
Netflixシリーズ「ムーンライズ」主人公ジャック役・小林千晃さんインタビュー|常に命をかけて戦っていることを意識し、死に物狂いで演じた作品
2025年4月10日に世界独占配信されるNetflixシリーズ「ムーンライズ」。冲方丁先生による原作、WIT STUDIOがアニメーションを手掛ける壮大なスケールで描かれた宿命と反逆の大長編SF作品です。
2人の主人公の声を務めるのは小林千晃さんと上村祐翔さん。そして主題歌はアイナ・ジ・エンドさんが作詞・作曲。さらにキャラクター原案が『鋼の錬金術師』などで人気の荒川弘先生ということもあり、大注目のアニメ作品。
アニメイトタイムズでは配信に先駆け、主人公のジャックことジェイコブ・シャドウ役の小林千晃さんにインタビュー! 作品の見どころやジャックのキャラクターについてなど、お話をうかがいました。
ジャックは仲間思いで真面目で熱い男。常に“命をかけて戦っている”ことを意識して演じました
──出演が決まった時の感想をお聞かせください。オーディションがあったのですか?
ジェイコブ・シャドウ役の小林千晃さん(以下、小林):オーディションで合格をいただきました。その時から荒川弘先生によるキャラクター原案とか、肥塚正史さんが監督で冲方丁さんが脚本を書かれているとか、携わっているスタッフさんの情報はオーディションの概要でいただいていました。
完全新作アニメということで、僕もどういう作品なのか全く知らなかったのですが、第一線で活躍されている一流のクリエイターの方々とお仕事させていただく機会はなかなかないので、演じてみたいという気持ちがすごく強かったです。出演が決まって、純粋にこういう方々と一緒に仕事できるという喜びがありました。
──荒川先生が手掛けられたキャラクタービジュアルを見たとき、どう思いましたか?
小林:かねてより荒川先生の作品が好きだったので感動しました! 『鋼の錬金術師』とか、『銀の匙 Silver Spoon』とか。原作を読んだりアニメーションも見たりしていたので、演じられることを光栄に思いました。
──ストーリーの印象はどうでしたか?
小林:オリジナルSF作品と聞くと、これまであまりSFを見ていない人にはハードルが高そうに聞こえますが、本作はすごく見やすいです。アクションシーンが本当に素晴らしくて高クオリティ。映像美を見ているだけでも楽しめる作品に仕上がっています。
ジャックと幼馴染のフィルの人間ドラマの部分がほとんどなので、SFという捉え方をしなくてもいいのかなと。死んだと思っていたフィルが生きていて、その彼が敵なのか味方なのか、どういう意思のもと行動しているのか、月がなぜ地球に対してここまで反発するのか……。
地球と月という大々的なテーマがあるから“SF”と言っているけれど、ミステリー要素が強くドラマ部分が大切に描かれている。SFだから……と遠ざけている人にこそ見てほしい作品です。
──ジャックをどのようなキャラクターと捉えて演じましたか?
小林:ジャックは自分の真意を明かさず飄々としていたり、裕福な家庭で育ってきたというのもあって道楽に溺れているようにも見えますが、実のところは自分が会社の跡取りになることに引け目を感じている。自分は養子で、相応しくない人間が携わるわけにはいかないから、あえて飄々とした行動をして周りに「あいつを跡取りにさせない」と思わせるように振る舞っているんです。
やる気がないように見せているだけで、実際のところは仲間思いで、すごく優しい。普段は飄々としているように見えても、根っこのところは真面目で熱い男というところは意識して臨みました。
──第1話のジャックは飄々としているとありましたが、その後月に行ってからのジャックはどのように演じられたのでしょうか?
小林:両親が殺されたと思っているので、ボブ・スカイラムへの憎しみとか、怒りとか、復讐心だけが原動力になっている。ジャックにとっては急に軍属にさせられ月の上で行動するとなると、自分の不得手なこと・体験したことのないことばかり。そんな環境でもへこたれないのは、自分が何もしないと殺されるからとかではなく、現状の立場を利用してボブに復讐するチャンスをうかがっているという認識で演じていました。
──アクションシーンが多いとのことですが、どんなところを大切にされましたか?
小林:僕だけじゃなくてキャスト全員が、「毎回命をかけて戦っているということを忘れるな」と音響監督から言われていました。戦場に立っているというのが常なので、ちょっとした日常台詞や仲間に言葉をかける台詞など緊迫感を抜いてしまいがちなところも、いつ誰が殺されるかわからないという緊張状態をひとつ乗せたうえで雑談をするというか。味方を見送ったり敵地に赴く直前のシーンでは、帰って来られないかもしれないという思いを意識して演じていました。
──とくに印象に残っているシーンや台詞はありますか?
小林:リースやマリーに対して、ジャックが手を伸ばして「リース!」「マリー!」と叫んでヒロインたちの元に向かうというシーンが結構あるんですけど、毎回リテイク数を重ねていたので印象に残っています。
どういう目的で連れさられたのか、殺されてしまうのではないか、とシーンごとに状況が違うんですけど、ジャックの心理としては常に「仲間を助けたい」という思いが強くある。その思いがある中で、前半はボブへの憎しみからの叫びとか、なかなかボブに辿り着けず苛々し八つ当たりして叫ぶというのが多かったんですけど、終盤は仲間を助けるときの叫びが増えてきて——。同じ叫びなのに目的が違うだけで変わるというのを意識するようにしたので、叫びシーンの印象は強いですね。
──ジャックの行動がすべて“仲間を助ける”というものにつながっていましたよね。
小林:序盤はボブへの復讐心だったものが、中盤以降は“仲間のために”という行動心理が多くなった気がします。
──ところで、時々流れる“ハミング”は小林さんが実際にされていますよね……?
小林:もちろん!(笑)
「ムーン・リバー」という曲なんですけど、最初はハミングじゃなくて実際に歌うと聞いていました。メロディを覚えてアカペラで収録していたんですけど、何回か歌うなかでハミングでも録ってみようとなって。実際どれが使われるかわからなかったんですけど、完成された映像を見たらハミングが使われていて、結果としてはすごく良かったと思います!
──耳に残る素敵なハミングで、とても印象深いシーンでした!
小林:「ムーン・リバー」は昔からある曲なんですけど、歌詞の内容が作品にフィットしていて。「ムーンライズ」の土台が出来上がってから楽曲探しをしたときに、曲名に「ムーン」とついていて「二人の登場人物が~」という歌詞があるから使用したのか、監督や冲方さんがもともと「ムーン・リバー」を知っていてそこからインスパイアされて作品を作ったのか……、どっちなんだろう?って思いました。聞いてみたいことのひとつですね。
──収録時の掛け合いで印象深い方はいますか?
小林:アイナ・ジ・エンドさん(以下アイナさん)以外の方とは掛け合いで録りました。リースとかフィルは掛け合う回数が多かったのもあり、すごく刺激的でした。
リース役の山田さんはこの作品が初めてのメインキャラクターだったようで、音響監督の三間さんはこだわりの強い方なのでOKラインを超えるのが大変なんですけど、ずっと腐らずに戦っていて。アフレコ期間が1年半くらいあったのですが、その間に役と役者の成長を見られたのはすごく大きかったです。
上村さんは他の作品で何回も共演していますが、今回のように対になる役で一緒になったのは初めてだったので楽しかったです。収録後に2人でご飯に行って掛け合いの事を話したり、このシーン凄かったと褒め合ったり。そんな時間も楽しかったです。
──実際の映像をご覧になって、この作品の魅力はどんなところだと思いますか?
小林:この作品はアニメーションの総合芸術の結晶だなと思いました。オープニングからエンディングに至るまですごいクオリティ。
ワクワクさせられながらオープニングが始まり、圧倒的な映像のアクション、本当に死に物狂いでやった僕らのお芝居、そして戦争地帯なので銃撃とか悲鳴とかが合わさって、ぐちゃぐちゃな感情のままストーリーが終わっていくんですけど、最後にアイナさんの歌声で癒やされる。サウナで整うような(笑)。
アイナさんが歌うED「大丈夫」はすごく染みます。アフレコが全て終わった後に完パケを見させてもらったんですけど、演じきったあとだからこそEDの映像と歌詞とアイナさんの歌声が涙腺を誘うというか……素晴らしかったです。
──全話一括視聴が可能なNetflixシリーズだからこその楽しみ方はありますか?
小林:一気視聴ができるので、来週までお預けとかなく自分のペースで好きなだけ見られる。一気に見ていただきたい気持ちもありますけど、18話一気にだと大変だと思いますし、ちょうど6話が終わったあとに時が経っていたりするので、6話ずつの視聴がおすすめですね!
──最後にこれから視聴される方へ、作品の見どころとメッセージをお願いします。
小林:メインキャラクターのジャックとフィルは幼馴染であるにも関わらず、月と地球という異なる立場に置かれ、それぞれの思惑で進んでいくんですけど、その思惑は最後の最後まで明かされない。SFという以上にミステリーとしての引きがある作品で、見進めていくと謎は明かされていくけれど核心は見えてこないという面白さがある。また、他の作品では見られないアクションの作り方もしているので、アクション好きの方、ミステリー好きの方、SFをあまり見たことないという方にも見ていただけたら幸いです!
[取材・文/万木サエ 写真/MoA]
作品概要
あらすじ
キャスト






























