
アドリブOKの異例な収録!? 宮本茂×クリス・メレダンドリが語る『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』の制作裏舞台
マリオ映画は「下ネタ一切禁止」!? 子供を絶対に子ども扱いしない、究極のアクション哲学
──今回は宇宙が舞台ということで、前作以上にアクションシーンがダイナミックに動いている印象を受けました。アニメーションならではのアクションの動きやカメラワークなど、こだわりのポイントをお聞かせください。
宮本:前回の1作目を作る時に、「お客様はマリオの映画館で一体何を見たいんだろう?」と考えた時、やっぱり自分が過去に一生懸命遊んだマリオのアクションゲームのプレイ体験が、そのままリッチな映像になって客観的に見られるというのはすごく大事な要素だと思ったんです。「ゲーム内でかっこよくアクション操作をしている時の自分の姿(マリオ)を、大スクリーンで見たいな」というコンセプトでアクションを作り始めたら、それがやっぱり世界中のお客さんにも響いて大ヒットに繋がったんですよね。
そして今回の舞台は『スーパーマリオギャラクシー』なので、宇宙空間特有の様々な星の引力があり、重力のルールが変わります。地球上の通常の重力じゃない変則的な重力空間の中で、マリオたちの新しいアクションを見せられたら、それが本作のテーマに『スーパーマリオギャラクシー』の世界を使う最大の意味としてすごく良いものになると思いました。
ただ、実際に自分でコントローラーを握ってゲームをプレイしていると「変な方向の重力がかかっている」という感覚は直感的に分かって面白いんですけれども、受動的に映画のスクリーンで見ているだけだと、ただキャラクターの動きや重力が変になっているだけに見えてしまい、何が起きているか状況が分かりづらいじゃないですか。だから本作のアクションシーンとしては、基本的には観客が視覚的に分かりやすい通常の重力下で動いているように見せつつ、要所要所で「明らかに重力の方向が変になっているギミック」のアクションシーンも取り入れる、というミックスしたバランスで作っています。
例えば、ハリウッドのすごい大作アクション映画を見ていて、ド派手なカーアクションとかが画面内で多く展開されていても、「速すぎて、一体誰がどこで何を起こしているのか、状況がよく分からない」という状態になるのが、僕自身すごく嫌で。映像が豪華になればなるほど何が起こっているのか観客に伝わらなくなってしまうので、クリスさんたちや監督陣とは「画面内で何が起こっているのか、子供が見ても一目でハッキリと分かるようなアクションに作りたい」と徹底して話し合いました。今回は特に、クッパJr.とマリオのアクション戦闘シーンなんかをちゃんと見ていただくと、彼らがどんな地形で、どんな風に動いて攻撃していたかが、観客に全部伝わるように視認性高く作ってくれていて。それでいて迫力も損なわれていないという両立がうまくできていて、ここはさすがにアーロン監督とイルミネーションのアニメーターたちの素晴らしい手腕だと思いましたね。
──前作を劇場で見た際、子供たちがマリオの動きを見てケラケラと笑っている姿に、なんて素敵な空間だろうと感動しました。大人も子供も夢中になれる作品ですが、子供たちに向けて、お二人はどのようなモチベーションで本作を作られたのでしょうか?
宮本:僕はやっぱり、映画作りにおいてもゲーム作りにおいても、大人も子供も同じ目線で、同じように楽しめるものが作りたいなと本当に思っているんですよ。世間では「子供というのは単に知識の少ない未熟な大人だろう」とか、「子供は大人より思考力が劣っている」みたいに軽く扱う風潮もありますけど、子供だって物事をちゃんと深く考えているし、心の痛みも喜びも分かっているし、豊かな感情もある。ただ、生きてきた年数が短いから知識が少ないというだけで、人間としては大人と何も変わらないんですよ。
なのに、子供向けのエンタメを作ろうとすると、安易に「『おなら』って言ったり、下品な言葉を出しておけば子供は笑ってくれるだろう」と子供騙しのようなことをする作り手もいますが、僕はそういうことは絶対にやりたくないんです。だから今回も、クリスさんたち制作陣には「マリオの映画では下ネタは一切禁止にしてください」と伝えていて。実はその下ネタ禁止令を出しているから、下品なキャラクターであるワリオが映画に出れない状態になっているんですけど(笑)。別に意図的に彼を仲間外れにしているわけじゃないんです。僕は「子供は本質的な面白さをちゃんと分かっている」と信じて、子供をリスペクトして作品を作っているんですね。
そういう哲学のもと、安易なギャグに頼らず、純粋な驚きや理屈抜きで楽しめるアクションを中心に映像を作っています。高品質なアクションやアニメーションの動きというのは、言語や知識の壁を越えて大人も子供もちゃんと「面白い」と分かる普遍的な材料を持っていますから。そこを妥協せずに作れば、結果的に大人も子供も誰一人として退屈しない、皆が熱狂できるものが作れると信じてやっています。
クリス:先週末、実は私LA(ロサンゼルス)の映画館に足を運んで本作の先行上映を見たんですけれども。私は大体映画館に行くと、スクリーンで映画を見るということはしなくて、常にお客さんの反応を見ているんです。その時本当に嬉しかったのが、大人の方ももちろん喜んでいらっしゃったんですけれども、何より子供たちが心の底から喜んでいて、それが本当に嬉しかったなと思っています。
そこにたどり着くまでには様々な試行錯誤がありましたが、任天堂側には「本質的に何が面白いか、何がクリエイティブか」というインスピレーションやアイデアが、まるで自動生成される泉のようにどんどん湧き出てくる宮本さんという存在がいらっしゃいます。そういった天才的なクリエイターたちと一緒に共同制作をすることで、結果的に子供たちも大人の方々も一緒に楽しめる、最高水準のエンターテインメント作品にたどり着くことができたと思っています。
もちろん宮本さんは、「子供たちがどんなことをしたら喜ぶかな」と、マーケティング的で打算的な考え方はわざわざしないんです。ご自身の純粋な感覚から自然に、「こういうギミックを入れたら新しいよね、これなら大人も子供も絶対に楽しいよね」という本質を突いたアイデアが、どんどん宮本さんの口から出てくるんです。今回の映画制作の現場においては、まず宮本さんがアイデアの核となるビジョンを示し、我々イルミネーションの監督や制作陣がその宮本さんの考えの意図をしっかりと深く理解し、アニメーションとして具現化していく、そんな良い連携の感じで進めていったんです。
大体のアニメ映画の制作プロセスだと、「今の子供たちは何が流行りで、何が好きかな?」という表面的なデータのリサーチから考えて企画を進めていってしまうことが多いのですが、そうすると本当に探り探りの制作になってしまい、結果として芯のないつまらない作品が出来上がってしまったりするんです。しかし本作の制作陣にはそういう迷いが一切なくて、しっかりと宮本さんの確固たるビジョンと一緒にブレずに進めることができた。だからこそ、大人だけでなく子供の方々も心から夢中になって楽しめる素晴らしい映画になっているのだと思います。
昔ちょっとだけ遊んだ、という大人たちへ。3世代を熱狂させるマリオからのメッセージ
──長年マリオを愛し続けているファンや、今回の映画公開を楽しみにしている読者に向けて、最後に宮本さんからメッセージをお願いします。
宮本:昔、ゲームを「ちょっとだけ遊んだことがある」というぐらいのライトな経験でもいいんですよ。あるいは、自分でプレイしたことはなくても「友達や家族など誰かが遊んでるのを見たことがあった、知っていた」というだけでも、マリオという存在を知ってもらっているだけで作り手としては本当にありがたいなと思っていて。今回の映画を見ると、昔の懐かしい記憶が蘇って「マリオの世界のことを、なんか全部知っていたような気分」になれる不思議な体験ができるので、ゲームから離れてしまった大人の方にもぜひとも見て欲しいんですけども。
そもそも任天堂のキャラクターが持つ普遍的な魅力によって、「親と子の2世代で一緒に楽しんで見てもらえる」ということは僕らの長年のひとつの目標だったんですけど、マリオ誕生から40年が経った今は、おじいちゃん・おばあちゃんから孫までの「3世代」に広がっています。だから、親御さんと子供たち、そしてそのおじいちゃんおばあちゃんと、家族みんなを連れて映画館に来てもらえたらそれが一番良いなと。その3世代という幅広い年齢層を繋いで、共通の話題でコミュニケーションができる可能性を世界で最も持っているのが、任天堂のゲームキャラクターたちの強みかなと思います。
──素晴らしいお話をありがとうございました! 公開を心待ちにしております。
作品情報








































