
実写映画『キングダム 魂の決戦』レビュー|原作ありきの実写化だとか何だとかそういう次元を超えてきた
2026年7月17日から公開された、映画『キングダム 魂の決戦』。こちらは、原泰久先生の大人気漫画『キングダム』の実写作品第5段。今作では、紀元前241年、中国 函谷関(かんこくかん)での秦vs.合従連合との戦いが描かれます。
ここからは、この映画の感想を、極力ネタバレなしで述べたものになります。
※まっさらな状態で映画をご覧になりたい方は、ブラウザバックをお願いします。
いやもう、とにかく良かったです! 今見ておかないと人生損する映画です! 演技もカメラも構成もすばらしい! ……あまりに良いので言葉が出てきません。困りました。以下、個人的な考察を含むものになりますことをご承知おきください。
そもそも『キングダム』とは
『キングダム』は、秦で「天下の大将軍」を目指す青年 信(しん)と、後に始皇帝となる王 嬴政(えいせい)の2人を中心に、個性豊かなキャラクターたちが歴史を織りなされており、基本的には、司馬遷『史記』に記述された史実をベースにしています。とはいっても、『史記』でのたった一行が、私たちが感情移入できる世界へと広げてあるのが読ませるところで、単行本の売り上げ・アニメの人気・これまでの実写映画の興行記録と、その人気のほどは、誰もが知るところとなっています。
「戦争」への問いかけ
昨今、漫画原作の実写化がさまざま行われ、ヒットしたり炎上したりしているわけですが、『キングダム』の実写シリーズはその公開のたびに、実写作品の金字塔としての立ち位置を更新し続けてきました。この第5段目の作品というだけで、製作陣へのプレシャーはいかほどかと胃が痛くなりそう。
映画のエンドロールが長々と関わったスタッフの名前を映し出している時、まずは心の中で製作陣に拍手喝采。見事でした。前作まで出ていた人気キャラクター王騎(おうき)の不在を乗り越えるばかりか、彼への尊敬を紡ぎながら、新しい始まりと今だからこその価値を残した本作。死んだらそれで終わりではなくて、そこに光と新たな価値があるというのは、たんなるキャラクター愛にとどまらず、もはや歴史です。
戦争への意識的な問いかけ
さらに今回、実写化がどうとか何とかいう次元を超えてきています。それは、「戦争への意識的な問いかけ」です。
歴史上、戦争のない世紀などというものはなく、人間、世界のどこかでは常に戦争をやっているという悲しさと愚かしさ。佐藤信介監督、これにちゃんと向き合う作り方をしています。でも、エンターテインメント作品です。重くてお腹いっぱいということはまったくありません。見て良かった、もう一度見たい作品です。その匙加減というか、「戦争へのまなざし」からの逃げなさ加減に尊敬です。
日本の戦争の描き方には、主人公(善)が敵(悪)を倒すだけでは薄っぺらいというような雰囲気、敵には敵なりの正義があるとしてきた先人たちの積み重ねがありますよね。原作尊重の風が強い今、この辺りには各人それぞれのご意見があるでしょう。しかし、ここでは、ここをしっかり出したからこそ、飛び抜けた一本になったのだと強調しておきたいと思います。
正直、負ける側、やられた側の視点の方が、私たちには身近だったりするわけですからね。普段おおやけにするのが恥ずかしい格好悪い感情を、バーンと表現してくれる優しさとセンスです。
現場で愛される男 山﨑賢人
今回の作品は、7カ国から多くの人物が登場するわけですが、それをわかりやすく見せているのは、本当に感服です。歴史を知らなくても原作に詳しくなくても、「これ誰?」とは決してなりません。人物紹介のテロップひとつにも、繊細な工夫が効いています。
また、引きの映像とアップの映像とのダイナミックさも魅力。高い函谷関の壁、戦場にいる兵士の数、広い広い平地、そこから顔が見える位置まで迫っていくカメラ。誰がどこにいるかが、中国の黄土色の砂煙とともに伝わってきます。
壮大な空間に、多くの人間がそれぞれ戦っている中、やはり中心は、山﨑賢人さん演じる信。というか、もはや、「信を演じている山﨑賢人さん」と言ったほうがいいでしょう。主人公だからというだけではなく、自然に、周囲の役者さんたちが彼の方を向いているという印象です。
例えば、飛信隊の皆さんが雄叫びを上げるところ、志尊淳さん演じる蒙恬(もうてん)と神尾楓珠さん演じる王賁(おうほん)が信と話す場面など。普段から仲良いんだろうな、いい雰囲気でお仕事ができているんだろうなと、撮影現場の良さが伝わってくるような場面がたくさんありました。
「現場でも山﨑賢人は愛されている」と感じると、山﨑賢人ファンという自覚がなくても、よけいに彼の魅力が大きい作品だと思えてきます。それに大変失礼な言い方ですが、一作目からの成長が、信の成長と重なって見えてきまうんですよね。
『キングダム』の他にも、実写版『ゴールデンカムイ』(明治時代)、2028年大河ドラマのジョン万次郎(江戸時代後期)とタイムスリップしまくりでお疲れが心配ですが、しっかりお休みは入れて頂いてのますますのご活躍を期待してしまいます。
わかりやすい導入 ―山陽はどうなった?―
今回の作品が、原作の「合従軍編」を描くということは公開前から明かされてはいることでした。これは、原作ではこの前にある「山陽の戦い」が飛ばされるということになるわけで、『キングダム』ファンの間ではストーリー上の不都合を心配する声が上がっていました。こちら、どうなったでしょうか?
結論を言うと、不安を打ち消すどころか、たいへんわかりやすい導入となっていました。映画の冒頭部分で、前回までの物語をさらって山陽の経過まで演技なしに説明がなされるのですが、その構成が親切です。しかも、無駄のない文章と美しい映像での表現です。
YouTubeに上がっているメイキング映像によると、新しい技術が使われ、そこにまた多くの方々が携わっていることに驚かされます。技術の進化にこの構成力よ!と本当にすごいなあと思います。
これぞエンタメ! エンタメってすばらしい!
役者さん個々を褒めていくと長くなりますので、ここまで。皆で感想を語り合ったら長くなりそうです。この映画公開と同時代に生きている幸せよ、ということで、人類皆スクリーンへ!
作品情報
あらすじ
中華統一を目指す若き王・嬴政を壮大なスケールで描く漫画「キングダム」(原泰久/集英社)。
2019年から2024年にかけ、実写映画として4作品を公開し、
シリーズ累計動員1734万人、シリーズ累計興行収入245億を突破。
数々の映画賞とその年の邦画実写映画No.1を獲得するなど、
日本映画界に燦然と輝くエンターテインメント超大作となった。
漫画は連載20周年を迎え、映画も新たな伝説の幕開けへ。
シリーズ5作目『キングダム 魂の決戦』で描かれるのは、“絶体絶命”。
原作でも屈指の人気を誇るエピソード“合従軍編”。
シリーズ最大規模で激突する<秦 vs 六国>の魂の大攻防戦。
秦国存亡をかけた運命の決戦が、この夏、大炎を巻き起こす―。
キャスト
(C) 原泰久/集英社 (C) 2026映画「キングダム」製作委員会























