映画
『映画キミプリ』の舞台裏|皆川英未來プロデューサーインタビュー

「劇場がライブ空間になってくれたらいいなと」『映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!』大ヒットを記念して、皆川英未來プロデューサーにインタビュー!

 

アイドルが嫌い。でも「あなたが嫌い」とは言っていない

──内田真礼さん演じるゲストキャラクター・テラについてもうかがいたいです。どのようなこだわりの上で誕生したキャラクターだったのでしょう。

皆川:テラは「アイドル嫌い」から始まるキャラクターです。ただ、今回のメインゲストなので、お子さんたちから嫌われない存在にしたいと思っていました。お子さんたちはアイドルプリキュアを好きで観に来ているけど、テラは最初に「アイドル嫌い」と否定しているので……でもそこに嫌な感じがしないように、というところは最初から気をつけました。シナリオでもそうですし、監督が描いた絵コンテでも、可愛らしさや優しさがにじみ出るように工夫されていて、本当に良かったと思います。

──確かに自分の好きなものを否定されてしまうというのは、少し構えてしまうところがあるかもしれませんね。でもすごくチャーミングで。

皆川:そうですね、かわいいツンツンといいますか、ツンデレなんですよね(笑)。嫌な子ではなく、アイドルが嫌いといっても「あなたが嫌い」と言っているわけでもなく、世話焼きで親切な一面もあって。最初に助けてくれる場面や、ご飯を持ってきてくれるシーン、怪我の手当をしてくれる場面など、ちゃんとテラの優しさをちゃんと描けたと思います。

 

 

──メロロンのうたへの世話焼きぶりも可愛かったです。うたとメロロン、いいコンビでしたね。微笑ましいといいますか。

皆川:良いですよね(笑)。映画が上映されるタイミングでは、5人でアイドルプリキュアになっていたので、すでにひとつのチームとしてまとまっている段階ではありましたが、どこまで仲良くなっているか、テレビシリーズのプロデューサー・村瀬(亜季)に確認しながら調整しました。

──ではそのあたりはテレビチームとのすり合わせをしながら決められていったのでしょうか。

皆川:そうですね、村瀬ともたくさん話し合いをしました。今(千秋/シリーズディレクター)さんは「任せた、よろしく」という感じで(笑)。映画は映画で独立した作品ですが、テレビと地続きの世界なので、両方が矛盾なくつながるように意識しました。結果、30話の「プリキュア!キラッキラン・フォー・ユー!」が放送された上で、映画の公開となって。映画で「仲良くなった後の姿」をきちんと見せられたので、そこはうまく物語をつなげることができたのかなと思っています。

──ちなみに、過去に戻った際のうたとメロロン、プリルン・なな・こころと2つのチームにわかれますが、そのメンバーは最初から決まっていたのでしょうか。

皆川:5人全員で行動すると物語として描きにくい部分もあるので、最初から監督からチーム分けの打診がありました。まず、ななとこころに関しては、うたとは離したいというところがあって。というのも、テレビシリーズはどうしてもうたを主軸に物語が進むことが多くて。

ななもこころもアイドルプリキュアを見て影響を受け、そこからプリキュアになっていく子たちです。だから映画ではうたと離れたとき、彼女たちがどう動くのかっていうのを見せてあげたいなと思っていました。また、プリルン、メロロンをどちらのチームに配置するかについては、テレビシリーズの展開との兼ね合いもありましたが、監督や吉野さんと相談しながら、最終的に今の形になりました。

 

今回の映画が擬似的なライブ体験になってくれたら

──少しネタバラシとなってしまいますが、『わんだふるぷりきゅあ!』『ひろがるスカイ!プリキュア』のメンバーが駆けつけるバトルシーンでは、アマスが種族の違いによって「生きる時間」の違いがあること、そしてそれに対して戸惑う様子が描かれていました。その場面での『わんぷり』チームの存在、とりわけキュアリリアンとキュアニャミーのセリフがグッとくるものがあって……。

皆川:皆さんそうおっしゃってくれるんですよ。あれは吉野さんが組んでくださったからこそ生まれた言葉です。歴代シリーズとどう絡めていくかというのは毎年皆さん試行錯誤されてきたところだと思いますが、吉野さんが見事にまとめてくださった。お上手だな、という言い方は失礼かもしれませんが、素敵な場面だなと思いました。感謝しかありません。

──さすが吉野さんといいますか。吉野さんは『プリキュア』シリーズでは『トロピカル〜ジュ!プリキュア』などの脚本を手掛けられて、さらに『マクロスF』など音楽を軸にしたアニメーションにも多く携わってこられています。松岡美里さん(キュアアイドル/咲良うた)や花井美春さん(キュアキッス/メロロン)も「音楽ってすごい」と話されていて、私も改めてその力を感じました。

皆川:そうですね。今回の映画にはたくさんの楽曲が登場します。テレビシリーズ『キミとアイドルプリキュア♪』は楽曲がひとつの強みになっていて。せっかく映画館という大画面・大音響で届けられるのだから、入れ込めるだけ入れ込みたいと思っていました。ただ、実際に入れ込むのは吉野さんではあるので、大変だったとは思うのですが……(笑)。シナリオ打ち合わせでもその方向で進めていて。後半の「笑顔のユニゾン♪」から始まるメドレーは吉野さんが「最後を盛り上げるならこれくらいはやろう」と提案してくださったものです。脚本面での吉野さんの力は本当に大きかったと感じます。

音楽を自然にシナリオに入れ込むのは本当に難しいことだと思っているのですが、吉野さんはそれを上手にまとめてくださって。「やっぱり吉野さんにお願いしてよかったな」と思いましたね。

 

 

──映画主題歌「♪HiBiKi Au Uta♪」についてのエピソードもおうかがいしたいです。

皆川:馬瀬みさきさんから曲が上がってきた時点で、僕も監督も「これはいい曲だ」とすぐ感じていました。曲が完成したのはシナリオが上がった後だったんです。だから(シナリオには)「ここに良い曲が流れます」という感じで。

(その後)完成した青木(久美子)先生の歌詞がまた素晴らしくて。おそらくシナリオをしっかり読み込んでくださったのだと思いますが、「ここまで物語に寄り添ってくれるのか」と驚かされました。僕も監督も「ぴったりだ」と思いながら聴いていました。

──その楽曲の素晴らしさやエネルギーが物語を動かしたところもあるのでしょうか。

皆川:基本的には楽曲が上がってから絵コンテが描かれることが多く、いい曲だからこそ、たとえば海辺の感動的なシーンも、あそこまで印象的なものになったと思います。監督の渾身のコンテもありましたし、それを形にしてくださったスタッフや作家の皆さんのおかげで、ひとつひとつがつながって素晴らしいシーンになりました。

──私も含めてなのですが、親子で観に来る方も多いと思います。親子で映画を見に来られる方、お子さんたちには映画を通してどういう体験をしてもらいたいなと考えられていますか。

皆川:お子さんに対しては今回の映画が擬似的なライブ体験になってくれたら嬉しいなと思っています。今回は楽曲がたくさんあり、キラキライトを振って応援できる演出もあるので、劇場がライブ空間になってくれたらいいなと。

また、親御さんの場合はお子さんといっしょに物語を観て喜んでくれるのもよし、プリキュアを応援している子どもたちを見て楽しんでくれるのもよし。また、「推し」との宿命のような話になってしまうかもしれませんが……推しとの時間や関係を、自分の子どもと重ねて見るのも素敵だなと思います。

──確かに推しも子どももどちらも一緒に過ごせる時間は想像よりも限られていて、だからこそ、一瞬一瞬を大切にしたいと改めて考えさせられます。また、推し=子どもと捉える親御さんも、『プリキュア』推されている大人のかたも、楽しめるだろうなと。

皆川:そうですね。そこはいろいろな捉え方ができると思うんです。子どもじゃないと楽しめないといったお話にはしていないので、それぞれの立場で、共感できる言葉やシーンがあるんじゃないかなと。

 

 

──作中、アイドルや推し活の本質に迫るような言葉もありました。

皆川:アイドルを推し続けている方は刺さってくれるんじゃないかなと思っています。実際、僕の周りにもアイドルの推し活をしている人がいるんですが、そういう人から「良かった!」という言葉をもらっています。それもすごく嬉しいなと思っています。

──最後に、皆川プロデューサーから観客へのメッセージをお願いします。

皆川:冒頭のお話と重なってしまいますが、監督の小川さんが本当にたくさんの仕掛けを作品に散りばめてくださっています。何度観ても新しい発見がある映画になっていますので、ぜひ劇場に足を運んで楽しんでいただきたいです。

──エンドロールの写真までじっくり見たいところです。

皆川:あ、そうですね! あれはぜひ見ていただきたいところです。ペアの工夫があったりして、よく耳を澄ませると分かる要素もあります。劇場では声が少し聞きにくいとは思うのですが、「こことここが絡むとこうなるよね」というやりとりが繰り広げられていて。まだ実現できるかは分からないところではありますが、いつか皆様にもその内容が伝えられるような形は取れたらいいなと思っています。

 
[インタビュー/逆井マリ]

作品情報

映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!

あらすじ

ある日、珊瑚の妖精・トットに招かれたうたたちは、アイアイ島と呼ばれる不思議な島で開催される、
[スーパーミラクルアイドルフェスティバル]に出演することに!
とっても大きな会場には、ロボットや動物など、いろんなアイドルがい〜っぱい大集合♪
宇宙1のアイドルフェス開演!のはずが…?
突然、謎の怪物があらわれて、アイアイ島と世界がピンチに巻き込まれちゃった…。
しかも大変!過去に飛んじゃった~!?
ピンチを救うヒントは、島の女神の伝説と、島で出会ったアイドル嫌いの謎の少女・テラに隠されていて…?
そして!アイアイ島に、「わんだふるぷりきゅあ!」と「ひろがるスカイ!プリキュア」も駆けつけるよ!
さぁ!歌って踊ってファンサして、キミに届けるキラッキライブスタート✨

キャスト

咲良うた/キュアアイドル:松岡美里
蒼風なな/キュアウインク:髙橋ミナミ
紫雨こころ/キュアキュンキュン:高森奈津美
プリルン/キュアズキューン:南條愛乃
メロロン/キュアキッス:花井美春

犬飼こむぎ/キュアワンダフル:長縄まりあ
犬飼いろは/キュアフレンディ:種﨑敦美
猫屋敷ユキ/キュアニャミー:松田颯水
猫屋敷まゆ/キュアリリアン:上田麗奈

ソラ・ハレワタール/キュアスカイ:関根明良
虹ヶ丘ましろ/キュアプリズム:加隈亜衣
夕凪ツバサ/キュアウィング:村瀬歩
聖あげは/キュアバタフライ:七瀬彩夏
プリンセス・エル/キュアマジェスティ:古賀葵

タナカーン(田中):諏訪部順一
響カイト:佐久間大介
テラ:内田真礼
アマス:佐倉綾音
トット:津田篤宏(ダイアン)

ゾンビアイドル:渋谷凪咲
シカ:蟹沢萌(≠ME)
キジ:櫻井もも(≠ME)
オオカミ:谷崎早耶(≠ME)

(C)2025 映画キミとアイドルプリキュア♪製作委員会

 

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