
『ある魔女が死ぬまで』声優インタビュー連載第7回:メグ役・青山吉能さん |今回が最終回かと思えるくらい綺麗にまとまっていた11話。メグを演じる上で大変だったことは「全部」!?
メグとの出会いが、新しい演技の引き出しを増やしてくれた
──『ある魔女』の収録は結構少人数で行われることも多かったみたいですが、第11話に関してはいかがでしたか? 今回はキャラクターもたくさん出ていました。
青山:確かにそうですね。アフレコの椅子もほとんど埋まるくらい人がいて、結構ドキドキしていました。
4人くらいで収録する時は、ブースのマイクをほぼ一人ずつ専用で使えるんですけど、第11話はすぐに次の人に譲らないといけなくて、「マイクワークってこうだったよな」と、忘れていた感覚を思い出したりしていました(笑)。
あと、人数が少ない時は1回でガヤを録りきれないので何回かに分けて収録してたんですけど、大人数だと1回で終わったりするという違いもありましたね。
──ソフィが初登場からは想像できない感じになっていたのが面白かったです。
青山:もう最初の頃とは比べ物にならないくらい感情を出してくれるようになりましたよね。わざとメグに冷たくするみたいなところもあって、メグとソフィがより親密になったからこその掛け合いみたいが見れたのも嬉しかったです。
第11話は結構シリアスなシーンも多かったので、祈さんやソフィと喋っているときは日常の穏やかな感じに戻った感じがあって、私自身安心できましたし、シーンとしても良い緩急になっていたと思います。
──いつのまにかフィーネとも仲良くなってもいたり。
青山:意外ですよね! メグだけじゃなく、フィーネもすごく人たらしなところがあるので、学校でも人気者みたいですから。メグ的には「そうやって皆私をおいて仲良くなっていくんだろうな」とか思ってるかもしれませんが(笑)。
──とはいえ、メグの方もいろんな子に粉をかけまくっていますよね。
青山:今回も「結婚しよう」とか言ってますからね……(笑)。ただ、もう言っても軽くあしらわれるのがお決まりというか、一種の芸風みたいな感じに定着しちゃってて、ちょっと切なさもあります。
──メグを演じることは大変だったと思うのですが、苦労したり印象に残っていることはありますか?
青山:いや、もう本当にメグは全部が大変だったっていう印象が強いです。
覚えているのは、第1話にメグの脳内会議みたいなシーンがあって、最初は勝手に一人で怒ったり落ち込んだりして、結構感情が自己完結してたんですけど、話が進んでいく内にソフィや祈さんと仲良くなって、自分の中じゃなく周囲に発散するようになってきている傾向があると感じていました。
個人的にはその変化は良いことだと思っていて、『ある魔女』って人同士の交わりがメインの物語だと思うんですけど、それを通してメグ自身にも変化が生じているのが嬉しいなと。
演じる分には、やっぱり最初の頃の自己完結していた時はとくに大変でしたね。掛け合いがないので、芝居の温度感を上げるのにもすごくパワーが必要だったんです。
──『ある魔女』は、キャラクターの登場に少し間があることも多いですが、収録に出ずっぱりだったのは青山さんと榊原さんくらいだったのでしょうか。
青山:そうですね。私と榊原さんの他は、カーバンクルの花井さんの3人だけだと思います。シロフクロウもいない回があったりするので。
実際の物語でも、少し前の話に出てきた家族の人たちが数話ぶりに再登場するような展開があるじゃないですか。私達キャストも同じような感じだったので、一話完結型だからこその、再会できた時の喜びは私自身の気持ちとしても感情移入しやすかった部分でした。
『ある魔女』って、1話のあとに何話か飛ばして見ても、ある程度ストーリーについていける作品ではあるんですけど、ちゃんと全部を追っていると「あの時の家族だ!」のように気がつける喜びもあって、いろんな楽しみ方ができる作品だと思います。
──全話に参加していると、ゲスト的に参加されるキャストの方から作品について聞かれることって多いんでしょうか。
青山:結構聞かれますね。ただ、私はその度にどこまで喋っていいのか悩むタイプで(笑)。
私は最初の頃から、ざっくり原作のどのあたりまで描くのかは聞いていたんですけど、結構ふわっとした理解だったのでちゃんとした説明はできなくて。さっきもお話したファウスト様とメグの過去エピソードとか、メグを演じる時には絶対意識しちゃ駄目だと心に蓋をしてるんですけど、それを皆に話してもいいのかとか、すごく考えちゃいますね。
──確かに、知らない方が演じやすいということもありますよね。
青山:そうなんですよ。しかもそれがその人の役によって結構違っていて、「この人には言った方が良さそうだけど、この人には言わない方が良さそうだな……」みたいなこともあったりして難しいですね。
──あえて原作を読まないキャストもいらっしゃるというお話も耳にしますが、青山さんはどんなタイプですか?
青山:私は、純粋に続きが気になって我慢できなくなるタイプなので、先に読む方です。でも、読み終わった後で「マジかぁ……!」みたいになって後悔することも結構あって(笑)。収録では頑張ってその気持ちに蓋をして、台本だけに向き合うように意識しています。
──『ある魔女』は、本当にメグのお話として描かれている作品だと思います。そんな作品で座長を務められることの重圧はありましたか?
青山:そうですね。やっぱりセリフの量でも、メグが中心になってお話を動かしていくであろうことは最初から分かっていたので、「自分に務まるんだろうか」みたいな不安は少しありました。
でも、原作や台本の中でものすごく生き生きとしたメグのセリフを読んでいく内に、メグに「どこまででもやっていいんだよ」と言われているような気になって。
文字で書かれていること以上に、本当のメグはもっと思いっきりやりたいんだろうな、みたいな気持ちが見えてきて、「ここは付け足してやってみよう」って気持ちが自然と湧いてくるような、不思議な現象がありました。台本や原作を読んだ時に感じた躍動感みたいなものに、私自身も引っ張られたというか。
──メグからの刺激みたいなのも受けながらの収録だったと。
青山:座長として100点を取ろうというよりは、とにかくメグとしてやれることを全部やりきろうみたいなスタンスでやらせていただきました。
でも今思い返すと、そのスタンスで取り組めたのは、他のキャストの方々がお芝居で支えてくださったからこそだという感覚があります。そういう意味でも、他のキャストの皆さんへの感謝の気持ちが強いですね。
──メグのような面白いキャラクターは、青山さんが結構得意とされている系統の役柄でもあると思うのですが、今回でよりレベルアップできたような感覚はありますか?
青山:『ある魔女』でギャグシーンをやる時に最初の頃から言われていたのが、「高いレンジでギャグを連発するんじゃなく、低いレンジも使ってほしい」というディレクションだったんです。
最初に原作を読んだ時、メグって結構ハイテンションな高いレンジでのギャグが多いイメージを抱いていたんですけど、いざ演じてみると、実は低いレンジでボソッと呟いたりするタイプも多いことに気づいて。
──確かに、シュール方向のギャグが結構あるんですよね。
青山:私はまだシュールギャグは習得しきれてなかったので、「ボケにもツッコミにも、こんなにバリエーションがあるんだ」と気づけたのは、メグのおかげの部分が大きいです。
音響監督の森下(広人)さんからも「低いレンジでも結構できるね」といったお言葉をいただけて、自分の演技の新しい引き出しを増やせたような実感はあります。
もし余命一年になったら、毎日外食をして悔いなく過ごしたい
──物語も終盤になりましたが、印象が変わったキャラクターはいますか?
青山:最初から好きだったんですけど、もっと好きになったという意味だと祈さんでしょうか。
私って基本的に強い女性キャラクターが好きで、祈もまさに自分の力で何もかも掴み取るタイプのカッコいい女性なんですけど、足が臭すぎるっていう弱点があって(笑)。よくありそうな「料理ができない」とかじゃなく、よりにもよって「足が臭い」っていうギャップが物凄くツボだったんです。
その上で、第11話ではアクアマリンまで一緒に旅もしましたけど、やっぱりすごくしっかりしていて、ブレない自分の軸を持っている人であることが改めて分かってきて。隣にいる祈に心強さを感じつつ収録させていただきました。
あとはもう、とにかく伊藤静さんのお声が素敵すぎる……! 隣で伊藤さんがお芝居をされていると、そっちの方向を向いて喋りたくなるんですよね。
メグがボケた時とか、めちゃくちゃ辛辣なツッコミが帰ってきたりするんですけど、それが本当に完璧で。私が真似ようとしても、絶対に到達できない声とか表現をすごく感じながら、贅沢な時間を過ごさせていただいていました。
──もしメグと同じように、青山さん自身があと一年しか生きられないとなったら、どういう風に行動されますか?
青山:実はそういう話、たまに他の人ともすることがあって、私は圧倒的に自分が死ぬタイミングを知りたい派なんですよ。
どうしてかというと、人生っていつ終わるか分からないじゃないですか。80年生きるかもしれないし、明日突然交通事故で死ぬかもしれない。そういう不明瞭なのが苦手なんです。
あとは私自身、いつでもいいことは先送りにしちゃいがちなタイプなのもあって、普段なら明日に回すようなことでも、残り時間が分かっていたら、やっぱり今日やろうと思い立ったりもするでしょうし、1日1日を無駄なく過ごすようになるんじゃないかなと。
──確かにその側面はありそうです。
青山:あとは食事とかも、忙しいとつい適当に済ませがちになっちゃいますけど、残りあと何回食べられるのかを数えたりしたら、1回1回の食事をすごく大切にしますよね。
だから、もし残りあと余命が1年と宣告されたら、もう毎日外食したいなと。一人じゃ入りにくかった店にもガンガン入って、テーブルマナーが守れていなくても知らんがなくらいの気持ちで、悔いのないように食べまくりたいです(笑)。
──ついに放送も残すは最終話のみとなりました。最終話の見どころをお願いします。
青山:きっとご覧になっている皆さんも、第11話を見て「いい最終回だった」と思っていらっしゃると思うんですけど、エルドラさんを始め、まだ残された謎があります。『ある魔女が死ぬまで』という作品がどんな結末を迎えるのか、最後まで見届けていただけると嬉しいです。
──ありがとうございました。
[取材・文/米澤崇史]
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作品情報
あらすじ
十七歳の誕生日を迎えた見習い魔女のメグ・ラズベリーは、魔法の師匠であり、魔法界トップの七賢人に名を連ねる『永年の魔女』・ファウストから、突如として余命一年であることを告げられる。
メグは『死の宣告』の呪いにかかっていたのだ。
呪いによる死を免れる方法はただ一つ。手にした者に不死をもたらす、『命の種』を生み出すこと。
そして、『命の種』の材料となるのは、感情の欠片――人が喜んだ時に流す、嬉し涙。
「それで、一体どれくらい涙を集めればいいんですか?」
「千人分だ」
「......はい?」
こうして、メグは嬉し涙を集めるため、様々な人たちと関わっていく。
幼馴染みで大親友のフィーネ。
ファウストと同じ七賢人の一人――『英知の魔女』・祈。
メグと同い年にして七賢人に名を連ねる天才少女、『祝福の魔女』・ソフィ。
これは、余命一年を宣告された未熟な魔女、メグ・ラズベリーが起こす、奇跡の物語。
キャスト
(C)坂/KADOKAWA/ある魔女が死ぬまで製作委員会























































