
「普段は見えていなかった誰かの心に気づくきっかけに」映画に込めた想いと制作秘話! 上田華子監督、脚本を手掛けた成田良美さん、中川真緒P、多田香奈子Pが登壇『映画名探偵プリキュア!不思議な庭と2人の秘密』スタッフトークイベントレポート
かりんの葛藤をどう描いた? 大切にした心のリアリティ
最後に寄せられたのは、かりんと同じような経験をしたというファンからの質問。映画から勇気をもらったという感想とともに、物語を考えるうえで大切にしたことを尋ねる内容だった。
成田さんは、テレビシリーズから描かれてきた「一歩を踏み出す」というテーマを、映画で踏襲したいと考えていたという。多田プロデューサーが「中川さんと私、それぞれの思いが合わさって具現化したのが、かりんちゃんなんです」と語ると、中川プロデューサーも「本当にそうで」と同意。すると成田さんも「私にもあります。すごく感情移入しながら書きました」と頷き「観てくださった方が、ひとりでも一歩を踏み出せる勇気をもらえる映画になったらいいなという思いがあったので。そう言っていただけるのは、いちばん嬉しい感想です」と、脚本に込めた想いを明かした。
中川プロデューサーも「ただ楽しかったで終わるのではなく、映画館を出て一歩踏み出したあと、自分も頑張りたくなるような映画にしたいと思っていたんです。本当にそういう作品になったなと思います」と、制作当初から抱いていた願いを明かす。上田監督は、心の変化を映像として描くため、登場人物の表情を特に大切にしたという。今回は顔に寄ったカットも多く、子どもたちにも心情が伝わるよう、表情を読み取れる演出を心がけたそうだ。多田プロデューサーは、かりんの感情のリアルさにも言及。「だって、くれあさんが探偵とパティシエを両立していると知ったら、『プリキュア』の世界なら“すごい!”“そうなんだ、ありがとう!”で終わりそうなところを、かりんちゃんは“私はパティシエのほうだけなのに”と感じてしまう。でもこういう感情って、私たちも日常の中で抱くことがあると思うんです。“あの人はあんなにできるのに”って」と、具体的な例を挙げて共感を示す。さらに、テレビシリーズ第5話「名探偵の大ピンチ」、第6話「奇跡のプリキットミラールーペ!」で描かれたあんなの嫉妬のリアルさにも言及し「私はあの生々しさも大事だと思っています。いつか、お子様たちにも伝わると思います」と力強く伝え、映画でもそうした感情が丁寧に描かれていたことに、深く心を動かされたと振り返った。
「今の自分を絶対に否定しないでほしい」映画にそれぞれの託した願い
トークの終盤には、新たな入場者プレゼントも紹介された。
10月16日(金)から配布される第5弾入場者プレゼント「キュアット集合★プリクラ風ステッカー」に続き、10月23日(金)からは第6弾として、上北ふたご先生描き下ろしの「名探偵★スペシャルカード」が登場。映画のオリジナルキャラクターやプリキュアたちが栗拾いを楽しむイラストが披露されると、客席からは歓声が上がった。当初ポストカードほどのサイズを予定していたそうだが、上田監督が「こんなにキャラクター数がいるなら、倍(のサイズ)にしてほしい」とお願いしたという裏話を紹介すると、観客から「ありがとうございます!」と感謝の声が上がっていた。
フォトセッションを終え、イベントは終盤に。惜しむ声があちこちから上がるなか、一人ひとり、ファンへ向けたメッセージを。
多田プロデューサーは、自身もかりんと同じような悩みを抱え、落ち込んでは立ち上がることを繰り返していると明かした上で「この作品を作るときに、ひとりでも、心が楽になる人がいたらいいなという想いで作らせていただきました。そして、かりんちゃんのように悩んでいる人がいたとしたら……これだけは大事にして欲しいというのが、今の自分を絶対に否定しないでほしいことです。かりんちゃんは、誰かのために生きて、絶対に諦めないというプリキュアの精神性を持っている子だと思うんです。でも、誰かのために生きて、絶対に諦めないというのは、今の時代、すごく生きづらいことでもあると思うんですよね。それは皆さんも感じることがあると思います。“自分のために生きたほうがいい”とか“諦めたほうがいいこともある”というのは、生きていればよく出てくる言葉ですし、それも全然間違っていない。自分の心を守るために大切なときもあると思います。でも、プリキュアは、未だかつてそういうことを一度も言ったことがないんです」と感極まりながら伝えていく。
多田プロデューサーは「なんで私、泣きそうなんだろう」と苦笑しつつ、客席からは「頑張れー!」という温かな声が送られた。
「誰かのために生きて、諦めずに一生懸命前に進む人は、すごく弱いけれど、すごく強くて、本当にプリキュアなんです。これは私自身にも言っていることなんですけど、かりんちゃんのように悩む人は、強くて、弱くて、でも優しい自分を、これからも大切にしてほしいなと思います。そういうときには、いつもプリキュアがそばにいるので、これからもプリキュアを応援してください」
続いて中川プロデューサーは、自身も『ふたりはプリキュア』を見て育った世代であることに触れ、今回の映画に込めた想いを語った。
「今回初めてプロデューサーを担当したのですが、作品を作るとなったときに、プリキュアらしい映画にしたいなと思ったんです。それで上田さんと成田さんにお声がけしたんですけど、おふたりには“プリキュアらしい映画にしたい”とは特に伝えていなかったんですよね。でも、本当に私が観たかった映像ができて、皆さんにも喜んでいただけたのかなと思うと、自分がプロデューサーをやった意味があったのかなと思います。
Xなどで皆さんの感想を見ていると、自分たちが届けたかったことや、私の中で“こういうことが伝わったらいいな”と思っていたことが、そのまま伝わっているように感じるんです。それが本当に嬉しくて。私自身、いろいろな作品に救われながらここまで来たので、ただ“楽しかったな”と消費するだけではなく、観終わったあとに少し振り返って、自分の人生を頑張りたくなるような、背中を押してくれる作品になったらいいなと思っていました。そういう感想もいただけて、意味のあるものを作れたのかなと思っています」
さらに「言うか迷ったのですが」と前置きした上で、「名探偵とプリキュアの共通点は諦めないことですが、私は勝手に“プリキュア1位を諦めない”と掲げています」と、さらなるヒットへの意欲も見せ、ファンへの感謝を伝えた。
続いて成田さんは、長年『プリキュア』シリーズの脚本を手掛けてきた立場から、変わらず大切にしている想いを明かした。
「長い間プリキュアを書いてきましたが、いつも心がけているのは、キャラクターたちを愛してもらえるように、そして応援してもらえるように、ということです。そういう想いを込めて、いつも『プリキュア』を書いています。先ほど応援上映を最初の20分くらい見させていただいたんですけど、皆さんの熱烈な応援の声を聞いて、私もパワーをいただきました。ありがとうございます。プリキュアはこれからもたくさん生まれるでしょうし、私もお声がけがある限りは書き続けていきたいと思っていますので、これからも応援をよろしくお願いします」
そして最後は上田監督。ポチたんのポーチから取り出したのは、文字がびっしりと書き込まれたキュアミスティックのバースデーカードだった。伝えたいことが多く、覚えきれないため、2枚のカードに書いてきたという。
「映画をどういった内容にするか、企画が始まってから約1年。この映画だけに集中した1年を過ごしました。ずっとあんなちゃんやかりんちゃんのことを考えて過ごしてきたので、映画が完成したときには“終わったんだな”と、かなり寂しい気持ちにもなったんです。そして9月18日に映画が公開されて、いろいろな方のご意見を目にして思ったのが、私はこの作品を通して、『プリキュア』というシリーズに恩返しがしたかったのかもしれない、ということでした。私が小学生のときに『プリキュア』シリーズが始まり、『ふたりはプリキュア』に出会ってから、ずっとプリキュアが好きでした。23年も走り続けてきてくれて、ずっと希望と勇気を届けてくれています。映画を観てくださった方からは“心が軽くなった”“勇気をもらった”という意見をいただいて、私は無意識のうちに、かりんちゃんを通して、自分がプリキュアから感じた光や、救われた気持ちを映像として表現したかったのかもしれないと思いました」
そう振り返った上で、作品が掲げる「自分で見て、感じて、考えて、“本当”の答えを出す」というテーマにも言及。誰かを思って取った行動であっても、それが本当に相手のためになっているのか。そうした問いが、今回の映画を作る出発点にあったという。
「アランの行動は、一時的にはかりんちゃんを守れていたかもしれません。でも、かりんちゃんが再び世界に歩み出すきっかけを奪ってしまっています。かりんちゃんのような悩みを抱えている子は、その気持ちを隠すのが上手で、なかなかSOSを出してくれないと思うんですよね。今回は、映画の中で、アランのもとにレインとダメダメが現れたことで気づいて、救うことができました。でも、実際は、そううまくはいかないこともあると思います。だからこそ、この物語を通して、キュアアンサーやかりんちゃんの出した答えが、観てくださった方たちの背中を押して、普段は見えていなかった誰かの心に気づくきっかけになってくれたら、どんなに嬉しいことかと思います。心の機微は、お子様には少し難しいかもしれません。でも、プリキュアの活躍を観て楽しんでもらうのと同時に、普段の生活の中で、一緒に遊ぶお友だちの気持ちを少しでも考えるきっかけになってくれたら嬉しいです。たくさんの方たちの明日も良い日であるよう、心から願っております」
上田監督の言葉に、会場からは大きな拍手が送られた。増井優花さんと吉武千颯さんによる映画エンディング主題歌「FIRST PRISM」が流れる中、登壇者たちは客席に手を振りながら退場。温かな余韻に包まれながら、スタッフトークイベントは幕を閉じた。
なお、10月31日(土)に全国47都道府県・53劇場で「映画たんプリはなまる応援上映」が再び開催。この日の応援上映では、TVシリーズのキャラクターデザインを手掛ける矢野茜さん描き下ろしの応援カードが来場者に配布される。盛り上がりはまだまだ続きそうだ。
[取材・文/逆井マリ]
作品情報
あらすじ
なぞの生き物・ダメダメ調査のつもりが・・・
ここはどこ?
ある日、街でウワサの「バツ印事件」が発生!
バツ印をつけられると大切なものが動かなくなったり、
使えなくなったりして、みんな困っているみたい…。
そんな「バツ印事件」を追うあんたたちの前に
妖精の依頼人・レインが現れる。
彼の依頼は、「ダメダメからかりんを守って欲しい」というものだった!
レインに案内されてたどり着いたのは、
まるで夢のように綺麗な場所「かりんの庭」。
そこで出会った少女・かりんと、彼女を見守る妖精のアラン。
アランとレインはかりんのことをとても大切に思っているみたい。
かりんと仲良くなったあんたたちは、早速調査開始!
ところが!平和な庭にも、突然ダメダメが現れて…。
ダメダメって一体なに!?
不思議な庭に隠された秘密とは・・・?
そして!「キミとアイドルプリキュア♪」と
「わんだふるぷりきゅあ!」も駆けつけるよ!
「名探偵プリキュア!」と一緒に、バラバラのヒントを
つなげてナゾを解き明かそう!
そのナゾ、映画館でキュアット解決!
キャスト
小林みくる/キュアミスティック:本渡楓
帆羽くれあ/キュアエクレール:長谷川育美
森亜るるか/キュアアルカナ・シャドウ:東山奈央
咲良うた/キュアアイドル:松岡美里
蒼風なな/キュアウインク:髙橋ミナミ
紫雨こころ/キュアキュンキュン:高森奈津美
プリルン/キュアズキューン:南條愛乃
メロロン/キュアキッス:花井美春
犬飼こむぎ/キュアワンダフル:長縄まりあ
犬飼いろは/キュアフレンディ:種﨑敦美
猫屋敷ユキ/キュアニャミー:松田颯水
猫屋敷まゆ/キュアリリアン:上田麗奈
ポチタン:加藤英美里
シュシュタン:礒部花凜
マシュタン:羊宮妃那
ジェット先輩:梶裕貴
かりん:鬼頭明里
アラン:島﨑信長
レイン:内山昂輝
ダメダメ:西村真二 きょん(コットン)
(C)2026 映画名探偵プリキュア!製作委員会

































