
『映画 おでかけ子ザメ とかいのおともだち』原作者 ペンギンボックス先生×主題歌 ロザリーナさんインタビュー|「出会いの話であり、別れの話であり、子ザメがお友だちを作っていくお話でもあるので、この歌詞やタイトルは感慨深いです」
タイトルが「where are you from」ではない理由
──曲作りについても、ぜひ詳しく教えて下さい。
ロザリーナ:今回、子ザメちゃんについては本当に悩みました。思わず「子ザメ〜!!」ってなっちゃうくらい(笑)。とかい編に至るまで、すべて読ませていただいたのですが、その中では、かえるちゃん、とかげちゃんが冬眠しちゃってさみしくなったり、海辺を想像して波の音を聞きながら心地よさそうにしていたり……。そんなふうに感情を見せる一方で、意外とあっさりと誰かと「バイバイ」できたりする。そういう部分に驚かされました。
そんな中で私がとかい編で特に感動したのは、あんこうちゃんとの関係性です。とかいの地下鉄で出会ったあんこうちゃんに、八魚町で優しくしてもらった経験をいかして、今度は子ザメちゃんがあんこうちゃんにお兄さんのような、お姉さんのような存在として接している。性別が分からないので、お兄さんのような、お姉さんのような、としましたが(笑)、その姿にすごく胸を打たれました。最初から作品を見てきたからこそ感じられる成長だと思うので、「ぜひ最初から観てほしい」と強く思いましたね。
ペンギンボックス:ロザリーナさんがおっしゃってくれたように、あんこうちゃんは、まさに弟分・妹分のような存在であってほしいと描いたキャラクターでした。だから、そう受け取っていただけて本当に嬉しいです。とかい編では、普段のウェブアニメでは見られない子ザメの一面も描けたと思います。
ロザリーナ:そうなんですよね。普段は助けてもらう立場の子ザメちゃんがあんこうちゃんに寄り添ったりしていて……。その姿に胸を打たれました。
制作にあたっては「子ザメちゃんは風呂敷に何を入れているのか」というところから考えはじめました。海に帰るのか、何歳なのか、親はいるのか……。風呂敷の中には貝殻が入っているらしい、ということは分かったけども、分からないことばかりで、とにかく悩みました。夜中の3時に(スタッフに)連絡したことも。で、考え抜いた結果「そもそも、子ザメはどっからきたん?」と。で、帰る場所はあるんだろうなとは思いつつ、このタイトルになったんです。
ペンギンボックス:実はこのタイトルを見たときにドキッとしたんです。不意を突かれたというか。英語タイトルなのがすごく良くて、ファンタジックにオブラートで包まれている感じがして、この作品にぴったりだと思いました。実は私は英語があんまり……でして(笑)、曲名をいただいた時「どういう意味なのかな?」と調べたんです。
ロザリーナ:そうだったんですね!(笑)「where are you from」ではなく「where you come from」にしたのは、意図があってのことなんです。「あなたの出身は?」という意味ではなく、突然ふわっと現れた存在に対して「あら、どこから来たの?」と語りかけるニュアンスを入れたくて、「where you come from」にしたんですね。
ペンギンボックス:ああ、なるほど。ちょっと軽いニュアンスというか「ようこそ」的な意味合いを込めてくれたんですね。
ロザリーナ:そうですね。例えば猫がふっと現れたときに思わず口にするような感覚ですね。
ペンギンボックス:軽快ですごく良いですね。そのニュアンスは子ザメらしいですし、実際、作中の登場人物もそういう感じで子ザメとお付き合いしているんだろうなって思っています。ロザリーナさんがさっきおっしゃっていた通り、子ザメは思ったよりもあっさり別れてしまうところがあって。でもその一つひとつを子ザメはあまり重く捉えず、いろいろな友だちを増やしていく。出会いの話であり、別れの話であり、子ザメがお友だちを作っていくお話でもあるので、この歌詞やタイトルとリンクしているところがあります。だからこそ、感慨深いです。
──「エモさ」の成分量の調整と言いますか。そういうものはロザリーナさんの中ですぐに決まったのですか?
ロザリーナ:子ザメちゃんのエモいが、先生のエモいと私のエモいが共通なのかが最初は分からなくて。どのエモさを取ろうかなと少し悩んだところがありました。それでも私が感じた子ザメちゃんの“エモさ”を信じて曲を作って、まず私のチームに共有したんですね。そしたら、スタッフさんからは「ちょっとエモすぎるかも」という意見もあって。でも「こういうエモさだと思うんですよね」って言って(映画制作チーム側に)送らせてもらったところ「めちゃエモくていいです」と言っていただけて、ホッとしました。「良かった、エモい合ってた!」って(笑)。
ペンギンボックス:こちらの伝え方が「どうとでも取れる言葉」になってしまった反省はあるのですが、送っていただいた曲が本当に素晴らしかったんです。
ロザリーナ:実は「エモいVer.7」と「エモいVer.8」があったんですよ(笑)。私はDメロでドラムを落とさずにサビへバーン!と突き抜けていくVer.7が好きだったんですけど、一方のVer.8はドラムを落として、その代わりに“ウーアー”のコーラスを厚くして世界観を広げたもの。普通に考えたらVer.8のほうが良いだろうなと思っていたら、やっぱりそちらが選ばれて。「そうだよな」と納得しつつも、そこからさらにあがいて両方の良さを摘んだ「Ver.7.5」を作ったんです。最終的には、それがいちばんしっくりきましたね。
ペンギンボックス:“7と8の間”が生まれる発想に驚愕しています。しかもVer.8ということは、それまでにもいくつもの試行錯誤を重ねてきたということですよね。その前のものもめちゃくちゃ気になるんですけども……。
ロザリーナ:でも、ちょこちょこ変わっていくものに対して数字が変わっていくという感じではあるんですけどね。
ペンギンボックス:そうなんですね。でもすごい。音楽はそうやって作られていくものなんだなと……すごい……。
──でもそれこそ、先生もゼロからイチを生み出す作業ですよね。漫画はネームや下書きなど、形になるまでのプロセスがあって。
ロザリーナ:本当にそう思います。すごいなって。しかも、子ザメちゃんの絵からはいろいろな想像をさせられるんですよね。例えば、海を想像して波の音を聴いているときの幸せそうな表情ひとつからも、「どういう気持ちなのかな?」って考えさせられます。
ペンギンボックス:いつもはああいう表情なんですけど、海にまつわるものに触れたり、波の音を聴いたりするときは、少し真剣そうな表情をしていたり、気持ちよさそうだったり……その二面性も含めて感じ取っていただけたら嬉しいなと思っています。
かわいいだけではない、サメらしさも大切に
──子ザメちゃんを描く上で、ペンギンボックス先生が大切にされていることもぜひおうかがいさせてください。
ペンギンボックス:“サメらしさ”ですね。子ザメはジャンル的にマスコットに入るとは思うのですが、あちらの方たち(子ザメのぬいぐるみたち)を見ていただいても分かる通り、魚類ならではの表情をしていて。かわいいだけではない、魚類としての……なんていうんでしょう、通じ合えない雰囲気と言いますか。犬と猫とお話するときとは違う、少し壁のある感じ、鋭さ、ミステリアスな雰囲気みたいなものも意識しています。
ただ、初期は輪郭も鼻先もシャープだったのですが、描いていくうちに丸くなってきてしまって……(笑)。自分では気付けなかったのですが、本来のサメらしさが削がれてしまった時期があったんですね。編集のセキトラさんに早い段階で指摘を受け、かわいさに寄りかかり過ぎず、“サメの気配”を残す方向に調整しました。あえてかわいくしているときもあるんですけどね。
隣にいたら思わず頬がゆるむようなかわいさのあるお友だちなんだけど、ふと見たときに「やっぱりサメなんだ」と一瞬緊張するような、“怖い”とまではいかない、ミステリアスさ。その“味”を大切にしています。
ロザリーナ:ああ、確かにミステリアスです! 子ザメちゃんは、サメにも憧れを持っていますよね。そこもかわいいなって。モヒカンあにきのモヒカンとかも……。
ペンギンボックス:子ザメがいちばん好きなのは、とにかく“サメ”がいちばん好き。食べることも大好きですが、目標であり将来の理想像でもあるのが“サメ”。自分もサメではあるんですけどね(笑)。










































