音楽
『ミルグラム』×『クロケスタ』コラボ記念 仕掛け人 超ロングインタビュー

Never↓andへ誘われた囚人たちとの楽しい楽しい夢裁判──『MILGRAM』×『Clock over ORQUESTA』コラボレーション記念!『MILGRAM』原案者・山中拓也さん&『Clock over ORQUESTA』原作者・大河ゆのさん&プロデューサー・岡本純さんの初対談

人との出会いがクリエイティブの面白さを倍増させる

──コラボレーションを経て気づいた、お互いの作品の魅力についてもおうかがいできればと思うのですがどうでしょうか。

山中:クロケスタさんの作品を通してお客さんを楽しませようとする懐の深さは、僕らからすると足りないモノだなと。老若男女のキャラクターがいて、かつ、ひとりのキャラクターにつき声優さんも子ども、大人とそれぞれにいて、それぞれに本当にパワーがある。楽曲の幅も広い。どこから入っても楽しめるんですよね。ピーキーな内容にも関わらず、触り心地が調整されているように思います。応援して損のないコンテンツ作りをされているな、と。

岡本:私側からはもう一言で「ファンを狂わせるのがお上手だな」と。

山中:(笑)

岡本:もちろん褒めていますよ! ファンの皆さん、狂おしいほど愛しているじゃないですか。

山中:確かに。それは僕自身が、お客さんを喜ばせるためだけに『MILGRAM -ミルグラム-』をやっているわけではない、というところが大きいのかもしれません。というのも、人生であと何作作れるかなんて分かりませんから。自分の頭の中の世界をそのままブレずに、最強のチームで表現しようと。その我々の身勝手なものづくりを、たまたま好いてくれる人がついてきてくれればいいくらいに考えています。それで言うと、今『MILGRAM -ミルグラム-』の存在は予定より大きくなりすぎているなと感じているくらいで。

岡本:私たちの場合、真逆なんですよね。ただ作品の作り方という観点で言うと、どちらも正解だと思っています。

山中:うんうん。

岡本:山中さんのブレの無さというのはHPのトップ画面のデザインひとつ取っても感じるんですよね。カラー設定の統一感からして、もうすごいじゃないですか(笑)。「世界観はこれが全てです」と。ロゴもめちゃくちゃ良いですよね。コンセプトがよく伝わってきて、非常に感銘を受けました。

山中:ロゴやアートデザインに関してもOTOIROのアートディレクターが一貫して設計しています。ひとつ説明したらすべてを理解して、イメージ以上のものを作り上げてくれます。「この人たちになら全部預けても大丈夫だな」という感覚がありますね。

DECO*27には、僕が以前担当していた『Caligula -カリギュラ-』というゲームで出会ったんですが、そのときも同様に思っていて。そういう方たちと一緒にやれてるというのは大きいのかもしれません。

岡本:「この人たちに預けてもいいな」と思えたときの喜びってとんでもなくないですか? エグいですよね。

山中:エグいですね。作家性が強いと、人に任せるより「自分でやっちゃったほうが早いな」という場合が多いと思うんですよ。だからこそ、個人での活動になってしまうと思うんです。だからコンセプトを保ったまま、チーム制でやれるってものすごく貴重なことで。

岡本:そうですね。クリエイターさんとの出会いって本当に一期一会なところがあると思っています。コラボレーションの話とはそれてしまいますが……たとえば『Clock over ORQUESTA』で、漫画を描いていただいている三嶋たぬ先生はいつも私の想像を超えてきてくれますね。例えばですが、大河先生のプロットの中に記載のある、「アンニュイ」「振り向き」などのニュアンス表現についても、原作者も私たちも文句なく、バシッと決めてくれるんですよね。そういうことってありませんか? 

山中:ありますね。それは僕はやはりDECO*27に感じていて。僕たち脚本を書く人間は、その感情が生まれるまでにどう積んでいくか……ということを考えて、そこにたどり着いていきます。結果は勿論ですが、そこに至るまでの経路の美しさも重要なんです。作詞家の場合は短い文字数で、一撃でその地点に着地させなければいけないんですよね。彼は僕から作品意図を事細かに説明しなくても、ばちっと決めてきてくれる。凄まじい技術だと思います。だから自分とは違う分野で、パートナーを見つけられた時ってものすごく幸せで。むしろそういう出会いがあったからこそ、企画ができるのかなと。

岡本:アウトプットのシンパシーってすごいですよね。

山中:そう、奇跡に近いと思うんですよ。基本的には“ない”ことですから。例えば、さきほど挙げた『Caligula -カリギュラ-』の(キャラクターデザイン担当の)イラストレーター・おぐちくんは、アート関連の発想力が凄まじい人で、僕が細かく考えるものよりも、もっとふわっとした状態のアイディアを渡した方が自由に良いものを出してくるタイプなんです。彼とやる場合は、発想にブレーキを踏ませないように、というのを意識していました。彼が全力を出せる道を作って、辻褄は僕が合わせるというイメージで組んでいます。

やりたいことがありすぎて困る

──おふたりはゼロからいちにされていく立場じゃないですか。産みの苦しみのようなものってあるんでしょうか。

山中:むしろやりたいことがありすぎて苦しいくらいなんですよ。やりたいことはたくさん生まれてくるのにやる時間の方がない。「もうひとり自分がいたら」と思うくらいで。

岡本:私と大河先生も同じくですね。やりたいことはたくさんあるけど、これを外に出す作業が追いつかないし、ひとりじゃもはや抱えきれなくて。これを頭に抱えたまま死ぬのか、という焦燥感のほうが強いです。あと何作品手がけられるのかなって。いつもそんな話で盛り上がっています。

──さきほど山中さんからも「あと何作作れるかなんて分かりませんから」という言葉がありましたね。

山中:もう若手と呼ばれる年齢は越えてしまっているので。特に僕の場合はフリーですし、やりたいことをやらせてくれる会社さんと出会うことがまず難しい。ましてや、僕のやりたいことにビジネス的な価値を見出してもらえるかどうか(苦笑)。それでいうと『MILGRAM -ミルグラム-』は普通の会社だとまず難しいと思うんですよ。少しやらしい話ですけど、儲ける場所がありませんから。CDにも投票券は入れませんしね。

──そこを頑なにNGにした理由ってなんだったんです?

山中:人気なキャラクターが生き残る、人気のキャラクターが展開的に得をするということを避けたかった、ということですね。視聴者の「赦す」「赦さない」の判断だけで良かった。ふらっと見た人も、しっかりシナリオを読んでくれる人も、なんならコンテンツを知らない人でも、一票は同じ価値。それは現実のニュースに関してもそうだと思うんです。例えばパッとニュースをつけたときに「この人は許せない」と思う人もいれば、踏み込んでインタビューまで読んで別の感想を持つ人もいるじゃないですか。どこまで潜り込むかは自由だけど、興味なかろうと、愛を持っていようと、邪な理由だろうと「ひとりの人間の考えたこと」であることは変わりないですから。そのドライさを保ちたいなと思っていました。ミルグラム内で起きることは勿論、ミルグラムというコンテンツに人間が感じるものも、すべてまとめて作品だと思ってるんです。だから投票券投票制は禁じたかったんです。完全に僕のわがままですね。

大河:でも、ひとりのクリエイターとして、その考え方って正解だなと思います。あくまで私の考えですけども、クリエイターは“作品”という装置を使って、どれだけ人の感情を動かせるのか、だと思っています。そこで喜んでもらったり、泣いたり笑ったり、人それぞれ目的は違いますけど、その感情の導線をクリエイティブしていると思うんです。山中さんはブレず、媚びず、その果てにファンを一喜一憂させている。そういうやり方もあるんだな、と。そういった作品の作り方って、いちクリエイターとしてすごいなと素直に尊敬しています。

山中:逆に『MILGRAM -ミルグラム-』が真っ先に捨ててきてしまったものを、『Clock over ORQUESTA』さんはきちんと誰も不幸にならないようにやってるんですよね。激しいコンセプトにも関わらず、そのバランスをとれているのはすごいことだと思います。

岡本:ギリギリの均衡ですね。

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