音楽
Newspeak『BULLET/BULLET』ED「Glass Door」インタビュー

信頼から生まれるスペシャルなサウンドとバンドを続ける“意味”とは──Newspeak・Rei×Steven×Yohey『BULLET/BULLET』エンディングテーマ「Glass Door」&EPリリース記念インタビュー

「何か“スペシャルなこと”ができないかなと考えていて」

──歌詞に関して、Stevenさん、YoheyさんはReiさんにアドバイスや提案をされるのですか?

Yohey:細かい部分だけですね。「ここは、ちょっと違う響きの方が良くない?」「違う言葉の方が意味が通りやすくない?」のような、本当にちょっとした小さいところだけかなと。

Rei:語尾や助詞については、デモのボーカル録りする時に話すことが多いかもしれませんね。

Yohey:歌詞への提案というより、ボーカルディレクションの一環かもね。

──英語詞と日本語詞の共存も、Newspeakならではの魅力だと思っています。言語の使い分けに関するこだわりや美学について教えてください。

Steven:いつも難しいって言ってるね。

Rei:そうだね。英語を使うと「クールなことを言っていそう」という印象を持たれることがあるのですが、割と小っ恥ずかしいことというか、結構ストレートにメッセージを言っていることが多いんですよね。それを日本語にした時に「人格を変えない」というのが、僕の中でテーマにしていることです。書きたい歌詞は同じですし、書いている人間も同じなので。

日本語では、主語を「俺」にしたり「僕」にしたり、語尾「~じゃん」にしたり……色々な表現ができると思いますが、統一するように意識しています。

人格を統一する。言うべきことは言う。日本語で言う方が恥ずかしいけれど、そこは恥ずかしがらない。さらけ出す……これが美学なのかな。ちょっと恥ずかしいですけどね(笑)。

──そうして生まれた歌詞を支えるサウンドについて伺えればと思いますが、「Glass Door」のレコーディングはいかがでしたか?

Yohey:最後のエモーショナルなポイント……ニュアンスが落ちたところから開けて、最後はガッツポーズをして終わるというような大きな流れの中で、ビートが浮つかないように意識していました。

加えて、『BULLET/BULLET』にはカーアクションシーンなどもあって、躍動感やスピード感も感じていたので、「内面の力強さ」を考えていましたね。ベースやドラムは、結構ドコドコと下を響かせていたり……外れないように意識をしていた記憶があります。

Rei:Bメロが一番シンプルな分、難しかったと思います。地を這って前に進んでいくような様子が見えるセクションなのですが、やはり僕たちはミュージシャンなので、完成度について粘りたいというか、何か“スペシャルなこと”ができないかなと考えていて。色々と試行錯誤していました。

最終的にはオリジナリティーのあるフレーズと、ズンズン進んでいく雰囲気を両立させることができたかなと思います。そこ(Bメロ)以外は割とすんなり完成した気がするけれど……Stevenは(Bメロの初期デモ、ドラムパートについて)「4つ打ちかぁ……」って言ってたよね。

Steven:ああ! 言ったかも(笑)。

Rei:(笑)。最初、キックを多めに入れてたんですよ、ドッドッドッドッて。でもそれを聴いたStevenが「それだと足が痛い!」って。

Steven:「できない!」ってね(笑)。ずーっとキックが入っていたから。ドライビング、まっすぐに進むビートの中で色々な要素が加えられていたね。

いま思い出したんだけど、サビの特徴的なギターパート。あれはReiが完成間際に持ってきたよね。直前までサビのギターアレンジは若干違うものが採用されていたけれど、Reiがある日プリプロに「こういうのを考えたんだけど、どう?」って。それがサビのテーマになって。

Rei:シンプルに気持ちが良いアルペジオや力強いパワーコードが鳴っているのも、それはそれで正解だと思うのですが、今回はやはり王道サビメロが求められていたと思いますし、外せないなとは思っていました。

ただ「サビはもうちょっと一癖付けたいなぁ」とも思っていて。本当に最後の最後に、ギターなのかシンセなのか……そんな音を最後に入れたんです。そうしたらみんなしっくりきて。

Steven:Newspeakあるあるかもね。3日、4日でアレンジを頑張る。たくさん考える。「これがいいんじゃないか」って3人で納得して、その後にReiが一人で考えてきたギターをプレゼンして、「これもいいね!」となって。結果的に、新しい音源でいこうってなるの。

Rei:Stevenがよく嫌がってるやつね(笑)。綺麗にまとまったのに、最後の最後で壊しにくる流れ。

Steven:いつもそう!(笑) 私がバランスを取った後に、Reiが全然違うトラックを持ってくるんだよ。

Yohey:(笑)。Newspeakは基本的にギタリストがいないので、どうしてもギターアレンジを同時進行で詰めていくことが難しいんですよね。他の楽器より一歩遅れてるところからスタートになる。最終的にギターをアレンジしようとなった時に、また新しいアイデアが出てくるのは自然な流れなのかなと思っています。

Rei:ボーカルのメロディーも変わるよね。これもぶつかり合いなのかもしれません。

──Newspeakならではの“スペシャルなこと”が生まれる要因なのかなと。そうして生まれた「Glass door」は、皆さんにとってどのような意味を持つ曲になりましたか?

Rei:ここまで展開がずっと変わり続けて、面白い楽曲は、今まであまりなかったかなと。

Aメロひとつをとっても、1番と2番ではビート感やノリが結構違うんです。王道なメロディがありつつ、雑多な感じもあって。トラック自体は、ネガティブな意味ではなく案外ごちゃごちゃしているんですよね。

自分たちだけで楽曲を作っていたらできなかった……楽曲のインスピレーションを外部からいただいて、それをみんなで共有して、という普段と違う作り方があったので、こういう面白い展開でもしっくりきたんだと思います。

自分が主人公になったつもりで聴いてほしいのですが、楽曲に込められた感情の起伏のようなものを人間らしく受け止めて聴いてほしいなと思います。シンプルじゃないことだと思うから。

Yohey:朴監督は、とっても自由な方なんですよ。人に対して自由で、チーム全体に対しても「好きに作ってください」という雰囲気があって。

改めて、お互い認めあった良いものが自然に交わり合って、新しいものが次々と出来上がる流れを再確認させていただきました。「Glass Door」という曲を通して、創作の流れをまた再発見できる曲になったと思っています。

──朴監督を含めた制作チームと交流する機会があったとお伺いしています。その際はどのようなお話をされたのですか?

Yohey:ずっと「『Be Nothing』が好き」って言ってました。

一同:(笑)。

Rei:本当に「Be Nothing」への熱量が凄くて、いつかの打ち合わせの時だったと思うのですが、朴監督が「これから楽曲を提供してくれるアーティストにこういうこと言っちゃダメなのはわかってるけれど、『Be Nothing』が良くて!」って(笑)。その結果「Be Nothing」を盛り上がるシーンの挿入歌として使っていただけたんです。

──へぇ!

Rei:アニメのクライマックス、一番エモーショナルで大事なシーンだなと、あらすじを拝見した時に思った部分だったのですが、ほぼフル尺で採用してくださって。監督も「そのシーンのコンテはうまく進んでいなかったけれど『Be Nothing』を聞きながら作りました」と言ってくださって。

めちゃくちゃ嬉しかったですね。それまでは、自分たちの提供した楽曲がアニメに付加価値をつけるというイメージがあったのですが、アニメの制作、作品の中身自体に貢献できるとは思っていなかったから。

──監督とNewspeakで作り上げたワンシーンになっているんですね。

Rei:そう言わせてもらっていいのかな(笑)。朴監督からその話を聞けて嬉しかったです。思い入れがさらに強くなった瞬間でした。

朴監督が10年かけて作った構想を元にしたアニメということもあって、僕たちとしてもその気持ちに本気で打ち返したいという想いが最初からありました。改めて『BULLET/BULLET』に貢献できて良かったし「Glass Door」を本気で作って良かったなと思います。

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