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白倉伸一郎×松浦大悟が描く『ゴジュウジャー』&スーパー戦隊の未来【インタビュー】

スーパー戦隊が持つ「明るく楽しく、突き抜けた濃い作品世界」――『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』東映 白倉伸一郎さん×松浦大悟さん 戦隊プロデューサー対談!

「レジェンド」という言葉が持つ“危うさ”とは?

ーー過去にも『海賊戦隊ゴーカイジャー』や『機界戦隊ゼンカイジャー』などの作品がある中で、今回の50周年記念作を企画するにあたり、どんなお話をされましたか?

松浦:バンダイさんから発売される玩具のモチーフ、「動物」とか「指輪」とか、番組単体で完結するものに関しては、自分の方である程度進めてはいたのですが、要素が固まった段階で白倉さんにメモを送って2人でブレストしたことがあって。その時に「過去戦隊の扱いには気をつけないといけない」と言われました。

過去戦隊がモチーフとなっている指輪(センタイリング)がメインアイテムなので、出物を扱う=過去戦隊を扱う、ということは自動的に決まっていってしまいます。例えば、先ほど話に挙がった『デンジマン』の指輪をフィーチャーするなら、当時のキャラクターを出すのか、デンジ犬アイシーを出すのか? 色々な手段が考えられる中で、あくまで『ゴジュウジャー』が一番大事なのであって、デンジマンの指輪自体も、当たり前なんですが『ゴジュウジャー』の売り物なんです。「過去作品を立てすぎて、『ゴジュウジャー』が日陰になるのは間違いなく良くない」と。

白倉:そこは最も難しいところで、最初につまづくと転びっぱなしで立ち上がれなくなります。そういう意味で、最初だけ少しクチバシを挟ませていただきました。

仮面ライダーでは何回も大集合もの等で、過去キャラクターを出していますけど、今でも記憶に残っているのは『仮面ライダージオウ』の時。武部(武部直美プロデューサー)から「レジェンドから逃げない!」って叱られたんですよ。レジェンドを出すのも考えるのも楽じゃないから、「やめておこうか」と何回か弱音を吐いたんです。そこで「レジェンドから逃げない」って紙に書かれて、「壁に貼ってください」みたいな(笑)。今でもあの言葉が耳に残っています。

松浦:僕自身も『ディケイド』『ジオウ』『ゴーカイジャー』『ゼンカイジャー』、すべてが思い出深い番組だったからこそ、それらとは被らないことをしたいという強い意識がありました。『ゴーカイジャー』と同じことをしても、「『ゴーカイジャー』と同じじゃん」と、自分自身が思ってしまうし、それはお客さんも一緒のような気がして。仮にやれることは同じでも、見え方は違うものにしたい。

それでいうと、小さなことですが、今年は『レジェンド』という言葉をなるべく使わないようにしています。『レジェンド』という仰々しい言葉遣い自体が、「過去キャラクター」を逆に遠ざけてしまっている気がしたんです。と言うより、シリーズもので過去作に『レジェンド』という言葉遣いをしているのは、実は東映特撮だけなんじゃないかと思って。たとえば『ウルトラマン』や『ガンダム』では言っていないですよね。「ファーストガンダム」のことを「レジェンドガンダム」と呼んでいる人はいません。

その2シリーズって、現状、過去作でがっつりビジネスができているシリーズなんです。そしてそれは、いまの「スーパー戦隊」、ひいては1年ぽっきりでキャラクターが変わってしまう東映特撮IP全体に足りない視点だと思いました。

『レジェンド』戦隊と言ってしまうと、その瞬間、子どもたちにとってそれらは「おじさん世代のもの」になってしまうのではないか。偉人というより、隣人という感覚で過去戦隊に触れて欲しい。僕ら制作側の観念を変えていくためにも、『レジェンド』とは言わない。

理想なのは、今でも「ファーストガンダム」好きの若者がいるように、今の子どもたちが「デンジマン」を「自分の戦隊」と思える環境をつくることかもしれません(笑)。

白倉:『ゴーカイジャー』におけるレジェンドには、「過去に活躍したけど、今はいない」という意味合いが含まれていました。過去戦隊をレジェンドと呼ばず、横並びで現在進行形のキャラクターとして扱う選択は、『ゴーカイジャー』とも違うし、『ゼンカイジャー』や『ドンブラザーズ』ともまた違う扱い方ですね。

白倉:古くは仮面ライダーもそうですが、過去のキャラクターを出すのは非常に難しい。他社作品を引き合いに出して恐縮ですが、『ウルトラマン』が「ウルトラ兄弟」という関係性を発明したところから、過去キャラクターが気軽に出てこれるようになりました。ただ、兄弟という設定だったので『ウルトラマンタロウ』を例に挙げるなら、末っ子なんですよね。先輩キャラクターが兄なので、現役のキャラクターが格下になるという問題を同時に抱え込むことになりました。逆にすればよかったのかと言うと、それもわからないですけど(笑)。

松浦:知らないお兄ちゃんが次々に出てくる「ウルトラ兄弟」は嫌ですね(笑)。ゾフィーとかはそれに近いのかな?

白倉: 過去キャラクターを扱う現役の主人公が格下になる問題を避けるためにどうするか。やり方は2つあると思っています。

現役のキャラクターがすごく横暴で、先輩との関係を気にしないオレ様系。『ゴーカイジャー』のマーベラスや『ディケイド』の門矢士タイプです。もしくは、天真爛漫過ぎて物事がよく分かっていない『ゼンカイジャー』の五色田介人タイプ。

松浦:『ジオウ』の常磐ソウゴもそうですね。

白倉:『ゴーカイジャー』のマーベラスは、過去戦隊を扱うと同時に「海賊戦隊」なので、海賊だからこそのキャラクター性が両方にうまく効いていた。『ゴジュウジャー』の遠野吠くんは「過去戦隊を扱う」理由付けではない形の傍若無人レッド系。はぐれ狼というのも上手く機能していますし、ぴったりハマっているなと傍から見ていて思いました。

仮面ライダーとスーパー戦隊の主役が並んだ時、どちらがカッコいいか

ーー『ゴジュウジャー』では「ナンバーワンは一人」というこれまでにない設定が採用されています。スーパー戦隊シリーズの制作において外せない軸となる要素は、どのような点でしょうか?

白倉:『秘密戦隊ゴレンジャー』の形式を延々とやっているように見えつつ、チームに対する見方は50年間で、社会的にも制作陣の中でも確実に変わってきていると感じます。

昔の戦隊には役割があって、『ゴレンジャー』の5人だったら「赤はこれをやる、青はこれをやる」とか、それぞれの担当がありました。途中から徐々に均質化していって、戦隊内での分担はなくなっていきます。それこそ“兄弟戦隊”などが出てくるようになる。そして最近は均質化というよりも、「一人一人が独立した個人」という感覚があると感じます。

それ自体は時代の変化だと思うんですけど、一方で絶対に外せないことは、戦隊が抱え込む「5人揃わないとまともに怪人退治が出来ない」ジレンマをどう乗り越えるかです。

松浦:僕個人、忘れられないエピソードがありまして。『ドンブラザーズ』をやっている時、某主演俳優Hくんが「超英雄祭」というコンサートイベントのポスターを見ていたんです。あれは紙面の都合上、現行番組の主役キャラが一人ずつ並んでいるのですが、こともあろうにドンモモタロウ役の彼が「俺ドンモモ大好きだけど……やっぱりギーツ、すげえカッコええよなあ……」と言っていて(笑)。

 

松浦:担当プロデューサーとしては「おい!(笑)」と思ったのですが、その子どものような素直な感想が忘れられなくて。彼の誰にも負けないドンモモタロウへの愛は百も承知だからこそ、たとえば番組も物語も全く知らない人に「ドンモモとギーツ、どっちがカッコいいと思う?」と聞いたらどうなるのか。

単体として「仮面ライダー」と「戦隊レッド」って、純粋にどっちがカッコいいの/強そうなの? そこで仮に「ライダー」に軍配が上がるとしたら、戦隊の存在意義って何なんだろう、というのを、真剣に考えなきゃいけないかもしれないって気づいたんです。

戦隊とライダーが1対1で戦ったとして、仮に戦隊が負ける状況って、シンプルに損じゃないですか。戦隊側が「5人いたら勝てます」と言っても負け惜しみになるだけなので、それなら仮面ライダーに1対1で勝てるヒーローが5人いた方がいい。『ゴジュウジャー』ではヒーローのデザインを考える段階から、「1体でライダーよりも強くしたい」という話をしていました。

ただ「仮面ライダー」にしたって意味がない、それではライダーもどきになるだけなので、しっかりと「スーパー戦隊」に見えて、かつ「個」で見ても強そう。そんな戦隊のニュースタンダードを目指すべく、バンダイさん、プレックスさんとデザインの協議を重ねました。ゴジュウウルフは狼のヒーローなので、逸れ者であるという点も合致したと思います。

松浦:もちろんチームヒーローの物語をやりたくない訳ではなくて、むしろ積極的にやるつもりです。5人から1人に下ろすのではなくて、強力な1人が5人集まっている。あくまで方向性の問題です。考えてみれば、僕らが生きている世界もそうじゃないですか。生まれながらにして仲間がいるわけではなく、それぞれ生きていく中で、気づけば仲間になっている。そういうものだと思うんです。あとは『仮面ライダーガヴ』さんとどっちが強そうか、というのを100人投票で対決かな(笑)。

白倉: 今年は勝機があるかもね。なんせ相手はグミですから(笑)。

松浦: でも、お菓子ライダー、超カッコいいですよね。ケーキングにはたまげました。果物であんなにカッコいいライダーをやって、「流石にグミは無理だろう」と思ったら……(笑)。武部さんに食べ物系ヒーローをやらせたら右に出る者はいない気がします。

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