
「青春のつづきをはじめましょう!」――10年の軌跡とともに鳴らす、CHiCO with HoneyWorksの“今” 2枚のニューシングル「くすぐったい。」&「戦場の華」に込めた想いを語る/CHiCOインタビュー
「レベルアップしたな!」と感じてもらえるように
──スタジオライブを経て、シングル「くすぐったい。」「戦場の華」が同時リリースとなります。「くすぐったい。」はチコハニの原点を感じさせるような曲ですよね。
CHiCO:そうですね。「くすぐったい。」はアニメ『キミと越えて恋になる』のオープニングテーマで、デモを聴いたときに「チコハニらしい青春ソングだ!」と思いました。「世界は恋に落ちている」の頃のCHiCO with HoneyWorksを思い出すような、初々しい青春ソングが一周回って戻ってきたような感じだったので、デビュー当時の思い出もバッと蘇りました。初めてのレコーディングで11時間かかったなとか(笑)。
──11時間!
CHiCO:11時間歌っていたわけではないんですけども、あの日は本当に長かったです(笑)。初めてレコーディングブースに入って、高そうなマイクの前に立って、分厚いガラス越しに大人たちがいて「私のことを見てる!」っていう状態で(笑)。何が正解かわからなくて、どのテイクを「これでOKです!」と言えばいいのかもわからず、悔し泣きしたことを覚えています。見かねてマネージャーさんが出前を取ってくれたりして……そういうすべてが懐かしいですね。
──「くすぐったい。」はそういった原点を感じさせる曲でありながらも、しっかりと進化も感じさせてくれますよね。
CHiCO:今回は第2章に突入したCHiCO with HoneyWorksとして、当時よりもレベルアップした姿を見せたいという気持ちも強くて。ソロ活動で学んだことを生かして、「CHiCO歌がうまくなったな!」「レベルアップしたな!」と感じてもらえるように意識して歌いました。イントロのストリングスや弾むようなメロディーが印象的で。「恋色に咲け」のような、厚みのあるサウンドだなと。Ojiさん、中西さんのギターソロもいつものCHiCO with HoneyWorks節で、そういったところが特に私は聴いていて嬉しかったです。
──レコーディングについてもおうかがいさせてください。さきほど昔は「正解がわからない」というお話がありましたが、今回はどうでしたか。
CHiCO:もうそういう気持ちはまったくないです! 10年活動してきた自信と経験、さらにHoneyWorksさんとの信頼関係もあって、すごくスムーズに終わりました。今回は4〜5時間ほどだったんじゃないかなあと。「このフレーズはこう歌いたい」というビジョンを明確に持てるようになりましたし、理想のテイクを自分で想像できるようになったんです。それに届くスキルも、10年間でしっかり身についたと思います。だからこそ「今のはどうだろうな」ってだけで終わらなくなったというか。
──制作中はHoneyWorksチームとどのようなやり取りを?
CHiCO:仮歌は自宅で録って、HoneyWorksさんとはメールでやり取りをしながら進めていったんです。「もう少し可愛らしく歌ってほしい」といったリクエストをいただいたりして。その後の本番のスタジオ収録では「お久しぶりです!」と再会の挨拶から始まりました。とはいえ、ソロのワンマンを観に来てくださったりと、お会いする機会もあったりしたので、ブランクを感じるというより「また一緒に音楽ができる!」という喜びの方が大きかったです。レコーディングする機会は『iは自由で、縛れない。』振りで。さきほども言ったように、今回はとにかく“レベルアップした自分を見せよう”という気持ちで臨みましたね。
──実際、CHiCOさんの歌声を聴いたHoneyWorksチームからはどのようなフィードバックがありました?
CHiCO:Gomさんが「くすぐったい。」に、shitoさんが「戦場の華」に立ち会ってくださったのですが、「くすぐったい。」のときには(Gomさんから)なかなか聞かないような嬉しい言葉をいただきました。「今の良いねえ」みたいな直接的な言葉ではないんですけど、スタッフさんが「2年ぶりにCHiCOのレコーディングに立ち会うけど、どう?」と(Gomさんに)聞いてくれたんですよ。最初は「大変っすね」から始まったので「えっ」とドキリとしてしまったんですけども(笑)、「たくさん(OKテイクがありすぎて)困る」と。すっごく嬉しかったです。
──それはボーカリスト冥利につきる言葉ですね。
CHiCO:はい。以前は「どうすればCHiCOは歌えるだろう」「どれだったら、自分たちの許容のOKテイクとしてうまくやれるかな」と試行錯誤の連続で、引き出しも少なかったんです。それが今では、「いっぱいありすぎてこまっちゃうよ」と言ってもらえるようになって。本当に嬉しかったです。
──アニメのオープニングとともに流れる「くすぐったい。」も今から楽しみです。TVアニメ『キミと越えて恋になる』は10月14日から放送開始となります(インタビュー現在は放送前)。映像との組み合わせは、もうご覧になっているのでしょうか?
CHiCO:いえ、私も視聴者の皆さんといっしょに見る予定なんです。予告映像やプロモーションムービーは拝見させていただいていて。少女漫画らしいキラキラした世界や、恋に落ちた瞬間の軽やかさ、華やかさがすごくきれいに表現されていて、あの映像に「くすぐったい。」がどう重なるのか、今から待ち遠しいです!
「さあ、一緒に楽しもう!」と呼びかける「人生のオーケストラ」
──では、カップリング曲「人生のオーケストラ」についてもお伺いさせてください。ハンズクラップが聴こえてきそうな、明るくてポジティブな曲だと感じました。CHiCOさんがこの曲を聴いたときの印象を教えてください。
CHiCO:「人生のオーケストラ」は、CHiCO with HoneyWorksとして10年以上活動を続けてきた今だからこそ歌えるスケールの大きい曲だなと感じました。ファンのみんなに向けた曲でありながら、もっと広く、いろんな人を巻き込んでいけるような……なんていうんでしょうか、サーカスのオープニングのような、演目のオープニングをイメージさせるような……。真ん中にMCが立って「さあ、一緒に楽しもう!」と誘うような導入だなと感じていました。とても大好きな曲ですね。
──冒頭の〈ようこそ!初めましての人/そうじゃない人もみんな/楽しみましょう!〉って言葉も、10年という月日があるからこその呼びかけのように感じました。ところで「人生のオーケストラ」はCHiCOさんの歌声の表情がいつもとは少し違うような。
CHiCO:そうですね。「人生のオーケストラ」はshitoさんと中西さんが楽曲制作してくださったんですが、shitoさんのボーカルディレクションはニュアンスをとても大事にされるんですね。それはGomさんもなのですが、フレーズごとに感情の入れ方を細かく指定してくれる印象がありました。ですので、「こんな感じかな?」と想定して歌いこんでいったのですが、「この曲はミュージカルのように歌ってほしいんだ」と。自分で想定して歌い込んでいた方向と真逆の切り口の表現を求められたのが新鮮でした。
私は熱血系のアニソンが大好きなので、つい“かっこよく”寄りに歌いがちなんです。だから「もう少し可愛らしく」「年齢層を少し若めにイメージして」といったディレクションがこれまでは多かったので、「その方向で歌って良いんだ!?」とびっくりしながらも歌っていたんですが、「その歌い方、絶対CHiCO好きでしょ」「得意だね」と褒めていただけて。CHiCO with HoneyWorksではあまりなかった届け方になったと思うので、みんなも“いつもと違う”と感じてくれるはずです。
チコハニのロック曲のエッセンスが集結
──続いて「戦場の華」についてお伺いさせてください。TVアニメ『最後に一つだけお願いしてもよろしいでしょうか』の幕開けを飾るロックな曲です。
CHiCO:ややファンタジー寄りの雰囲気で、私の中では「アイのシナリオ」っぽい世界観だなって思いました。その一方、サウンドのゴリっとした感じは「我武者羅」っぽくて。これまでのCHiCO with HoneyWorksのロック曲のエッセンスがギュッと集結したような印象でした。サビはあのくらいの爆発力がないと映えない曲だと感じたので、デモを聴いた段階で覚悟を決めました(笑)。
──全身全霊を込められた歌声ですよね。
CHiCO:率直に言うと、「なんて難しい曲なんだろう!」というのが第一印象でした(笑)。最初のAメロからBメロ、そしてサビにかけて感情が一気に爆発していく構成で、「全力で歌ってほしい」とディレクションを受けていたので、とにかく気持ちをぶつけるように歌いました。聴く人を飽きさせない展開になっていると思います。「チコハニロック」と呼んでもらえるようなロックナンバーが、さらにパワーアップしたような仕上がりになりました。
──反骨精神を感じるような歌詞に、CHiCOさんご自身が共鳴した部分はありましたか?
CHiCO:共鳴というよりは、どちらかというと“憧れ”に近いかもしれません。「くすぐったい。」もそうなんですけど、どちらも自分の心に正直なんですよね。そういうまっすぐさや、己の信念を貫き通す姿勢って本当にかっこいいなと思うんです。そういうまっすぐさというのを、私も身につけられたらアーティストとして、いち人間としてかっこよくなれるのにな!と思いました。その一方で、サビの〈貴方が言った言葉〉が自分のパワーになってる、といった感覚はシンパシーを感じるところがあって。私自身も誰かの言葉やチームの支えに勇気をもらって前に進めている部分があるので、そういった“誰かの言葉に背中を押される”という感覚はすごく共感できますね。
──「戦場の華」のディレクションでは、どのようなやり取りがありましたか?
CHiCO:「メリハリをしっかりつける」というのが大きなテーマでした。キーが少し低めなので、ハキハキと歌うというよりは、少しボソボソつぶやくように歌う部分もあって。Aメロ、Bメロ、サビでの表情の違いに加えて、Dメロではガラッと世界観が変わるので、そこは“少し大人っぽく”“軽やかに”、この曲に関してもミュージカルのような感じで歌ってほしいという指示を受けました。サビに関しては「ここはCHiCOの得意ゾーンでしょ」とshitoさんに言ってもらえて(笑)。これまで一緒にたくさんの楽曲を作ってきた中での信頼関係があるので、「CHiCOだったらいけるでしょ」みたいな感じで言ってくれて「がんばります」と言いながらレコーディングをしていました。いろいろな表現を詰め込んだ1曲になったと思います。














































