映画『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』スプリンター役・堀内賢雄さんインタビュー|タートルズの父親的な存在のスプリンターを演じて「同じ親として気持ちがよくわかる」
タートルズの4人を吹替えたキャストに感心
ーー吹替版の他の方たちのお芝居についてはどんな印象を受けられましたか?
堀内:収録の始まる前は「タートルズを演じる4人は、何日かけて録ったんだろう?」と思っていました。
原音で聞いてると何を言っているのかわからないところもあったのですが、吹替版では「この子達、すごいな」と思うほど、分かりやすかったです。
ーーオリジナルでは、10代のキャストを集めて収録されたそうですが、吹替版のタートルズの4人もフレッシュです。
堀内:先日も日本最速上映会のトークコーナーで3人(土屋さん、戸谷さん、榊原さん)とご一緒しましたが、既にチーム感が出来上がっている感じがしました。誰とでも、するっと入って普通に会話できてしまうのは今の若者らしいなと。4人のキャラクターのバランスもいい具合にとれていると思います。
こういう複数人数のグループや兄弟はキャラが似てしまい、「今の誰だったのかな?」とわからなくなるもあるけど、そういうこともなくて。各役者さんの工夫とキャラの付け方は音響監督の演出もあると思いますが、いいバランスのチームになっていると思います。
ーー初代レオナルドを演じた声優さんとして、今回レオナルドを演じている宮世琉弥さんのお芝居をどう感じられましたか?
堀内:素晴らしかったと思います。僕も今回、レオナルド役を家で練習してみたけど、宮世さんのお芝居は実直さが出ていて良かったと思います。そして僕が演じた当時のほうが演じやすかったなと。
ーーこの映画の吹替版もキャスト陣が豪華ですね。タートルズにたちふさがる敵のスーパーフライ役を佐藤二朗さん、ヒロインのエイプリル役を日向坂46の齊藤京子さんが演じているのも注目ポイントです
堀内:スーパーフライ役の佐藤さんはのびのびとやられていましたね。スーパーフライをどんなふうに演じるのかなと気になっていました。スーパーフライは葛藤を抱えていて、絶対的な悪というよりも自分を苦しめた人間を滅ぼしたいという憎しみが強いですよね。そうなるともっと強面に作ってしまいそうだけど、佐藤さんの柔らかいセリフの中に怖さがあって、素晴らしいなと思いました。
齊藤さんは声優初挑戦とのことですが、しっかりエイプリルを自分のものにしてきていて驚きました。エイプリルはタートルズたちを事件に巻き込んでいく重要な役で、膨大なセリフをこなすだけでも大変なはずなのに。きっと作品やお芝居が好きで、真摯に取り組んでいるんだろうなと思いました。
吹替作品を長くやってきたけど、今回は皆さん、満点だなと思います。
ーー皆さんのお芝居は型にはめようとせず、はみ出してもいいくらい、だけど全員のバランスや世界観を崩さないところが素晴らしいと思いました。
堀内:忙しいスケジュールの方が多いけど、誰も「これでいいか」と妥協していないところがいいですね。そして今の時代のお芝居とシンクロしているのも素晴らしいです。
ジャッキーさんをほうふつとさせるスプリンターのアクションシーンは一発OK!
ーー映画『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』をご覧になった感想をお聞かせください。
堀内:すごく芸術っぽいんですんよね。細やかであるけど、がちゃがちゃしていて、スタッフさんたちの工夫やこだわりが沢山散りばめられていてクオリティが高いです。CGなのに、手描きの表現も多くて、すごく手間や労力をかけていることが一目でわかりました。
ーー2023年のニューヨークを舞台にしているということで、ヒップホップやストリート文化の雰囲気も絵や音楽で見事に表現されていますね。
堀内:今の流行に慣れ親しんでいる若い方にはどんぴしゃだと思うけど、僕のようなおじさんにはわからない部分やついていけないところもあって。そこはスプリンター先生と同じかもしれません(笑)。
だから収録しながら「これがヒップホップか」とか「これがラップなんだ。俺は歌ったことがないけど」とか教えてもらっているようでした。改めて今、レオナルドをやらなくて良かったなと(笑)。マネージャーに「今回スプリンター役で良かったよ」と話したら「年齢的に無理ですから」と言われたのを覚えています。
ーーそんなスプリンターも武術の達人ということで、終盤に華麗なバトルシーンもありました。でもあのテンポで技を繰り出すのはベテランの方でも大変ですよね。
堀内:ちょっと自慢していいですか? あのバトルシーンはテイク1でOKだったんです。テストでも一発で「その感じでいきましょう」と言われたし、ほぼ完ぺきでした。ああいうシーンで遅れてしまうと「年をとったな」と思ってしまうけど、この時は経験のなせることなのかなと思いましたね。台本を見てしまうと遅れてしまうけど、映像を見ながら動くほんの少し前に喋るとちょうどハマるんです。「できてる、俺」って。
ああいうシーンで手を抜いて、軽くやってしまうとウソになってしまうので、あのシーンが終わった後、めまいがして、貧血で倒れそうになりました。それくらいハイテンションだったし、自分で自分をほめたシーンでもありました。
ーーバトルシーンの他で、お気に入りのシーンを挙げるとしたら?
堀内:人間たちがスプリンターを助けてくれたシーンで、じーんと来ました。そして、まさかの彼女ができたシーンも(笑)。
スーパーフライとミュータントたちが必死で戦っているのを、人間たちが応援するシーンは、僕も「伝われ!伝われ!」と思いながら演じていました。
ーーあのシーンがこの映画のテーマの1つですよね。
堀内:僕もそう思いました。ここに絶対ウソがあってはいけないと自分の中でもすごく気合が入りました。改めて、原点という作品にたずさわれて良かったと思いました。
この作品はSNSなどの口コミでどんどん広がっていきいそうだなと感じます。タートルズたちは最速上映会に来てくれましたが、フォルムやデザインがかわいいんですよね。それでいて、強いというのは人気が出る要素かなと。タートルズを演じる4人のキャストもカッコよくて、かわいいし。あと脇を固める声優陣も超一流で、僕も「すごい気合が入っているな」と思いました。
ーーでは皆さんへメッセージをお願いします。
堀内:これまでアニメや実写などいろいろな形で映像化されてきましたが、ここに来て、映像や音楽、ストーリーなど原点に戻った感じで、『ミュータント・タートルズ』の良さが集約された作品が完成したと思います。
日本語吹替版もキャストみんなが魂を込めて演じられていて、僕自身素晴らしい作品になったと思うし、何度でも見たい仕上がりになっていると思います。『ミュータント・タートルズ』ファンの方もまだ見たことがない方もこの映画を見ていただいて、続編ができるように応援していただけたら嬉しいです。
[取材・撮影/永井和幸]
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あらすじ
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