
夏アニメ『うたごえはミルフィーユ』に込めた“想像の余白”と“コンプレックス”のリアル|山中拓也さん&手鞠沢高校アカペラ部キャスト6名が語る青春のかたち【インタビュー後編】
ポニーキャニオン×山中拓也さんによるアカペラをテーマにしたプロジェクト『うたごえはミルフィーユ』。キャストは、アニメの放送前から、手鞠沢高校アカペラ部として活動。オリジナル曲やカバー楽曲をリリースし続けていました。そして、ついにTVアニメ『うたごえはミルフィーユ』の放送がスタート! 女子高生たちがコンプレックスを抱えながら、アカペラに打ち込んでいく姿が描かれていきます。
インタビュー後編では、そんなアニメ『うたごえはミルフィーユ』について、小牧嬉歌(ウタ)役の綾瀬未来さん、繭森 結(ムスブ)役の夏吉ゆうこさん、古城愛莉(アイリ)役の須藤叶希さん、近衛玲音(レイレイ)役の松岡美里さん、宮崎 閏(ウルル)役の花井美春さん、熊井弥子(クマちゃん)役の相川遥花さん、そして本作で原作・シリーズ構成・脚本を務める山中拓也さんに話を聞きました。
アカペラ×女子高生×コンプレックス。コンプレックスに向き合わなくてもいい?
──アニメのストーリーを見たときの率直な感想をお聞かせください。
繭森 結役 夏吉ゆうこさん(以下、夏吉):公開中のボイスドラマよりも少し先まで描かれているので、自分たちも台本を読んでいて「お〜」となりました。これは顔合わせをした頃の話なんですけど、演じる本人にしか知らされていないキャラクターが抱えているコンプレックスや生い立ちなどの秘密があるんです。ほかのキャラクターについては、それを台本で知っていくので、「あ〜、そうだったんだね!」ってなるんです。それは、ちょっとカタルシスでもありました(笑)。
──そもそもの話をすると、『うたごえはミルフィーユ』という作品は、アカペラ×女子高生×コンプレックスというのをテーマにしたプロジェクトなんですよね。
近衛玲音役 松岡美里さん(以下、松岡):そうなんです。キャラクターがそれぞれコンプレックスを持っていて、それがわかりやすい子もいれば、この子のコンプレックスは何なんだろう?と思う子もいる。でも、それが人間だと思うんですよね。
山中:秘密やコンプレックスがあるのって特別なことでもなく、人間みんなそうだと思うんです。今回はそれとアカペラがどう化学反応を起こすのか、というのを描きたいと思ったんです。なので、仮に最終話まででコンプレックスが明かされなかったとしても、それがあるから、ここでこういう行動を取ったんだなというのはあると思います。
松岡:それでいうと、第1話で、ウタちゃんが謎の女の子に手を取られていくシーンがあったよね。「あれは何!?」ってなりました。
山中:気になると思うんですが、過去に何があったかよりも、これからを重視しています。ウタたちに限らず、人間誰しも過去に何かがあるのは前提なので、そこを詳らかに明かしていくという方向にはいかない作品だとは思います。
──確かに、それぞれの過去に何があったかって、一緒にいる上ではあまり関係なかったりしますね。
山中:そうですね。あくまで「ここからどうするか」なので、何かがあったんだろうな、くらいの感じで見てもらえば、ちょうどいいと思います。
──コンプレックスに関して、第3話まででいちばん分かりやすいところだと、クマちゃん(熊井弥子)の声が低いことになりますね。
クマちゃん役 相川遥花さん(以下、相川):そうですね。クマちゃんは声がコンプレックスであることが見た目にも表れているんですけど、それがアカペラと出会い、みんなと声を合わせることで、どうやって成長していくのか、ということが、アニメでは描かれていくんです。
──コンプレックスの克服の仕方について、どう思いましたか?
相川:クマちゃんは、今まで溜めてきたものもあるので、一筋縄ではいかないという部分は、共感してくださる方も多いんじゃないかなって思いました。この作品には「輝かなくても、青春だ。」っていうキャッチコピーもあるんですけど、コンプレックスは克服しなくてもいいんだよっていうのを学びました。
松岡:コンプレックスと向き合うことって、つらいことだし、本当に向き合わなきゃいけないことなのかな?って、私もやりながら考えたりもしたんですよ。向き合わなくてもいいんじゃないかな?って。だから、その前提の足踏みみたいなところについて、『うたミル』という作品を通じて、いっぱい考えました。
──中学生くらいまでって、結構人と違うことをイジられたり、バカにされたりすることがあるけど、高校生くらいになると、それが個性になって、周りも許容し始めるというか。声が低くても、そんなに気にならないんですよね。そのあたりはリアルだなと思いました。他のみんな、いろいろ抱えているわけですね。
相川:そうですね。ウルルも最初は、ウェイ!って感じで出てきたけど、うちに秘めているものは、結構常識人だったりするので(笑)。
宮崎 閏役 花井美春さん(以下、花井):アニメでストーリーを見て、そうだったんだ!って思うところがたくさんあったんですよ。ウルルの見たことがない表情も結構あったし、こういうときに、こういうことを言うんだ!って、私も初めて感じたので、まだまだ知らないウルルがたくさんあるなって、演じてみて思いました。
山中:いつもスムーズにこなされる方なので、アニメの収録現場で花井さんが「どう演じればいいんでしょう」と質問がきたのは新鮮で嬉しかったですね。
花井:本当にわからなかったんです。この先、ちょっと難しいシーンがありまして、結構心がすり減るシーンだったので、そこに対してのウルルとしての向き合い方がわからず、相談させていただきました。そのとき「ウルルはいちばん素直な子」とおっしゃってくださって、確かになと思いました。
──今後のために、どのあたりのシーンだか教えていただいていいですか?
花井:ムスブとウルルの掛け合いのシーンなんですけど、お互いの言い分がわかるからこそ、難しかったというか。
夏吉:わかる! どっちにも正義があるからね。でも、それって大人だったら、程々の距離感で済ませることなんですよね。彼女たちは女子高生だからこそ、避けられなかった。なので私も、今、自分が持っている社会性を捨てて、相手に対する純粋な気持ちでお芝居をしないといけなかったので、すごく苦しかったです。
──ムスブには歌に対してストイックな印象がありますが、共感するところもあったのではないですか?
夏吉:たまにわかるときもあります。いろいろ物事を突き詰めている人って、ムスブに共感しやすいのかな?と思うんです。ただ私としては「そんなに尖らなくてもいいのに〜」と思うときはありますね(笑)。



































