
ルパン一味VS好敵手を描く「LUPIN THE IIIRD」の集大成。こんなルパン三世を描きたかった――『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』監督・小池健さんインタビュー
『ルパン三世』約30年ぶりとなる2Dアニメ劇場版『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』が絶賛公開中!
ハードボイルドな世界観で、若きルパンたちの物語を描く「LUPIN THE IIIRD」シリーズ。その完結編となる今作では、ルパンたちは“地図に存在しない島”へと足を踏み入れます。
アニメイトタイムズでは劇場版の公開を祝して、小池健監督のインタビューをお届け。「LUPIN THE IIIRD」シリーズが生まれた経緯や、豪華キャスト陣を起用した「不死身の血族」の制作秘話などを語っていただきました。
※本記事には、『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』のネタバレが含まれます。
「ルパン三世 PART1」から受け継いだ、ルパン一味VS好敵手の構図
──「LUPIN THE IIIRD」シリーズのコンセプトについて、お聞かせください。
監督・小池 健さん(以下、小池):まずはクリエイティブ・アドバイザーの石井克人さんにお声がけさせていただいて、プロデューサーの浄園祐さんと3人で方向性を話し合いました。そこで3人とも「ルパン三世 PART1」が好きだと分かったんです。その中でも、僕自身が好きだったのは、ルパン一味と得体の知れない敵が戦うエピソード。ルパンと言えば何かを盗む話が多いですけど、ルパン一味VS好敵手という構図を描きたいと思ったことが「LUPIN THE IIIRD」シリーズの始まりでした。
──登場するヴィラン(好敵手)のアイデアは、石井さんを中心に構築されたと伺っています。
小池:シリーズの全作品がそうですね。ヴィランだけではなく、ストーリーのフックになる部分の箱書き(シーンの要点の箇条書き)まで作ってくださって。そのうえで脚本の高橋悠也さんに入ってもらい、ネタをすべて入れ込みつつ、どんなドラマにするか、どこにカタルシスを持っていくかをまとめていただきました。
──では、「次元大介の墓標」からシリーズ全体のプロットを考えていた訳ではなく?
小池:全く考えていなかったですね。当初は「ルパン一味VS好敵手の面白い作品を、まずは1本作りたい」という感じで、誰を主人公にするかを考えた時に「ファンからの人気も高い次元大介にしよう」と。そこである程度の評価を得られたので、「次も作りましょうか」という話になりました。その後、石川五エ門、峰不二子と続いていき、「ここまでいったら最終話まで作りましょう」と言っていただいて、今回のストーリーを考え始めたんです。「次元大介の墓標」でマモーを登場させたので、皆さんも彼が黒幕なのかなという想像はしていたと思います。ルパンの番が回ってくる最終話(劇場版)は、そこに繋がる話にしようという構想で進めていきました。
──ちなみに、ルパン一味ではない銭形警部にスポットを当てた「銭形と2人のルパン」の制作は、どのような経緯で決まったのでしょうか?
小池:元々銭形編を作ることは想定していなくて、最終話を前後編に分ける形で、銭形&ルパン編にしようと思っていたんです。途中で「単体で銭形のエピソードがあっても面白いかもしれないね」とご提案いただいて、ルパン一味ではないからこそ、違ったアプローチができるかもしれないなと。
『ドクター・モローの島』を参考にした世界観とムオムの設定
──「不死身の血族」は世界地図に存在しない島が舞台になっています。脚本の高橋さんは「ムオムがいそうな不思議な場所」を考えた結果だったとお話されていました。
小池:そうですね。参考にしたのは『ドクター・モローの島』(ハーバート・ジョージ・ウェルズのSF小説/1977年に映画化)です。おどろおどろしくて不気味な雰囲気からヒントを得て、「孤島に自分で自分を改造して成長しながら生きている人がいた」という設定になっています。
──ムオム役には片岡愛之助さん、サリファ役には森川葵さんが起用されています。
小池:森川さんはある番組の流れで、テーブルクロス引きやスポーツスタッキングなどの難しいチャレンジをすぐにクリアする「ワイルド・スピード」の異名をお持ちですよね。今回はサリファという年齢が低い役でも、うまくハマるのではないかと思いました。
ムオムを誰に演じてもらうのかは難しかったです。僕自身、どんなキャラにしていいのか、誰が当てはまるのかも分からなくて、色々と模索していました。
それとは別に片岡愛之助さんが「ルパン歌舞伎」(『流白浪燦星』)をやられていたので、「今作にも少し出演していただけると嬉しいな」と思っていて。前向きに検討してくださっていると伺ったので、「ぜひムオムをやっていただけませんか?」と。片岡さん側にも快諾していただいて、その後はとんとん拍子に決まりました。
──現場ではムオムの役作りに関して、愛之助さんと話し合われたそうですね。
小池:フィジカルが強いキャラですけど、ムキムキな感じでいくのか、逆に知的な感じがいいのかなど、僕自身も悩んでいました。後半は人間の言葉をほぼしゃべっていませんが、音圧や雰囲気も含めたムオムの説得力は、愛之助さんにしか出せなかったんじゃないかなと。色々と挑戦していただいたおかげで、すごく魅力的なキャラクターになったと思います。

































