
『映画 おでかけ子ザメ とかいのおともだち』原作者 ペンギンボックス先生×主題歌 ロザリーナさんインタビュー|「出会いの話であり、別れの話であり、子ザメがお友だちを作っていくお話でもあるので、この歌詞やタイトルは感慨深いです」
SNS発の大人気マンガ『おでかけ子ザメ』の待望の映画化。現在、全国劇場にて公開中です。
八魚町を飛び出した子ザメちゃんが、都会を舞台に新しい出会いと別れを経験する『映画 おでかけ子ザメ とかいのおともだち』。主人公・子ザメちゃん(CV:花澤香菜)が、ひょんなことからいつもお散歩している八魚町を飛び出し、“とかい”へ。そこで、あんこうちゃん(CV:潘めぐみ)、うさめちゃん(CV:久野美咲)をはじめ、さまざまなお友だちと交流していきます。また、さらに“とかい”では、サラリーマンのお兄さん(宮田俊哉)、バーテンダーさん(高野洸)、ホストさん(杢代和人)といった人間たちとの出会いも。心温まるハートフルな物語となっています。
そして、本作を語るうえで欠かせないのが、主題歌「where you come from」です。主題歌を歌唱するロザリーナさんと原作者のペンギンボックスさんが顔を合わせ、互いに想いを語り合いました。会話を交わしていく中で次々と話題が広がり、和やかながらも、熱のこもったやり取りに。普段はメディア露出の少ないペンギンボックス先生、そしてロザリーナさんの貴重な言葉とともに、子ザメちゃんの世界をより深く味わえる対談をまるっとお届けします。
子ザメとお友だちになりたいなと思ってくれたら、この上ない幸せ
──ペンギンボックス先生が対談を受けられるのは今回が初めてなんですよね。貴重な機会をいただきありがとうございます。
ペンギンボックス先生(以下、ペンギンボックス):こちらこそありがとうございます。そうですね、こういった対談を受けるのは初めてで。
同席されていた担当編集セキトラさん:基本的にこういったリアルな場に出てくることがないんですよ。今日は珍しいかと思います。
ペンギンボックス:そうなんです。今日は影武者(子ザメたちのぬいぐるみ)たちも用意してきました(笑)。
──かわいい。ひとつの椅子に子ザメたちが座らされていますね(笑)。
ロザリーナさん(以下、ロザリーナ):わ、かわいいいい……!
ペンギンボックス:はい(笑)。自分で持ってきたのですが、さらに3体ご用意していただき、いろいろなバリエーションの子ザメがいます。ちょっとわかりにくいのですが、オムツを履いた子ザメも……。
ロザリーナ:わ、本当だ! いろいろな子ザメちゃんが見られて嬉しいです。そして改めまして、映画公開おめでとうございます。
ペンギンボックス:本当に素晴らしい主題歌を添えていただいてありがとうございました。スタッフの皆さんからも子ザメを愛してくださっているのが伝わってきて、本当に“皆さんの愛”でできている作品だと感じています。早速観てくださった方から感想もいただいて、なんだか夢見心地です。
ロザリーナ:早速一個質問させていただいてもいいですか?
ペンギンボックス:もちろんです。
ロザリーナ:ペンギンボックス先生としては、この映画をどういう方に観てもらいたい……みたいなのってあるんですか?
ペンギンボックス:ファンの方にはもちろん観ていただけたら嬉しいですが、「SNSで少し知っているけどちゃんと見たことがない」という方にもぜひ観て欲しいです。SNS発の漫画なので、断片的な情報しか知らない方や、途中から読み始めて「どんなお話なんだろう?」と思っている方もいらっしゃると思うんです。今回の映画は、予備知識がなくてもどなたでも楽しめる内容になっているので、この作品をきっかけに子ザメを好きになっていただけたらと思っています。
ロザリーナ:私自身は、かわいらしさの中に考えさせられる部分もある作品だと感じました。ときにはシリアスに捉えたり、深いテーマを読み取ったりもしたんですけど、疲れている方や優しい気持ちを必要としている方にこそ観てもらいたいなと私は思ったんです。それでいて、すごく分かりやすいからお子さんも楽しめる作品だなって。
ペンギンボックス:いまロザリーナさんがおっしゃってくれたように、お子さんに観てもらえたらすごく嬉しいです。これまでは20〜30代の方が多かったんです。それもすごく嬉しいことなのですが、今回の映画やWEBアニメをきっかけに、親子でも楽しんでいただけたらと思っています。
ロザリーナ:やさしいお話ですもんね。これを観て、この優しさを知ってもらいたいです。
ペンギンボックス:子ザメはちょっと天然なところがあるので、予想外なことをする時もありますけども(笑)。そんな子ザメとお友だちになりたいなと思ってくれたら、この上ない幸せだなと思っています。
ロザリーナ:私も友だちになりたいです(笑)。毎日おかえりを言って欲しいです。
ペンギンボックス:映画には「おかえり」と言ってくれているような、そんなシーンがありまして。疑似的に子ザメが“お家にいるような感覚”を味わってもらえたらと思っています。
──すでに打ち解けられている空気感がありますが、おふたりは以前もお会いしているのでしょうか?
ロザリーナ:はい。実はこの間、試写会のときにご挨拶をさせてもらったんです。
ペンギンボックス:まさかあそこでお会いできるとは思っていなくて。心の準備ができていなかったので、すごくドキドキしました。「素敵な方だなあ」って、思わずテンションが上がってしまいましたね。
まず心掴まれたのがその声でした
──お互いの作品に対する印象もぜひおうかがいしたいです。
ロザリーナ:私はとにかく「癒される」というのが第一印象でした。今回の楽曲を作るにあたって「都会」「エモい」というキーワードをいただいたのですが、最初はピンとこなくて。子ザメちゃんはとてもかわいらしく、癒される存在なので、「エモい」という言葉とはあまり結びつかなかったんです。私は花澤香菜さんのあの「よりみち」が大好きなんですよ。(とメロディーを歌い出す)〈素敵な世界〉〜♪って最高の歌だなって。
ペンギンボックス:良い曲ですよね。まさかここでロザリーナさんの「よりみち」を聴くことができるとは……(笑)。
ロザリーナ:ああいう曲をイメージしていたので、まさか「エモい」というワードがくるとは思っていなかったんです。それに、私自身が東京出身なので「都会」と言われてもどう表現しようか迷ってしまって……。さらに「子ザメ目線で」というリクエストもあって、サメ語だしどうしよう、とかなり考えました。
ただ、作品を見ているうちに、子ザメちゃんの表情がとても豊かで、無邪気で、好奇心いっぱいに何でも顔に出すところが魅力的だと気づきました。私自身、犬を飼っているのですが、本当にうちの子と同じように、嬉しいと尻尾を振るし、悲しいとしょんぼりする。感情がめっちゃ出るんですよ。その姿とかぶさって見えるような気がして……子ザメちゃんが嬉しいときに目がキラキラする姿が、私は本当に素敵だなと思ったんです。
私は都会に対して、目がキラキラすることってないのかなって思ってたけど、でも、都会で生活をしていく上で、自分の目がキラキラする瞬間っていつなんだろう?って考えるようになって。というか、そういう生活を“させていただいた”というか……。
この作品に携わって、人生にはまだそんな瞬間があるんだと気づかされましたし、それが今回の曲作りの大きなインスピレーションになりました。
ペンギンボックス:そんなふうに言っていただけるなんて嬉しい。筋肉がほどけそうです(笑)。創作の過程で、子ザメと一緒に寄り添ってくださっていたんだなと思うと感慨深い気持ちでいっぱいです。
私がロザリーナさんの曲を最初に聴いたとき、まず心掴まれたのがその声だったんですね。甘さもあって、透き通っていて、それでいて少年のような中性的な響きもあり、聴く人をドキッとさせる力がある。その全部を持ち合わせていて、変な言い方になりますが「素晴らしい声帯をお持ちだな」と思いました。
ロザリーナ:(笑)。いやいや嬉しいです。
ペンギンボックス:もうガッツリと掴まれてしまい、メロメロになってしまいました。そうした中で「where you come from」を聴いて、お声にさらに心を奪われたのはもちろん、都会のミステリアスでキラキラした雰囲気を見事に表現しつつ、歌詞の随所に子ザメの表情を思わせるキーワードが散りばめられていたことに、とても感動しました。総合的に、とても幸せな気持ちになりました。劇場作品の象徴として輝いているような、素晴らしい曲だなと思っています。
ロザリーナ:嬉しいです。
ペンギンボックス:子ザメの物語には「切なさ」というキーワードがあります。かわいらしく、好奇心旺盛で元気いっぱいな姿のその下に沈んでいるものがある。そのニュアンスを、ロザリーナさんはとても丁寧に捉えてくださっていました。ファンタジックな歌声と相まって、これが劇場版の最後に聴けるなんて、素晴らしいごちそうだなって。歌詞は切ないんですけど、それだけじゃない、希望がしっかりとある曲調になっていて、とてつもなく繊細な塩梅で作られたことが伝わってきました。









































