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劇場アニメ『ベルサイユのばら』豊永利行、加藤和樹インタビュー

劇場アニメ『ベルサイユのばら』豊永利行さん、加藤和樹さんが感じる作品の魅力「心は自由であるべきだ」というメッセージは、いつの世も人々を突き動かす」

 

役者だからこそ伝わるキャラクターの魅力

──ご自身が演じられたキャラクターの魅力をお聞かせください。

加藤:フェルゼンだけではないと思うんですけど、我々が生きている日本とは違って「誰かのために命をかける」という覚悟ができるというところだと思うんです。

それは男女問わず。その中でフェルゼンであれば、アントワネットのためにこの身を賭してでもお守りする。でも、それが叶わないから、オスカルに自分の代わりにお守りしてほしいという。それはやりたくてもやれない、その悔しさみたいなものがある。立場的なものもそうですし、その中で葛藤している彼の心情を想像すると、とても引き裂かれる思いなんだろうなと思いますし、その葛藤の中で苦悩しつつ、自分の運命にも抗いながら生きている姿が魅力なのかなと思います。

 

 

──豊永さんはいかがですか。

豊永:劇場アニメではどうしても原作の描き切れないところがあるということも踏まえて、オスカルとアントワネットの物語が軸となっています。

原作のアンドレは、直情型であったり、感情的に動いてしまったりと、言わなくていいことを言ってしまうところもあるキャラクターだと思いました。でも今作では、彼の中の男らしさという部分に焦点を当てられている印象がありましたね。オスカルの影となるアンドレ自身の決意の強さがよく表現されていると思います。

その決意の強さから、それが愛と認識するまでの間、そして愛と認識した後のアンドレなりの愛情表現の方法、いわゆる心中を図るというのは、なかなか今の時代にはない方法ですよね。そういう不器用がゆえのアンバランスな彼の感情の揺らぎが今作ではピックアップされているなと感じました。これはオスカル役の沢城みゆきさんから言われた言葉なんですけど、「トッシーの演じるアンドレは影だけど、光を出してるよね」と……(笑)。

一同:(笑)。

豊永:今作で新しいアンドレを出せていたらいいなと思っています。男らしさだったり、彼の持つ本来の力だったり、そういったことが今作での彼の魅力になっていたら嬉しいです。

加藤:アンドレは泣いちゃうよね。

豊永:気づいたら、泣いちゃっているよね。

加藤:俺は見ながら、もう泣いてたもん。

豊永:俺も気づいたら泣いてた。

 

 

──お互いの演じたキャラクターについてお聞きします。豊永さんがアンドレ、加藤さんがフェルゼンを演じられたことで、どんな魅力がプラスされたと思いますか。

加藤:アンドレとオスカルの絶妙な距離感。最初はお互い友だちであり、仲間でありというところから、時が経っていって、だんだんお互いが大人になっていく中で見えてくる彼の影の部分。オスカルにも言えない、自分の心の部分がすごく上手く表現されているなと感じました。明るいからこそ、すごく切ないんです。泣きそうです(笑)。

アンドレを見ていて「死なないで」と思いました。彼が声を吹き込んでいるからこそ重たいシーンもそれほど重く感じないんだけど、だからこそグッと切なくなるし、泣けてくる。(感極まった表情で)もう~イヤだ~、こんな人いる~?

豊永:急に親戚のおばちゃんみたいになった(笑)。

一同:(笑)。

加藤:彼のアンドレは「生きている」という感じがします。

 

 

──豊永さんは加藤さんが演じたフェルゼンについて、どんな魅力がプラスされたと思いますか。

豊永:僕が勝手に思っているんですけど、和樹が出す表現の引き出しのようなものは、純粋に心を動かして出す言葉にすごくウェイトを置いているのだと思っています。

だからこそフェルゼンの登場シーンもですが、いろいろなシーンで凛とした佇まいに見えるのも心が動いているからこそ成立する。和樹は凛とした表現みたいなものがある役者さんだなと僕は認識しているんです。その和樹がアントワネットへの思いをオスカルに託すシーンやフェルゼンという人間が見せる瞬間の揺らぎの説得力の高さは、和樹が演じることによってすごく増しているなという気がしています。

揺らぎ度合いが表面的にはそれほど大きな揺らぎに見えないかもしれないですけど、和樹が演じることによって、心のふり幅がしっかりと伝わってくる。僕もそうですけど、その伝え方というのが声のお芝居だけじゃない、身体も使った役者さんだからこそできる表現だと思っています。そのハイブリッドな表現というのを今作でフェルゼンを通して見させていただいていると感じましたね。

 

20年来のお付き合いのお二人が今伝え合う出会った頃のこと

──お互いについて、お芝居や尊敬しているところなどをお聞かせください。

豊永:もう20年来の付き合いですからね。今更そんな話をするのは、こっぱずかしいんですけど、しかも同じ年ですし。

加藤:この間もバースデーライブに出てくれてね。

豊永:そう。和樹のバースデーライブに出させてもらったので、そんなところで今改めて伝えるのは……。

加藤:僕はやはり……。

豊永:するんだ。やめてよ~(笑)。

一同:(笑)。

加藤:初めて共演したのはミュージカル。その時は1年トリオという若い役どころでした。高い方の声をずっと出していたので、そのイメージがあったんですけど、その後、他の作品などで共演していく中で、男らしいところも見て、幅の広さや自由度を感じましたね。

当初から思っていましたけど、彼は本当に楽しんでお芝居をしています。そのお芝居を楽しんでいるからこそ、役が生きるところはいつも見ている中ですごいなと思っているところですね。

豊永:よく真正面から言えるね(笑)。

加藤:いや、本当に思っているから(笑)。

 

 

──豊永さんはいかがですか。

豊永:最初に会った時から和樹のイメージは変わっていないんですけど、何においても度胸があって、すごく堂々たる立ち方ができる人なんです。

20年来の付き合いなので、いろいろとお話していく中で「実は緊張している」とか「実は自分が不器用だとわかっているからこそ悩むんだ」とか、和樹本来の気持ちや本音を聞く機会もあります。そういうところを踏まえた上でも、気丈に振舞える胆力があります。

僕は純粋に同じ年の役者として、自分自身のルックスや武器がある中で、武器だけに頼らず、表現者として表現の幅を膨らませるための努力を惜しまない人だというところが素敵だなと思いますし、同じ年でそういった志を持っている役者さんと共演できて幸せだなと思っています。

僕が自由に振舞ったり、ふざけたりすることもあるんですけど、実は和樹もそういうことが好きな人なので、僕のおふざけにも乗っかってくれたりとか、おふざけではない自由な幅のある芝居を掛け合った時も、僕の投げた球を受け止めて、しっかり返してくれる。信頼感のあるお芝居、表現をしてくれるので、僕は安心して自由にできるし、その自由に対しても時には締めたり、放したりと、取捨選択してくださるので「お芝居を一緒にやっていて、非常に心地よい人だな」という印象ですね。本人の前で話すのは照れくさかったです(笑)。

加藤:恥ずかしいよね(笑)。

 

豊永さん、加藤さんが感じる今作のメッセージ

──今回の作品の中での見どころや注目ポイントをお聞かせください。

豊永:歌唱シーンはもちろんですが、作品を見てくださるお客様にそれぞれ見どころやよかったポイントを見つけていただければと思っています。

僕は解答を聞いたわけではないんですけど、原作者の池田(理代子)先生や吉村(愛)監督たちが「今回の作品で何を表現したかったのか、何を伝えたかったのか」と考察しながら演じていました。

今作を見ても、鮮度が落ちていない。50年以上経つ作品ですし、フランス革命の史実を辿ったら250年前の話です。それも含めて、時が経ったとて、立場・階級は違えど、人の生き様を描いていることに変わりはない。その人の生き様というところが今みなさまにお届けしても、色あせることがない理由のひとつなのかなと思っています。

世界では抗争や戦争や紛争というものが終わっているわけではないので、昔のことで片づけていい問題ではないこともこの作品では描かれていると思います。愛に生きる様と、様々な社会的問題という2つのラインによって、愛がストレートに自分の思い通りに行動ができなくなっていく。そのしがらみは今も昔も変わらない。

その辺りがしっかりと描かれているし、今作でも描きたかったことなのかなと思っています。その大きい軸のようなものは、ぜひ作品を見た上で感じ取って、みなさまそれぞれが考えること、考える時間も含めて楽しんでいただきたいと思います。

 

 

──加藤さんはいかがですか。

加藤:フランス革命は、学生の時に授業で学ぶことですし、アントワネットやルイ16世というのは、誰もが耳にしたことのある名前だと思うんですよね。その中での政治、国を動かす側と国民側というのは、今の日本でもあるかと思いますが、国民の声を聞くということがどれだけ大切なことなのか。その辺りも感じてほしいです。

その中で、王宮側でもしっかりと考えている人とそうではない人もいるし、「自分は何者なのか」という自問自答もある。今はこういう立場だから、これができない。だから、アントワネットの心苦しさというのもすごくわかります。

豊永:そうなんだよ。アントワネットがかわいそうなんだよな。

加藤:14歳で他国に嫁いでくるアントワネットは、もちろん恋愛も知らなければ、決められた結婚を自分の運命として受け入れなければならない。王室に嫁いだので、政治もやっていかなければならない。

フランス革命の中で制定された人権宣言にある「人は生まれながらにして平等である」ということの大切さもありますが、貧富の差や格差みたいなものはなくなってはいないし、誰もが生まれながらにして自由という思想を持っていたとしても、現実はそうならない。だけど「心は自由であるべきだ」というメッセージは、いつの世も時間が経っても人々を突き動かすメッセージなんじゃないかなと思いますね。

見どころとしては、今作の歌唱シーンですね。僕は普段ミュージカルをやることが多く、やはり歌で伝えられるものがあると思っているので、お芝居だけではない、歌で伝わるメッセージみたいなものが今作の魅力のひとつでもあるかなと思っています。

──ありがとうございました!

 
[取材・文]宋 莉淑(ソン・リスク)

 

作品概要

ベルサイユのばら(映画)

 
劇場アニメ『ベルサイユのばら』
1月31日(金)全国ロードショー

原作:池田理代子
監督:吉村 愛
脚本:金春智子
キャラクターデザイン:岡 真里子
音楽プロデューサー:澤野弘之
音楽:澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO
アニメーション制作:MAPPA
製作:劇場アニメベルサイユのばら製作委員会
配給:TOHO NEXT、エイベックス・ピクチャーズ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ

オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ:沢城みゆき
マリー・アントワネット:平野 綾
アンドレ・グランディエ:豊永利行
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:加藤和樹 ほか

ナレーション:黒木 瞳

主題歌:絢香『Versailles - ベルサイユ - 』

 

(C)池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会
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