
アリアーナが抱える悩みと繊細な感情、それを吹き飛ばすしんちゃんの“かっこよさ”に救われた――『映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』アリアーナ役・瀬戸麻沙美さんインタビュー
『映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』が、8月8日(金)よりROADSHOW!!
シリーズ32作目となる今作では、しんのすけたち“カスカベ防衛隊”がインドを舞台に大乱舞! 踊って踊って踊りまくる『映画クレヨンしんちゃん』のダンスエンターテインメントが誕生しました。
アニメイトタイムズでは、映画の公開を記念して、今作のヒロインであるアリアーナ役・瀬戸麻沙美さんにインタビュー。新作映画の見どころ、アフレコ収録のエピソードや橋本昌和監督との思い出など、様々なお話を伺いました。
難しいからこそ、やりがいがあった歌唱シーン
ーーアリアーナというキャラクターの魅力について、お聞かせください。
アリアーナ役・瀬戸麻沙美さん(以下、瀬戸):アリアーナはインドで人気があって、みんなに「いい子」と言われて、SNSでも注目されている人気者。きっと彼女の心の中をのぞいていない人からすれば、彼女の表面的な部分しか見えていなかったと思うんです。
今回の作品では、アリアーナの心の中で抱えているものに、焦点が当たっていて。実は人気が高くなるにつれて、「みんなが望んでいるアリアーナでいなくてはいけない」と葛藤しているということが見えてくるんです。
彼女のそういった思いは歌で表現されています。歌のバージョンも、ひとりで歌いだすもの、メロディーが乗って途中からテンポが上がっていくものがあるんですけど、独特なリズムだったので、レコーディングはちょっと難しかったですね。
ただ、難しいからこそ、すごくやりがいもありました。レコーディングの際は「シーンごとのアリアーナの心情によって、聞こえ方が変化するように」と思っていました。
ーーしんのすけが寝ている時に、隣でアリアーナが歌うシーンも印象的でした。
瀬戸:あのシーンを収録するにあたって、「隣でしんちゃんが寝ていますけど、大きな声で歌って大丈夫ですかね?」と監督に確認したのを覚えています。監督は「たしかに、しんちゃんは寝ているけど、そこまで気にしなくていいよ」と言われました(笑)。
ーーアフレコのディレクションで、印象的なものがあればお聞かせください。
瀬戸:アリアーナの演技について、「もっと明るく、もっと子どもっぽく、という年齢感を指摘されるかな?」と想像していたんです。でも、意外と自分が作っていったものをそのまま受け止めていただいて。シーンごとの微調整はありましたけど、基本的には自分がイメージしていたアリアーナと、監督の中のアリアーナが近かったのかなと。
アリアーナもしんちゃんの言葉に救われたひとり
ーー今作の中で印象的だったシーンを教えてください。
瀬戸:アリアーナがみんなの前でニコニコと踊った後、ロケバスに戻って、お母さんと電話して、とつとつと歌い始めるシーン。
アリアーナが外に出している表情と彼女の悩みや本当の思いが対比されていて、彼女のことが一気に理解できるシーンだと思います。そこからしんちゃんに出会うまでの流れにも注目していただきたいです。
物語が進んでいくと、カスカベ防衛隊のみんなやひろし、みさえとも合流し、<ロボット犬(けん)>に追いかけられて、逃げ惑うシーンがあって。すごくハチャメチャで、ハラハラさせられる一方で、大人のひろしとみさえが子供たちを身を挺して守っている。その瞬間をしっかり目に焼き付けているアリアーナがいます。この2つのシーンはとても印象に残っているので、ぜひ注目していただきたいです。
ひろしとみさえは、しんちゃんへの愛が本当に強いですよね。そんなしんちゃんたちを見て、アリアーナが「いいなあ」とつぶやく。そして、羨む気持ちを持つ自分が嫌と言った後に、みさえとひろしが「そんなの当たり前よ」と自分の考えを肯定した上で、「私もそうよ」と共感してくれるんです。その経験は、アリアーナにとっての救いになっていたなと。「やっぱり野原家ってすごい!」と思いました。
ーー作中で周囲から「らしくない」と言われて、怒るアリアーナと今作のボーちゃんが重なって感じました。
瀬戸:今回の作品はボーちゃんの行動とアリアーナが抱えているもの、そのふたつがリンクしていきます。アリアーナはボーちゃんを見て「いいな」と思うところがあったと思うんですよね。というのも、ボーちゃんの行動は周りから「ボーちゃんらしくない」「いつもと違う」と言われても、その上で「ボーちゃんはボーちゃんだから」と受け入れてくれる。
どんなボーちゃんになっても、そばにいてくれる人がいるというのは、彼女にとっては羨ましいことでした。彼女は人に見られる立場にいることが多いからこそ、人にあまり見せたくない表情に、自分の中で蓋をしていた部分があるんです。
ボーちゃんとカスカベ防衛隊のみんなの関係性を見て、ポロっと本音が出てしまったり、5歳の子どもたちに向けて、「どうしてダメなの?」「ボーちゃんらしいって何?」とちょっと気持ちをぶつけてしまったり……。しかも、その言葉を聞いて本人がハッとするんですよ。
自分の中に抑え込んでいた感情が出てしまうぐらい、しんちゃんたちの関係性から刺激を受けていたんだなと思いました。
ーー一方で、寝ているしんちゃんに自分の服をかけてあげるような優しい一面もあります。
瀬戸:根っこの部分が優しい子なんです。自分が関わらなくてもいいのに、手を差し伸べて、助けてあげたいと思える。<ロボット犬(けん)>に追っかけられているところなんて、放っておけばいいのに、周りからの目も気になるけど、でも結局助ける選択をする。そこが彼女の本来持っている部分だし、やっぱりしんちゃんに心動かされる部分なのかなと思いました。
人の目を気にするあまり、人の期待に応えようとするあまりに、妬ましさや羨ましさも大きくなっていく。そして、それを人には出してはいけない感情だと知っているからこそ、気持ちをためこんで、「そういう考えをする自分は良くないんじゃないか」と、どんどんネガティブになってしまう。その中で、恐らく無意識なんですけど、しんちゃんからポロっと出てくる言葉が心に刺さるんですよね。
それは『映画クレヨンしんちゃん』の魅力にも繋がります。しんちゃんたちはおふざけして、いつも笑って、端から見ると「何やってるの?」と思うのに、いきなり心にフッと残るひと言を残してくれる。アリアーナもその言葉にハッとさせられて、救われたひとりです。「やっぱりしんちゃんはかっこいいな」と改めて感じました。
ーー今作の中で、特に気になるキャラクターをお聞かせください。
瀬戸:カビールとディルのふたりが面白かったですね。この濃い兄弟愛があって、相方と別れちゃった時のカビールのペショペショ加減とか最高です! 「きっとスタッフのみなさんも楽しく描いていたんじゃないかな」と想像できました。声優さんたちもベテランの先輩たちが全力で、かっこよくてふざけている感じが面白すぎて、大好きなキャラクターです。




































