
「May’n Road to 20th Anniversary with アニメイト」特別連載「May’nが選ぶシチュエーション別楽曲」【第4回 アニメの世界観ぴったり曲&May'nソング】
Hacking to the Gate/いとうかなこ
アニメ『STEINS;GATE』は音楽をきっかけに見始めたんです。オープニングテーマである「Hacking to the Gate」は、アニメを知る前から「めちゃくちゃかっこいい曲だな」と思っていましたし、いとうかなこさんとはイベントなどでご一緒する機会があって。ライブで聴くたびに「かっこいい!」と思っていたのですが、それだけでなく、いろいろなアーティストさんがイベントなどでカバーされていて、曲の印象が強かったんです。
ただ、アニメ『STEINS;GATE』を見て「Hacking to the Gate」を聴いたらあまりの世界観ハマり具合にビックリしました。「これが『シュタゲ』だ〜!」って大興奮。楽曲全体のデジタルな世界観もすごく合っていますが、歌詞にはタイムリープをテーマとする上での切なさや葛藤がしっかりと描かれている点もまた素晴らしいなって。それだけでなく、すごく共感もできるんですよね。
私はアニメのタイアップ楽曲に関わる上で、アニメの世界観や主人公の気持ちをしっかりと切り取ることを大切にしているのですが、アニメを知らない人にも一つの音楽としても成り立つことも大事にしたいなと思っているのです。ただ、このバランスを取るのは本当に難しくて、日々悩みながら楽曲に向き合っています。
たとえば、アニメの世界を広げすぎてしまうと、「そんな感情、主人公は絶対に抱いていないよ」と感じてしまう可能性もあるじゃないですか。ファンの方の期待を裏切ってしまうのは嫌だなって。その「ちょうどいいところ」というか……どちらも大切にして楽曲を作りたいし、歌いたいなと思っています。今回挙げた「コネクト」「優しい彗星」「Hacking to the Gate」は、まさにその絶妙なバランスを感じさせてくれる楽曲たちです。
今日に恋色/May'n
この機会にライナーノーツ的に自分の曲を語りたいなという気持ちがあって、すべてのテーマに自分の曲を入れさせてもらっているのですが、「アニメの世界観ぴったり曲」のMay'nソングはいちばん悩みました。というのも、どの曲もアニメの世界を大切に作らせてもらっているので、この2曲以外も「アニメの世界観にピッタリ!」と思ってもらわないと、と思っています。ただ、その中でも、特に、さらに、そう思ってもらえているのじゃないかな?と思う曲であり、自分がいちリスナーとして「良いな」と、時間が経った今だからこそ思える曲をピックアップしました。
kz(livetune)さんが作詞、作曲、編曲を手掛けてくれたアニメ『いなり、こんこん、恋いろは。』のオープニングテーマ「今日に恋色」。それまではかっこいいナンバーを歌わせていただくことが多かったのですが、この曲には和や恋愛の要素が入っていて。アニメの世界にぴったりと寄り添ったことで、May'n自身の世界観が広がりました。
kzさんもすごくアニメの世界観を大切にしてくれました。例えば、『いなり、こんこん、恋いろは。』の舞台は京都が舞台の作品なので、「今日」という言葉に京都の「京」を掛け合わせたり、主人公・いなりのピュアな感情を歌詞に込めたりと、細部にまでこだわっています。そういうところからも、kzさんが作品の世界観を大切にしてくださっていることが伝わってきて、すごく良いなって思っていました。
『いなり、こんこん、恋いろは。』というアニメ自体もすごく好きで、この楽曲を歌うたびに、『いなり』の世界観が心に蘇るんですよね。ライブでたくさん歌ってきたので「今日に恋色」でたくさんの光景を見てきて、たくさんの思い出があります。それでも、神様であるうか様や、お兄ちゃんとの関係性や、アニメのシーンが頭の中にフラッシュバックすることがあります。
また、kzさんとの制作もすごく印象深いです。当時、初音ミクの楽曲を通じてものすごくkzさんの楽曲を聴いていて。ちょっとキュンとする曲を作られる素敵なクリエイターというイメージがありました。憧れの方とご一緒できた嬉しさも思い出します。
Chase the world/May'n
『アクセル・ワールド』のオープニングテーマ「Chase the world」は、井上秋緒さんが作詞を、浅倉大介さんが作曲をしてくれた曲。おふたりが『アクセル・ワールド』の世界観をぴったりと表現してくれました。
井上さんの歌詞を見たときに『アクセル・ワールド』の世界観が自分の中でより広がったんですよね。当時はまだアニメの楽曲の歌詞を自分で書くことができなくて。『アクセル・ワールド』の原作を読んだ時に、なんとなく心に浮かんでいた気持ちを言葉にしてくれたように感じました。だから、この曲を歌ったときに、私自身も『アクセル・ワールド』をより知ることができたなと思ったんですよね。
この作品で描かれる「加速世界」と重なる〈加速して初めて 往(ゆ)ける僕は僕の先へ 〉という歌詞があります。有田春雪という主人公をはじめ、各キャラクターには「もっと成長したい」「強くなりたい」という思いを持っているんですよね。それを象徴した言葉でありながらも、今よりも一歩前へ進みたいという希望は、今を生きる私たちも持っているものだと思います。アニメの世界、現実世界、どっちにもある狭間の気持ちを描いてくださっている、アニソンとして素晴らしい曲だなって思っています。
また、ところどころに、作品の世界観を象徴するような効果音を浅倉さんが入れてくださっていて。また、「チッチッチッチッチ……」って音も、それを意識していて。それで言うと、「Scarlet Ballet」(テレビアニメ『緋弾のアリア』のオープニングテーマ/作詞:井上秋緒さん、作曲・編曲:浅倉大介さん)もめちゃくちゃ迷いました。あの曲も「バキューン!」という効果音が入っていて。普通のポップスであれば使わなそうな音をまっすぐに入れてくださるのが浅倉さんなのです。
気づけばこの曲を発表してから10年以上の時が経っているんですよね。何十年も歌い続ける曲を大切に作り続けたいというのは常に意識しています。だから今の気持ちを載せられる曲ですし、今の気持ちとして届けられる曲です。









































