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『トリコ』にグルメスパイザーが登場した理由。開発者が語る誕生秘話【インタビュー】

受け継がれる『トリコ』への愛とものづくりの魂――13年越しに明かされる「菓子粉砕器」誕生の裏側を“いただきます”|「グルメスパイザー」開発者インタビュー

 

“腕の力こぶでおにぎりを作る玩具”の試作品を制作!?

ーースパイスを振りかける際、拳が開いたように見えるギミックにもこだわりが感じられます。

野口:仮面ライダーシリーズの変身ベルトもそうですが、遊びの中にストーリー性を入れたいと思っているんです。最後に拳が開くというワンアクションを入れることで、遊びとしてのストーリーを取り入れさせていただきました。

加えて、「グルメスパイザー」は実際の食品を扱うため、しっかりと洗えるものにしなければいけません。色々なパーツの隙間にお菓子が入ってしまうので、分解できることが前提のデザインになります。

一方で、お菓子を砕くという機能に堪え得る頑丈さも必要なので、テスト品の完成後の金型の調整には苦労しましたね。試験を何度も繰り返して、破損する心配がないかなど、最終的に人の口の中に入ってしまうものなので様々な確認を行いました。

ーー洗いやすさと頑丈さを両立する必要があったと。アニメの中でも、食材を砕いてスパイスをふりかける一連の行程は印象的に描かれていましたね。

野口:「ぽわ〜」っとスパイスが出てくるシーンには驚きました。実は、「こういう風に登場させてほしい」という具体的なお願いはしてないんですよ。僕らは商品の魅力と遊び方を伝えさせていただいて、それを作中では上手くピックアップしていただきました。僕らも番組を観て、「こんな風に使ってくれるんだ!」と嬉しい気持ちでしたね。

「BBコーン」編では、最後に「グルメスパイザー」が話を纏めるような構成になっていて、『トリコ』という作品はもちろん、それに関わるものまで含めて愛してくださったのだなと。

 

 

ーー坂口さんは、アニメに度々登場する「グルメスパイザー」の活躍をどう見ていましたか。

坂口:とても面白いなと思っていました。基本的には原作を辿っていく中で、「知ってる知ってる」という感覚で観ていたら、突然知らないシーンが出てくるので(笑)。原作とは異なる、新鮮なストーリー展開を楽しんでいた記憶があります。

さらに言えば、アニメの「グルメスパイザー」は、ボディにクリア素材を使っているイメージがなかったので、実物を初めて見た際に色味がとても綺麗だと感じました。

野口:お菓子を粉砕している様子が見えたら楽しいと思って、成形色はクリアにさせてもらいました。おもちゃとして何が最適なのかは、ものづくりの一環として常に考えています。アニメと同じでなくても、「玩具としてはこちらのほうが良い」という場合は反映することがありますね。

ーーある種の実用性を設計にも入れ込んでいく必要があるんですね。

野口:もちろんです。中で回転している様子は、子ども目線で見たら中々楽しいですよね。基本的に子供は“壊すこと”が大好きですから。

ーー会議では「菓子粉砕器」以外のアイデアも挙がっていたのでしょうか?

野口:ドリンク、ラーメン、チョコ、かき氷など、「食べる」「食材」「バトル」の要素を組み合わせたアイデアはたくさん挙がっていました。僕が入ったタイミングでは、「グルメスパイザー」と並行しておにぎりを作る商品企画も提案しました。“腕のちからこぶでおにぎりを作る玩具”の試作品も作りました。

ーーぶっ飛んでいますね!

野口:『トリコ』らしいインパクトのある商品を作りたいと思っていたので、色々な案を出していたんですよ。これが当時の資料です。

 

 

ーー(資料を見ながら)昨今のおにぎりブームの遥か先を行っている気がします。

野口:そうですね(笑)。これで作ったおにぎりに「グルメスパイザー」をかけたら、良いんじゃないかなとか。実際に作ってみると、思ったより小さなおにぎりになった記憶があります。これだけ大掛かりな機械で出来上がるおにぎりがミニサイズという……。

ーー実際のところ、試作品まで作らないとどうなるかが見えてこないという側面もあるのでしょうか?

野口:本当にそうだと思います。こういったギミックのある玩具は、実際に作ってみないと本当に良いのかどうかも分からないんです。「やっぱり違ったね」と思うこともあるので、「どんどん試作品を作って、試してみる」という試行錯誤を繰り返していました。

 

実演販売で感じたお客さんからの反響と手応え

ーーアニメオリジナルのアイテムだからこそ、発売までお客さんの反応が読めない部分もあったのでは?

野口:原作にはない要素でありつつ、『トリコ』の玩具展開におけるメインでもあったので、当時は祈るような気持ちで番組を観ていました。インパクトのある形状も含め、最初は「何だこれ!」という印象だったのではないでしょうか。ただ、打ち込みやCMも含めて、やれることは全てやっていたので、「あとはこの思いを子どもたちに受け入れてもらえたら良いな」と。

ーーお客さんからいただいた反響の中で、特に印象に残っているものはありますか?

野口:ボーイズトイ事業部では、お店での販促活動を頻繁に行っていました。「グルメスパイザー」の発売当時は、僕自身もお店に立って実演販売をしていたんです。子どもたちとお話しながら、商品を説明して、楽しんでいただいて……。実際に商品を買っていただけたときは嬉しかったです。

ーー野口さん自ら店頭で実演販売をされていたんですね。

野口:発売日から2日間くらい、定期的に行っているお店に入らせていただいて、とても良い経験になりました。元々計画以上に販売できてはいたのですが、僕が入ったお店ではその数倍売れていたとか。僕があまりに楽しそうだから、お客様が購入していただけたのだと思います。

それから『トリコ』の商品が発売されるたびに声をかけていただけるようになったんです。ただ、僕が立ったお店だけで沢山売れるので、「データが狂う」と言われて呼ばれなくなりました(笑)。

 

 

ーー(笑)。「グルメスパイザー」と言えば、「PON CRUSH!! CRUSH!! PA PA PA♪」のフレーズでお馴染みのCMも外せません。

坂口:当時あのCMは衝撃的でしたよ! 「PON CRUSH!! CRUSH!! PA PA PA♪」は、耳に残りやすいですし「グルメスパイザー」の使い方がそのまま音になっていてすごく分かりやすいですよね。

野口:あのフレーズ自体は、代理店とのやり取りを通じて生まれたものです。ただ、CMの基本的な方向性はあらかじめ決まっていました。例えば、フィギュアのCMなら様々なシーンをイメージするために、いくつかのポーズをとらせる場合もあると思います。

ただ、「グルメスパイザー」の遊び方って基本的には一つなんですよ。お菓子を入れて(PON)、砕いて(CRUSH!! CRUSH!!)、ふりかける(PA PA PA♪)。そのシンプルな遊びを定期的にやりたいと思ってもらうために、頭に残るようなCMにしたいと。

そこでアニメのオープニングテーマに負けないパワフルさやキャッチフレーズを用いて、ある意味ストレートに作りました。商品の遊びをリズムに乗せたら、結果的にあのCMになったんです。

 

 

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