
単純な“子ども向け”にはしたくない。お父さん・お母さんが心の中で「頑張れ」と思うような応援歌――『映画クレヨンしんちゃん 超華麗! 灼熱のカスカベダンサーズ』橋本昌和監督インタビュー
個性あふれるオリジナルキャラクターと歌へのアプローチ
──映画オリジナルキャラクターについても、お聞かせください。アリアーナ役・瀬戸麻沙美さんは、監督の作品『TARI TARI』(※4)にも出演されていましたね。
橋本:そうなんです。瀬戸さんは、歌も演技もすごく信頼できる方だと思っています。
アリアーナ役はプロデューサーや音響監督も立ち会ったうえで、オーディションをさせていただきました。オーディションでは歌も歌ってもらって、最終的に瀬戸さんにお願いすることになりました。また一緒に仕事ができて、本当に良かったです。
※2:2012年に放送されたアニメ作品。夏の湘南を舞台に、高校生たちが合唱や歌に取り組む姿を描いている。
──アリアーナが歌う曲も素敵なメロディーと歌声です。
橋本:かなり難しい曲でした。アリアーナという、今どきの女の子が好きそうな曲にしたいと思っていたのですが、最近の曲って難しいですよね(笑)。決して歌いやすい曲ではなかったと思います。
──カビール役・山寺宏一さんとディル役・速水奨さんのキャラクターも素晴らしかったです。
橋本:お二人ともやっぱり歌がお上手ですし、芸達者ですよね。特にカビールはいろんな面があるキャラクターなので、すごく難しい役だと思います。勇ましい/弱々しいを行ったり来たりするキャラクターだったので、山寺さんは頼もしいなと改めて感じました。歌のシーンも、山寺さんから「こういう感じで歌うのはどうでしょう」という提案をたくさんいただきました。
──カビールとディルに釣られる形で、フラグタテルデー役・宝亀克寿さんも歌われていましたね。
橋本:宝亀さんも以前、瀬戸さんと同じ『TARI TARI』で校長先生役をお願いしていて、その時も面白い演技をされる方だなと心に残っていました。その時は歌うシーンがなかったんですけど、歌もお上手と聞いていたので、今作では歌もお願いしました。
──ウルフ役・賀来賢人さんも歌もお芝居も面白かったです。
橋本:もともとウルフは歌のシーンが大事なキャラクターだったので、歌ありきでオファーさせていただきました。賀来さんはキャラクターの作り方もすごくお上手で。ちょっとコミカルな演技もかっこいいところも、緩急をつけて演じられていたので、引き出しの多い方だなという印象でした。
お父さん・お母さんへの応援歌でもある
──『クレヨンしんちゃん』という作品を制作される上で、大切にしていることはどんなことですか。
橋本:子どもが観ることは意識して作っていますが、単純な子ども向けにはしたくないんです。子どものことを考えつつも、しっかりと作り込んでいく。「子ども向けだから、これくらいでいいよね」という作り方は絶対しないようにしています。当時子どもだったみなさんが大人になって観直した時、「あぁ、やっぱり面白かったんだな」と思っていただけるような作品にしたいですね。
また、お父さん・お母さんが一緒に観ることも多いと思うので、大人が退屈してしまうのは嫌だなという気持ちもあって。子ども+お父さん・お母さんも含めて、充分楽しめるような作り込みを目指しています。
──それは物語のテーマ的な部分でも?
橋本:そうですね。ただ、大人向けにしすぎてしまうと、子どもが置いていかれる感じになる可能性があるので、テーマはさりげないところで抑えておく。テーマを語りすぎないバランスはいつも意識しています。
また、今作はカスカベ防衛隊がメインのお話ですけど、ひろしとみさえにも見せ場があって。お父さん・お母さんが心の中で「頑張れ」と思うような応援歌でもあります。テーマや想いみたいなものまで考えて、セリフを組み立てているので、たまにジワっと感じられる瞬間もあるんじゃないでしょうか。
──最後に、映画を楽しみにしているファンのみなさんへメッセージをお願いします。
橋本:本当に楽しんでいただきたいというのが一番大きいので、夏休みのイベントのひとつとして、ぜひ観ていただければと思います。大人にしかわからないギャグも入っているので、子ども連れのお父さん・お母さんだけでなく、子どものいない大人の方も、ぜひ映画館で楽しんでください。
[インタビュー/宋莉淑]
『映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』作品情報
8月8日(金) ROADSHOW
配給:東宝
あらすじ
「オラ、インドの綺麗なおねいさんとカレーたべた~い!」
インド観光を満喫する中、怪しげな雑貨店に入ったしんのすけとボーちゃんは、そこで「鼻の形」に似たリュックサックを見つけ購入する。しかし、そのリュックサックには、とても恐ろしい秘密があった---。偶然にもリュックサックから出ていた「紙」を鼻に刺してしまったボーちゃんは、邪悪な力に導かれ【暴君(ボーくん)】となり大暴走!豹変してしまったボーちゃんは、世界をも揺るがす脅威の力を手に入れてしまう。
はたして【暴君(ボーくん)】となったボーちゃんを、しんのすけたちは止めることができるのか?!
キャスト
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2025


































