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映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』関俊彦&木内秀信が実写的な芝居で作り上げた、鬼太郎の父と水木の空気感/インタビュー

求められたのは“昭和30年代の白黒映画”のテイスト――映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』関俊彦さん&木内秀信さんインタビュー|アニメーション的なデフォルメを払い、実写に近い芝居で作り上げた鬼太郎の父と水木の空気感

求められたのは“昭和30年代の白黒映画”のテイスト。セリフを読むスピードも当時の俳優をイメージした早口なものに

――本作で役柄を演じる際に意識したところ、気を付けているところ、スタッフに言われたアドバイスなどはありますか。

関:『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、「昭和30年代頃の白黒の日本映画のテイストでやりたい」と聞いていたんですが、当時の役者さんは、みなさん早口でしゃべるんです。木内さんがよくお話ししている、ゆりやんレトリィバァさんのネタ「昭和の日本の映画にでてくる女優さんの喋り方」のような口調ですよね(笑)。

木内:ゆりやんさんがよくモノマネしている、ああいう早口な感じなのかなと思っていたんです(笑)。オーディションの時から、一回読ませていただいて、「次は早口で読んでくれ」と言われていたので、「何でだろう?」と思いながら読みました。

関:そうなんですよね。「えぇ~?」って思いました。

木内:「昭和の初めの白黒映画のような雰囲気を出したいので、ハキハキとちょっと早口めでしゃべってもらえますか?」と言われて、オーディションでもやってみましたし、もちろん本番でもそういうことを求められました。

関:本番の尺もかなりセリフがきつかったですよね。

木内:もうすごいキツキツでした。こんなに早くしゃべって、この文章をどう読んで、お客さんにわかりやすく伝えるのかということを考えながらやりました。僕は長ゼリフが多かったんですよ。

関:そうなんですよね。(状況を)説明しなくてはいけないセリフがたくさんあったよね。

 

 
木内:水木の心の内を吐露するシーンがあるんですが、そこがけっこう早くて、普通の現場では求められない早さでした。僕はオーディションに受かってから、佐田啓二さんが主演の『あなた買います』(※2)という作品のVTRを監督から渡されて、「こういうイメージ、こういう雰囲気のものを作りたいんだ」と教えていただきました。

求めているものは、力強い、男らしい姿。「昭和の戦争が終わって復興していく社会で、いかに男が強く生きていたかというところも出したい。力強めで作ってくれ」と言われました。

関:二人の会話のシーンだけでなく、そもそもアフレコ収録がずっと二人での収録でした。3日間の収録の中で、1日目、2日目と二人で収録していて、3日目になってようやく他のキャストさんも入ってきたんですが、その中で水木のキャラクター像と鬼太郎の父のキャラクター像を確立するまで、監督と一緒に何度も何度も繰り返して行いました。

要するに、鬼太郎の父の方はもちろん、人外の存在である幽霊族なんですが、水木との出会いによって、心の交流があって、心もほどけてきてバディという形になる。その過程を描きたいということだったので、中盤ぐらいまでの二人の会話は、お互い牽制し合っている空気があるんです。そこから、いろいろと会話を重ねて、「お互いの目的のためだけだったら、ここはいったん手を組もう」というところに持っていくので、その会話のキャッチボールが前半の肝でした。

この雰囲気をどうやって作り上げるかということを監督に何回も見てもらいながらやったんですが、要は芝居のさじ加減なんです。何回も二人の会話のキャッチボールを聞いてもらって、それを監督が「う~ん、もう一回お願いできますか? ここはこんな感じなんですけど、関さんのセリフは大さじ2杯だったのを1杯にしてもらって、小さじ3杯足してもらえますか?」という感じで、実際に言葉にはしていませんが、そういう雰囲気の応酬を監督としました。そこを掴むまでは時間がかかりましたよね?

木内:はい。僕が先に一人で収録部屋へ入っていて、僕のラリーが最初にあったんです。そこで何行か読んだら、監督が収録部屋へ入ってきて、もう一回やるというのを繰り返しました。マイク越しではなく直接監督の話を聞いて、それをけっこう何回かやりました。

関:大変でしたね(笑)。

木内:そこから関さんが加わって、関さんのラリーが始まるんですよ。それを僕は横で黙って見ている感じで、丁寧に作っていきました。

関:それを台本の1冊目の後半ぐらいで作って、イメージが固まったところで、最初のシーンに戻ったんですよ。二人の初登場シーン、出会いのシーンに戻って、もう一回録り直しました。

 

 
木内:僕は最初のほうの、水木が何人かと会話するシーンを、3日目に役者さんが入った時にもう一回録り直しました。実際の言葉とは違うんですが、微妙なニュアンスの差なんですよね。水木というキャラクターを確立するために、いろいろラリーしながら、役を作ってからのスタートでした。

関:この2、3年、ほとんどのアフレコ収録の仕事が別収録になってしまったこともあるんですが、監督としても私たちとしても、実際にお隣にいてもらって、空気を感じながら、お互いの会話を生きた会話として収録できる方がいいんです。一人で木内さんが収録なさっていた時と、別の役者さんが入って実際に二人並んで収録する木内さんの言葉は微妙に変わってきたりするので、そういうことを監督は求めていたのではないかなと思います。

※2:1956年に公開された松竹製作・配給による小林正樹監督作品。

――関さんも監督から何か参考資料のようなものを渡されましたか。

関:僕は特になかったですね。昭和30年代の白黒映画と言われたので、小津安二郎監督(※3)の作品を家で観たぐらいです。小津監督の作品は、役者さんも熱演はあまりなさらず、セリフがわりと淡泊なんですよね。

――そう言われると確かに、鬼太郎の父は淡泊に感じました。

関:感じてくれました? 一番のポイントは感情で説明しないこと。感情で説明してしまうと、押し付けがましくなってしまうというのが一つ。いい意味と悪い意味があるので、簡単には言えないんですが、例えば小津監督の作品は感情がサラッといくんですね。でも、感情を押し付けなくても、サラッとした言葉できちんと観ている側にドラマの事実が伝わります。

観ている側は登場人物が感情を押し付けてこないから、「ん? 今サラッとした顔しているけど、心の中はいろんなことがすごくうごめいているんじゃないかな?」と、ドラマの成り立ちを想像する。それが当時の映画の手法だったのかなと思います。

 

 

――関さんが演じてきたいろいろな役柄の中でも、今回の役は声のトーンが少し高めで、淡泊で、ちょっと浮世離れしている感じがしました。

木内:まさに、そういうディレクションでした。

関:今回の作品では、監督から「実写的な感覚」とよく言われていました。アニメーションのセリフや感情の表現というのは、二次元のものを三次元にするために、ある程度のデフォルメ、誇張というのがまるでルールのように必要なんですが、今回の作品では「そういうものを全部払ってしまおう」と言われました。

なので、今作の見どころやハイライトシーンを聞かれた時に、アクションシーンと答えているんです。いつもだったらアクションシーンは、いただいたリハーサルビデオを家で目を皿のようにして見て、あらゆるアクションや動きに自分の息遣いを入れていこうと思って現場へ行くんです。でも今回の収録では、そういうことは画に任せて、自分の息遣いをあまり入れないようにしました。アニメチックなところからちょっと距離を置いて、実写に近いテイストの方法で収録しました。

セリフについても、後半のポイントポイントでは必要だったんですが、それ以外の普段の鬼太郎の父の時は、なるべく感情を見せないように、サラッといこうと思ってやっていましたね。

※3:1928年~1964年に活躍した日本を代表する映画監督。代表作に『東京物語』『麦秋』『秋刀魚の味』など。

 

(C)映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」製作委員会
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