
夏アニメ『うたごえはミルフィーユ』手鞠沢高校アカペラ部キャスト陣が語る3年半の挑戦と6人の声がひとつになる瞬間【インタビュー前編】
今だから感じる、アカペラの奥深さと魅力
──3年以上やってきた今だから感じる、アカペラの魅力、深さってどんなところだと思いますか?
松岡:ずっと変化していくものだと思っています。3年半くらい、ほぼ毎週レッスンをさせていただいていますが、いまだに「こうしよう、ああしよう」が出てくるんです。私は3rdコーラスですけど、初めは上のパートに合わせて細い声で歌うことになっていましたが、最近になって太い声で歌うことになったんです。そのほうが混ざりがいいし、コーラスの厚みが出るからという理由なんですけど、声を太くするって楽器が変わるようなものだから、音楽の雰囲気が変わるんですね。やっている人は同じだけど、そうやって変化していくので、最初のアカペラと今のアカペラでは、同じ曲でも違う雰囲気になる。歌い方ひとつで、曲の雰囲気を変える力があるのでそれがとても魅力的だと思いました。
綾瀬:コーラスって、練習のとき「こういうふうにニュアンスを付けて歌おう」という共通認識を作るんです。でもこの前、Parabolaのアレンジャーで時々私たちのレッスンもしてくださっているまーびろさんに、「それをやって、本番でその通りに歌えたことがありますか?」と聞かれたんですね。考えてみると、確かに完全に練習通りに歌えたことはないんですよ。でも、共通認識を作ってニュアンス感は共有できているから、大きなズレは生じてないんです。
ただ本番って、そのときの状態で感情の入り方が違うから、練習と100%同じものはできないんですよね。上手くいっても、そのときによって曲全体の色合いが違うんです。同じピンクでも、濃いピンクになるときもあれば、薄いピンクになるときもある。なので、その場でしか作れない音楽があるというのが、アカペラの良さだなと思いました。
──歌っているときに「この人、今日はこういう感じだな」と感じられたりするのですか?
相川:最近わかるようになってきました。なんか今日、体調悪いのかな?とか。
花井:それに対して、カバーし合えるんだよね。
夏吉:そのカバーの仕方ひとつ取っても、最初は、指標になるように自分が大きく歌うとかしかできなかったけど、そこから、目を合わせただけで「このくらいのテンポ感に戻すか」とか、雰囲気を伝えたりすることができるようになるんです。メンバーのことをわかっていくにつれて、アカペラの手段が増えていくのは楽しいです。
確かに本番は、未来ちゃんが言ってくれた通り、練習してきたものを一旦置いて、その舞台の上で出てきたアドリブ的な要素が多くなるんです。でも対応する手段が多ければ多いほど、本番も楽しくなるんです。
須藤:その時の体調がわかるとか、お互い目を合わせてテンポ感を調整するとか、みんなで作っているというのを感じられることが、私はすごく好きなんです。私が演じているアイリちゃんのセリフで「アカペラっていうのは、歌と歌で手をつなぐってこと」というのがあるんですけど、本当に素敵だし、その通りだと思うんです。
きれいにハモったり、リズムが合ったり、ニュアンスを一緒に付けられたり、お互いに意思を汲み取れて、同じ気持ちを共有できるところまでいけるのがアカペラの魅力だし、ひとりじゃないんだというのを実感できるんです。それが温かくて素敵だなと思います。
──ドキュメンタリーを見ていて、どうしたら良くなるのかとなったとき、手を繋いでいいかと夏吉さんが言っていたんですよね。アニメの第2話でもそんなシーンがあったのですが、あれはメンバー発信のシーンなのですか?
山中:手を繋ぐのは元々アカペラの練習法として描こうとしていたんです。示し合わせたわけではないんですが、自然と一致しましたね。
──皆さんは歌いながら、今日はめちゃめちゃ良いハーモニーが奏でられているな!というのも感じられるということですね。
一同:感じられます。
松岡:たぶん、アカペラをやっている人は、きっと分かると思います。
花井:私、バーがキラキラしてくるんですよ(笑)。頭の中のバーが。
松岡:カラオケの採点のやつだ!
夏吉:私は音ゲーが浮かんでるかも。ここで難所が来るなぁ〜、はい、コンボが繋がった〜!みたいな気持ち(笑)。
松岡:私、自分が歌っている線があまり聴こえなくなったら、うまくいってるんだなって思う。声が混ざるから、溶け合い過ぎてわからなくなるんです。
綾瀬:確かに確かに。
松岡:それぞれの感じ方があるんだね。
転機となった曲と『ハモネプリーグ』への挑戦
──これまで活動してきた中で、ターニングポイントになった曲はあるのですか? これは山中さんが見ていて、そう感じた曲を教えていただきたいのですが。
山中:なるほど。(ちょっと考えてから)最初から上手かったんですけど、ボーカリスト5人+パーカッションだなという時期は確かにあったんです。それがアカペラグループになってきたなと思ったのが、松岡さんがリードの「飾りじゃないのよ涙は」(中森明菜)ですかね。
この曲は、実際の大学アカペラの中でも、オーソドックスなカバーナンバーなんです。演奏する姿を見て、アカペラバンドになってきたんだなって思いました。オリジナルをやったり、かなりアレンジをしたカバーをやっているときより、アカペラスタンダードをやったことで、純粋な実力が見えて、自分たちが大学時代に必死に打ち込んでたアカペラのレベルをとうに越えてるなと感じたのかもしれないですね。
一同:嬉しい〜!
山中:リードを替えることで、コーラスが入れ替わりそれぞれが別のパートを担当するというアカペラ特有の動きにも見事に対応していたので、それもあるかもしれません。
あともうひとつ、曲とかではないんですけど、昨年9月の『ミルふぁむミーティングⅠ』で、夏吉さんが体調不良でお休みされたことがあったんです。そこで本来6人編成のものを5人編成でやっているのを見て、「アカペラバンドだ、この人たち!」と感心しました。ひとりいないと成立しない部分はもちろんあったけど、ひとりいなくても編成の工夫でやってしまうアカペラの良さも出ていたんですね。急なことだったんですけど、そこで成長を実感したので印象に残っています。そのあと夏吉さんが戻ってきたときのハマり感も、すごかったです。
夏吉:何だか申し訳ないんですけど、それなら良くないけど良かったです(笑)。
綾瀬:あれで改めてゆうちゃんの大切さを実感したよね!
松岡:ゆうちゃんパートを振り分けて、主に未来ちゃんが歌ってくれていたんだけど、ゆうちゃんのパートってとても難しいんです! 自分のパートに慣れているというのはあるかもしれないけど、人のパートを歌うことってないので、これを機に、違うパートのことをさらにリスペクトできました。
夏吉:どのパートも大切なんだなっていうのは日頃感じていることで、私は1stコーラスだから、みんなのハーモニーがあって、最後に「左手は添えるだけ」みたいな気持ちで歌っているんです。だから難しいというより、本当にみんながありきの最後の仕上げパートだなと思っています。
山中:夏吉さんは根っからのボーカリストだから、アカペラは難しい部分もあったと思うんです。どうしても声が立ちすぎるので。そういうムスブと同じ悩みを抱えていると思うんですけど、本当にこの数年間でアカペラの方になられたなと思いました。
──「飾りじゃないのよ涙は」についてはどうですか?
相川:この曲をやっているときくらいから、皆さんにすごく褒められるようになった気がします。私たちもやっていて、「あれ? 私たち良くなっているんじゃない?」と思った時期でした。
綾瀬:確かに! みんなで練習しているときも、心配ないよね、行けてるよね〜って思ってた。
須藤:普段は3rdコーラスの美里ちゃんがリードに行くから、2ndコーラスの私が3rdコーラスにいくんです。いつもと違うパートだから、低くてすごく難しかったです。3rdって支えている役割がすごいんだなと思ったし、アカペラはパートごとに役割が違うんだなと、改めて実感しました。
相川:コーラスの雰囲気も、かわいい感じじゃなくて大人っぽくという感じだったから、結構それまでとは違いました。
松岡:私はリードを初めてやらせていただきましたが、リードがすごく難しいということに気づきました。引っ張っていくところもあれば、乗っていくところもある。1曲の中で変わっていくので、ここは引っ張らなきゃいけないんだ!となるとプレッシャーで大変なことになるし、私が間違えたら、みんなのコーラスが台無しになってしまうと思ってしまって……。これをずっとやっている未来ちゃんはすごいな!って思いました。
綾瀬:みんなのおかげです。
須藤:ホント、どっしりしているよね〜(笑)。
山中:須藤さんが3rdが難しいと話していましたけど、個人的には普段担当されている2ndが一番アカペラ特有の難しさがつまっていると思うんですよ。
綾瀬:私も思いました!「飾り〜」のとき、ゆうちゃんはそのまま1stコーラスで、私が2ndコーラスになったんです。2ndって何とも言えない音域で、高いわけでもなく低いわけでもない真ん中の音域だから、上にも下にも引っ張られちゃうんです。女性だと、裏声と地声の境くらいだから、出すのも難しくて。
須藤:そうだったんだ!
山中:和音の真ん中であることから、主張しないようにするのが難しいパートなんです。その立ち位置をうまくすり抜けることが本来難しいんですけど、それを簡単にやれてしまう須藤さんは、コーラスの人なんだなぁと思いました。声が地で裏に入っているような、実はすごく特徴的な声をしているので、2ndコーラスははまり役だと思います。
須藤:嬉しいです。
──「飾り〜」は、パートをチェンジしても、良さが変わらなかったところがすごいんですね。
山中:ウタとムスブがリードと1stコーラスを交代するというのは、わかりやすいんです。でもそこにがっつりメスを入れても何とかなったというのは大きかったし、すごい!と思いました。
──あとひとつ、どうしても聞いておきたいのは、『ハモネプリーグ』の大会「全国ハモネプ大リーグ」でチャレンジした楽曲「アイドル」(YOASOBI)ですよね。
山中:自分が出たほうがマシだと思うくらい緊張しました。
綾瀬:準備期間も1ヶ月くらいしかなかったし、正直怖かったです。
松岡:本当に怖かったけど、出たあとは、出て良かったと思いました。今でも「ハモネプに出てたよね?」って言われることがあるので『うたミル』として、見てもらえるきっかけになったことは良かったです。
山中:僕も立ち位置が難しくて。いちアカペラファンなので、「声優ユニットで、『ハモネプ』に出ました!」と言ったら、彼女たちの努力を知らない方たちは、実力ではなく、企画で出場枠を1枠埋められた感が出ちゃうじゃないですか。どうしても厳しい目で見られてしまう。だから、ちゃんと実力で上がってきたということをパフォーマンスで見せなければいけませんでした。その責任は感じていたので、「アカペラを好きな人にも、本気でやっているということが伝わってくれ!」と思いながら見ていました。しかも出順も早くてね。
相川:早すぎだったぁ(笑)。
花井:しかも生放送っていうのがまた、緊張したよね。
須藤:一発だから、修正のしようがないからね。
相川:でも、みんなに楽しい曲、何?って聞くと「アイドル」だったりするんですよ。
松岡:原曲と似ているところが多くて、このパートを声でやるんだ!という部分が多く、楽しいアレンジなので、歌っていても面白いです。
夏吉:すごく大胆なアレンジだし、各々の個性が立つんですよね。テンポがすごく変わったり、ラップしたり、やったことがない要素が多い曲を、いきなり大会で歌うのは正直大変でした(笑)。
綾瀬:私たちも最初は「世界は恋に落ちている」(CHiCO with HoneyWorks)とかかなぁと話してたんです。そしたらまさかの「アイドル」をやります!って。
夏吉:でも、あの大変な曲をやったから、アカペラをやる上でのキャパがすごく広がって、今後、何が来ても大丈夫だなってなりました。
綾瀬:普段学生限定で募集がかかるところが、たまたま学生じゃなくてもいいという大会が開催されたのは、タイミングとかご縁もあって、ありがたかったです。
──では次回、アニメ『うたごえはミルフィーユ』について、聞いていきたいと思います。
[文&写真・塚越淳一]
作品情報
あらすじ
苦手なもの、たくさん。
好きなもの、歌うこと。
人並みの青春を目指して、
高校デビューで軽音部への入部を試みるも
臆病な性格が災いし大失敗。
失意の中、ウタが出会ったのは
人間の声だけで作られる音楽【アカペラ】だった。
歌声を重ね合わせることでしか繋がれない
少女たちの不格好な青春がそこにはあった。
――輝かなくても、青春だ。
キャスト
(C)うたごえはミルフィーユ製作委員会 (C)2022 UTAMILU



































