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【内海賢二 彼が生きた時代:連載第6回】山寺宏一インタビュー

【内海賢二 彼が生きた時代:連載第6回】山寺宏一さんインタビュー|「声優といっても役者であり表現者」内海さんからもらった言葉を胸に

アニメや海外映画の吹き替えだけでなく、歌やラジオ、イベント出演に至るまで、活動の幅を広げている声優。今ではTV番組に“声優”という肩書きで出演される方も多く、声優という職業自体も世間一般に認知されるようになってきました。

しかし、その裏で声優業界を黎明期から作り上げてきた大先輩方が、訃報や引退といった形で徐々に一線を退いているのもまた事実です。

アニメイトタイムズは日々、たくさんの声優ニュースを取り上げていますが、声優業界に深く関わっているからこそ、メディアという立場であるからこそ、今というタイミングで何かできることがあるのではないか、と考えました。

そんな折、様々な取材を通して筆者が出会ったのは“内海賢二さん”という存在でした。

内海賢二さんといえば、2013年にご逝去されるまでの間、『北斗の拳』のラオウ役、『Dr.スランプ アラレちゃん』の則巻千兵衛役、『鋼の錬金術師』のアレックス・ルイ・アームストロング役など、数え切れないほどの人気キャラクターを演じた名役者です。

そして、それと同時に声優事務所「賢プロダクション」の創立、TV番組やTVCMの出演など、声優が広く認知されるきっかけを作った人物のひとりでもありました。

本企画【内海賢二 彼が生きた時代】では、そんな内海さんの姿を現在でも活躍されている声優さんたちのインタビューを通して追っていく特別企画です。

内海さんの功績は、現在の声優さんたちにどんな影響を与えているのでしょうか。また、内海さんに関する未だ語られていなかったエピソードは、現在を生きる我々にも何かメッセージを与えてくれるはずです。

連載第6回に登場するのは、アニメ、映画の吹き替え、ナレーションに欠かせない人物である山寺宏一さんです。

様々な現場で内海さんの背中を見ていたという山寺さん。今でも内海さんからもらった言葉を胸に、悲母の声優業に勤しんでいるそうです。

※本企画は映画『その声のあなたへ』とのタイアップ企画です。取材内容は事実を含みますが、取材者名は役名となります。

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『北斗の拳』のラオウ、『Dr.スランプアラレちゃん』の則巻千兵衛、『鋼の錬金術師』のアレックス・ルイ・アームストロングなど、数多くの名作で強烈な演技力を魅せた声優・内海賢二さん。2013年6月に亡くなられ、各界に悲しみと衝撃を与えました。業界を黎明期から引っ張ってきた内海さんの生き様と、偉業を追ったドキュメンタリー映画『その声のあなたへ』が2022年9月30日(金)に公開となります。アニメイトタイムズでは、映画の公開を記念して、内海さんの同世代として共に黎明期を引っ張ってきた声優・柴田勝秀さん、後輩役者として背中を見てきた・浪川大輔さん、音響監督という立場で一緒に過ごしてきた三間雅文さんの鼎談を実施しました。三者三様から見た内海さんの姿はもちろんのこと、まだ“声優”という言葉が浸透していなかった時代のお話や声優のあり方など、貴重なお話が盛りだくさんです。声優を目指している方、アニメや声優がお好きな方、ぜひ最後までご覧ください。ボストンバッグ1個を持って上京した内海さんとの出会いーー早速ですが、同世代、後輩声優、音響監督というそれぞれの立場から、内海賢二さんの生き様や印象に残っている思い出などをお話いただければと思います。柴...

表現者として内海賢二さんから学んだこと

ーー本日は内海賢二さんに関するエピソードを伺いつつ、山寺さんの声優に対する考え方についてお聞きしていけたらと思っています。早速ですが内海さんについて、山寺さんにとって忘れられないエピソードなどはありますか?

山寺:端役でご一緒したことはあったんですけど、ちゃんと共演したと言えるのはデビューして3年目、ディズニーの『わんぱくダック夢冒険』にレギュラーとして参加したときでした。ただそれよりも前、まだ僕が上京して養成所に通っていた頃に印象的だったことがありまして。

ーー内海さんとお会いする機会があったんですか?

山寺:当時、鈴木泰明さんが先生だったんですが、授業中「内海賢二という、素晴らしい役者さんがいるんだよ」というお話をなさったことがあったんです。「芝居も凄いし、彼がいることで現場が明るくなる。演技力が一番だけど、彼のような人間性も大事にしていかなきゃいけないんだ」と。

声優という存在を知る前から、『魔法使いサリー』のサリーちゃんのパパと『Dr.スランプ アラレちゃん』の千兵衛さんの声が同じ人だってことは子供心にもわかっていたんです。TVのCMで良く聞く、張りのあるいい声も絶対に同じ方だって。

内海さんのあの声が本当に好きだったんです。中学生になって声変わりしてからは声真似なんかしたりして。だから泰明さんのお話が衝撃的で、「僕がちっちゃい頃から真似していたあの内海賢二さんって人間としても素晴らしい方だったんだ」と、とても嬉しかったんです。

ーー声優としてデビューしてから、実際に現場でご一緒になってどんな印象を受けましたか?

山寺:太陽のような方って皆さんおっしゃいますけど、まさにその通り。とても暖かい方でした。役者としての表現力と演技力は言わずもがな。カリスマ性がありつつ、現場を包み込むようにすべてを把握されているんです。

『わんぱくダック夢冒険』では主役だった内海さんがリーダーになって、スタッフも含めファミリーのようにまとめてくださって。僕は若かったので緊張感はもちろんあったんですけど、それ以上に現場が楽しくて仕方なかったんです。「せっかくディズニーの作品をやってるんだから、みんなで行こうよ」って、内海さんのお誘いでディズニーランドに行ったこともありました。

ーー内海さんとゆっくりお話する機会などはあったのでしょうか?

山寺:27年前『声♥遊倶楽部』という番組で司会をしていたんですが、内海さんが来てくださって、そこでいろんな話を聞かせてくれたことがありました。それまでにも現場でお話をしたり、食事をしながらということもあったんですけど、真剣にインタビューということはなかったので貴重な経験でした。

ーー内海さんから学んだことで、山寺さんが現在でも活かしていることはありますか?

山寺:もちろんたくさんあります。まず「声優といっても役者であり表現者」ということ。台詞回しが上手いだけではダメで、生きた台詞、その人の人生が見えて来なければならない。その為には舞台に立つ事も大事とおっしゃっていました。

それと内海さんって凄くオシャレでファッションや車のお話なんかを、スタジオでも良くされていてたんです。当時僕は生意気だと思われたくないし、声優は地味なくらいが丁度良いみたいに勝手に思っていて…。でも内海さんは「表現者として人にどう見られるか意識するのは大事なこと。どんどんおシャレをした方が良いし、クルマだって好きならこだわるべき」と。

あとはなんと言っても「常に新しい事にチャレンジする気持ちが大切だ」という言葉ですね。

ーー若いうちに内海さんのような方からアドバイスをもらえたら、モチベーションや自信を持つことにも繋がっていきそうですよね。

山寺:大御所からそういうふうに声をかけてもらえるって嬉しいことですからね。内海さんはいつも皆んなに気を配って若手にも声をかけて下さる。あの声と見た目なのに威圧的じゃない(笑)。とにかくムードメーカーで、内海さんから学んだことは計り知れないです。僕もそうなりたいと思ってはいるんですけど、当然ですが難しいんです。

ーー不躾な質問で恐縮ですが、内海さんの訃報を聞いたときはどのような心境でしたか?

山寺:知らせを聞いたときは愕然としてしまって言葉が出てきませんでした。病気の経過は間接的に伺っていたんですけど、それを感じさせない人でしたから。アニメの仕事の後にお昼ご飯を一緒に食べに行ったのが最後になってしまったんですが、体調がすぐれないはずなのに、いつもと変わらないように明るくパワフルに振る舞おうとしていて。その姿を覚えていたから、余計に信じられない気持ちでいっぱいでした。それだけ、内海さんの存在は僕の中で大きいものでしたから。

最近、内海さんと共演した映画『バットマン』を見る機会があったんです。僕がバットマンで、内海さんがジョーカー。ジャック・ニコルソンの怪演振りが話題になった作品なんですが、それを吹き替えた内海さんの存在感が圧倒的なんですよ。ジャック・ニコルソンを軽く超えてしまっていて字幕にすると物足りなくなっちゃうくらい!不気味な笑い声にも独特の怖さとユーモアが含まれていて、ジャック・ニコルソンとは違うもう一人のジョーカーがそこにいるような感じで、あの声と芝居を喪ったことの大きさを改めて痛感してしまいました。

ーー声優としてのスキルや表現力といったものは、どうやって培っていくのが一番だと思いますか?

山寺:僕は元々ものまねタレントになりたいと思っていて、それを諦めた口なので、表現に必要なものは周りから盗む、というか観察して取り入れることが大切なんじゃないかなと。声優のスキルというものは、基本的に現場で学んでいくことが大きいと思っています。

だから僕は現場にいることが楽しくて仕方なかった。憧れの先輩たちの演技やセンスを間近で見られるわけですから、溜まらないですよね。「この人、普段と全く違う役をやってるけどこういう芝居もするんだ」とか、「そんな表現の仕方があったんだ」とか。自分にはなかったものを吸収できるのが嬉しかった。家に帰って、もしその役が自分にきていたら、と想像しながら真似したりして。内海さんを筆頭に、レジェンドたちの存在感と個性に負けたくなくて、僕自信もそうやって必死に頑張っていました。

ーー先輩たちのいい部分をどんどん糧にしていくという感じですね。

山寺:学べるのはいい部分に限らないんですよ。自分で良い芝居したと思っても、監督やディレクターが求めていたものじゃなければリテイクになってしまいます。それにすぐ対応できる人もいれば、そうでない人もいるし。「どうしてあの人はなかなかOKがもらえなかったんだろう」と考えて自分の経験に生かすようにしていました。

それと同時に、たくさんの優れたエンタテインメントに触れる事も表現力を培う為には必要でしょうね。人のマネばかりしていた僕が言うのも矛盾してるかもしれませんが、アニメのキャラを演じるのにアニメばかり見ていたんじゃ表現が偏ってしまうかもしれません。

あらゆるものに、日常にすら演じるヒントがあると思います。

ーー山寺さんのお話を伺っていると、本当に現場が好きなんだなってことが伝わってきて、羨ましい気持ちになります。楽しそうで。

山寺:このご時世ですからあまりできないですけど、収録のあとにそのままご飯に行くってことも多かったんですよ。僕なんか先輩たちが大好きだから、機会があれば必ずホイホイついて行ってましたね。

ご飯の場だとプライベートの話も聞けてお得なんですけど、2軒目、3軒目となっていくと本音の部分が出てくるんですよ。それまで聞けなかった、「この前の現場、もっとこうしておけば」みたいな話になることもあって。皆さん普段そういう姿はなかなか見せないですからね。まぁ聞きたく無かった話を聞かされる事もありますが(笑)。

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