
25年ぶりの新作は“奇跡”。TVシリーズの先にある「人間と人間の戦い」――『アギト—超能力戦争—』白倉伸一郎さん×武部直美さん×塚田英明さんインタビュー
「奇跡に近い現象が見られるのではないかと思います」
ーー『アギト』の特徴として、超常的な力に目覚めたアギト・ギルスと、人の力によって作られたGシリーズの対比があると思います。
白倉:最初からそうしようと思っていたわけではないんですよ。『アギト』という企画が出来上がる前、バンダイさんとのデザインの打ち合わせの中で“メカクウガ”というお題がありました。もちろんデザイン段階において、人間なのかロボットなのかという設定は存在しません。それに対して「警察官が装着するパワードスーツだろう」と決めただけの出発なんです。
今となっては、周りに変身する仮面ライダーがいる中で、氷川誠は生身の体で超能力も持たず、ただパワードスーツを身に纏って戦うと偉そうに言えるのですが……。そういうキャラクター造形にしようとした訳ではなく、たまたまそうなった。そこをうまく脚本の井上大先生が拾ってくださったおかげで、今日があるという感じですね。
ーープロトタイプである「仮面ライダーG3」の段階では、負けてしまう場面も多かったですよね。
塚田:そうですね。だからこそ「仮面ライダーG3-X」になった時のインパクトがありました。
白倉:それまでは噛ませ犬だったので……(笑)。
武部:(笑)。井上さんが小沢澄子と北條透を気に入っていたのも大きかったのではないでしょうか。台本が届いた時、セリフの分量を見て「やっぱり!」と思いました。Gユニット全体が『アギト』の重要な部分を作ったという印象です。
ーー氷川誠は『劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4』の活躍も印象的でした。
武部:あれは映画でしたし、氷川誠を主人公にするということにも全く抵抗はなかったと思います。
白倉:氷川を軸にした理由として、こちらも「仮面ライダーG4」というお題が先にあったので、必然的に「警察対自衛隊、G3対G4」という構図にならざるを得ませんでした。
武部:TVシリーズと同時にやるのは初の試みだったので、少しズラさないと難しそうだなと。逆に葦原涼の話(第28話「あの夏の日」)はTVシリーズで小林靖子先生に書いていただきましたよね。そういうことをしながら、映画とのバランスを取っていた気がします。
塚田:当時、高岩成二さん(仮面ライダーアギトのスーツアクター)が徹夜のナイター(夜間撮影)終わりで「今からTVシリーズの撮影に行ってきます!」と言っていて、「えぇ!?」と思いました(笑)。
武部:ハイエースに乗って、宮崎剛さん(アクション監督)と一緒に(笑)。
塚田:今はできないですよね。こういう話は書かない方がいいのかな?
白倉:もう時効でしょう(笑)。
ーー何もかも手探りだったんですね。今のように「仮面ライダー」シリーズが続いていくイメージもなかったのでは?
白倉:続けるつもりもなかったです。元々は『仮面ライダークウガ』で終わるはずだったので、「あ、仮面ライダーをもう一作やるんだ」みたいな感覚ですよね。
ーー今思えば、『仮面ライダーアギト』は仮面ライダーシリーズの新たなフォーマットを生み出した作品でもあります。
白倉:結果論ですが、そういう見方もできますね。『仮面ライダークウガ』は昭和ライダーのリブートなのですが、『アギト』はどちらかと言うと『特警ウインスペクター』など、メタルヒーローシリーズのリブートのような側面もあります。放送枠としてはメタルヒーローと同じだったので、そこで仮面ライダーとメタルヒーローのDNAが合流して、平成ライダーのフォーマットを一つ作ったという感じでしょうか。
武部:「実は主人公の名前が違う」とか、長期にわたってそういうギミックが入っていましたし、かなりの“連続ドラマ”でした。
白倉:撮影所で完パケの試写をやるんですけど、制作担当だった沼尾和典さんという人が上映が終わるたびに振り返って「この後どうなるの?」と言うんです。「いや、あなたは知っているでしょ!」って(笑)。
武部:たしかに、できるだけ引きを強くしようとしていましたからね。
ーーTVシリーズの第1話は氷川誠視点で物語が描かれており、アギトの変身者も判明しないという特殊な構成でした。
白倉:ベルトの光だと全然映らないから、熱い裸電球を高岩さんが腰にぶら下げていて、大変そうでした。
武部:今でも謎の多いヒーローとして『アギト』は、話題になりますよね。必ずしも冒頭で主役が変身して「これが変身か……」ではない。やはり変わった切り口だったと思います。
ーーそういう意味では、今作にもTVシリーズから続く様々なチャレンジが詰め込まれていると感じました。最後に、それぞれの目線から見どころや注目ポイントをお聞かせください。
武部:やはり25年経って、これだけの再現ができたのはすごいなと。もしスタッフが違っていたら……例えば、監督が田﨑さん、脚本家が井上さんでなければ、全く違ったものになっていたはずです。
藤田瞳子ちゃんと話した時、「思い出すのではなくて、小沢澄子が体に入っているんです」と言っていました。北條(山崎潤さん)や尾室(柴田明良さん)に関しても、声とお芝居がそのままなんですよね。25年経っても“当時のまま”というのは、どの作品でもできることではありません。そういう意味では、奇跡に近い現象が見られるのではないかと思います。
塚田:局所的な見どころとしては、刑務所のシーンで吉田輝生さんという京都の俳優さんが大活躍しているところです。古き良き東映の“ヤクザ映画”の香りがすると思います。
『アギト』のTVシリーズは、アンノウンが“超能力者になる可能性がある人々”を襲っていたわけですよね。今作で「人々が超能力に目覚めてアギト化していく」という設定が具現化したのだとしたら、TVシリーズでは見られなかったものを見せていると言えるかもしれません。
あとは、“真っ暗なバー”で作って、ヒーロー番組の「こうしなければならない」から解き放たれたという点でしょうか(笑)。
武部:(笑)。でも、本当に色々考えられているなと思いました。最初は「なぜ刑務所?」と思ったのですが……完成してみると田﨑監督の解釈やキャスティングも相まって、まさにTVシリーズの先にあるお話だなと。
白倉:一番大きなチャレンジとして、今回は人間と人間の戦いなんですよ。異星人や怪物とは言い難い人間同士のバトルに『アギト』という題材なら挑戦できる。本来は凄惨にもなりかねないようなシチュエーションに対して、井上大先生という稀有な脚本家が上手くオブラートに包みながら、ユーモラスな部分も加味しながらバランスを取ってくれました。
見心地としてはすごく爽快と言いますか、読後感の良い終わり方ができていると思います。そういった脚本の離れ業にも注目していただきたいです。
[インタビュー/小川いなり]
『アギト—超能力戦争—』作品情報
2026 年 4月29日(水・祝)全国公開
あらすじ
相反する死が、一つの遺体に刻まれていた。
それは、超能力を操る者たちの暴走が生んだ、誰も見たことのない“不可能犯罪”だった。
警視庁未確認生命体対策特殊武装班=通称<Gユニット>が出動。
若手隊員・葵るり子(ゆうちゃみ)は、最新鋭の特殊強化装甲服<G6>で超能力者たちに挑むが、その強大な力の前に撤退を余儀なくされる。
G ユニット管理官・小沢澄子(藤田瞳子)は確信する。この事態を打開するには、氷川誠(要潤)の力が必要だと。しかし彼は今、とある罪で刑務所に囚われていた。
氷川の不在に、小沢が思い至ったのは、かつて<アギト>という未知の力でアンノウン(未確認生命体)と戦った男・津上翔一(賀集利樹)。だが、翔一はすでにその未知の力を失っていた。
キャスト
©2026「劇場版アギト」製作委員会 ©石森プロ・東映





































