
恋愛×ギャグで心がほっこり! ロボットメイドと御曹司のラブコメ――秋アニメ『機械じかけのマリー』主演 東山奈央さんインタビュー|ロボットと人間、2面性を持つキャラクターを演じる難しさ
ロボットメイドと人間のマリーは正反対、2面性を持つキャラを演じる難しさ
──役作りについて伺います。ロボットのフリをしながら生活する女の子マリーを演じる上で、注意した点は?
東山:マリーの役作りは、かなり難しかったです。というのも、マリーはもともとロボットのように見えるくらい感情表現が乏しいんです。機械のような人間なのが、彼女の個性です。でも、無機質のようでありながら、どこかにかわいらしさが残っている……そんな部分を大切にしたいと思って演じました。
──聞いているだけで難しそうです!
東山:淡々としたセリフが続くと、漫画では気になりませんがアニメだとメリハリがなくなってしまいます。また、マリーは表立って出てくる感情は豊かではありませんが、内面の喜怒哀楽は激しい子です。これもアニメになるときに表現するのが難しいポイントでした。感情を声のアップダウンだけで表現しようとすると、ファンのみなさんが思い描いている“マリー像”からかけ離れてしまう……。そうならないように、マリーの口から発してる言葉と、心の中での感情の違いを声で表現するのが、とても難しかったです。
──漫画とアニメの違いについてのお話は、とてもおもしろいですね。
東山:収録時に監督からも指示されましたが、“マリーは機械っぽい女の子”という約束事を、視聴者のみなさんにわかってもらわなければならないんです。それを踏まえたうえで、そこからどんどん自分の恋心に気づいていったり、後半に向かって感情豊かになっていくんです。なので序盤からツッコミセリフも多々ありますが、あまり前のめりにならないように注意しました。前半は抑えるお芝居、後半になるにつれて感情豊かに変化していく……というグラデーションが難しかったです。
──そもそもですが、ロボットメイドと人間のパートの収録は時系列に沿ってアフレコしたのでしょうか? それとも別々に収録したのでしょうか?
東山:時系列に沿って収録しています。キャラがガラッと変わるので切り替えはたいへんですが、タイムラインに沿って演じたほうが作品全体の仕上がりのイメージがつきやすいからです。私自身はとても忙しいけど!(笑)
──2人のキャラを同時に収録しているようなものですよね?
東山:こんなに技術的に難しい演技は初めてです! 第3話くらいまでは、事前に行う台本チェックの方法が定まらなかったです。どうやってメモ書きをしたら、アフレコ現場で演じやすくなるのか……試行錯誤しました。
──どのようなメモ書きで対処できたのでしょうか?
東山:実践してよかったのは、視覚的にわかりやすい“色分け”でした。マリーのセリフとモノローグを、ペンの色を変えてチェックしました。普段は赤ペンだけでチェックすることが多いのですが、この作品では台本がカラフルになりました(笑)。
一同:(笑)
東山:複数のペンを使うのでチェックにとても時間がかかりましたが、こうしておかないと本番で振り落とされちゃいますからね。マリーの感情の変化が目に飛び込んでくるようなメモ書きを意識しながら台本を作りました。
──そんな苦労があったのですね……。
東山:大変ではありましたが、もちろんとっても楽しかったですよ!(笑) 監督さんも音響監督さんも私の悩みに寄り添ってくださり、スムーズにできなかったときは優しくフォローしていただきました。お話を伺ったら、実は監督も私と同じ苦労をされていたんです。いつもは無表情の機械っぽいマリーですが、ふとしたときに見せるかわいらしい乙女の表情が出てくるので、バランスをものすごく考えてアニメを作っていたんです。アニメ作画の難しさと、キャラを演じる難しさ。分野は違えど同じ難題を乗り越えて、視聴者さんが見たときにスッと入りやすい作品ができました。
──いいお話ありがとうございます! チーム全体で作品の完成度を上げている様子が伝わってきます。苦労とは反対に、楽しかった部分は?
東山:この作品は恋愛コメディー作品なので、キュンとするシーンも大切ですがギャグのシーンもすごく魅力です。そこをどこまではっちゃけて演じられるかが楽しかったです。ただ最初に、音響監督さんからギャグシーンについて、「おもしろいでしょ? ここで笑っていいんだよ?みたいに演じると興ざめしちゃうので、そうならないように」というお話もあったので、そこは意識して現場全体で取り組んでいました。
──“サムい”ってヤツですね!
東山:そうです!(笑) この作品のキャラクターたちは一生懸命に生きているんです。「その姿が滑稽に映るのをギャグにしてほしい」とディレクションをいただきました。マリーの表情はコミカルに描かれているので、作画に負けないように、抑制されたなかではありますが生き生きとお芝居するのが楽しかったです。
──エンディングは東山さんが歌うキャラクターソング「Cross heart〜偽りのない気持ち」ですが、この曲も感情を抑えて歌唱されたのでしょうか?
東山:楽曲は恋心のかわいらしさだったり、「恋っていいな」と感じられるストレートでキュンキュンするラブソングです。作中のマリーは淡々とした話し方をしますが、これを意識しすぎると楽曲の良さが伝わりにくくなってしまいます。なのでレコーディング現場のスタッフさんと打ち合わせをして、何回も歌って完成させました。
──何回も歌う?
東山:はい。まず最初にマリーらしく歌い、そこから徐々に「マリーらしさ」を薄めつつ、かわいらしい楽曲に馴染むように歌っていきました。そのプロセスを踏むことで根底にあるマリーらしさを見失わずに歌うことができましたし、もっともバランスのよいテイクを探っていくことができましたし、とてもいい仕上がりになりました!
各声優の技工が光るアニメーション作品
──アーサー役の石谷春貴さんと共演した感想をお聞かせください。
東山:石谷春貴くんとは同い年で、過去にも共演がある仲の良い声優仲間です。今回の作品でも、いいタッグでやらせていただけたと思います。セリフの尺でどちらかが少し押しちゃいそうなときに、事前に声を掛け合って、いい呼吸でやり取りできるように相談させてもらったり、セリフの意味合いについても一緒に話し合って作戦を練らせていただきました。石谷くん自身もアーサーの演技を楽しんでいるのが伝わってきました。マリーと二人っきりのときに一気にデレデレになるところとか、ギャップを楽しんで演じているのが伝わってきました。
──本物のロボットメイドの“マリー2”の担当は、小清水亜美さんですね。
東山:収録スタジオでのお話ですが、小清水さんが初めてマリー2の声を発したとき、現場の空気が変わりました。一同が「えっ!!」とびっくりしたんです。あの声、ロボットボイスのように聞こえませんか? でも小清水さんがそのまま出してる声なんです。
──ええっ、加工した音声ではないのですか?
東山:一切加工してないんです。私もびっくりしました(笑)。小清水さんは、あの声が出るんです。すごいんです。職人技を見ました。声優の我らからしても、「声優さんスゲー!」って思いました。
一同:(笑)
東山:当初は収録した音声を加工する、という予定もあったんじゃないかと思うんです。でも、小清水さんのお芝居があまりにもロボットなので、加工ナシでそのままオンエアされます。「勉強になった」というよりも、それを通り越して感動しました。
















































