この記事をかいた人

- 塚越淳一
- アニメイトタイムズでいっぱい書いています。

――続いて、クレモンティーヌさんのボーカルの素晴らしさをおふたりに言語化していただきたいのですが。
神前:息の表情というか、存在感……。
高田:まさに! オケに乗ったときの、発声の消えていく感じとか、実際に鳴っている音だけではなく、空気感や存在感がすごいんです。前作までは、フランスで録ったボーカルのデータをいただいていたんですが、ミックスでそれをオケに組み込んだときのインパクトがすごかったんです。なかなか説明が難しいんですが、他に代えがたい存在感のボーカルでした。
神前:メロディの密度がすごく高まったというか。フランス語という言葉の持つ魅力+クレモンティーヌさんの声という素晴らしい楽器の存在感というのが一番ぴったりくる表現なのかな? 音と音の間にも表情があるような感じがするんです。
高田:そこも含めての表現という感じなんですよね。
神前:フランス語はよく「歌うような言語」だと言われるんですが、こういうことか!と思いました。
クレモンティーヌ:(作詞の)meg rockさんが書いてくださった歌詞が非常にシンプルだったんです。日本人が言葉を選んで書いているからこそ、言葉が簡単でわかりやすかったんですね。なので余計に表情が付けやすかったというか。フランス人が聴いても、すごく想像しやすい、想像力をかき立てられるような歌詞だったので、それが良かったんだと思います。
今回の映画も観させていただいたのですが、素晴らしいオーケストラで、「今どきこんな音楽は実写映画でもないな」というくらいでした。本当に素晴らしい音楽に、どこか儚いような私の声が乗る。ここでしか作れないような世界観を表現させていただけたというのは、自分の長いキャリアの中でも珍しいことだったと思います。
この曲は、すごくエモーショナルで、強弱も素晴らしいし、何か旅をしているような雰囲気があって。1曲聴いただけで、どこかへ行ったような気分になる浮遊感があったので、すごくいい意味でリッチな曲だと思いました。

――今クレモンティーヌさんが仰った、今回の主題歌「étoile et toi [édition le noir]」については、どんなオーダーが尾石監督からあったのでしょうか。
神前:最初の楽曲はバンド編成で、我々が想像するフレンチポップ、ちょっとジャズ的なアプローチだったんです。そこから〈Ⅱ熱血篇〉「étoile et toi [édition le blanc]」のときは、明確にミシェル・ルグランの『シェルブールの雨傘』とか、古き良きフランス映画のゴージャスな、リッチなサウンドを目指して高田にアレンジしてもらいました。基本的に今回の[édition le noir]は、[édition le blanc]をベースにしています。
高田:今回は男性ボーカルを入れて掛け合いをしたいという要望があったので、音域的なところで、男性ボーカルが入ったとき、それが一番引き立つような形で楽器の配置とかアレンジを考えていくことになるんですが、その調整をかなりギリギリまでやっていました。
神前:本当にギリギリまでやっていましたね。ABA構成なんですが、Bの部分を伸ばして、掛け合いをもう少し足したりとか。
高田:以前の形は活かしつつ、単なる焼き直しになってしまっては、「ちょっと増やしただけなんだね」となってしまうので、そこはすごく考えました。わかりにくいところでもあるんですが、「ここを変えるのならば、前のフレーズ感もこういう風に変えよう」とか、かなり細かいところまで詰めていきました。
神前:要するにデュエット映えするようにした感じですよね。あと前回の[édition le blanc]のときは、ピアノコンチェルトの要素が強かったんですが、今回はよりボーカルを立てる、ピアノよりもボーカルをメインにするようにしていきました。

[文&写真・塚越淳一]

アニメBlu-rayブックレットの執筆(「五等分の花嫁∬」「まちカドまぞく」「まちカドまぞく2丁目」「「ちはやふる」「リコリス・リコイル」etc.)、内田真礼、三森すずこなどのライブパンフレット、22/7写真集、久保田未夢UP_DATE執筆ほか、いろいろ
