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TVアニメ『東京24区』津田尚克×下倉バイオ×鳥羽洋典スタッフインタビュー【連載 第1回】

TVアニメ『東京24区』津田尚克(監督)×下倉バイオ(ストーリー構成・脚本)×鳥羽洋典(企画プロデュース) スタッフインタビュー|きっかけは “ループものへのカウンター”、そして描かれる“群像劇”【連載 第1回】

“24区”は立ち位置の全く異なる3人が違和感なく成立する世界

――新たな街で描かれるのが、三者三様な3人による群像劇。キャラクターに関しては、どのように構築していったのかお聞かせください。

下倉:“群像劇”で視点・立場の違う3人ですから、「ニュートラルな人間」と「現状を保つ側の人間」と「それを壊そうとする人間」の関係性で回すお話だな、それを“24区”に当てはめるとどういう立ち位置が適切なのかと考えました。

“24区“という新しい土地ならば今の日本ではリアリティのないこともできると思い、貧民街・シャンティタウン出身(ラン)と財閥の息子(コウキ)といった極端な位置づけにしたんです。そういう階層の違いも考えながら、キャラクターを作っていきましたね。

――名前に色(アカ・ミドリ・アオ)を当てはめたのも下倉さんのアイディアでしょうか?

下倉:そうですね。最初は仮でもいいと思って、わかりやすく覚えやすい名前をつけたんです(笑)。キャラクターがたくさん出てきますから。

津田:でも、“RGB”というのは画面作りにおいてすごくキャッチーなので、活かせるなと思いましたね。

――そうやって生み出されたキャラクターやアイディアをもとに、津田監督が映像作りで意識されたことを教えて下さい。

津田:“地続き感”をすごく意識しました。主人公は確かに“RGB”の3人ですが、もうひとつ“街”が主人公でもあるよね、と鳥羽さんと話していたんです。なので、街が生きているような描写をしたいと思いました。

そのためには、とにかく造形ですね。実際に東京湾の真ん中にあっても違和感なく受け入れられるような世界観。シュウタは商店街、ランはスラム街、コウキは高級住宅街に住んでいる。それがちゃんと島(24区)の中で成立している世界観を目指しました。

鳥羽:ちなみに(シュウタの家である)パン屋は、津田さんがもともとパン屋でバイトをしていたからなんですよね(笑)。

津田:そうですね。パンが好きなので(笑)。

――そこでの経験が、具体的に反映された部分もあるのですか?

津田:第1弾キービジュアルのメロンパン、あれは「サンライズ」という名前なのですが、ぜひメロンパンを入れようという話はしていましたね。

鳥羽:メロンパンを「サンライズ」と呼ぶのは、西日本特有の言い方みたいで。津田さんがバイトしていた店では「サンライズ」と呼んでいたので、それをネタとして入れたら面白いよねとなりました。最近流行りの柔らかい生食パンとか、そんなナンパなものはやめよう。我々が子供の頃から大好きな菓子パンといえばメロンパンだろ! と(笑)。

津田:そういうことです(笑)。

鳥羽:パン屋というのは理にもかなっているんですよ。シュウタは視聴者に近い身近な存在にしたかったんですけど、地元に根付いた商店街のお店なら一番地に足がついている場所ですからね。

――キャラクターに関していうと、今回はキャラクター原案にFiFS(曽我部修司さん、ののかなこさん)を起用しています。この2人もオリジナルアニメ初参加とのことですが、起用した理由をお聞かせください。

鳥羽:どういう絵の肌触りにするか考える中で、今回の物語ならある種の今っぽさをキャラクターのパーツやデザインとして出したいと思って。もともと僕はFiFSと別件で仕事をしていたので、本人と会った時に「原案という形になるけどやってみる?」とお願いしました。

津田:僕は『旋光の輪舞』(FiFSがキャラクター&メカデザインを担当したゲーム)が好きだったこともあって、FiFSのことは「響くデザインとはどういうものかを、ちゃんと考えているデザイナー」という印象がありました。こういうデザインがあるとみんな感情移入しやすいとか、そういったところを上手く取り入れられる方だったので、鳥羽さんから提案を受けてぜひお願いしますと返事したんです。

シュウタの一挙手一投足や街のシステムにも注目してもらいたい

――放送前に言える範囲で、本作を見る上ではここに注目するとより面白い、といったものはありますか?

津田:やっぱり“ハザードキャスト”ですね。本作では、“cPhone”というスマートフォンが24区の区民全員に配られているのですが、そこにプリインストールされているのがハザードキャスト。「この場所で犯罪の起こる確率は何%」といった感じで犯罪率や事故率がわかるソフトです。

こういったものって、SF的には昔から使われているネタではあるんですよ。犯罪予測できたら事前逮捕ができるのでは? と。でも、近年はAIの発達によってこれが身近になってきていて、実際にアメリカで実証実験までされているそうです。そろそろSFではない地続きの話になってきたこともあって、今回取り入れているんですね。ハザードキャストは物語のキーにもなってきますので、注目して欲しいです。

下倉:この作品を作り始めた頃は、(こういうソフトは)SFだと思ってやっていたんですけど、時代に追いつかれて、今では「テレビで見たあれじゃん!」って感じですよね(笑)。

――キャラクター絡みで注目ポイントを挙げるなら?

津田:個人的には“シュウタの一挙手一投足”を見て欲しいです。シュウタはなんかよくわからない芝居をするかもしれませんから。なんだろう、この間は……? などと気になるところもあると思います。

――3人の群像劇ではありますけど、やっぱり軸になるのはシュウタなのですね。

津田:基本的に3人を均等に扱っていますが、物語として誰の感情を軸に置くかですよね。そういう意味ではシュウタが軸になっていると思います。

――シュウタであれば榎木淳弥さんが演じられているように、メインの3人をはじめとするキャスト陣の演技も注目です。実際にお聞きになっていかがでしたか?

津田:オーディションで本当にたくさんの方の中から、最も合う方は誰だろうと協議して3人にお願いしたので、アフレコが始まっても違和感は全然なかったですね。むしろ、より深まる演技をしていただいて、どんどんキャラクターが強化されていった印象です。

鳥羽:キャスティングって不思議なもので、ハマる時はキャラクターと本人で性格や関係性が似ていたりするんです。今回も(石川)界人と(内田)雄馬はコウキとランみたいな感じだし、榎木(淳弥)くんとは初めて仕事するのですが、比較的シュウタに近いなと感じて。

――メインの3人でエンディングテーマ「255,255,255」も歌っています。

津田:この3人に歌わせたのは、鳥羽さんのアイディアなんですよ。

鳥羽:歌に関しては、もともと視聴者へのサービスとしていいかなと思ったんです。曲自体は作品の世界観を感じるものであって欲しい、でもこの3人で歌うのはやっぱりみんな嬉しいよねって。あと、3人自身へのご褒美でもあるんです。3人で歌いたいでしょ? って(笑)。

津田:話数が進めば進むほどキャラクターに愛着が湧いてくるでしょうから、その3人が歌うエンディングもどんどん好きになっていただけると思っています。

――キャラクターや世界観を彩る重要な要素として音楽もあります。劇伴を作る上で、津田監督からリクエストしたことがあれば教えて下さい。

津田:最初は、シュウタとランとコウキでそれぞれ違った音楽性にしたいと考えていました。ランはヒップホップ系というかチャカチャカした感じ、シュウタは結構どっしりしていて、コウキはクールな感じがいいんじゃないかと。鳥羽さんからは歌の要素を取り入れたらいいんじゃないかとの提案もいただいたので、3人で全然ジャンルは違うけど歌の要素を織り交ぜた劇伴は作れないか深澤(秀行)さんにご相談しました。

――そして、あがってきた音楽を聴いた印象はどうでしたか?

津田:第1話はフィルムスコアリングでやっていただきましたので、とにかくシーンとのマッチ度がすごいんですよ。本当に深澤さんには感謝しかないです。「M1」といって最初にあがってくる音楽があるんですけど、それを聞いた時は純粋に「キャッチーで格好いいな」と思いましたね。

――下倉さんは、ご自身が書いた脚本に音楽や声がついてどんどん完成していくのを見ていったわけですね。

下倉:監督の頭の中ではこうなっていたのか、と見えていくのがすごく楽しかったですね。例えば、第1話のクライマックスシーンも脚本的な工夫ってあまりできないので、実際にアクションやお芝居、音楽がついたものを見て「うわっ! これはくるな」と感じました。そこはアニメならではですね。

(C)Team24/東京24区プロジェクト
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