音楽
長縄まりあが照らし出す心の宇宙【インタビュー】

長縄まりあ「自分の宇宙を信じて、自分自身を思いきり愛してほしい」――色とりどりのやさしい想いが芽吹く『microcosmos』誕生【インタビュー】

長縄まりあさんの初ミニアルバム『microcosmos』(ミクロコスモス)が、2025年12月24日、クリスマスイブに発売されます。可憐な色合いのやさしい世界観に包まれた本作は、誰もが心の中に持っている“小さな宇宙”をそっと照らすような一枚です。タイトルに込められているのは、“人は誰でも心の中に小さな宇宙を持っている。自分の宇宙を信じて、自分自身を思いきり愛してほしい”という長縄さんのまっすぐな想い。“自分だけの宇宙”をそっと抱きしめ、自分を好きになれる時間を届けたいという、長縄さんのやさしさと思いやりが、チャーミングな歌声とともにぎゅっと詰め込まれています。

私事ですが、インタビューの長縄さんの言葉、そして『microcosmos』の歌に触れているなかで、目の前の誰かの“宇宙”を思いやれるように、普段から心の余白を作っておきたいという気持ちが芽生えました。それもまた、ひとつの“小さな宇宙”の誕生なのかもしれません。このやさしさの種がたくさんの場所で芽吹きますように。

 

 

『ワールドダイスター』をきっかけに歌に興味

──前回のバースデーイベントで今回の作品の発表がありましたが、長縄さんとしては、この新しい一歩を踏み出すにあたって、どんなお気持ちだったのでしょうか。

長縄まりあさん(以下、長縄):「CDを作ってみませんか?」とお声がけいただいたのがきっかけでした。そのとき私の中にすごく残っていたのが『ワールドダイスター』という作品です。演劇と歌をテーマにした、ミュージカル的な要素がある作品で、私が演じている新妻八恵は、「歌」も「お芝居」もするキャラクターなんです。お芝居は小さい頃から興味がありましたし、声優なので日常的に向き合っているのですが、歌についてはそんなに考えてきてはいなくて。しかし、『ワールドダイスター』で「歌」と「お芝居」が混ざりあう収録を経験して、「歌」ってものすごく奥が深いというか……「お芝居」とはまったく違う表現の仕方があることを実感しました。さらに、キャラクター自身がお芝居をしている声で歌を収録するということもあり、声でお芝居をしながら歌うことにも、歌うことそのものに対しても、すごく興味が湧きました。そこから、お芝居とは別の新しい表現として、歌にもチャレンジしてみたいなと思った次第です。

──言葉にしにくいかもしれませんが、音楽の楽しさはどんなところに感じたのでしょう?

長縄:ミュージカルって、気持ちを乗せることがすごく大事じゃないですか。私は吹奏楽をやっていたので、どちらかというと「音程・リズム命!」みたいな、正確さを重視するタイプだったんです。でもミュージカルは、音程だけでなく、セリフに近いニュアンスが入ることもあるので、お芝居に寄っている感覚があり、「こういう表現の仕方もあるんだ」と気づくことができました。「歌ってお芝居なんだ」というか。キャラクターソングと似ている部分はあるのですが、キャラソンはキャラクターの個性を大事にするところがあるんですよね。でも自分自身だけであれば、やさしい表現をしたければ迷わずファルセットも使えるし、思い切り高めの声でも歌える。表現したい方向に自由に声を作っていい。新たな歌の楽しさを知りました。

 

 

──キャラクターソングは“キャラクターの声で歌う”という難しさがあるように思います。

長縄:そうですね。逆に、キャラソンばかり歌ってきたからこそ、「自分の本当の歌声ってなんだろう?」と悩むこともあります。

──こんなに可愛い歌声とお声なのに……!

長縄:へっ!? (あたふたしつつ)ありがとうございます。

 

自分を否定しないでほしい

──今回のアルバムタイトル『microcosmos(ミクロコスモス)』=“自分の中にある小さな宇宙”という言葉は、どのように浮かんだものだったんですか?

長縄:いま手元にメモがあって。ミニアルバムを作るにあたって、普段考えていることなどをメモとして残して、それを(制作の方に)お渡ししました。そこに書かせていただいたのが……たとえば、自分では「大失敗だ」「恥ずかしい思い出だ〜」と思っていることも、他の人に話してみたら「全然そんなことなくない?」「失敗じゃなくない?」と言われることがあるじゃないですか。価値観ってそういうものかなと思っています。「逆にめっちゃよくない?」という、真逆の捉え方をする人がこの世界に絶対一人はいる。

自分が「間違えちゃった」「やっちゃった……」って思っていることとか、それで「自分って全然ダメだ」って思ってしまう人って、おそらくすごく多いと思うんです。でも、世界規模で見たら全然ダメなんかじゃなくて……。まずは、それだけで自分を否定しないでほしい、ということが前提としてあります。そしてもう一つ前提として、私は「人を否定したくない」とずっと思っています。どうしてそう思うかというと、その人の中にはその人なりの“ルール”があったり、こう見せたいという自分がいたり、さっきお話ししたみたいに「これは私のすごく悪いところだ」と思っている部分があったりして。そういう未知のもの全部を、私は“宇宙”と呼んでいます。

絶対にその人以外は見ることも、触れることも、覗くこともできない。すごく尊いものだと思っていて。しかも、その宇宙の中身ってめちゃくちゃ複雑だと思うんです。「本当はこういう自分を見せたいけれど、今日はそんな気分じゃなかったから、まあいいや」とか。でも次の日になって目が覚めたときに「本当はこういう自分でいたかったのに、昨日はなんであんな行動をとっちゃったんだろう」とか、自分でもわからないことがあったりするじゃないですか。

──ああ、すごく分かります。

長縄:そういう“自分でもよくわからない部分”も含めて、未知だからこそ“宇宙”だなと思っています。その人の中には、その人だけの宇宙があって、誰も覗けない。だから、その人がとった行動とか、発信したことに対して、私が「それ変じゃない?」「それはちょっと常識と違うでしょ」とか、そうやって簡単に否定するのは違うなと思うんです。その人の“見えない部分”、その宇宙から生まれてきた言葉や行動に対して、何も知らない私があれこれ言う資格はないなと。
だからこそ、その“自分にしか見えない宇宙”を、いちばん自分自身で大事にしてほしい、という意味を込めています。

 

 

──すごくいいお話……。長縄さんの「否定されたくない」ではなく「否定しない」というスタンスなのが、とても素敵だなって。その宇宙の考え方は、長縄さんの経験談から生まれた哲学だったのですか?

長縄:なんでこういうふうに考えるようになったのか、はっきりとは覚えていないんですけど……。たとえばですが、朝の1分1秒を争うような“出勤ラッシュ”の時間帯に、もうこれでもかというくらいの人数がいるのに、改札の前で立ち止まってしまう人がいたとします。

──(笑)「えっここで立ち止まるの!?」と反射的に思ってしまう状況といいますか。

長縄:そのとき、すごい勢いで改札に向かって走ってくる人からすると、「なんでここで止まるの!?」「いや、迷惑じゃん!」と、イラッとしてもおかしくないと思うんです。

でも、その瞬間に私は「かもしれない運転」じゃないですけど、「かもしれない人生」を想像しています。なぜこの人はここで止まったんだろう?と考えるんです。たとえばスマホを見ていたとしても、「こんなところでスマホ見る?」って怒ることもできるけれど、もしかしたらその瞬間、「今すぐ連絡ちょうだい」みたいな、大事な連絡が来たのかもしれない。出勤どころじゃない、人生レベルで重要なメッセージを受け取って「えっ……!」となって、急いで対応していたのかもしれない。そう考えると、「頑張れ……!」って思えるんですよね。でも、事の真相って本人にインタビューでもしない限り、わからないじゃないですか。しかも、その人が嘘をつかず、本当のことを全部話してくれなければ、絶対に知りようがない。

──そういう意味で、その人の“宇宙”の中にだけ真相があるし、それを否定したくないと。

長縄:そうですね。これもまた、たとえ話ですが、真夏に全身黒で歩いていたら、知り合いや友達に「今日こんな暑いのに、なんで真っ黒? 暑くない?」と言われるかもしれないじゃないですか。でも、自分としては「この服、すごく可愛いと思ったから」という気持ちがあるわけで。言い方にもよると思いますが、キツメの一言で片付けられてしまうと、ちょっと寂しいな、と思ってしまいます。でも、「なんで黒を着てきたの?」という発言の奥にも、その人なりの理由があるのかもしれない。「あ、この人は“見た目の気温感”をすごく気にするタイプなんだな」とか、ついこちら側で勝手に推測してしまいますが、それも結局は“私の想像”でしかなくて。こちらが勝手に推測して「この人ってこういう人なんだ」と決めつけてしまうことも、そもそも間違っているなと思っています。その人にもその人の“宇宙”があって、その中の事情や感情があるわけで。だから私は、たった一言に対して「なんでこの人は……」と即判断してしまうこと自体がなんか違うな、と違和感を覚えます。そこには理由があるかもしれないし、ないかもしれない。だから私自身、人に簡単に「それは変だね」と言えないなと。

 

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