音楽
『ヒプマイ』7連続リリースCD『.麻天狼』レビュー

『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』『.麻天狼』レビュー|抑圧からの解放、それは愛だった【7連続リリースCD連動企画】

アニメ、舞台、ゲームアプリと、楽曲CDにとどまらず様々なメディアミックス展開でも話題をかっさらっていく『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-(以下、ヒプマイ)』。4作品目の新曲リリースがやってきました。今回もディビジョンごとのシングル、しかも7か月連続リリース!

アニメイトタイムズでは、作品が始まった当初から楽曲のレビューをさせていただいておりますが、今回も編集部の石橋が担当させていただくことになりました。ありがたし……! もちろん、7か月連続で全曲をレビューさせていただきますよ!

連載第4回となる今回は、2024年9月18日(水)に発売となったシンジュク・ディビジョン「麻天狼」の『.麻天狼』をレビュー。

ディビジョンラップバトルや人間関係との軋轢、抗えない社会の流れに対しての不満、自分たちの心の中に抱えてきた自分自身への葛藤、そういった目に見えるものだけではない複雑な心の問題と戦い続けてきた麻天狼のメンバー。

その戦いの末、彼らが見つけた答えは「愛」でした。

 

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神宮寺 寂雷は「威風颯爽」と愛とともに前に進む

数々の争いに巻き込まれ、表面上は平静を装っていた神宮寺 寂雷ですが、内面では疲弊し、複雑な悩みを持っているように思います。

その心境は最初のソロ曲「迷宮壁」で語られています。

人の愚かさ、自分の無力さを実感しながらも、その運命“カルマ”を背負いながら生きなければならない。

神宮寺 寂雷が抱いている想いは重いですね……。彼の頭の中では、同じ苦しみや疑問が無限ループしていたのでしょう。だからこその「迷宮壁」。負の感情の迷路からはなかなか抜け出すことは難しいのかもしれません。

しかし、ラストでは<今日も立ち向かうよ>と一縷の望みにかける前向きな気持ちも残っていることはわかっていたのではないでしょうか?

そしてストーリーが進んでいくにつれ、神宮寺 寂雷の過去がマジで洒落にならんとわかった私達。そりゃそうなってもおかしくないし、今普通に生活できているのがおかしいくらいです……。

そんな心根が強い神宮寺 寂雷だからこそ、伊弉冉 一二三、観音坂 独歩という心強い仲間たちと出会って「迷宮壁」から飛び出す時が来ました。

それが「威風颯爽」だったのです。

このクライマックス感、堪りませんね……! 吹っ切れた、という表現が正しいでしょう。

タイトルも「威風(威厳のあるさま)」+「颯爽(さわやかで勇ましいさま)」と、我々が愛してやまない麻天狼のリーダーとしての姿そのものです!

「威風颯爽」の歌詞をよく見ていると、「迷宮壁」とリンクする部分もあり、セルフアンサー的なニュアンスが多分に含まれています。

個人的に好きな部分が、

「迷宮壁」
<迷宮壁のラビリンスウォール。抜け出すためにまだまだ時間はかかりそうだ。>

「威風颯爽」
<迷宮壁のラビリンスウォール時間も忍耐ももう必要ないと?>

のところ。

神宮寺 寂雷の悩みは自分で自分を楽にさせるための麻酔のようなものでしかなかったのかもしれません。彼が言うには、<自責の念 良心の呵責 自己犠牲という 安易な道に逃げてきた結末>です。

嘆くことは簡単だし、悲劇のヒロインのままでいることは、ある意味では楽な選択肢なのかもしれません。それよりも、現状を良くしようと未来を見据えて前に進むことのほうがよっぽど大変なのです。

そして、神宮寺 寂雷がその結論に至った理由が、<生きるということそれ自体が愛なんだ>ということだったのでしょうか。

愛……! やはりすべてを解決するには愛なのか……!

曲のラストに向けて、愛を持って世界を平和にしよう! と我々に語りかけてくる神宮寺 寂雷。ここまで広い愛を持った彼はもう完璧すぎて、その圧倒的カリスマ性が眩しいくらいですが、<この後も生涯共によろしく頼む!>という歌詞で締めているところが妙に人間臭くて好きです。

むやみやたらと愛を語っているのではなく、神宮寺 寂雷ほどの人物だからこそ至った愛。その愛は我々にも振りまかれていると思うと胸キュンしちゃうね。

一世風靡してさらになお現役のMicro!

作詞作曲を担当したのはDef TechのMicro。Def Techと言えば、あまりにも有名な曲「My Way」がありますよね。

何度聞いてもこのサウンドは唯一無二だなと思います。

Microはソロ活動も積極的に行っており、今年から来年にかけてはホールツアーも開催を予定しています。

彼の曲は心にダイレクトに投げかける直球的な歌詞と自然と体を動かしてしまうノリの良さを併せ持っています。

平和を歌う彼の姿はどことなく今回の神宮寺 寂雷にも通じるところがあるように感じます

また、作詞に参加しているShinji Hiraoは田村ゆかりさんなど数々のアーティストを手掛ける名プロデューサーで、Def Techの楽曲も担当。作曲で参加しているNagachoはDef Techのギターを担当したりと、「威風颯爽」はまさにチームで作ったという1曲に仕上がっています。

<次ページ:伊弉冉 一二三が手に入れたお金には代えられない「始まりのラストソング」>
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