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アニメ『ニワトリ・ファイター』鳥類学者・川上和人先生によるニワトリ講座

【ニワカ知識はトサカにくるぜ!】鳥類学者・川上和人先生に聞く! アニメ『ニワトリ・ファイター』を2億倍楽しむためのニワトリ講座

 

ケイジのような進化は有り得るのか?

──主人公・ケイジの必殺技「鴣鴃鶻鵁(コケコッコー)」のように、ニワトリといえば「コケコッコー」と朝に鳴くイメージがありますが、そもそもどうして朝に鳴くのでしょうか?

川上:ニワトリに限らず鳥全般で言われているのは、鳥が鳴く主な目的は「縄張り宣言」や「メスへの求愛(メイティング)」です。それをどうして朝に行うかと言うと、朝は昼間に比べて雑音が少なく、空気が温まっていなくて気流が安定しているので、声が遠くまで届きやすいからと昔から言われています。

それに加えて、最新の研究では「縄張り意識が強い鳥ほど早朝に鳴く」ということがわかってきました。

ニワトリは一夫多妻なので、たくさんのメスを囲いつつ、自分の縄張りをガチガチに守るために縄張り宣言が必要になります。しかも、それを怠ると勝手に他のオスに縄張りに入り込まれてしまうかもしれない。だから、他のニワトリに自分の縄張りを知らせる意味で、朝一番に鳴いているのではないかと考えられます。

──求愛でも鳴くということは、オスとメスで鳴き方も異なるのでしょうか?

川上:基本的に「コケコッコー」と大きく鳴くのはオスで、メスは「コッコッコ……」と小さく鳴くと考えていただけたらと思います。鳴き声以外にも子育ての役割も全く異なっていて、オスは交尾をしたら子育てはしないし、卵も温めません。では、オスは何をしているかというと、ひたすら縄張りを守ることに専念しています。

──縄張り意識や気流のことなど考えると、実はニワトリはすごく頭が良いのでしょうか?

川上:いえ、頭が良いかどうかではなく、長い歴史の中でこういった行動をとる個体が生き残って多くの子孫を残してきただけなので、ニワトリが考えてやっているわけではないと思ってください。

頭の良さを何で測るかは難しいですが、体の大きさに対する脳の大きさが一つの基準になります。ニワトリと他の鳥を比べると、カラスなどと比べて頭が小さいんですよ。

ニワトリはキジ目に分類されますが、日本で見られる鳥の中で最も古い時代に現れた鳥のグループがキジとカモで、どちらも体のサイズに対する頭の大きさは小さいです。一番最後に現れたグループがカラスやスズメですが、その仲間は体に対して頭がすごく大きくて賢いタイプになります。

──たしかに頭の良いカラスの話はよく聞きます。

川上:いわゆる知性と言う意味では、ニワトリはそれほど高いわけではありません。しかし、古い時代に現れてから絶滅せずに生き残っていることは、非常に上手く環境に適応しながら素晴らしい進化を遂げてきたのだと思います。

だから、ニワトリたちは考えて工夫しているというよりも、長い歴史の中で数え切れないほどの障害を乗り越えながら洗練されて、それで今なお生き残っているのだから本当にすごいと思いますね。

──作中にはスマホを使いこなすメンドリのエリザベスも登場します。鳥が道具を使ったり、知的な行動をとるようなことは現実でも有り得るのでしょうか?

川上:道具利用となると、有名なのはガラパゴス諸島にいる「キツツキフィンチ」なんかは枝を使って虫を捕ったりもします。あとはニューカレドニアにいる「カレドニアガラス」は、自分で枝を加工して作った道具で虫を捕らえたりするんです。

こういう鳥って何故かガラパゴスやニューカレドニアみたいな島で進化することが多いのですが、それはおそらく島というのが食べ物の枯渇しやすい環境ということに起因しています。そういった場所では、枝や道具を使うような特殊なことをしないと生き延びられなかったんです。

ピンチに陥った集団ほど工夫をするんですね。工夫するということは頭を使うことなので、頭を使って考えるとものすごくエネルギーを消費します。エネルギーが必要になると、それだけ食べ物も必要になるので、本来であればそれをせずに済ませたいのが野生動物です。それでもなお頭を使わなければ絶滅してしまう状況にあると、道具利用のような進化が起きやすいんです。

だから、できれば野生動物は考えずに済ませたいんです。その方がお腹が空かないから、野生環境では馬鹿ほど有利なんです(笑)。

──そうするとエリザベスはかなりエネルギーを消費したようですね。

川上:ニワトリにそうした進化は起きづらいかもしれないと思いつつも、もう一つの条件としては逆に余裕がある時にも進化が起きることがあります。食べ物がたくさんあって、エネルギーをたくさん使っても生存上の問題が全くないくらい余裕があれば、頭を使う行動のような進化をしやすいです。

めちゃくちゃ貧乏で工夫しないと生きられない場合と、めちゃくちゃ金持ちで余裕がある場合の、その両極端で進化するかもしれないわけです。ただ、ニワトリは体の大きさに対して頭のサイズが小さいので、本作のエリザベスのような進化は難しいかもしれません。

余裕のある生活をしていて、エネルギーも有り余っていて、それで他の個体にはないくらい脳のサイズが大きくなっている、そういった条件があれば進化が起きる可能性もゼロではありません。エリザベスに関しては、大金持ちに飼われているから進化できたと思いたいですね。

──エリザベスはスマホを使って人間の飼い主と意思疎通します。文鳥などは人間とコミュニケーションを取るイメージがありますが、ニワトリも同じようにコミュニケーションをとることはできますか?

川上:それは無理です。人間は普通に会話をして、頑張れば英語などの言葉も覚えることができるじゃないですか。これは音声学習をしているわけです。しかし、鳥の中で音声学習、つまり後天的に他の生物の声を学習して鳴き声を変えることができるのは、鳥類の中でもスズメ目、オウム目、ハチドリ科の3種類だけです。

この3種類以外は、生まれた時に持っている鳴き方しかできません。だから、人間の音声を聞いてコミュニケーションをとれるように発達することは、生物学的も系統的にも無理ということになります。

──では、音声を真似るのではなく、人間の指示を理解したりするくらいはできますか?

川上:それは大丈夫だと思いますね。餌をくれる人を覚えたり、あるいは相手が攻撃的なのかなどを見極めることは、野生で生き延びるために重要なスキルです。同じ個体でも襲い掛かってくる時と、そうでない時の相手の反応を知ることは非常に重要で、それができないと進化できずに死んでしまいますから。

──単行本の第4巻では鳩と合コンするといった、種族を超えて交流するシーンがあります。動物によっては種を超えて共生することもありますが、戦う意識が強いニワトリが他の動物と共生することはあり得ますか?

川上:ひよこが犬や猫と仲良くなる事例はあるので、生まれた時から見慣れていて、相手が自分を攻撃してこないとわかっている状態であれば、種を超えて仲良くなることは十分できると思いますよ。

 

ニワトリについて気になるアレコレ

──ケイジもそうですが、ニワトリは白のイメージが強いのに、ひよこが黄色なのは何か理由があるのでしょうか?

 
川上:ひよこの黄色い羽毛には「カロテノイド」という成分が入っていますが、カロテノイドには抗菌作用もあるので、もしかしたら病気から身を守るバリアのようなものになっている可能性があります。

鳥には大人と子供で羽の色が違う場合がありますが、その理由の一つは見た目で大人になったとわかれば、大人同士でつがいを探したりできるんです。若鳥にしても、自分が若い鳥だと他から見分けがつけば、縄張り争いなどに巻き込まれなくなります。だから生きる上での信号みたいな意味で、こういった違いが重要になってきます。

鳥でも哺乳動物でも、背中が茶色くてお腹が白いものが多いのですが、茶色の毛はメラニン色素を含んでいるため太陽からの紫外線を吸収してくれるので、それでDNAの損傷を防いでいると言われています。

このように、実は大人側の羽毛や毛の色には多くの意味があるんです。でも子供の時にはそういったことよりも、むしろ成長にエネルギーを注がないといけないので、ひよこの羽毛のような形状でしのいでいるのでしょう。

あと、鳥の種類によっては、生まれる前から毛が生えているものとそうでないものがいますよね。ヒヨコのように地上で生活する鳥は、生まれた瞬間から捕食者に襲われるリスクがあるため、孵化した時点で歩けないといけないので生まれつき羽毛が生え揃っています。逆にメジロやカラスのように樹上に巣を作る鳥は歩けると、かえって木の上から落ちてしまうので、裸で目も開いてない状態で親鳥に守られながら成長するんです。

──ニワトリのモノマネをする時、みんな頭を前後に揺らしますよね。実際のニワトリもそんな感じで歩きますが、あれだと視界が悪くなる気がするのですが、あの動きに何か意味があるのでしょうか?

川上:実は逆で、あの動きをすることで視界が良くなっているんです。人間は眼球運動ができるので、例えば電車の中で風景が流れていくのを、体を動かさずに眼球を動かすことで風景の流れに対して眼を止めることができます。ところが、鳥の眼球は球状ではなく、平たく潰れた形をしているので眼球運動がほとんどできません。

しかも鳥は目が横についているので、ただ前に歩くと風景がどんどん流れていって逆に見えづらいはずです。だから、実はニワトリは頭を振っているのではなく、空間に対して頭を止めているんです。

つまり自分が前に進む時に、先に首を出して頭を固定して、後から体を前に出しています。そうすることで頭を出した瞬間は視界がブレますが、後から身体だけ動かしているあいだは安定して視界を確保できるんです。

だから、ちゃんと鳥を見てみると、1歩に対して1度だけ頭を動かしていることがわかりますよ。人間から見ると体に対して頭を動かしているように見えますが、あれは逆に空間に対して頭を止めている動きなんです。

──ニワトリというと毎日のように卵を産むイメージもありますが、どうしてあんなにポンポンと産めるのでしょうか?

川上:それも人間が卵を産む個体を選んできた結果です。ただし、野生の鳥でも、例えば卵を5個産むと決まっている個体がいたら、5個の時点で卵を産むのを止めて温めはじめるのが普通です。でも、そこから卵を盗むと、減った分を産み足していくんです。

ニワトリも同じで、巣に卵が残っていると、それを温め始めるから新たに産まなくなってしまいます。そこで人間が卵を取り上げ続けることによって、本来は5個しか卵を産まない個体が10個も産んだりするんです。鳥は元々そういった性質を持っているのが、ポンポンと卵を産む理由の一つです。

その中で、特にたくさん卵を産み続けるニワトリを人間が選んできた結果、年間で250個とか産むような現在の個体が誕生したわけです。ニワトリが卵を産み、人間がどんどん回収していき、それに対してニワトリが産み足していく、そんなサイクルが続いているんですね。

──卵と言うと、殻や黄身の色が濃厚だと栄養が高いみたいなイメージがあります。そういった色の違いで栄養価も異なるようなことは有り得るのでしょうか?

川上:生物学者としての見解を述べると「殻の色と中身の栄養価はあまり関係ない」です。黄身の色はカロテノイドという色素で、カロテノイド自体には抗菌作用などの良い面もあるので、それがたくさん含まれている色の濃い卵ほど良いものとも言えます。ただし、それはあくまでもカロテノイドに限った話なので、例えば黄身が濃いからといってアミノ酸などの他栄養素が豊富に含まれているかといえば、それはまた別の話ですね。

カロテノイドが多いエサをたくさんあげれば、当然ですが黄身の色は濃くなりますし、逆にカロテノイドが少ないエサを与えると白っぽくなります。殻の色は主に鶏の品種や系統で決まります。

珍しい殻の色としては「アローカナ」というニワトリの品種で、このアローカナの卵の殻は青いんです。青い卵と聞くと食欲がわかないかもしれませんが、系統的にそういう特徴を持っているだけなので、農協などで見つけたらぜひ食べてほしいですね。

──作中では、大葉の葉と玄米とコーンが盛られたものをご馳走と言ったり、海でウニを食べたりもしています。実際のニワトリも意外とグルメなんですか?

川上:ニワトリは雑食性なので色々なものを食べられますが、その中で何が好きかは本人に聞いてみないとわからないですね(笑)。例えば、野生のキジ目の鳥は、木の実や草の若葉だけでなく、ミミズなどの小動物も好んで食べます。ミミズにはタンパク質が多く入っているので、彼らにとってミミズはご馳走なのではないかと思います。

食べ物の味には全て意味があるんですよ。「旨味」はタンパク質の味なので、肉体を作るために必要です。「苦味」は元々は毒の味ですし、「酸味」は未熟なものや腐っているものに多いので、食べてはいけないものがわかる。「甘味」はエネルギー源になりますし、「塩味」はミネラルの味なので体に不可欠なものです。

人間もそうですが、その時に不足しているものを美味しいと感じるので、ニワトリも穀物ばかり食べているとミミズの旨味を取りたくなったり、逆にミミズばかり食べていると穀物とか若葉を美味しく感じるんじゃないかなと思います。

──ケイジは意外と味にうるさくて、カメムシを食べて「苦みがあって美味しい」と感想を述べたりしていますね。

ケイジ:普通の野生動物は苦みを嫌がることが多いので、だからこそカメムシなども食べられないように忌避物質として「苦み」といったものを出すようになっています。ただ、人間も進化の過程で「苦み」のような刺激を好むようになってきているので、家禽として長い歴史があれば、野生では食べないものでも好むように進化を遂げることは十分に有り得ると思います。もしかしたらケイジは食通に進化してきているニワトリなのかもしれませんね。

──ここまで様々なニワトリに関する知識をありがとうございました。最後に、アニメの放送を楽しみにしている方に向けて、鳥類学者の目線からメッセージをいただけますか?

川上:ニワトリは本当に誰にとっても身近で、あらゆる文化圏で愛されている鳥だと思います。この「ニワトリ」という鳥の中には、鳥類学のあらゆる面白さが詰まっています。

それこそ竜骨突起からは飛べる鳥であることがわかりますし、翼の骨の構造を見れば「癒合しているから、体を頑丈で軽くしているのだな」と僕らは思ったりもするわけです。ニワトリの骨格というのは進化の教科書みたいなもので学ぶことも多いので、骨格標本みたいな敵でも良いので、いつか劇中にニワトリの骨格が出てきてほしいと期待しています。

この『ニワトリ・ファイター』をきっかけに鳥類学の様々なことを学ぶことができるかと思いますので、一人の鳥類学者としても放送を楽しみにしています。

 
企画・取材:岩崎航太、撮影:小川遼、編集:太田友基

『ニワトリ・ファイター』原作情報

WEB連載開始と同時に、世界中で大反響を呼んだ前代未聞のオンドリ・バトル・アクション! ! ! !
これは一羽のニワトリが世界を救う物語であるーー。

原作『ニワトリ・ファイター』の単行本は、現在12巻まで好評発売中!
 

アニメ情報

ニワトリ・ファイター

あらすじ

これは、“一羽のニワトリ”が人類を救う物語である。

突如現れ、圧倒的な力で人類への攻撃を始めた“鬼獣(きじゅう)”と呼ばれる異形のモノ。
街が破壊され、絶望に暮れる人々…。
誰もが諦めかけたその時、鬼獣に立ち向かう一つの影が——!

「テメーら、トサカにくるぜ!!」

人類の前に降り立った、小さな希望。それは“一羽のニワトリ”だった。
前代未聞のオンドリ・バトル・アクション、開幕!!

キャスト

ケイジ:三宅健太
エリザベス:本多真梨子
ピヨ子:井澤詩織
ケイスケ:大野智敬
モリオ:かぬか光明
九冴音:甲斐田裕子
裕二:笠間淳
ヒカリ:藤原夏海
ケイザン:大塚明夫
サラ:遠野ひかる

(C) SS/KH,V

 

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