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『天空のエスカフローネ』トークショーで語られる“スタート”とは?

赤根和樹監督 、坂本真綾さん、関智一さん、三木眞一郎さん、それぞれのスタートがここにある――『天空のエスカフローネ』トークショーレポート

 歴代のサンライズ作品を劇場のスクリーンで上映するイベント「サンライズフェスティバル2016 満天」。その一貫として、2016年9月3日に、TVアニメ『天空のエスカフローネ』のオールナイト上映会が、TOHOシネマ新宿にて開催されました。今回の上映会は、赤根和樹監督セレクションによる13話を劇場で楽しめるという、20周年にふさわしいファンイベント。

 さらに上映の前には、赤根和樹監督、神崎ひとみ役の坂本真綾さん 、バァン・ファーネル役の関智一さん、アレン・シェザール役の三木眞一郎さんら4人のゲストを招いてのトークショーが行われ、当時の思い出や裏話が語られました。ここでは、トークショーの模様をお届けしていきます。

当時の思い出を振り返るメインキャスト陣

 冒頭のあいさつでは坂本さんからは「神崎ひとみ役の坂本真綾です。“神崎ひとみ役”って言うのも久しぶりですね」関さんからは「未だにこんなにたくさんの方が『天空のエスカフローネ』を見に来てくださるんですね」三木さんからは「僕は本当にこの作品が好きなので、こうやって上映されるのは嬉しいです」と3人は思い出を噛みしめるようにトークし、登壇ゲストが笑顔になるたびに観客も笑顔を見せていました。

 最初に話題に挙がったのは、オーディションにまつわるエピソード。坂本さんからは「今では高校生の声優さんも多いですけど当時は珍しかったんです。オーディションの話が来ること自体も珍しいことだったんですが、学校が長引いて当日に遅刻しちゃったんです」という話に驚く一同。当時15 歳の現役女子高生だった坂本さんは、遅刻の末、一度は帰ろうと悩んでいた時に偶然劇団の先輩に会うことができたため、結果的にオーディションを受けることができたのだそうです。「順番が最後になったことが、逆に監督達の印象に残ったのかもしません」と坂本さん。この時のちょっとした運命のいたずらが、その後の坂本さんの人生を大きく変えたとも言えるでしょう。

 一方、関さんにとって本作の現場は、「お前の芝居は70点なんだよ。0点か100点にしろ」など、とにかく厳しく過酷な場所だったと語ります。いつものように冗談っぽく話していましたが、「『天空のエスカフローネ』=“怖い現場”って感じでしたね」と当時の心境を露わにしていました。

 三木さんは「キャラ表を見たときに“ロン毛で剣士だ”と思いました(笑)。当時はそんな役に触れる機会が少なかったので、オーディションを受けられるだけでも嬉しいなと思っていました」とコメント。「見た目も似てましたよね」と関さんが話すと、「アフレコの前はニンニクは食べないって後で聞きましたよ」と坂本さん。どうやらアレンへの坂本さんのイメージを崩さないよう、外見も含めアレン的な振る舞いを徹底していたと話していました。

 また関さんも、女子高生である坂本さんを意識していたようで、「横で何度もダメだしを受けていると、16歳の女の子の足を引っ張っているように感じて、自己嫌悪に陥ってましたよ」と語ります。これに坂本さんは「全然わからなかった……」と驚きを隠せませんでした。

最終話について語る坂本さんの瞳にはうっすらと涙も……

 本作が作られた経緯として、赤根監督から「当時は“ロボットは男の子しか見ない”ものだったけど、女の子にも見てもらいたかった。だったらロボットもの+恋愛要素を入れればいいんじゃないかと思ったんです」と話します。初監督で新たな挑戦を込めた『天空のエスカフローネ』。しかし、某・美少女戦士が流行っていたため、プロデューサー陣の要望でひとみが超能力を使った設定も候補として挙がっていたそうです。「それだと少年漫画だよね」という結論を持った赤根監督は、もう一度作品に向き合い、少女漫画のテイストを盛り込んだ設定へ軌道修正していきました。

 そうして出来上がった本作の最終回はひとみとバァンが離れ離れになってしまうという結末。「私は子どもだったから、ラブストーリーって二人が最後にくっつくんでしょ? って思っていたんです。“おばあちゃんになっても忘れないよ”ってなんで言えるんだろう? って。でも、大人になってわかりましたよね」と坂本さん。

 今の坂本さんは、いわば20年の時を経たひとみの視点が唯一わかる人物。「ひとみは『不思議の国のアリス』的な思い出を胸に秘めながら、現実の世界を生きていくようになるんだなって、今になって“実感”しました」という言葉には、他の誰にも語れない思いが詰まっていました。トーク中でもその思いが溢れるあまり、うっすらと瞳を潤ませる一幕も。声を震わせながら発せられる一言一言に、会場にいた誰もが真剣に耳を傾けており、坂本さんにとって本作がいかに大切な作品であるかが、客席にもしっかりと伝わっていました。

 また、『天空のエスカフローネ』は重量感溢れるガイメレフの動きも人気の理由の一つですが、「何でそんなに巨大な重量感が出せるんですか?」と関さんが赤根監督に尋ねると、「アニメーターの腕」と断言。それに加え、キャラクターが複雑に交差するストーリーも相まって、制作中の赤根監督はほとんど家に帰ったことがなかったと衝撃の事実を明かします。徹夜明けで作業した後に、本作のイベントに出演した事もあったというのだから驚きです。

 この当時のイベントのことはキャスト陣の記憶にも残っており、中でも関さんは、坂本さんの人生初のイベント出演を見守りに来ていたお母さんと挨拶を交わしたエピソードを披露。「なんでそんなこと覚えてるの!?」と坂本さんに突っ込まれながらも、お母さんが客席から声援を送っていた姿を、今でもよく覚えていると語っていました。

私自身、今でも“エスカフローネが原点”だという気持ちを持っています

 話は尽きませんが、トークショーも終了の時間へ。最後には今4人から観客へメッセージが贈られます。最後にこちらをまとめてご紹介しましょう。

◆関さん
「イベントで名古屋に行く度に、エスカという地下道でエスカフローネを思い出します(笑)。いいものを作るぞという意気込みの中で呼び出しを受けたり、追い込みを掛けられたりというのは今ではなかなかないことで、僕自身調子に乗りやすいところがあるので、あの時代にシメられておいて良かったなと。そのおかげで今でも演劇を続けていられていますし、役者としての基礎を作ってくれた作品だと思っています」

◆三木さん
「さまざまなクオリティーの作品が生み出される中で、『エスカフローネ』は、皆がすごくチャレンジしていた作品じゃないかなと思います。その中に参加させてもらったことはすごく誇らしいですし、今でもあの時の座組のメンバーと現場で会うとホッとします。それまでは勢いに任せてマイク前に立つだけだったのが、この作品をきっかけに役に対して向き合うということを教えていただき、言い始めたらキリがないくらい、いろいろな経験をさせてもらった作品です」

◆坂本さん
「私自身、今でも“エスカフローネが原点”だという気持ちを持っていますし、いつまでも声優のお仕事を続けてみたいと思わせてくれました。私にとって本当に特別で大切な作品です。そんな作品が、いつまでもみなさんの心に残り続けてくれれば」

◆赤根監督
「こういう映像作りたいという思いを全てぶつけた作品です。あの頃は“なんとか10年もつ作品を作るんだ”という意気込みで作っていて、それが20年経った今でも、こんなに沢山の方々に集まってもらえるのは嬉しいです」

 新たにLINEスタンプが販売されるなど、現在も多くのファンから愛されている『天空のエスカフローネ』。トークショー後に行われたオールナイト上映では、大勢のファンが今もなお衰えることのない美しい映像と、甘く切ない物語を、巨大スクリーンと贅沢な音響で堪能していました。20年の時を越えて実現した夢の時間は、ファンにとって一生の思い出として残ることでしょう。

[取材・文/米澤崇史]

>>『天空のエスカフローネ』公式サイト


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