
どこか現実とリンクする物語に共感ーー『迷宮のしおり』SUZUKAさん(新しい学校のリーダーズ)&伊東蒼さん&齋藤潤さんインタビュー
河森正治監督初のオリジナル劇場長編アニメーション『迷宮のしおり』が、2026年1月1日(木)に公開されます。
物語の主人公は、どこにでもいる普通の女子高生・前澤栞(まえざわ・しおり)。ある日突然、手にしていたスマホが割れ、気がつくと誰もいない異世界の横浜に。目の前に現れた謎のウサギのスタンプから「スマホの中に閉じ込められた」と告げられ、現実世界ではもう一人の自分が突如現れて自由奔放に振る舞い始めます。もう一人の自分の暴走を食い止めるべく、奇妙なスマホの迷宮から抜け出そうとする、もしかしたらSNS社会で本当に起こるかもしれない異世界青春ファンタジーです。
このたび、主人公・栞、そして現実世界に現れたもう一人のSHIORIの二役を演じるSUZUKAさん(新しい学校のリーダーズ)、栞の幼馴染であり、歌とダンスの動画配信にストイックに取り組む女子高生インフルエンサー・倉科希星役の伊東蒼さん、栞のクラスメイトでお調子者の山田役・齋藤潤さんにインタビュー。作品の印象やアフレコの感想、3人のSNSへの向き合い方などを伺いました。
アニメ台本の仕組みに驚き!アフレコ初挑戦で“声の表現”に苦戦
ーーSUZUKAさんと齋藤さんは、今作で声優初挑戦。オファーを受けてどう思いましたか?
SUZUKAさん(以下、SUZUKA):本業がアーティストなので、新しいことに挑戦できる機会をいただけたことは、本当にうれしいです。さらに、主人公の栞と、閉じ込められたことで現実世界に生まれるSHIORIの二役。自分でも想像できないチャレンジになると思いましたが、やったことないことは全部やってみたい性分なので、喜びと同時に「絶対にやり遂げてみせる」と気合いも入りました。
齋藤潤さん(以下、齋藤):僕もやったことがないことは何でも挑戦したいタイプです。さらに、これまでの取材で「挑戦したいこと」を聞かれたとき、「声優をやってみたい」とよく言っていました。まさかこんなに早く願いが叶うとは……! 驚きましたし、本当にうれしかったですね。
ーー伊東さんは、今回で2度目の声優挑戦となります。
伊東蒼さん(以下、伊東):2度目にはなりますが、人間の役を演じるのは今回が初めて。先にビジュアルをいただいたのですが、こんなにかわいい希星を演じられるのはとても光栄だと思いました。
ーー台本を読んだ感想もお聞かせいただけますか?
SUZUKA:先ほど「気合いが入った」とは言ったものの、栞の性格が自分と重ならなくて、「本当に私で大丈夫なのか? 」と。私自身は関西弁、声も低い、ライブ中は叫んでばかり。そんな私がおとなしい栞を演じられるのか、物語の印象よりも先に不安が押し寄せて来ました。ですが、私にもピュアで純真な頃があったわけで。その頃の声帯を思い出さなければいけないとなったことを覚えています。
伊東:私も物語の印象より前に、台本の仕組みに驚いた記憶があります。アニメの台本って、上下に分かれているんですよ。上部にキャラの動きや状況の説明、下部にセリフが書かれていて、「これが映像になった時にどうなるんだろう!?」とワクワクしました。
齋藤:台本が4冊もあったことにも驚きませんでしたか? ドラマや映画の台本はもっと情報量が少ないので、ここまで詳細に書かれているのは新鮮でした。アフレコでは映像を見ながら、同時に台本も目で追っていかなきゃいけないのが難しくて……(苦笑)。その中で、山田の魅力を声で表現する必要があったので、何もかも初めての経験でした。
ーーSUZUKAさんから少しキャラクターの共通点も伺えましたが、それも含めて、演じる役の印象を聞かせてください。
SUZUKA:栞とSHIORIの二役を演じましたが、「理想の自分」と「現実の自分」というのでしょうか。そのギャップみたいなものは、私自身も持ち合わせているものだと思います。セーラー服を着て活動する「新しい学校のリーダーズのSUZUKA」と、それを脱いだ「素のSUZUKA」がいて、活動初期の頃は、そのギャップにを整理整頓できていなかった時もありました。今回、河森監督から「栞ってこんな子だよ」と説明を受けた時に、性格やピュアさは違いますが、過去の自分の悩みとリンクする部分がすごくあって、うけれど、なんだかうれしくなりましたね。
ーーパブリックイメージとしては、SHIORIの方がSUZUKAさん自身に近いような気もしますが……?
SUZUKA:そう思いますよね。でも、静と動は常に共存していると思っていて、動けば動くほど真反対の自分がいないとバランスが保てないので、ある程度の理屈や理性は大事にしています。
ーー伊東さんと齋藤さんはいかがでしょうか?
伊東:希星のキラキラしている部分は、私にはないなと思いながら台本を読んでいました(笑)。最初はどちらかというと栞の方に近いと感じたというか……希星の華やかさに憧れてしまったんです。ただ、読み進めていくと希星の内に秘めている感情が明らかになってきて、それは私も経験したことのある気持ちでした。誰かに憧れる気持ち、でもそうなれなくて悩む気持ちって、すごく身近な感情ですよね。キラキラした部分に引っ張られずに、そういった内面もしっかり大切に演じたいと思いました。
齋藤:僕も山田と比べると、普段のテンション感がかなり違います。ハイテンションでおちゃらける山田を、果たして声だけで演じられるのだろうかと不安になりましたが、映像を見ると自然とそれに合わせられました。映像にすごく助けてもらったと感じています。
ーー技術面で難しかったことなどはありましたか?
SUZUKA:技術面・表現面どちらにも通ずることですが、やはり「栞の声を探すこと」が一番難しかったです。正解がないので、どんな声にしたとしても「これは本当に栞の声なのか?」となってしまって。マイクに向かって話さなきゃいけないのに、そう考えるたびに頭が地面の方に向いてしまいました。
ーーそこからどうやって栞の声を見つけたのでしょうか。
SUZUKA:映像とセリフを見比べる作業を何度も繰り返しました。そうすることでイメージが膨らんで、だんだん栞の声に近づいていったような気がします。また、河森監督の「大丈夫、見つかるよ」という励ましの言葉が本当にありがたくて、「もう少し高めに」などのディレクションもいただいたおかげで、何とか栞の声が見つけられました。
伊東:河森監督はずっと現場にいてくださいました。すごく心強かったです。私が一番難しいと感じたのは、セリフの秒数が決まっていることでした。感情を考えながらセリフをしゃべっていると、尺がまったく足りないんですよ。遅くて尺からはみ出してしまって、また逆に早すぎて間が生まれてしまったことも何度もあったので、「普段の芝居とは全く違う」と思いました。
ーーやはり実写の芝居とは違いましたか?
伊東:全然違いますね。私は普段の芝居でもゆっくり感情を持っていきがちなので、そこを早めるというのは本当に難しかったです。ただ、映像芝居では時間は関係ないですが、舞台芝居では大きく関わってくるので。そこに活かせるなと、勉強になった部分もたくさんありました。
ーー齋藤さんも、普段は俳優として活躍されています。声の芝居はいかがでしたか?
齋藤:僕も技術面・表現面どちらにも関わることなのですが、大げさに表現しないと映像に声が追い付かないということです。普段のお芝居でも、また日常でも、例えば何かに気づいた時に「あっ!」とか「はっ!」みたいな声って出ないのですが……。でもアニメの表現としては必要で、さらに大きく反応しないと映像に合わないので、テンションも声のトーンも普段より数トーン上げて演じました。






























