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最終話直前!アニメ『アトム ザ・ビギニング』原作者と振り返る!

ついに最終回! TVアニメ『アトム ザ・ビギニング』原作者・カサハラテツロー氏と物語を振り返る/インタビュー

 総監督・本広克行氏(代表作:PSYCHO-PASS サイコパス、踊る大捜査線)、監督・佐藤竜雄氏(モーレツ宇宙海賊)、シリーズ構成・藤咲淳一氏(BLOOD+)という強力なタッグでアニメ化された『アトム ザ・ビギニング』。原作の流れを汲みつつ、キャラクターの新たな一面が垣間見えたアニメならではのオリジナル回も多くあった本作を、原作者であるカサハラテツロー氏と一緒に振り返るインタビューをお届け!

 最終話の放送を目前に控えた本作。原作者であるカサハラ氏は、アニメでの物語をどのように捉えていたのか――

 
オリジナル回が多かった理由はしっかり話し合ったうえでの結果
――AIなど、最近ではニュースなどでも多く取り上げられるようになりましたが、本作はAIやロボットものではありつつも、天馬午太郎とお茶の水博志を中心とした青春が多く描かれました。アニメではオリジナル回も多かったですね。

カサハラテツロー(以下、カサハラ):オリジナルが多かったのは、話し合った結果なんです。シリーズ構成の藤咲(淳一)さんが、それでいきたいと言っていたところもありましたし、私も本当だったら日常の回を重ねたりしたいと思っていたので、その思いが合致したというか。やっぱり連載が『月刊ヒーローズ』という雑誌なので、ヒーローがバトルするシーンがあったほうがいいだろうということで、原作では日常の話をあまり描けていなかったというのもあり、アニメではそういう話も入れて、7研メンバーの学園生活を見せられたらいいなぁと思いました。

――やはり最初に、アニメでは原作のストーリーのどこまでをやろうというのが決まっていたのでしょうか?

カサハラ:そうですね。途中で何度か「もうちょっと進んだほうがいいんじゃないか」とか「マンガ準拠のほうがいいんじゃないか」という話もありましたけど、やっぱり区切りとしてはロボレス編あたりかなというところで。そのほうがテーマが絞れていいかなとも思いました。

――オリジナル回では先生も一緒にストーリーを考えていたそうですね?

カサハラ:そうですね。一番気をつけていただいたのは、暗い話にはならないようにしてほしいということで。どうしてもロボットもので、将来の天馬とかを考えると暗い話にしたくなっちゃうし、話的にもそのほうがウケるかもしれないんだけど、やっぱりアトムなので、できれば子供が見たあとに希望が持てるようなアニメにしたかったんです。
まぁ、アトムも実は暗い話ではあるんですけど(笑)、子供たちが見ているアトムって元気いっぱいのキャラクターだから、それを見ている子に「アトムを見たい!」と思ってもらうためには、やっぱり明るい話にしたいなって。だから迷ったら「明るくしましょう」って言っていましたね(笑)。

――確かにシリアスな回は少なかったですね。

カサハラ:今は、絶対に明るいSFのほうがいいと思うんですよ。それは私の美意識のところなんですけど。『スター・ウォーズ』の最初のエピソード4、5、6って明るいじゃないですか。それがウケたんじゃないかなって思うんです。この前もエピソード7を見ていて、くだらないギャグが散りばめられていて「あぁ、『スター・ウォーズ』だなぁ」って思ったんですよ。それがいいなって。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』も好きなんだけど、やっぱり明るいSFが見たいんですよ。

――こうやってアニメがだいぶ進んだあとでインタビューをする機会をいただいたので、一緒にアニメを振り返ってのお話もしていただければと思います。アニメオリジナルが多かったり、1話でも、アニメと原作でかなり構成も変わっていたりして。たとえばシックス(A106)が最後までずっとしゃべらなかったりしましたがいかがでしたか?

カサハラ:その辺りは、やはり佐藤監督と藤咲さんが素晴らしいなと思いました。最初に、そういうふうにしたいんですけどと相談されたんです。「自我が完全にないところから、経験を積んでいく中で自我に結びつく流れにしたい」とおっしゃっていたので、その流れでアニメはいくんだと思って「ぜひそうしてください」と。原作も、1巻の最後で急にシックスが語りかけたりするので、原作に準じていることは準じていますし。

――アニメとマンガで、やっぱり引きになる部分への持って行き方が違うと思って、面白かったです。

カサハラ:第1話の最初のシーンは、マンガだとお茶の水がパンをくわえながら走っていて、脚本もそうなっていたんですけど、そこは私から変えてくださいって言いました。やはり「子供が見るなら」というのを常に考えてしまって、今からものすごく強い主人公が出てくるんですよって、一度バーンと“強い”というのを出してくださいとお願いしたんです。

そこで話し合って、『鉄腕アトム』だし、鉄腕始動という感じでいきましょうかと提案していただいて。「シックス(A106)の体も全部見せたらどうかな?」とも言ったんですけど、そこはシックス(A106)は出し惜しんだほうがいいという話になって、腕だけになりました。でも見たら、本来の鉄腕アトムの1/100の馬力だけど、始動したら、それでもすげーんだっていう感じになっていて。

――7研の壁が吹っ飛んでいましたからね。あそこでは「ピストンは男のロマン」という天馬の名言も飛び出していました (笑)。

カサハラ:そう。あそこで2人の立ち位置が確定されますからね。本当にいい始まり方だったなって思います。

――あと、語り部が蘭になっていたんですよね。

カサハラ:蘭をしゃべらせたいという話だったんだけど、削っていったらセリフがなくなってきちゃって、どうしようとなったときに誰かが「ナレーションにしたらどうだろう」って言い出して、ナレーションを担当してもらいました。

――そういう理由だったんですね。でも蘭が博志のことを「兄(アニ)」って呼ぶのがかわいかったです。

カサハラ:あぁ。あれも話し合って決めましたね(笑)。

――2話では、学会のシーンですが、「自我」に対するアプローチがより分かるというか。マンガだとさらっと過ぎますけど、アニメだとじっくり見せているような気がしました。

カサハラ:そうですね。ページ数の問題で、字は多いんですけどね。それでも語り足りないところがありましたし、2人が語り出すと熱くなっちゃって、博志がやたらと不安がっちゃったりするところも、ちゃんと描いてもらえて良かったです。でも、アニメで日常回を描いていただいたことによって、全体的に博志と午太郎のやり取りが大幅に増えたんです。おかげで、この話がアトムの生みの親と育ての親の話だという意味合いが、すごく濃くなったような気がします。

――マンガにもありますが、2人の考え方の違いみたいなところが、アニメだとより多く描かれていた気がします。2話で言うとシックス(A106)とマルスのバトルシーンもありましたけど、映像になっていかがですか?

カサハラ:カッコよかったですね! こうやって動くんだ!って自分で描いているのに思いました。

――3話のペットロボットを探す話と4話の文化祭は、オリジナル回でした。ここでの監督とのやり取りで印象的な思い出はありますか?

カサハラ:3話はすごく時間がかかって、シナリオの内容を作る時も話が二転三転したんです。探すロボットがいろいろあったんですよ。軍事用とか。でも、もうちょっと日常に寄せましょう!みたいな話をして。でもシックス(A106)をもっと活躍させようとか、いろいろ迷いが出てきてしまって(笑)、結局バトルはナシ!って私が言ったり。

――それであんなハートウォーミングな話に。

カサハラ:私はあそこでハートウォーミングな話が欲しかったんです。やっぱりロボットがどういう存在なのかをここで入れておかないと、どんどん怖くなっちゃうと思うんです。ただでさえAIは怖いって煽るじゃないですか。でも、そうじゃないでしょう、もともとAIBOとかASIMOをかわいいと思っているし、日本人ってからくり人形からずっとロボットを欲しがっている民族だと思うので、そんなにロボットを怖くしちゃダメだと思って、ロボットを大切に優しく思っている人の話は入れたかったんですよ。

――なるほど。でもそのあとの文化祭では、シックス(A106)がうどんを作ってたりして面白かったです(笑)。

カサハラ:あれは藤咲さんが、どうしてもうどんにしたいと(笑)。「うどんうどん」言っていて、原作だと蕎麦なんだけどなぁって思いながら。その時はまだ声優が決まってなかったんだけど、中村悠一さんに決まって、しかも香川出身で「あぁ、導かれている!」って思いました(笑)。運命的なものを感じずにはいられない!

――あとVR冷蔵庫とか、面白かったです。あれはOPを歌うAfter the Rainの2人がセリフを言っていたそうですね。

カサハラ:ちょうどこの回のアフレコに行っていたんですよ。そしたらAfter the Rainのおふたりがいらっしゃっていて。最終的に別録りだったんですけど、アフレコ中ずっと外で待っていらして、お話させていただきました。たまたまスタジオの自販機でジュースを買ったら当たっちゃって(笑)、その当たったジュースをAfter the Rainの方にあげたというのは覚えています(笑)。

――めったに当たらないですよ、それは(笑)。続いて5話が、原作にもあるトラックをシックス(A106)が止めるエピソードですね。ここではマルヒゲさん(伴 健作)の会社の黒電話が鳴るけど、実際はケータイを取るみたいな小ネタが好きです。あれは原作にはなかったですよね?

カサハラ:ないですねぇ。マルヒゲさんの趣味って、大喜びしながらみんなでわいわい考えたんですよ。余計なアイディアが何十通りも出たうちの1つなんです。やっぱり黒板だろう! ホワイトボードのほうがらしい!とか。でもよく見るとデジタル表示だったりして。そういうどうでもいいことがいっぱいあって。

――真心が大事と言っているキャラクターだから、ちょっと会社も昭和感漂ってる的な。

カサハラ:アニメのスタッフさん側が、そこはかとない昭和感をアニメ全体に散りばめたいという話だったんですよ。昭和感って今、ポジティブに流行っていますよね。ちょっと前までは、古臭いものの代名詞だったのが、若い子たちと話していると、昭和が大好きなんですよね。昭和っぽいものがおしゃれに見えるとか、かわいく見えるとか。

だからアニメを明るくしたいというのにもマッチしてたし、やはり『鉄腕アトム』ですから。そこはマッチするんじゃないかなっていうのはありました。だからマルヒゲんさんには昭和感の代名詞になってもらうということで、昭和っぽい空気を強引に持ってきてもらいましたね。

――次の6話もオリジナルで、原作では語られていない天馬とお茶の水の出会いが描かれていましたね。

カサハラ:お茶の水と天馬の出会いについては、6話のシナリオを見せていただいた時、こうやって出会ったんだなぁって、すごく違和感なく思いました。特に私も「出会いはこういうシーン」と決めていたわけではないので、こりゃいいや!って思いました(笑)。

そう言えば、この回の打ち合わせ時に「ルンバにシックスの頭が乗っかっているみたいなデザインってできますか?」とアニメスタッフに言われて、そういう発注をすればやってもらえるんじゃないですかと言ったら、「いやいや、今、カサハラ先生が描いてください」と言われて描きましたね(笑)。本体の部分は前に天馬がテキトーに作ったやつで、お掃除ロボットなんだけど、アームがついていてほうきを持っているみたいな(笑)。それがまんま採用されていました。

――まさか、先生がその場で描いていたとは(笑)。

カサハラ:その次の回のTERU姫も、私がその場で描いたんですよ。変形させたら面白いかなって誰かが言っていて「じゃあ変形する感じでおねがいします」と言われて(笑)。第7話は、登場するメカが決まった後、シナリオが固まっていったところはありますね。


10話でのシックスの変化には原作者も驚き

――7話はロボコンの話で、とても身近な感じのネタで良かったです。

カサハラ:藤咲さんと佐藤監督は、高専のロボコンの取材もされていたみたいですね。今あるロボットのテクノロジーやロボットとの関わりで言ったら、やっぱりロボコンは外せないんじゃないかなって。開発者の話というところで。

――ロボコンだと親しみやすいし、部活ネタでもあるから、それこそ子供に見せたいですよね。

カサハラ:そうですね。しかも蘭の違う一面が見られるという。実は結構怖い先輩だったんです。ここでも、部活のメンバーを蘭の先輩にするか、後輩にするかはすごく悩んだんですよ。先輩達が蘭を見て、後輩のくせに生意気なっていう流れもいいかと思ったんです。

逆に後輩を出しちゃうと、蘭のキャラクターのイメージがブレちゃうかもという話もあったんですけど、私は絶対に後輩を出したほうがいいと。蘭は、ここで違う面を出してもブレたようにはならないと思う、とお願いしました。で、先輩たちも嫌な先輩というよりは、蘭に一目置いているような感じにして。

――わりとみんな、物分かりがいい子たちというか(笑)。

カサハラ:最終的にあの部には先輩と後輩を登場させたんですが、皆、すっごく蘭に気を遣っているんですよ(笑)。

――そして、8話から最後に向けてはロボレス回に突入していくんですよね。

カサハラ:9話でシックス(A106)が壊れて、ロボレスの人たちが部品を貸してくれて、みんな温かいねっていう話だけ、オリジナル回ですね。

――でもこのロボレス話で、午太郎がシックス(A106)をあくまでロボットと見ているところがはっきりと分かりましたね。

カサハラ:マンガより鮮明に出ていますよね。

――2人の違いが出ていますね。お茶の水は、逆にシックス(A106)をロボットとして見ていない感じで、そこが「心」の考えにも繋がるんですけど……。

カサハラ:お茶の水も実はいい人のようで、実はただのいい人ではないように描いているんですよ。

――そうなんですね! 確かに午太郎のほうが見方としては普通なんじゃないかなって思っていたんです。お茶の水は少し狂気を感じるというか。

カサハラ:そう。実は午太郎より怖いんですよ。博志って、ロボットが自分の価値観にそぐわない考え方をすると、ダメだって完全否定するんです。たとえばロボットがロボットと接続して意識を共有するのを悪いことのように言ったいり、ロボットなんだからいいじゃんって思うのに、それを嫌がるんです。でも原作のアトムでもそうなんですよ。自分が正義だと思い込んでいることを間違いだと思わないんです。

――そんな10話では、自我が芽生えてきたのかな?というところでラストのA106の台詞が今までのロボットらしい喋り方から人間らしい喋り方にかわりましたね。

カサハラ:そうなんですよ!あそこは展開を知っていてもゾクッとしましたね。これこそ声優さんの力だなと思いました。暗転してから「話がしたい、マルス」って。それだけのセリフなんだけど。井上さんが本当に大変だなと思うのは、いつも話の終わりで重要な台詞を言わなきゃいけないところだと思います。1話もそんな感じで、ガツッ!とそこで惹きつけなきゃいけない。大変な重荷を背負って声を当てられているんですよね(笑)。

――シックス(A106)の声は、女性になるかもしれなかったそうですね。

カサハラ:そうですね。そもそもこの作品は主要キャラクターの声を決める時も、ものすごく大変だったのですが、シックス(A106)は女性でいこうとほぼ決まっていたんです。でも、男の人にもやってもらいたいという私の希望で、その場にいた他役の男性キャストさんにやってもらったんです。そしたら結構良くて、そこから急遽、中性的な声を出せる男性を呼んでくださいとかき集めてもらいました。

その中の一人が井上雄貴さんだったんですけど、ロボットの声として出したのが、全然ロボットの声みたいなしゃべり方ではない、ウィスパーボイスで。それを聞いたとき「絶対これ泣くやつだ!」って思ったんです。あの声だったら、他のロボットもの作品とは違うものになると思って。

映画『2001年宇宙の旅』のHAL 9000という人工知能も男の人が声をやっていましたし、もともと『Star Trek: The Next Generation』のデータっていうアンドロイドや『スター・ウォーズ』のC-3POから(A106のイメージを)拾ってきている部分もあったので、僕も途中から火がついちゃって(笑)。オーディションでは悲しくなりすぎず、笑顔のままそのセリフを言ってくれませんかってお願いしたりもしましたね。

――そうだったんですね。その後の11話ではマルスがしゃべったりして、今後に何かを匂わせる展開もありました。最後に、最終話を見る方、そしてもう見終わった方にメッセージをいただけますか?

カサハラ:最終話は最初、原作に準じてはいたものの、もっと幻想的なシーンがあったんです。ちょっと抽象的な感じというか。でも、あまり難しくはしたくないなっていうのがあってもうちょっと抑えましょうという話をさせていただきました。めちゃくちゃ理性が効いている物語の締め方にしたいと思ったんです。それが吉と出るか凶と出るかは見ている方の感想に委ねることになるんですけど…。なので見終わった人にこの作品がどう映ったのかが、すごく心配です(笑)。

あえて言うなら、ネガティブな感想だったとしても、それはそれで楽しみなので、ぜひ感想は聞きたいなと思っています。泣いたと言ってくれたり、自分ならこうしたなっていう感想も皆さんそれぞれあると思うので、できればネットならTwitterとかで、検索かけやすいタグつけて(笑)、つぶやいてくれると嬉しいです。僕がいいねとかを付けると答え合わせになっちゃったりするので、それはできないんですけど、見ているので。

苦しんで苦しんで生み出した最後なので、ぜひ皆さんの声を聞かせてください。

[インタビュー・文/塚越淳一]

(C)手塚プロダクション・ゆうきまさみ・カサハラテツロー・HERO'S/アトム ザ・ビギニング製作委員会
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