
『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』テクニカル隊長ブーケ様の組織行動から考察するリーダーシップの諸相~ブライダンの目的達成の鍵を握る幹部のリーダー力~
相手に奉仕する「サーバントリーダーシップ」
サーバントリーダーシップ(servant leadership)は、1970年にロバート・K・グリーンリーフが提唱した概念です。従来の「上に立って指示する」タイプのリーダー像とは異なり、「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というリーダーシップ哲学です。サーバントリーダーは、奉仕や支援を通じて、周囲から信頼を得て、主体的に協力してもらえる状況を作り出します。
ブーケ様の「サーバントリーダーシップ」が感じられるエピソードとして、第21話を挙げます。ファイヤキャンドルが人間界で主催した祭において、ブーケ様は雑用といえる通行人を呼び込むためのチラシ配りの仕事を行っており、本来は部下のアーイーたちがやるべきことを率先して自ら行うことで、階層的な役割を超えて「まず奉仕する」姿勢を示しています。部下たちから信頼を得る土壌を築き、部下たちの主体的な協力を促進するリーダーシップ行動といえるでしょう。
奉仕の姿勢は誠実さが無ければ「偽善」と受け取られる可能性がありますが、ブーケ様の誠実な態度はたびたび描かれており、そのリスクは非常に少ないことが確信できます。
第16話で、ブライダンが再生成を失敗して人間界を混乱に陥らせた際には、敵であるテガソードと遠野吠に対して率直かつ丁寧にお詫びしており、常に相手を尊重し、嘘や打算なく向き合う姿勢、人格的な誠実さが感じられます。第28話では、敵に乗っ取られた巨大ロボ・アイアイザーをやむなく撃破した際、意思をもたない生成ロボットであるアイアイザーにさえも大切な仲間としての愛情を持ち、傷つけてしまったことを謝る誠実な姿が確認されています。
誠実さはブーケ様のサーバントリーダーシップを確固たるものとし、彼女は権力や地位ではなく、信頼と支援によって部下たちを導いていくことができると考えます。
個性を持つことの大事さ「オーセンティックリーダーシップ」
ブーケ様の通り名は「慈愛」。そして、人間界で目にしたアイドル・百夜陸王のことが好きになり、リクオニストとして数々のオタク行動をとっています。筆者はここにブーケ様のオーセンティックリーダーシップを見出します。
オーセンティックリーダーシップ(Authentic Leadership)は、リーダー自身の「本物らしさ」や「誠実さ」に根ざしたリーダーシップスタイルで、特に心理的安全性や信頼関係を重視する現代の組織において注目されています。2000年代初頭に米国メドトロニック社の元CEOであるビル・ジョージによって体系化されました。
オーセンティックとは「その人らしく、個性がある」という意味で、オーセンティックリーダーシップとは「自分らしさを活かしたリーダーシップ」であり、「自分らしさ」とは、自分が大切にしている価値観や信念を指しています。変化が激しく予測不能な現代においては、カリスマ的なリーダーをまねるのではなく、自分らしさに基づいて起きる変化に柔軟に対応しながら組織をまとめていくことが有効とされています。
ブーケ様が大切にしている価値観や信念は「愛」。先述のように、たとえ女王テガジューンからの命令であっても、彼女は「愛」の信念の下、進言や反論を行っています。
第27話、ブーケ様は記憶を失ってしまいますが、「愛」は自分にとって大切な言葉として心にずっと引っかかっており、第28話では、陸王への愛によって記憶を取り戻し、自分なりの本当の愛を思い出しています。ブーケ様は、自分の信念に従って行動する魅力的なリーダーであり、同じく第28話では、幹部仲間のファイヤキャンドルから「ブーケ嬢は自分の心にいつも正直で……それがすげえんだ!」という言葉が投げかけられ、彼女の真っすぐな正直さに一目置いている様も描かれました。
部下の視点で考えると、何かを隠しているかもしれない人を信頼することは難しいため、リーダーが自分の価値観、信念、感情を偽らずに表現することは、信頼関係の構築において重要です。「自分自身に正直であること」が中心にあるオーセンティックリーダーシップにおいては、ブーケ様が陸王を愛し、リクオニストとして激しく推し活動に勤しんでいることは、リーダーとして決してマイナスではなく、周囲に信頼と安心をもたらしているといえます。
ブーケ様は価値観と信念、その正直さをもってオーセンティックリーダーシップを発揮して、信頼と安心によって部下たちを導いていくことができると考えます。
戒めるべき言動
ブーケ様は現代のリーダーとして目覚ましい才能があることは事実です。しかし、どんなキャラクターも万能ではないもの。ブーケ様がリーダーシップを発揮するうえで課題となる行動も作品内では散見されます。
第17話では、感情的な理由により任務を放棄する場面が描かれています。ブーケ様は急遽カレンデウスを駆って、運動会の障害物レースに参加することになりますが、泥水に落ちただけでまだ戦闘可能な状態なのに、汚れてしまったことに気分を損ねて帰ってしまいました。
あの時、グーデバーンを前に戦場に一人残された金アーイーであるゴーグ・ルゴーは、ブーケ様と運動会ノーワンに謝りつつも、絶望と失望に満ちていたと想像できます。大事な場面で自らに協力してくれなかったり、助けてくれない存在というものは信頼を失うものです。
また、第3話および第10話における私怨に基づく言動は、部下の萎縮を招くリスクがあります。テガソードブルーに異様に私怨を燃やし、乱暴な言葉遣いで、怒りのまま行動する姿は、普段の淑女な姿とのギャップが激しく、確実に部下の萎縮に繋がるでしょう。
感情制御の未熟さは、組織運営や部下との信頼関係に悪影響を及ぼし、ともすればブライダンの組織上の強みである心理的安全性を失いかねず、ブーケ様には早急に改善を求めたい課題です。
おわりに
いかがだったでしょうか? 本稿では、テクニカル隊長ブーケ様の作品中における言動を手がかりに、リーダーシップ理論と照らし合わせながら、彼女のリーダーシップスタイルを考察してまいりました。
昔は、いわゆる上意下達の支配型で運営されていた敵組織がたくさんあったはずですが、ブライダンは支配型ではないリーダーシップを発揮している魅力的なリーダーの下、令和の時代にふさわしい組織運営がなされていると感じます。
3人の幹部が心理的安全性を保ち、それぞれの特性を生かしたリーダーシップを発揮して、部隊の力を最大限に引き出していくことができれば、ブライダンが目的を達成する日が着実に近づいてくるはずです。
今回はブーケ様を通じて、真面目に組織やリーダーシップについて考えてみましたが、リーダーシップの定義はいろいろとあり、矛盾や他の解釈などもあろうかと思います。あくまで一つの考えとしてご容赦いただければありがたいです。
本稿が、読者の皆さんがリーダーシップのことを考えるきっかけとなり、ブーケ様というキャラクターの魅力を掘り下げることにつながっていれば嬉しく思います。
[文/おしろう]









































