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『ダンまちⅣ 深章 厄災篇』早見沙織&井内啓二対談インタビュー 後編

「欠かすことのできない存在だし、個人的には同じファミリアみたいな」──『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 深章 厄災篇』リュー・リオン役 早見沙織さん・シリーズ音楽 井内啓二さん対談インタビュー 後編

 

心情と音楽が深く結びついた第20話

──お二人のお話をお伺いして、すごく納得いった部分があって。20話ですごく驚いたのが、挿入歌が使用された場面だったんです。

井内:うんうん。

早見:ああ。

──クライマックスの盛り上がりで挿入歌だったりオープニングテーマが流れるイメージがあったんです。ただ、お二人のお話を聞いていると、リューさんの心を映すには、あのシーンだったんだなと。ちなみに、お二人は完成された映像などご覧になられていますか?

早見:私は見ました。

井内:僕、まだなんです(笑)。

──そうなんですね。

井内:そう。だから、オンエア初見なんですけど、今からドキドキしています(笑)。

──(笑)。実際にご覧になられた早見さんはいかがでしたか?

早見:いやあ……泣けますね。

井内:へえー。

早見:やっぱり優しかったですね、楽曲が。キリキリするようなシーンを本当に優しくゆっくり進めていってくれるんです。

あのシーンって、リューさんが信じて、尊敬して憧れて、そして切磋琢磨して過ごしてきた信頼できるメンバーたちから、目には見えないけれど、大きすぎてまだ持てないような何かを託されていく瞬間だと思うんです。アストレア・ファミリアとリューさんを深く結びつけてくれるシーンというか。

先ほど井内さんのお話を伺って思ったんですけれど、リューさんがアストレア・ファミリアに対して鎮めるという意味で歌っていた歌が、だんだん自分の支えになっていくような。なので、楽曲もそういった心情だったりと深く結びついているんだなというのを、今お話を伺っていてすごく感じました。

 

 

お二人にとっての“声”と“音楽”という存在

──お二人のお話をお伺いする中でも改めて感じましたが、早見さんをはじめキャストの皆さんの演技と場面を彩る音楽というのは、『ダンまち』を含めてアニメにとって本当に欠かせない大切な存在なんだなと思います。お互いにとって、早見さんからしたら“音楽”、井内さんからしたら“演じる声”を一言で表すとしたら何になりますか?

井内:難しいな(笑)。

早見:めちゃくちゃ難しい(笑)。

井内:これ、僕が先に答えていいですか? ちょっと早見さんに重荷を課すという意味で(笑)。

──お願いします(笑)。

井内:そもそも劇伴音楽というものは、演者さんの台詞が無いと書けないし、そこを無視して書くわけにはいかないんです。なので、今回のシーンで早見さんの演技を世界一聞いた気がするほど聞かせていただきましたし、歌も沢山コミュニケーションを取りながら録らせていただきました。

一音楽家として、早見さんの演技というか主に声色というものの感想になってしまうんですけど。これ、僕ね、どこかで言いたいなと思っていて。多分、そういう視点で早見さんに対して評している人が誰もいないから、世界最速で言いたいと常々どこかでチャンスを伺っていたんですけど(笑)。

早見:(笑)。

井内:アマチュアリズムの人が見るプロの演奏家とプロフェッショナルから見る一流の音楽家って、その表現を評する視点に明確な違いがあるんじゃないかと思っていて。大きい楽器の音を演奏して派手なパフォーマンスができる人って、やっぱり目立ちやすいんです。

ただ、プロの現場で求められる演奏家の必須条件って、か細いとか優しいとか、繊細さを表す形容詞がかかるような小さい音を出す時に、いかにその小さい音の範疇でグラデーションを持たせられるかというところに尽きるんですよね。

音楽用語で言うと、ピアニッシモという強弱記号からメゾピアノというものに至るまでに、ピアニッシモ、ピアノ、メゾピアノという3段階しか表現記号は無いんです。ただ、一流の音楽家は、その3段階の色彩を10段階以上で表現されるんです。

早見さんは声優さんの中でも、そこの小さな声のバリエーションとグラデーションが、ピカイチなんだと思うんです。多分小さな声色だけでも数十種類持っていらっしゃる人で。それは20話の挿入歌とOPの歌を比べて頂けると明白で、リューさんを演じられている際にも随所に見られるところがあって。

早見ファンとしては、どこかで言ってやりたいと思っていたところなんですけど(笑)。

早見:(笑)。ありがとうございます。緊張します。

 

 
井内:では、早見さんどうぞ(笑)。

早見:えー(笑)。心の準備……!

井内:(笑)。

早見:私たちが最初にアフレコする時って、無音でやるんです。完パケする前に声だけ入っているバージョンというのを一度見せていただくこともあるんですが、やっぱり全く違うんですよ、音楽が乗ったものって。

映像ももちろんそうなんですけれど、声とマッチして音楽が入った時って、物語が一千倍、何万倍にも広がっていくかたちがあるというか。

映っていない空気をどうやって音で描いていくか、というお話を先ほど井内さんがされていらっしゃったと思うんですけど、まさにそうで。目に見えない空気感だったりとかって音楽が担っている気が私はしているんです。

声だけで状況や雰囲気を伝えるというのは、私たちもお芝居する時にすごく苦労するんですよ。どれくらいの空間で喋っているのかなとか、この人は今どういう状況なの? とか。

無音ってそういったものが全然わからないんですよね。そこの想像を働かせながら録るんですけれど、音楽があると何も言わなくても全て伝えてくれるんです。なので、欠かすことのできない存在だし、個人的には同じファミリアみたいな(笑)。

井内:ありがとうございます。

早見:すみません、おこがましくも。

井内:いえいえ、とんでもないです。光栄です。

早見:同じファミリアで、ひとつの目標に向かって、そしてどんな場所を担うか。ファミリアメンバーの私は“声”でそこに参加します、と。それが全て集まってひとつの完成されたファミリアになるみたいな。そういったファミリー的なイメージだと、私は勝手に思っています(笑)。なくてはならない存在です。

 

 

──ありがとうございます。最後に、厄災篇も残すところあと2話となりました。最終話に向けて皆さんにメッセージをお願いいたします。

早見:20話を経て、リューさんの心の動きも大きなものがあったんですけれども、最終話に向けて、まだまだ怒涛の展開が続いていくと思います。

絶望の中を必死で生き抜いてきた皆の最終話を見届けていただきたいですし、リューさん的には最後の最後の、最後の辺りで、これまで見ることのできなかったもうひとつの表情というのも、もしかしたら垣間見えるかもしれません。その辺りも楽しみにしていただけると嬉しいです。

井内:『ダンまちⅣ』は劇場版よりも編成が大きくて、アニメ作品の中でもMAX巨大なオーケストラを使っていると思うんです。

スケールの大きな重くて辛い話ではあるんですけれども、その中に見え隠れするリューの心情であったりとか、そこを優しく手助けするベルの英雄たる素質であったりを鑑みて、そして演者さんの演技をメロディーとして、見え隠れする感情や背景を丁寧に拾えている気がしています。

なので、そこに耳傾けていただきつつ、もう1度、1話から見直していただいて最終話まで辿り着いていただけると、より届くものがあるんじゃないかなと思うので、そこをお願いできればと思います。

──ありがとうございます。

 
[取材・文/太田友基]

インタビュー前編はこちら

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2015年に放送された『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』から8年。ついに映像で紐解かれていくリュー・リオンの過去。シリーズ累計発行部数1200万部を突破する人気小説『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(原作:大森藤ノ イラスト:ヤスダスズヒト GA文庫/SBクリエイティブ刊/通称ダンまち)を原作とした本作。絶望とも呼べる展開が続き、先の気になる物語が展開されているテレビアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ深章厄災篇』が2023年1月より放送・配信中です。これまで主人公、ベル・クラネルにとって頼りになる冒険者として描かれてきたリュー・リオンの過去が描かれていますが、シリーズを彩る音楽にも「厄災篇」ならではの変化が起こっていることに気づいている方も多いと思います。そこで、今回は酒場「豊穣の女主人」で働くエルフの少女で、元冒険者であるリュー・リオンを演じる早見沙織さんと、シリーズの音楽を担当されている井内啓二さんにお話を伺いました。役者と劇伴作家。異なる立場から『ダンまち』シリーズを支えるお二人ならではのエピソードも!  お二人が「厄災篇」において意識したことは?──『ダ...

 

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TVアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 深章 厄災篇』作品情報


2023年1月5日(木)~
TOKYO MXほかにて放送

イントロダクション

悪夢は終わらない。
絶望は破滅を誘い、厄災は惨禍を招く。
ジャガーノートとの闘いのさなか、奈落に消えたベルとリュー。
行き着いた先は、全ての冒険者が恐れるダンジョンの深淵――『深層』。
満身創痍、孤立無援、迫り来る厄災の脅威。
迷宮決死行の渦中、五年前の後悔に苛まれる妖精はかつての仲間を追憶する。
一方、ベル不在のパーティの前に現れたのは、双頭の巨竜アンフィス・バエナ。
破壊の化身が吐き出す凶悪な炎流が全てを呑み込む。
希望も光明も失われた迷宮で、冒険者達が辿る運命は幕切れか、それとも……
これは少年と妖精が押し寄せる死に抗う、過酷に満ちた【眷族の物語(ファミリア・ミィス)】――。

スタッフ

原作:大森藤ノ(GA 文庫/SB クリエイティブ刊)
キャラクター原案:ヤスダスズヒト
監督:橘 秀樹
シリーズ構成:大森藤ノ/白根秀樹
キャラクターデザイン:木本茂樹
美術監督:金 廷連(ムーンフラワー)
色彩設計:安藤智美
撮影監督:福世晋吾
編集:坪根健太郎(REAL-T)
音響監督:明田川 仁
音楽:井内啓二
オープニングテーマ:早見沙織「視紅」
エンディングテーマ:sajou no hana「切り傷」
プロデュース:EGG FIRM/SB クリエイティブ
アニメーション制作:J.C.STAFF

キャスト

ベル・クラネル:松岡禎丞
ヘスティア:水瀬いのり
リリルカ・アーデ:内田真礼
ヴェルフ・クロッゾ:細谷佳正
ヤマト・命:赤﨑千夏
サンジョウノ・春姫:千菅春香
カシマ・桜花:興津和幸
ヒタチ・千草:井口裕香
ダフネ・ラウロス:小若和郁那
カサンドラ・イリオン:真野あゆみ
アイシャ・ベルカ:渡辺明乃
リュー・リオン:早見沙織
アストレア:中原麻衣
アリーゼ・ローヴェル:花守ゆみり
ゴジョウノ・輝夜:千本木彩花
ライラ:諏訪彩花
ノイン・ユニック:河瀬茉希
ネーゼ・ランケット:泊明日菜
アスタ・ノックス:遠野ひかる
リャーナ・リーツ:香坂さき
セルティ・スロア:川口莉奈
イスカ・ブラ:広瀬ゆうき
マリュー・レアージュ:関根明良

公式サイト
公式ツイッター(@danmachi_anime)

 

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