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『16bitセンセーション』若木民喜(原作)×佐久間貴史(監督)×中山信宏(プロデューサー)インタビュー前編【連載第9回】

『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』第8話放送後インタビュー:若木民喜さん(原作)×佐久間貴史さん(監督)×中山信宏さん(プロデューサー)|守がまさかのタイプスリップ! 異質な雰囲気となった第8話はぜひ考察してほしい【連載第9回】

守もタイプスリップ! 考察してほしい衝撃的な第8話

――第5〜6話の会社の危機から、第7話でコノハが歴史を変えるような動きをして、さらに第8話で守が謎の空間へ行くというSF要素が入る構成が、非常に面白いと思いました。

若木:第5〜6話は、雑破さんと自分と髙橋龍也さんの共作みたいな感じで、そこに第7話から東出祐一郎さんが入ってきて、それがすごく良かったんですよね。

――第4話くらいからの、守が「コノハが未来から来た存在だ」っていうのをどうやって信じていくのかという流れとかが本当に良くて、そこから未来が少しずつ変わっているかもしれない面白さがあったんですよね。美少女ゲームのドキュメンタリーからSF要素がうまい具合にミックスされていき、第8話でドSF!という感じになったというか。

若木:そうやってちゃんと観てくれていたらいいんですけどね(笑)。ちょっと前半はネタ要素が強すぎて、ネタの話題で盛り上がっているうちに30分が過ぎているので。

中山:そうそうそう。ちゃんと前振りとかを拾っているんですが、スルーされてしまうんですよね(笑)。

佐久間:でも、このインタビューが公開されるあたりの話数だとネタの頻度は徐々に下がっていて、より物語にフォーカスしていく流れになっていくんです。

若木:そうだね。最初はネタ的なところから始まったけどっていう。

――そして第8話になるわけですが……。問題作でしたよね。

中山:昔のアニメだったら、こういう構成ってあったと思うんです。1話まるまるこういう話っていうか。古い話だと『機動警察パトレイバー』の地下にワニを探しに行く話とか、上海亭の話とか、大好きなんです。1話まるまる「何だこの話?」みたいなのが。

若木:懐かしい〜(笑)。出前がなかなかこないやつね。

中山:昔のアニメだったら結構許されていたんですが、今は1クール・2クールがベースになっているので、間をとる話ってあまりやらないんですよね。でも第8話は、そういう話に見えて実は重要な話で、それをちょっと不思議な感じでやるというのを、皆さんがどう捉えてくれるのかがちょっと楽しみです。

――これを監督は、どのように捉えていたのですか?

佐久間:最初、「どこかで一度、クライマックスに行く前に総集編をやって、全12話構成だけど全13話分の枠を抑えられますか?」という話をしていたと思うんです。それが、気づいたら全13話構成になっていて……。「これ、1話多いですけど大丈夫なんですか?」とst.シルバーの人たちに聞いたら、「なんとかなると思うよ」って言うから、その上で1本分何をやれるのかとなったときに、確か若木さんが、「90年代より前に行く話をしてみたい」と言っていたので、じゃあst.シルバーもやれると言っているのでやりましょうと。

若木:打ち合わせって全能感がすごいから、「できますよ、できますよ」って言うんですよね(笑)。12話でも13話でも、好きにやってくださいって。
僕はアニメ業界のことも分からないし、それが方便かどうかも判断できないからやっちゃいますよ!と(笑)。

中山:でもシナリオ段階から、異質な、特異な話にしたいと言っていたので、それはなんかいいなって思ったんですよ。しかも守が主人公で、守視点で語られるのは面白いなと。

佐久間:映像、演出、絵コンテ面で言うと、どの話数も基本的に自分は「これだけはやらないで」と伝えて、そこさえ抑えてくれれば、シナリオで感じたものを好きに描いてもらって良いと言っているんです。で、この第8話は他の話数と比べて特殊な内容の話数だったので、絵コンテ・演出を、この話数だけ単独で笹嶋啓一さんにお任せしているんです。こういう少し不思議な話に合うんじゃないかと思って。

中山:そういう意味では、アフレコも間や尺の取り方が結構違っていましたよね。守のナレーションベースで進んでいく雰囲気含めて、前後の話数とは全く違うものになっていると思います。

――想像力って何だろう、と考えさせられました。

若木:80年代の美少女ゲーム制作をちゃんとやると映せないことが多そうだったので、現場の感じは描きたいけど、他のテーマを立てようというアイデアがあって、そこにああいうエコーというのを置いて、せっかくだからSFの縦軸を担ってもらおうかと思ったんです。あと守に体験させて、コノハの気持ちを分かってもらおうということもあって、それも全部含めてうまいこと機能してくれたらいいなと思って。

中山:それによって、守が「タイムスリップってこういうものなんだ」と認識する話の流れにもなっていくんですよね。

若木:仕組みの説明とほぼ変わらないからね。

中山:そうなんですよ。第8話があるから、この先でそういう認識になれるという流れになっていて。結果すごく重要な話数でもあるんだけど、伝わるかなぁ?っていう。

若木:こればかりは僕も分からない。絵コンテもすごく独特だったから、画面でどうなるんだろう。

中山:想像力の話になって、熱量の話になって、それを持っている人がそうなるのである!っていう前振りになっているんですよね。

若木:タイムスリップがエントロピーで行われているということも含めて、すべて“熱”というものに集約されていくという話ですね。

中山:いわゆる昔の美少女ゲームにも、SFから派生するようなものがあったので、その世代には分かっている人も多そうなんです。その人たちが考察してくれたらいいなと思っています。

若木:「これはDOSゲーのノリなんだよ」っていうことを言いたい。

中山:熱量ということは、これはエントロピーか!?っていう。

若木:この話数だけでそこまで行けたらエスパーだけどね(笑)。

――でもここは、全体としてもターニングポイントになりましたよね。

佐久間:そうですね。第9話以降は、起承転結の転と結になっていくのかなって思っているので、第8話はその前段階の話という感じだったのかなと思います。

若木:次の第9話で「第一部完!」みたいな感じになると思うので、次の話数もよろしくお願いします。

[文・塚越淳一]

『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』作品情報

16bitセンセーション ANOTHER LAYER

あらすじ

秋里コノハは美少女&美少女ゲームが大好きなイラストレーター。超人気絵師になることを夢見て美少女ゲーム制作会社で奮闘しているものの現実はうまくいかず……、ソシャゲ全盛期の現代に会社は傾き、コノハはサブのイラストレーターとしてモブキャラの後ろ姿を塗る日々を過ごしていた。

ある日、ひょんなことから過去の名作美少女ゲームをゲームショップの店主から譲ってもらうことに。美少女ゲーム黄金時代に思いを馳せ、『同級生』のパッケージを開くと突如まばゆい光に包まれ、気づくとコノハは過去にタイムリープをしていた!

行きついた先は1992年!世は美少女ゲーム黎明期!アルコールソフトという会社で働くことになったコノハは、美少女を想い、美少女を描き、美少女を創りあげていけるのか!?

圧倒的な美少女への愛でお送りする、ひとりの少女の物語――『じゃ、始めるね!』

キャスト

秋里コノハ:古賀葵
六田守:阿部敦
下田かおり:川澄綾子
上原メイ子:堀江由衣
六田勝(てんちょー):伊藤健太郎
五味川清(キョンシー):福島潤
山田冬夜(やまだ・とうや):山根綺

(C)若木民喜/みつみ美里・甘露樹(アクアプラス)/16bitセンセーションAL PROJECT
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