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『ファインディング・ドリー』×『ポッピンQ』日米アニメ監督対談!

日米それぞれのCGアニメーションによる挑戦――『ファインディング・ドリー』アンガス・マクレーン監督×『ポッピンQ』宮原直樹監督対談

世界的な大ヒットを記録した『ファインディング・ニモ』(2003年)の1年後を舞台にした続編、ディズニー/ピクサーアニメーション最新作の『ファインディング・ドリー』が、7月16日(土)より公開されます。

今作の主役は、『ファインディング・ニモ』で、「マーリン(ニモのお父さん)」たちと一緒にニモ探しで大活躍した、陽気で親切な「ドリー」。何でもすぐに忘れてしまうドリーが、たったひとつ忘れなかった「家族の記憶」を頼りに、ドリーの家族を探す大冒険が繰り広げられます。

そんな夏の期待作『ファインディング・ドリー』の共同監督である「アンガス・マクレーン監督」にインタビューを実施できる機会を頂きました。彼は、『バグズ・ライフ』(1998年)から『トイ・ストーリー3』(2010年)まで、ピクサーのすべての長編作品に携わってきたというCGアニメのプロフェッショナル。そこで、今回は通常のインタビュー記事とは主旨を変え、「CGアニメーション」をキーワードに日米アニメーション監督対談でお届けします。

日本のCGを使ったアニメーション映画監督として、対談参加していただくのは、東映アニメーションのオリジナル長編映画『ポッピンQ』より宮原直樹監督。宮原監督といえば、『プリキュアオールスターズDX 3Dシアター』(2011年:宮原監督作)などの「プリキュア」シリーズを筆頭に、数多くの作品でCGアニメーションディレクターを務めてきた東映アニメーションを代表するCGアニメの先導者。『ポッピンQ』では、中学卒業を目前に控えた5人の少女たちが出会い、それぞれが自分の悩みや不安と向き合いながら、ダンスで世界を救う姿が、作画パートと3Dダンスパートを組み合わせた独自の表現方法で描かれます。

▲写真左より、『ポッピンQ』宮原直樹監督、『ファインディング・ドリー』アンガス・マクレーン共同監督

▲写真左より、『ポッピンQ』宮原直樹監督、『ファインディング・ドリー』アンガス・マクレーン共同監督

ピクサーと東映アニメーション『ファインディング・ドリー』と『ポッピンQ』。CGアニメーションでつながった両監督からは、お互いの作品がどのように見えるのでしょうか。

 

■ ドリーを助けるニモ/5人のヒロインの道標になるポッピン族

『ポッピンQ』宮原直樹監督(以下、宮原):『ファインディング・ドリー』、拝見しました。アニメーションやCG技術の部分は良いに決まっているのですが、作品メッセージも素晴らしかったです。「会いたい!」「助けたい!」といったキャラクターそれぞれの想いが、ストレートに伝わってきて、映画として非常にレベルの高い作品で感銘を受けました

キャラクター配置の話でいうと、『ファインディング・ドリー』は前作「ニモ」から主人公が変わったことにまず驚きました。どうなるのかなと……。ただ、それが非常に成功していますよね。マクレーンさんとしては、主人公を変更することに対してどんな想いがあったのでしょか?

『ファインディング・ドリー』アンガス・マクレーン共同監督(以下、マクレーン):もともとは、『ファインディング・ニモ』の続編を作る予定はなかったんです。でもアンドリュー・スタントン監督のほうで、ドリーはどういうところから来て、どこに向かっていくのか――といった点をとても気にかけていて、ドリーのバックストーリーを紹介したい気持ちがあったんです。そして『ファインディング・ニモ』のファンのみなさんに、「ドリーは大丈夫なんだよ」というところを伝えたかったんです。そんな経緯から出発して、今回はドリーが主人公になりました。

宮原:なるほど、そんな流れだったんですね。前作を楽しく観た自分としては、危険な冒険に出ることを躊躇するマーリンに対してニモが、「今度はボクがドリーを助けるんだ!」と父親の背中を押すシーンあったりと、前作のキャラクターが立派に成長している場面も多く、素晴らしかったです

マクレーン:そう言っていただけると嬉しいです。私も『ポッピンQ』の短いパイロットフィルムを見せていただきました。ダンスシーン中心だったのでストーリーに関してはわかりませんが、キャラクターやアニメーションに、筋が通っている作品という印象を受けました

宮原:『ポッピンQ』は、ストーリーを簡単にいうと、「青春と冒険」になります。中学卒業を間近に控えた5人の女の子が主人公で、彼女たちは、それぞれ悩みや不安を抱えながら、ダンスで世界を救う物語なんです。

マクレーン:妖精のような子たちも5人いましたが、あれはなんですか?

宮原:5人が迷い込む不思議な世界の住人「ポッピン族」です。人間とペアになっていて、パートナーは心がつながっています。悩みを抱えるヒロインたちに対して、道標や鏡のような立場で答えてくれる存在です。女の子たちがより際立てばと思い設定しました。

女の子、ポッピン族ともにイラストレーターの黒星紅白さん(ライトノベル『キノの旅』やゲーム『サモンナイト』などを担当。アニメでは、『世界征服~謀略のズヴィズダー~』の原案を担当)という方にキャラクター原案をお願いしたのですが、「同じ世界にいても大丈夫」と思えるような、両者の親和性がとれるデザインに仕上がったと思います。

『ポッピンQ』では、ヒロインたちをリアルに寄せて描いたので、ファンタジーの世界でポッピン族と出会った時にどういう絵に見えるのか、どうしたらよりお客さんの心に響くのか――といったところも制作テーマのひとつでしたね。

マクレーン:完成したフィルムも、ぜひ観てみたいです!

宮原:是非!

 
■ 技術の粋を集めたハンク(ファインディング・ドリー)とダンス(ポッピンQ)

宮原:それから、今作から登場するミズダコのハンク(日本語吹替版CV:上川隆也)。カメレオンのようにまわりの風景に擬態したり、7本の足がうねうねと複雑に動いたりと、僕としてもすごく好きなキャラクターになりました。技術視点からも動きや表現が複雑で、素晴らしいですね。やっぱり気になるんです、CGを少しかじっているもので……。

一同:(笑)

宮原:大変さがわかりすぎるくらいわかっちゃうんです(笑)。そういう意味で、ハンクのキャスティングは、映画として大きな決断だったんじゃないですか?

マクレーン:おっしゃるとおりです。その点、気づいてくださってうれしいです(笑)

ハンクの登場は、モデリングや関節の動かし方などを考えると、当初から膨大な作業量を感じていました。でも、「大変だからこそ今作で挑戦すべき課題のひとつだ」という思いでいました。現場としても「苦労があるからこそ、ビッグチャレンジだからこそ、逆にやってやろうじゃないか!」という興奮もありましたね。ただ、実作業はかなり大変で、決して楽しみにするようなものではなかったですけどね(笑)。

宮原:本当にビッグチャレンジですよね。

マクレーン:今回の場合、「この人だったら」と思えるアニメーターが見つかったら実現できたんです。足をグニャグニャ動かして移動するような、動的な表現が得意な方が1人。逆に静的な表現がうまい方を1人。あとは2Dから来ている優秀なメンバーをアサインしています。彼らのスケジュールを確保できなかったら、ハンクは絶対に作れなかったですね。

優秀なアニメーターがいるからこそ、新しい表現に挑戦できる……といったような。「人ありきで」で、物事が動くことってありませんか?

宮原:『ポッピンQ』の場合、ダンスシーンがまさにそうですね。『ポッピンQ』は、ダンスの美しさよりも、少女たちが身体を動かす喜びを全身で表現するような「フィジカル(身体)」を表現しようと思ってます。これは、我々が長年作ってきた『プリキュア』のダンスのような、動きの連帯感を高めて一体感で魅了する「ショー」的な表現とは違うチャレンジになっているんです。

「フィジカル(身体)」を表現するためにモーションキャプチャーの収録をダンサーさんではなく、「ダンスの踊れる役者さん」にお願いしました。実際にステージで活躍されていて、演技はもちろん身体的な能力の高い彼女達の協力があってこそできた表現だなと思っています。

 
■ 感情の乗った動きを積み上げて感動をつくる

宮原:ピクサーさんって、未開拓の分野や高いレベルの場所を目指していく姿勢がとてもすごいですよね。技術的に難しくて、かつ真新しい題材をあえて選んでいるようにも見えますが、逆にそこに縛られるようなことはないのですか? たとえば、物語中心で考えると、技術的なチャレンジの少ない部分が懸念材料になったりするなど……。そういった技術をベースにしたチャレンジへのプレッシャーはあるのでしょうか?

マクレーン:それはありませんね。『ファインディング・ドリー』や他の作品もふくめて、自分たちが感じるプレッシャーはひとつ、「素晴らしいものを作り上げたい」というものです。結果的に、チャレンジレベルの高いものが多く、技術ありきの印象はあるかも知れませんが、私達が大切にしているのは「おもしろい映画を作る」です。これは、クリエイターなら共通することかもしれませんね。

宮原:それね~。良いプレッシャーですね~。

一同:(笑)

マクレーン:もちろんその先には、本当に狙い通りの画を作れるのか……という別のプレッシャーが出てきますけれど。たぶん、そこも種類こそ違えども共通しているんじゃないでしょうか。

『ポッピンQ』を拝見していても、日本的な省略の表現の中に、僕らとは違った難しさ、悩み、大変な苦労があるんだろうなと感じます。先ほどのモーションキャプチャーのお話でも感じましたが、「シンプルで難しいこと」をやっていますよね。ダンスシーンでも、あんなに凝ったカット割やカメラワークはあまり見たことがないですし、本当に素晴らしいと思います。

ピクサーは、常に新しいチャレンジはしていますけど、複雑だから難しいということはないんですよね。CGとしてより複雑な表現を多用するピクサー作品と、セルアニメーションに根差したシンプルな表現の東映アニメーション作品、それぞれの異なる課題の中で別の難しさがあるんだと思います。

宮原:そうかもしれませんね。お話して『ファインディング・ドリー』は、アクションひとつひとつの中に、各キャラクターの想いがすごく入っているなと改めて感じました。本当に素晴らしい映画でした!

マクレーン:ありがとうございます。『ポッピンQ』、アメリカでもぜひ公開してくださいね!

宮原:したいです! まずは完成にこぎつけるようにがんばります(笑)。

[取材&文・小林真之輔]


■『ファインディング・ドリー』 作品情報

『ファインディング・ドリー』
7月16日(日)全国ロードショー

【イントロダクション】
「ファインディング・ニモ」のスタッフ再結集──
忘れられない感動の夏を、あなたニモ。
「今度はボクがドリーを助けてあげる」
「ファインディング・ニモ」の奇跡の冒険から1年後の世界を舞台に、ニモとマーリン、
そしてカメのクラッシュや、個性豊かな新しい仲間たちも加わり、ドリーの家族を探す感動の冒険が始まります。
この夏――
宝石のような美しい世界に包まれた、《忘れられない旅》に出かけてみませんか?

【ストーリー】
あなたの忘れられない《思い出》は何ですか?
それは、何年たっても、どんなことがあっても、決して色あせることのない、かけがえのない宝物…。
カクレクマノミのニモのいちばんの親友で、何でもすぐに忘れてしまうドリーが、たったひとつ忘れられなかったもの──
それは、小さなころの《家族の思い出》でした。
どうして、その思い出だけを忘れなかったのだろう?そして、ドリーの家族はいったいどこに…?
謎に包まれた秘密を解く鍵は、海の生き物にとって、禁断の場所=《人間の世界》に隠されていました…。

【スタッフ】
監督:アンドリュー・スタントン
共同監督:アンガス・マクレーン
製作総指揮:ジョン・ラセター
製作:リンジー・コリンズ
脚本:ヴィクトリア・ストラウス
音楽:トーマス・ニューマン
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

【日本語吹替版キャスト】
ドリー:室井 滋
マーリン:木梨憲武
ハンク:上川隆也
デスティニー:中村アン
ニモ:菊地 慶 ほか



>>ディズニー公式サイト『ファインディング・ドリー』



■『ポッピンQ』 作品情報

『ポッピンQ』
NEXT WINTER ROADSHOW

【ストーリー】
別々の方向を見ていた、その時までは―。
その日は、私たちに必ず訪れる中学校卒業式。
だけど、みんながみんな、晴れ晴れした気持ちで卒業できるわけじゃない。
悩み、コンプレックス、未来への不安、そして別れ
逃げたいけど逃げちゃいけない気がする
でも今苦しくて仕方がない
自分を変えたいのに変えられない
乗り越えたいのに乗り越えられないものばかり
このままじゃ、何を卒業するかわからない!
卒業って本当に必要?
卒業なんてできない!!
そんな思いを抱えて卒業式の朝を迎えてしまった、
学校も違う、見ず知らず同士の5人の女子中学生。
―彼女たちの運命の糸が突然に絡み合い、新たな時が動きはじめる。

【スタッフ】
企画・プロデュース:松井俊之
プロデューサー:金丸 裕
原作:東堂いづみ
監督:宮原直樹
キャラクター原案:黒星紅白
脚本:荒井修子
キャラクターデザイン・総作画監督:浦上貴之
美術設定:坂本信人
美術監督:大西 穣
音楽:水谷広実(Team-MAX)、片山修志(Team-MAX)
オープニングソング:「ティーンエイジ・ブルース」(P.IDL)
配給:東映
アニメーション制作:東映アニメーション
製作: 「ポッピンQ」Partners

【キャスト】
小湊伊純:瀬戸麻沙美
日岡 蒼:井澤詩織
友立小夏:種﨑敦美
大道あさひ:小澤亜李
都久井沙紀:黒沢ともよ
ポコン:田上真里奈
ルチア:石原夏織
ダレン:本渡楓
タドナ:M・A・O
ルピイ:新井里美 ほか

【ラジオ】
『RadioポッピンQ~ほんのすこし面白くする、それだけで世界は変わる~』
インターネットラジオステーション「音泉」にて隔週配信中
パーソナリティ:瀬戸麻沙美(小湊伊純 役)、小澤亜李(大道あさひ 役)、黒沢ともよ(都久井沙紀 役)
『大道あさひの可愛いもの探そ♪』も同時配信中
パーソナリティ:小澤亜李(大道あさひ 役)
>>『ポッピンQ』公式サイト

>>『ポッピンQ』公式サイト
>>『ポッピンQ』公式ツイッター(@POPIN_Q_staff)

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(C)東映アニメーション/「ポッピンQ」Partners 2016
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