
原作の音楽をアニメ用に作り直す際に感じた不安──アニメ『グノーシア』リレーインタビュー第3回 音楽・深澤秀行さん
2025年10月11日より放送がスタートしたTVアニメ『グノーシア』。
舞台は宇宙を漂う一隻の宇宙船、星間航行船D.Q.O.。人間に擬態した未知の存在「グノーシア」を排除するため、乗員たちは毎日1人ずつ、話し合いと投票によって“疑わしき者”をコールドスリープさせていきます。
しかし、主人公・ユーリは、どんな選択をしても“1日目”に戻ってしまう——そんなタイムリープの渦中にいました。
極限状況の中で交わされる会話を通じて、少しずつ明かされていく乗員たちの本音や秘密。信じるべき相手は誰なのか。何が正しい選択なのか。繰り返されるループの先に待つものとは——。
人狼ゲームをベースにしながらも、SF要素やキャラクタードラマを掛け合わせた独自の体験型ゲームとして熱狂的な支持を集めてきた『グノーシア』。その唯一無二の世界を映像として立ち上げるにあたり、制作陣はどのような試行錯誤を重ねてきたのでしょうか。
第3回は、本作の音楽を手がける深澤秀行さんに、楽曲制作の舞台裏や作品への想いを伺いました。
“音色に意味を持たせる”
──まず、『グノーシア』の劇伴制作のオファーを受けた時のお気持ちからお聞かせください。
音楽・深澤秀行さん(以下、深澤):嬉しかったですね。実は1年くらい前に掲示板で「『グノーシア』のサントラがかっこいい」という話題を見かけ、たまたまサントラは手に入れて聴いていたんです。
実際に聴いて「これは凄いぞ」と思ったのは覚えていて。だから話をいただいてから「あれか!」と繋がって、すごくご縁を感じました。
──先にサントラが手元にあったのは、まさにご縁ですね。アニメ化の音楽をご自身が手がけることについてはいかがでしたか?
深澤:元の音楽が素晴らしすぎるので、それをアニメ用に作り直すのは正直不安もありました。なので、原作の音楽を手がけたQ flavorさんの世界観を壊さずに、あくまでオリジナルを活かしつつ……。自分らしく膨らませることを目指しました。
──Q flavorさんと実際にお会いになったのはいつ頃でしたか?
深澤:2025年の春頃の劇伴録音の日が初対面でした。忙しい現場でしたが、丁寧に挨拶してくださり、“優しくて正直そうな人”という印象です。
勝手な想像ですが、下北沢にいそうなグルーヴを持った方で、おしゃれな古着屋さんみたいな雰囲気でしたね(笑)。僕の楽曲について温かく受け入れてくださって、本当にありがたかったです。
──制作を進めるうえで、プロデューサーや監督から具体的な要望はありましたか?
深澤:もちろん曲にもよりますが、アニメ化とあって、全体的にスケール感の壮大さは求められたかなと。
先ほども触れましたが、大きな方向性としてはオリジナルをベースに拡張したものと、僕が一から作ったもの、その2種類が混在する形になりました。最初に、木村プロデューサーとごはんを食べながら打ち合わせをしたことも懐かしいです(笑)。
──サウンド面の方向性はどう固めていったのでしょう?
深澤:Q flavorさんの楽曲を僕なりに分析してみたところ、シューゲイザー的要素が強く感じられまして。非音楽的なノイズと洗練されたコードが同居していると言いますか。
どちらかというと電子音楽寄りの印象だったので、“コンピューターノイズ×おしゃれなコード”をベースに全編で展開し、アニメーション用に拡張していきました。
実は制作前に「グノーシアノート」というメモ書きをまとめたノートを書いていたのですが、今見返すと我ながら意味不明で(笑)。「嘘と事実/コールドスリープと生きる/グノーシアと人間」とか……作品の根幹にある対立する概念を音楽で表現しようと試行錯誤していたんだと思います。
実際に使われたアイデアは一部でしたが、“音色に意味を持たせる”という発想は作品全体に活かされています。
──楽曲について教えてください。明確にボーカルの歌詞が聞き取れない楽曲も多いと思うのですが、そもそも言語設定はどこの国の言葉で統一されているのでしょうか?
深澤:英語を意識しているのは1曲だけで、その他の楽曲は英語にも“聞こえる”ようになっていますが、実際には架空の言語なんです。原作では作品の世界観に合わせて「どこかの星の、どこかの時間軸の言語」という設定になっているそうで。
きっと放送後に「歌詞はどこの国の言葉だろう?」と気になる方もいるかとは思うのですが、答えは皆さんの想像にお任せしたいと思います。














































