秋アニメ『呪術廻戦』釘崎野薔薇役・瀬戸麻沙美さん 声優インタビュー│野薔薇を演じる上でほしかった“慢心”とは？　課題だった粗雑な演技と向き合い

虎杖と伏黒のお芝居について。そしてアフレコでの話題は？

ーー実際に演じてみて、いかがですか？　キャラクターは掴めましたか？

瀬戸：話数が進んでいっても、自分の中で野薔薇をこうしようというのは、正直定まっていなくて。定まっていないからこそ、収録日が来るたびに「野薔薇とは」って、自分の中で再確認するんです。

でもスタッフの方には、「変にこういう風にやろうとか、役を固めなくてもいいよ」と、わりと序盤に言ってもらえたので、ブレていていいんだと思えました。台本を読んで、このときの野薔薇はこうなんだと、感じるままやればいいんだと思えたから、毎週、そのときどきの野薔薇と向き合ってやっています。

ーーその中でも、こういう面もあるんだと気づいたことはありますか？

瀬戸：オーディションでは粗雑で、荒くて、強い女というイメージがあったんですけど、やっていくうちにそこだけではないなと。もっと彼女の中には信念があって、それをわがままに出すみたいな感じで、決して周りに配慮する子ではないんですよね。

収録をしていると、周りに気を使ったり、掛け合いを聞いて、どんなお芝居で来るのかなってバランスを考えたりする必要があるんですけど、一度役に入ったら、それっていらない要素だったりするんですよね。

だから、その要素を早い段階で消しつつ、野薔薇の自信に満ち溢れている感じを出そうとするんですけど、そこが一番難しかったかもしれません。荒くやることは簡単ですけど、大きく吠えるキャラクターって弱く見えるじゃないですか。それはやりたくなかったので、野薔薇は自分の中で絶対的な自信を持っていなければいけないと思ったんです。

でも、自分の引き出しを漁ってみても、慢心って私の中にはなかったんですよね。慢心できるような環境で育っていないし、この仕事って常に人と比べられるじゃないですか（笑）。

常に心を砕かれる中で仕事をしているし、オーディションも受かって落ちてのサバイバルだから、慢心することってできないんですよね。でも、野薔薇をやる上では、その引き出しがほしいと思って。彼女をやるときだけは、自信をそのまま「自信です！」と出すのではなくて、「自信ありますけど、何か？」という感じで出せる表現方法を、今ずっと模索しています。

ーー面白いです。原作を見ていても、野薔薇ってどんなときも、心が折れないところ、覚悟が決まっているところがすごいなと思っていたんです。

瀬戸：1年生は3人いるけど、虎杖と伏黒は男性だから、身体的な能力差は出てくると思うんですよね。そのときに野薔薇も悔しい思いをするんじゃないかなと思ったりするけど、そこは男に負けないでほしい。女が強い世界になろうよ！　男社会は終わったぞと思います（笑）。

ーー今、コロナの影響もあってグループを分けてアフレコをしていると伺いました。東京都立呪術高等専門学校の1年生3人でアフレコをすることも多いそうですが、瀬戸さんから見て、他の2人のキャラクターのお芝居はどうですか？

瀬戸：伏黒は、なんとなく寡黙というか、あまりしゃべらないクールなイメージだったんですけど、内田雄馬さんに決まって、「伏黒なんだ！」と驚きました。

これまでご一緒してきた役の感じとも違っていたから、どんな感じでお芝居なさるのかなって気になって1話を見たら、すごくカッコ良くて。雰囲気に合っているし、ギャグシーンの切り替えも面白かったです。

虎杖は、原作を読んだときから普通じゃないなと思っていて。身体能力も飛び抜けているし、恐怖心も人より少ない感じで描かれていたので、主人公らしさというところとはちょっと違うのかなと。

実際にアニメで榎木淳弥さんの声が入っているのを聞いて、より怖く感じたんです。動いているからというのもあるんですけど、榎木さんのお芝居で、台詞の最後に気の抜けた感じになるところが怖くて、それが虎杖らしさになっていると思いました。

特に1話では、あんな非現実的なことが急に目の前で起こっているのに、冷静に対応しているじゃないですか。おじいさんが直前に亡くなっちゃったからなのかな？とか、それとも潜在的なものなのかな？とか、すごく気になる1話でした。

ーー恐怖心がないところは野薔薇にも感じますよね。アニメの3話でも五条 悟にイカれ具合を試されていましたし。

瀬戸：野薔薇は地方では呪いと戦ってきたけど、呪いの力が強い東京では戦ったことがないから試されていましたね。でも戦い方が独特で、みんなカッコいい感じなのに、野薔薇は釘とトンカチ!?みたいな。個性あるな！って思いました（笑）。

ーーあのシーンでのキレっぷりも、榎木さんの演技とはまた違う怖さが出ているかもしれないですよね。イカれ具合というか。

瀬戸：そう思ってもらえたらキャラクター的には嬉しいんですけど、私、一度役を任せてもらうと、彼女がおかしいと思わなくなってくるんですよ（笑）。これはどの役でもそうなんですけど。

虎杖と伏黒に「喜べ男子、紅一点よ」と言うシーンがあるんですけど、実際にそんなことを言う奴がいたらどうする？って話で、困るとか、嫌だとか、榎木さんや内田さんが言っていたんですけど、私は「そんなに困る？」って思っちゃったんですよね（笑）。確かに野薔薇ちゃんの代表的な台詞なのかもしれないけど、個人的にはそこまで引っかからなかったんですよ。

ーー野薔薇は自分だから、肯定的になっちゃってるんですね（笑）。ちなみにアフレコでは、車の話ばかりしていると榎木さんがおっしゃっていました。

瀬戸：あははは（笑）。そうなんです。私も内田さんも車好きで、車の話は本当によくしていますね。

ーー榎木さんは免許を持っていないらしいですけどね。

瀬戸：でも、興味はあるみたいですよ。ただ彼はコミュニケーション能力の鬼なので、興味がなかったとしても、私と内田さんが楽しくしゃべっていたら、その空気を崩すまいとちゃんと話してくれる大人なんです（笑）。だから、榎木さんが車を買うとしたら何かなぁとか、勝手に話し合っていました。