
いま思えば運命だった──Morfonica、そして現役バンドリーマーの進藤あまねさんが語る、10年分の“バンドリ!愛”と、5年を駆け抜けた“私たち”の物語【ロングインタビュー】
TVアニメ『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』および、先日最終回が放送されたTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』のアニメ続編シリーズ制作決定や、来年は全バンドが出演する「BanG Dream! 10th Anniversary LIVE」がKアリーナ横浜で開催予定と、“次の10年”に向けた歩みも、着実に始まっている『BanG Dream!』(以下『バンドリ!』)プロジェクト。
その『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(以下『ガルパ』)から生まれた、Morfonicaで倉田ましろ役を務める進藤あまねさんに、『ガルパ』から始まったバンド活動(ライフ)を語ってもらった。
"バンドリーマー”としてライブを見守っていた日々から、自らがステージの中心に立って輝きを掴み取る現在まで、観る側から演じる側へと立場が変わった今も、その熱いまなざしは変わらない。ましろ役として、そして進藤あまねとして駆け抜けた5年間の歩みと、仲間と築いてきた絆などを追う。
「いまに繋がる“道しるべ”だったのかなって」
──まずは『バンドリ!』10周年という節目について、進藤さんはどのようなお気持ちですか?
倉田ましろ役・進藤あまねさん:「えっ、もうそんなに経つんだ……!」という驚きがまずありました。私が『バンドリ!』に出会ったのは、たしか11歳のときなんです。もともとブシロードの作品が大好きだったのもあって、『バンドリ!』を初期からずっと追いかけてきましたが、こんなに大きなコンテンツになるなんて、10年前はまったく想像していませんでした。
──当時はどのような印象がありましたか?
進藤:「春、バンド始めました!」と綴られた手書きの1st Liveの告知をワクワクしながら読んでいました。そこで『バンドリ!』って新しいコンテンツができたんだと知りました。
アニメ化もされて、どんどん盛り上がっていくのを追い続けていました。今でも雑誌の特集ページや、ポピパさんが裏表紙の冊子も、大事に持っています。
──10年前の自分が、いま『バンドリ!』に関わっている未来を想像していましたか?
進藤:いや、まさか!という感じで、まったく想像してなかったです。でも思えば、あの頃から雑誌を全部集めていたのも、いまに繋がる“道しるべ”だったのかなって思うんです。
──当時、雑誌を手に取ったきっかけはなんだったんでしょうか?
進藤:もともとアニメが大好きだったので、アニメにまつわる雑誌を買うのも好きでした。アニメイトやゲーマーズにもよく行っていたんです。「きゃらびぃ」(アニメイト店内などで配布している無料情報誌)もよくチェックしていました(笑)。
──ありがとうございます!(笑)
進藤:小さい子たちが毎月少年マンガを読む感覚で『電撃G's magazine』を読んでいました。小学校高学年から中学生に上がるくらいの時期には、もう“G's沼”にどっぷりハマっていましたね(笑)。
──今振り返ると、『バンドリ!』をはじめとしたコンテンツに惹かれた理由は何だと思いますか?
進藤:アニメ自体、母や家族の影響で幼い頃から好きで、小学校低学年のときから追いかけていました。実際のアイドルもブームになっていたので、AKB48さんやももち(嗣永桃子)さんにも惹かれてました。だから自然と、アイドルアニメにもハマっていって。その時に「声優」という職業を知りました。このアイドルアニメのリアルライブをやっているのが実は声優さんたちなんだって気づいて、「え、すごい!」と。
それまで私は、声優という職業をあまり知らなくて、ずっとおばあちゃんがやっていた看護師になりたいと思ってたんです。夢が変わったことはなかったんですけど、その瞬間にビビビっときて、「声優になりたい」って気持ちになりました。
それに声優って、アニメを通して、看護師にもアイドルにも、いろいろなものになれるじゃないですか。それもすごく素敵だなって思ったんです。看護師を目指していた頃もアニメは大好きで、「このアニメってどうやってできてるんだろう?」って興味津々でした。だから、すべての始まりはそこだったなって思います。
──その視点、着眼点がすごいですよね。観察眼と言いますか……。
進藤:どうなんでしょうか(笑)。でも、小さい頃からけっこう周りの人に影響を受けやすいタイプで。私は愛知県出身なんですけど、当時住んでいたマンションでは子どもたちみんな仲が良かったんです。一番下の私が幼稚園生で、上の子が中1とか小6くらい。小さい頃から年上の人と関わる機会が多かったのが、今の自分に影響してるかもしれないですね。おしゃべりが好きなのも、その時の経験から来てる気がします(笑)。
スタッフさんとかお仕事で関わった方と、空き時間にお話しするのも楽しいですし、「こういう世界があるんだ」とか、すごく面白くて。アニメやゲームが大好きなので「それを作っている人たちの話が聞きたい!」って、強く思うんです。
それと私、ちょっと気持ち悪いくらい人間観察が好きで(笑)。たとえば、渋谷のスクランブル交差点って四方向にカフェがあるじゃないですか。あの上からスクランブル交差点を見下ろせるところに座って、ずーっと人を観察してるのが好きなんです。
──ああ、確かにカフェがありますね!
進藤:それとYouTubeのライブカメラもよく見ていて、人の歩き方を見ています(笑)。あと初対面の方だと「あ、この人、左側に筋肉ついてるから左利きだ」とか、「右肩が発達してるから、昔野球やってたのかな?」とか……そういうのを考えちゃうんです(笑)。とにかく、“その人を知りたい”んです。“人間を知りたい”。
──その観察眼はキャラクターの理解にも生かされているのではないでしょうか。
進藤:「この子はどんな性格なんだろう?」「こういう癖あるかも?」とか、いろいろ想像しています。オーディションのときも、マネージャーさんと「このキャラ、○○さんの声が合いそうですよね」とか話していたら、本当にその方がキャスティングされていたことがあって「わあ!」って。
──すごい!
進藤:オタクすぎるんですよ(笑)。声優さんが過去にどんな役をやってきたか、ボイスサンプルを聴いて「こんな一面もあるんだ」って知るのも好きだし、それが自分の演技にも少なからず活きていると思います。この仕事は、自分で研究しないと成長できない職業だと思ってるので。
だから、アニメを観たり、人の演技を聴いたりして、自分なりに吸収していこうと日々意識してます。それが、小さい頃から自然と身についていたのかなって。
──雑誌のインタビュー記事を読むのも、そういう感覚に近いんですね。
進藤:そうなんです。インタビューも読むのが好きで。
──その観察力でいろいろなことを分析されてきた中、進藤さんにとってましろはどんなキャラクターでしたか。
進藤:ましろちゃんは、良い意味でも悪い意味でも人間味がある子だと思います。アニメキャラって、ちょっと人間離れしてることもあるじゃないですか。でも、ましろちゃんは『バンドリ!』を観ている方々が「自分に似てるかも……」って感じるような、そんなキャラクターだと思うんです。
私も初めて彼女に出会ったとき、「似てるかもしれない……」ってなりました。こんなことを言っていいか分からないのですが、ましろちゃんって──すごく正直に言うと、責任転嫁するところがあるキャラだと思っていて。
──はい(笑)。でも、そこがまさに人間臭いんですよね。大なり小なり、人間には自分のせいじゃないって思いたくなる瞬間もあって。
進藤:そうそう! ましろちゃんにはそれがすごくあって。あと、野菜が嫌いだったり(笑)。
私がすごく好きなのは、劇場版『BanG Dream! ぽっぴん'どりーむ!』のシーンなんですけど──同じバンドのギターの透子ちゃん(桐ヶ谷透子/CV.直田姫奈さん)が、英語がペラペラなわけではないのに、海外で現地の人と会話できちゃって「透子ちゃん、英語喋れないくせに、なんか通じ合っててズルイ‼」ってましろちゃんが言うんです。実際はノリで「イエーイ!」って言ってるだけだったりするのに、そこに嫉妬しちゃうところとか……なんかわかるなって思って。ああいうリアルさが、ましろちゃんの魅力なんですよね。
そして、Morfonicaやましろちゃんを作ってくださったCraft Eggさんがキャラ一人ひとりに対して、「こういうところ面白いよね」「人間っぽいよね」っていう視点を大切にしてくださってて。たとえば、野菜嫌いも、スタッフさんの中に実際に野菜が苦手な方がいらっしゃって、それがましろちゃんに反映されたそうです。そういういろいろなリアルが詰まっていて、すごくいいなと思っています。
──リアルさを追求されていたんですね。
進藤:はい。ましろちゃんって赤ちゃん気質というか……実際「赤ちゃん」って言われてますし、私自身も「まだ子どもなんだな」っていうのを感じながら演じてるんです。自分にも“子どもの部分”があるなって思うから、すごく共感できるんですよね。そこから成長していく姿が、Morfonicaの物語の主軸でもあるので、私自身もその過程をリアルに追求したいなって。だからこそ、レッスンもすごく頑張りました。
特に歌の面では、私は未経験だったので……本当に、「私がボーカルで大丈夫?」って思っていました。もともと自分の歌い方ってパワー系だったんですよ。『バンドリ!』でいうと、RoseliaさんとかRAISE A SUILENさんとかの楽曲が好きで。
でも、ましろちゃんの方向性は真逆と聞き「どうしよう」って思いました。ボイストレーナーの先生も、「この子でそれをやるんですか!?」って、最初は驚かれていました。でもゼロから一緒に構築していこうって話になって。「いつかはあまねちゃんの元々の得意な歌い方も取り入れていけたらいいね」という話をしながら進めていきました。最近はまさにその“成長”の表現として、少しずつ自分らしさも入れさせてもらっています。
──自分と違うところはありつつも、ましろちゃんと出会ったとき“運命の役”だと感じたんだろうなと。
進藤:はい、思いました。『ガルパ』はもともと大好きでプレイしていて、メインストーリー・シーズン2で、突然ましろちゃんが名前もなく登場して「え、かわいいな」って思って。でもその時点では何も情報がなくて。私も「いつか自分も出られたらいいな……」と思っていたので「この子だったりして? きゃー!」みたいな、漠然とした願いがあって(笑)。ただ、キャラクターが登場する時点で、決まっているかと思っていたので、諦めていました。
ちょうどその頃、演技レッスンをしていて、すごく壁にぶつかっていたんです。演技が思うようにいかなくて……。でも、マネージャーさんに「それを乗り越えたら、何かあるかもよ」って言ってもらえて。いくつか試練みたいなのがあり…。
試練を乗り越えるたびに、当時のマネージャーさんが、ポピパさんのキラキラの青のピックをくれて……私自身、元々ギターを弾いていたので、ピックをいただけるのがすごく嬉しくて。ピックを集めるのも好きだったので、「わーい!」って喜んでいたんです。最後の“試練”を乗り越えたあと、次の週くらいに「ましろ役が決まりました」って社長から直々にお話をいただきました。
──まさに運命の瞬間ですね。
進藤:そのときは母も同席していました。というのも、当時中学生だったので、いつも母と一緒に会議などに出ていたんです。なのでその日も母が同席してて、「えっ! これ、前に言ってた子じゃない?」って母もすごく驚いていました。
私は「響」のオーディションのときにギターを弾きながら歌っていたので、ギターボーカルかも?と思っていたところ、「ボーカルです」って言われて、「あれ? ギターじゃないんだ!」みたいな(笑)。すごくびっくりしましたね。でも、その当時の演技レッスンが、ましろちゃんのオーディションだったみたいで。
──じゃあその“試練”そのものが、実は選考資料になってたってことですか?
進藤:そうみたいなんです。Craft Eggさんに、そのレッスンの様子が資料として渡っていたらしくて。ましろちゃんというキャラクターを作るにあたって、最初から私のことを見ていてくださったんだなって。
──すごい。まさに“導かれていた”っていう感じですね。
進藤:その前にも、ポピパさんやRoseliaさんのライブを見学させてもらっていたことがあって。そのとき、Craft Eggさんにご挨拶させていただいたのですが、名前を知ってくださっていたみたいで。後から、ましろちゃんの声優さんをどうするかを考えていく中で「あのレッスンがオーディション資料だったんだよ」って教えてもらって……。ずっと青いピックを渡されていたのも、今思えばヒントだったんだなって思います。
──ましろちゃん役の決定打となった、その理由みたいなものも伺っていたのでしょうか?
進藤:はっきりとは覚えていないんですけど……。私、今まで、役で“センター”を務めたことがなかったんです。いつも主人公の隣にいるような、支えるポジションが多くて。声質もハスキーですし、オーディションでもセンターというよりは、脇を固めるキャラクターが合っているのかなと思っていたんですね。
だから、ましろちゃんに決まったと聞いたときは驚きました。でも、「センターの経験はないけれど、度胸があると思った」と言っていただいたんです。肝が据わっているというか……くじけない強さがあるといった、メンタル面も見てもらえていたようです。
あと、若いからこそ「どんどん吸収して、成長していってほしい」というお言葉をいただき、それが本当に励みになりました。だから今も、まだまだいけるぞ!って気持ちで「私はまだ乾燥状態のスポンジだ!」「まだまだ吸収できるぞ」と自分に言い聞かせています。
──実際、ましろちゃんの成長って、本当にすごいですよね。最新Album『Polyphony』の歌詞にも、それが表れている気がします。
進藤:ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。ましろちゃんが成長しているからこそ、私自身も成長しなきゃなって思っていて。私を起用することは挑戦だったと思うんです。「この子がちゃんと務められるか」っていう、ある意味“賭け”だったと思うんです。
──そこにはプレッシャーもありましたか。
進藤:もちろんありました。でもそれが逆に自分の原動力になったというか、「やらなきゃ」って思えたんです。
──以前、相羽あいな(Roselia 湊友希那役)さんにインタビューしたときも、賭けだったのでは、というお話をされていました。
進藤:インタビュー読ませていただきました! あいあいさんもそう思っていたんだ……と。
──ところで、お母様は、隣でその瞬間を見ていて、どんな反応をされてました?
進藤:「やったね!」って、すごく喜んでくれました。『バンドリ!』が大好きだったことも、声優になりたいってずっと言っていたことも、全部知ってくれていたので。たぶん一番喜んでくれたのは母だと思います。目の前では見せていなかったですが、どこかで泣いてたかもしれないですね(笑)。今もずっと二人三脚で動いてて、体調管理なども、すごく気にしてくれていて……。
──それは心強いですね。
進藤:私が三森すずこさんに憧れてるという話をすると「まず体力をつけなさい」って言われていたんです。三森さんは体力がものすごく、本当に健康第一で動いてる方で「見習ったほうがいい」って。
それを一番気にしてくれていたのが母で、ご飯も、体調も、すごく気をつけてくれています。だからご飯も「ちょっとでもいいから食べなさい!」って、よく言われてました(笑)。やっぱり、食べなかった時期は体調を崩しやすかったので、「ちゃんと食べないとダメだよ」って。睡眠もそうですね。きちんと寝ないと、本当に身体がもたないなって思いました。しかも当時、学業との両立が大変で……。自宅から学校が離れていたので、毎朝5時半とか6時には起きないといけなくて、本当にバタバタな毎日でした。
でも、私は本当に「仕事がしたい!」って気持ちが強くて。なんだろう……“死ぬまでお仕事したい人間”なんですよ(笑)。狂ってるんじゃないの?ってレベルで、ずっと動いていたいタイプ。ゴールデンウィークなどに5日間くらい休みがあると、逆に体が動かなくなっちゃって、滑舌も悪くなるし、すべてがボロボロになってしまって。
──休んだはずなのに、っていう(笑)。
進藤:そうなんです(笑)。だから私は、ずっと動いてないとダメなタイプなんだなって思いました。それをわかってくれていて、母がずっとそばでサポートしてくれるんです。「今まで通り、私が全部やるから。あんたは帰ってきたら台本チェックして、風呂入って寝なさい」って言ってくれて。ずっと支えてくれていて、本当に感謝しています。
──すごいですね。進藤さんって、いつも元気な印象が強くて。
進藤:ファンの方にも言われるんです。「あまねすって元気だよね」って。自分でも「なんでこんなに元気なんだろう?」って思うんですけど、やっぱり母のおかげなんだと思います。