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『ガメラリバース』登場怪獣をスタッフ陣が語り尽くす【インタビュー】

昭和から平成、令和へと繋がれた『ガメラ』のバトン――『GAMERA -Rebirth-』監督・瀬下寛之さん×怪獣デザイン・髙濵幹さん×造形監督/光画監督・片塰満則さんが登場怪獣を語り尽くす【インタビュー】

アニメ「GAMERA -Rebirth-」、デザイン秘話

ーーそして怪獣デザイナーの髙濵さんですが、本作への参加の経緯をお聞かせください。

髙濵:僕は、2015年にWEBで公開された石井克人監督が作られたガメラ生誕50周年記念のプロモーション映像にもデザインで参加していて、その流れで改めてオファーを受けた形です。ただ、瀬下監督とは以前に実写の仕事でご一緒していたことがあったんですよね。

瀬下:そうなんです。某実写作品で、僕がVFX監督、髙濵さんが造形で入られていて。

髙濵:また繋がったなと。

瀬下:KADOKAWAのアニメ事業局長(当時)の菊池剛さんから「怪獣デザイナーは髙濵さんでどうですか?」と言われて、願ったり叶ったりで、その場で思わず「最高です!」と言った記憶があります。

髙濵:ありがとうございます(笑)。

ーー今回のガメラのデザインは2015年版がベースになっていますね。

瀬下:この石井監督版のガメラが本当にカッコ良くて、「岩山のような」というデザインコンセプトも素晴らしいし、これに関しては素直にベースにできないかと思いました。

片塰:僕が参加した時点では、瀬下監督の事務所に、かなり大きなガメラの造形物がありました。「もう既に立体になってるじゃん!」ってことで、仕事としてはすごく楽だったんですよ。

瀬下:その上で、僕から加えたかったのは、強さや逞しさだけでなく、知性と優しさを携えて欲しいということ。そしてアクションの幅を広げる為に、とにかく柔軟に動けること。それから、どういう理屈でこの巨大な体を動かすエネルギー源が存在しているのかといった、ストーリーのベースとなる設定面での方針を髙濵さんにお伝えしました。

髙濵:原案の2015年バージョンでは石井監督の“岩山のような”というコンセプトに従い、限界までボリュームを持たせたデザインにしました。それが今作のエネルギー源であるオリリウムの巨大なチャンバーを甲羅内に持つという設定にも合致し、更なるボリュームアップに挑戦しています。また、瀬下監督の“怪獣プロレスをやりたい”という要望を受けて、2015バージョンでは長かった爪をオミットして、掴んだり殴ったりと何でもできる手と破壊力を感じさせるボリュームのある前腕にデザインを変更しています。

ーーその他、大きく変えた点はありますか?

髙濵:目は2015年版の石井監督のオーダーでは、ライオンを思わせる肉食の目だったんです。ちょっと感情を読み取れなくするという意図がありまして。それを今回は瀬下監督が仰っていたように、厳しさの中にも優しさや知性を感じさせる人間に近い眼差しにしました。これらの変更がリバースガメラを決定づけるとりわけ重要な要素になったと思います。

片塰:僕にとってはこの”人間味”に魅力を覚えましたね。

髙濵:それと、3DCGモデルでは、足が動物のような逆関節になっています。よりアクティブなアクションに対応できそうにアレンジされていて、これは片塰さんが判断されたんじゃないかと思っているんですけど。

片塰:逆関節というか、カカトを上げてつま先立ちにして、犬や馬のように身体能力が高いといったイメージです。

髙濵:なるほど。

片塰:俊敏なマッチョなんて現実の生物には存在しないですけど、怪獣なら有り得るんじゃないかなと。それで、なおかつ監督が仰っていたように知性もある。

髙濵:話はちょっと変わるのですが、僕はずっと特撮の現場で実写の仕事をしてきた事もあり、今回のアニメの場合、怪獣たちが最終的にどういう見た目(テクスチャ、質感等)になるのか、正直、完全にイメージ出来てないところがあり、少し不安もあったんです。アニメでは表面の細かなディティールやテクスチャの表現は実写に劣ると漠然と考えていたのですが、テクスチャの無駄な部分が整理され、強調したい要素が意識的ににコントロールされる事で、実写とは異なった、より積極的な絵画的表現ができるんだなと改めて感じました。ジャイガーの妙にいやらしいヌメリ感とか、実写ではなかなか出ないでしょう。もちろん片塰さんが明確なビジョンを持って作り上げられたからこその結果だと思うんですよね。

片塰:今回、キャラクターデザインはシンプルな作画のスタイルですが、怪獣は対照的に、細かくディテールを入れたかったんです。ただしキャラと怪獣は両方とも”絵で描かれている”ように見せたい。そこで思いついたのは図鑑に掲載されているイラスト。細密に描かれている絵でありながら、形を正確に伝える機能性のあるイラストを目指しました。いわゆるセル画風のハイライトや影をシンプルな色面で塗る、といった方向性は最初から考えていませんでしたね。

髙濵:かなりの差し色が部位ごとに入っていますよね。

片塰:キャラクターのスタイルに合わせてシンプルな線で怪獣を描いてしまうと、巨大感を出すのが大変だというのもありました。エアブラシのようにボカシの要素を入れていくとか、色々やりようはあるにはあるんですけど。それからキャラクターに合わせて線を太くしてしまうことにも抵抗がありました。

片塰:作画のアニメーションでは、紙のサイズや鉛筆の線の細さの限界を考慮して、マンガからアニメにする際には線がつぶれないように上手く線を減らしたり、形を整理をしているのですが、怪獣でそれをやると結局、巨大感からどんどん遠ざかると思っていて、そういう意味でも、図鑑のイラストなら、絵としての細密さ、実物そのものの大きさを正確に伝える姿勢があるんじゃないかなと考えた次第です。

ーー先ほど片塰さんのお話にあった「怪獣プロレス」についての拘りについて瀬下監督にお聞きしたいと思います。

瀬下:監督としては、ストーリー、キャラクター、世界観、全てにおいて良いものを目指したいんですが、今回は「怪獣バトル」に全ての力を注いだと言っても過言ではありません。日本のCGアニメも含むアニメーション作品で描いた怪獣バトルとしては、これ以上ないくらいの素晴らしい成果を出せたんじゃないかなと手応えを感じています。

髙濵:ここまで正面切って、真面目に怪獣プロレスを描いた作品はないんじゃないですか?

瀬下:投げたり、持ち上げたり、引きちぎったり……。いわゆる大人の事情、予算とスケジュールさえ許すなら、この5倍くらいの戦闘シーンを作りたかったですよ(笑)。

片塰:それはそれで全編バトルになってしまう(笑)。

瀬下:極論すれば、とにかく怪獣同士が戦っているアニメにしても良かったと思うくらい。理屈は抜きで(笑)。

昭和ガメラに対する思いなんですが、ガメラに守ってもらった少年たちが、ガメラを守ろうとする話をどうしても書きたかったんです。一方で、監督としては無茶苦茶な発想ですが、髙濵さん、片塰さんによって素晴らしいデザイン&造型による怪獣が生まれ、そして動かしてもらっているうちに、「怪獣が戦っているだけのアニメでもいいかな」と思っていた自分もいました(笑)

(C)2023 KADOKAWA/ GAMERA Rebirth Production committee
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