印象なんです。ヴィンテージライクで、いかに圧力のある音で出すか……“現代風”のアクティブな5弦、6弦ベースを使って、レンジの広いまま出力するのか。

そんな二極化の中で、僕はどちらかと言うとヴィンテージでレンジがまとまっているサウンドが好きなので、そんなこともNeerajと相談をしながら音を録っています。

Steven:Yoheyのベースはスペシャルサウンドだよね。私たちはギタリストがいない分、ベースでその穴を埋めているところがあると思うから──

Yohey:全然そのつもりはなかった。

Rei:(笑)。

Steven:えぇっ!? Yoheyはいつも、二人分のパワーを出そうとしてるんじゃないの?

Yohey:それはStevenがそうやって曲を調整してるのよ(笑)。

Rei:Stevenの好きな音楽は歪んだギターが入っている音楽だからね(笑)。俺たちが好きな音楽では、ギターが「ギャーン」って鳴っていたら嫌なことの方が多いから……その分、必要なときにStevenが歪ませてくれてるんだよね。

Yohey:個人的に、一時期ベースの歪みサウンドにアレルギーが出ていて(笑)。制作中にStevenが「歪ませてみる?」と提案してくれたときに「いいよ」と返したら、歪みの目盛りをギューン!って上げられてしまって。

元々好きなのに、そのせいでどんどん歪みの音が嫌いになって、もう「1ミリも歪ませるな」と(笑)。

Rei:二人とも極端すぎるんだよ!(笑) Stevenは「そこは歪ませなくてもいいよね」ってところも歪ませるし、Yoheyは「絶対歪ませるべきだよね」ってポイントでも歪ませないし……。

Yohey:Stevenと作っていると、間が取れないんだよね(笑)。

Steven:(笑)。でも最後の最後は間を取るから。

Rei:メンバーだけではまとまらないところを調整してくれる役割としても、僕らにとってNeerajの存在は大きいなと思います。バンド以外の第三者の視点があると、みんな「そうだよね」という落ち着き方ができる。

──どちらも良いものであることに間違いはないからこそ、逆に外からの意見が必要になる、と。

Rei:そうですね。

Yohey:絶対に必要です(笑)。

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